三谷商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三谷商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する福井発祥の複合商社です。情報システム、建設資材等の企業サプライ、生活・地域サービスの3事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高3,390億円で増収、経常利益336億円で増益となり、堅調な推移を見せています。


#記事タイトル:三谷商事転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、三谷商事株式会社 の有価証券報告書(第108期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三谷商事ってどんな会社?


創業100年を超える福井発の複合商社です。情報システム、建設資材、エネルギーなど多角的な事業を展開し、安定した収益基盤を持っています。

(1) 会社概要


同社は1914年に創業し、セメントや石炭の販売を開始しました。1946年に三谷商事を設立後、石油製品やLPガスの販売へ進出し、1963年に大阪証券取引所市場第二部に上場しました。1982年には現在の主力の一角である電子機器事業部(現情報システム事業部)を発足させています。2010年には風力発電事業に参入するなど、時代の変化に合わせて事業ポートフォリオを拡大してきました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は2,076名、単体では450名です。筆頭株主は同社の持分法適用関連会社である三谷セキサンで、第2位は一般財団法人三谷進一育英会、第3位は主要株主である三谷土地ホームとなっています。創業家や関連企業が上位株主として名を連ねる安定した株主構成です。

氏名 持株比率
三谷セキサン 15.58%
一般財団法人三谷進一育英会 10.49%
三谷土地ホーム 8.83%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は三谷聡氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
三谷 聡 取締役社長(代表取締役) 1984年同社取締役就任。専務、副社長を経て1994年三谷セキサン社長。1998年6月より同社代表取締役社長。
三谷 聡一郎 常務取締役 2016年富士ゼロックス入社。2018年同社入社。建材事業部長、エネルギー本部中日本エネルギー事業部長等を経て2025年6月より現職。
渡辺 崇嗣 取締役 2000年渡彌および駒屋社長。三谷セキサン監査役等を経て、2017年同社取締役就任。2022年よりヤマトタカハシ社長を兼任。


社外取締役は、佐野俊和(コマツサービスエース社長)、藤田知三(藤田記念病院院長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「情報システム関連事業」「企業サプライ関連事業」「生活・地域サービス関連事業」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 情報システム関連事業


情報機器の販売、ソフトウェア開発、ネットワーク構築、保守サービスなどを提供しています。主な顧客は、教育機関、自治体、民間企業など多岐にわたります。特に文教市場向けやPOSシステムなどが主力です。

収益は、顧客からの機器販売代金、ソフトウェア開発費、保守サービス料などから得ています。運営は主に三谷商事、三谷コンピュータなどが担当しています。

(2) 企業サプライ関連事業


建設資材(セメント・生コンクリート等)、石油製品、ゴンドラ、風力発電、スパイス加工販売などを手掛けています。企業間取引(BtoB)が主体であり、建設業界や製造業などが主な顧客です。

収益は、商品の販売代金、ゴンドラのレンタル料、売電収入などから得ています。運営は三谷商事、日本ビソー、三谷セキサン(持分法適用会社)などが担当しています。

(3) 生活・地域サービス関連事業


ケーブルテレビ、インターネット接続、カーディーラー、ガソリンスタンド運営、介護事業などを展開しています。地域住民などの最終消費者を主な顧客としています。

収益は、サービスの利用料、商品の販売代金などから得ています。運営は福井ケーブルテレビ、ネッツトヨタ福井、スプリングライフ金沢などが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は増加傾向にあり、利益面でも経常利益、当期純利益ともに堅調に推移しています。特に直近では売上高が3,000億円台で安定的に成長しており、利益率も向上傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,970億円 2,994億円 3,203億円 3,248億円 3,390億円
経常利益 227億円 227億円 243億円 297億円 336億円
利益率(%) 5.7% 7.6% 7.6% 9.2% 9.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 107億円 97億円 104億円 123億円 112億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は17%前後で推移しており、販管費のコントロールにより営業利益率も改善しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 3,248億円 3,390億円
売上総利益 544億円 602億円
売上総利益率(%) 16.7% 17.8%
営業利益 259億円 315億円
営業利益率(%) 8.0% 9.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が124億円(構成比43.1%)、地代家賃が20億円(同7.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収増益となっています。特に企業サプライ関連事業は売上高・利益ともに最大規模であり、業績を牽引しています。生活・地域サービス関連事業も利益率が高く、安定収益源となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
情報システム関連事業 273億円 292億円 44億円 49億円 16.8%
企業サプライ関連事業 1,585億円 1,676億円 210億円 253億円 15.1%
生活・地域サービス関連事業 1,390億円 1,421億円 31億円 39億円 2.7%
調整額 - - △26億円 △26億円 -
連結(合計) 3,248億円 3,390億円 259億円 315億円 9.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

三谷商事のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の増加や、前期末の休日による収支ずれの影響を受け、前期より減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、ゴンドラ事業のレンタル用ゴンドラなどへの投資による支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いによる支出がありました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 316億円 254億円
投資CF △112億円 △49億円
財務CF △82億円 △150億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「開拓者精神」「綜合商社の目的達成」「働きがいのある職場達成」「私達は会社の仕事を通じて社会に貢献しよう」を社是として掲げています。法令遵守と社会良識を持った行動を基本とし、時代の流れに対応した企業価値向上と、顧客の信頼に応える商品・サービスの提供を目指しています。

(2) 企業文化


効率がよく、無駄がない、借金の少ない、キャッシュ・フローが豊かな、内容や質の良い会社を目指す企業風土があります。事業の付加価値を見える化し、PDCAサイクルを回しながら持続的に成長し続けるTQM(Total Quality Management)活動に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


付加価値(総利益額)を増やし持続的に成長することを目標としています。投資効率を重視し、事業で使用している投下資本(EV≒IC)から生み出される純利益の利回り(ROIC)を経営指標として意識しています。

* 2025年3月期実績 ROIC:約26%

(4) 成長戦略と重点施策


「開拓者精神」に基づき、M&Aや社内での新規事業開拓を進めています。投資対象としては、GDPや人口が伸びている海外(環太平洋地域)や、国内の大都市部を重視しています。また、既存事業においては売上高や総利益率の向上を図るとともに、買収した事業のPMIを通じた成長促進にも注力しています。

* 2025年3月期設備投資額:46億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業付加価値向上を目的としたタレントマネジメントの確立を目指しています。現状に満足せず高い目標を持ち成長する人材の育成と、働きがいのある職場環境づくりを重視しています。具体的には、新人事制度の構築やITシステムの更新、女性の活躍推進や管理職人材育成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.0歳 17.3年 8,749,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 35.7%
男女賃金差異(全労働者) 50.5%
男女賃金差異(正規雇用) 55.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 57.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(49.1%)、定期健康診断受診率(99.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内経済環境の変化のリスク


同社グループの事業の多くは日本国内に集中しており、人口減少やGDP低迷の影響を受けやすい環境にあります。特に主力商品であるセメントや石油製品は需要減少が続いており、想定以上のスピードで需要が落ち込んだ場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) ガソリンスタンド事業の需要リスク


ガソリンスタンド事業を行っていますが、脱炭素社会に向けた世界的な潮流の中で、低燃費車やEV車の普及が進むことによって石油製品の需要が減少し、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 事業投資リスク


M&Aを通じて既存事業の拡大や新規事業への進出を行っていますが、買収先の業績悪化や期待した利益が得られない場合、あるいは撤退を余儀なくされる場合、固定資産やのれんの減損損失が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 風力発電事業のリスク


風力発電事業において、地震や落雷などの自然災害、機械的故障により発電設備が停止するリスクがあります。また、異常気象による風況の変化で発電量が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。