※本記事は、横浜丸魚株式会社 の有価証券報告書(第89期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 横浜丸魚ってどんな会社?
水産物卸売を中核事業とし、市場外での水産物販売、不動産賃貸、運送事業を展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
同社は1947年に横浜魚市場として設立され、翌1948年に現在の商号となりました。1956年には川崎丸魚を設立し、事業基盤を拡大しています。1963年に店頭登録銘柄となり、2004年にジャスダックへ上場しました。その後、市場統合を経て、2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。
現在の従業員数は連結で178名、単体で96名です。筆頭株主は、大手水産会社のマルハニチロ(持株比率11.49%)で、第2位は同じく水産業界の極洋(7.81%)となっており、業界大手との提携関係が見られます。第3位には金融系企業の浜銀ファイナンスが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| マルハニチロ | 11.49% |
| 極洋 | 7.81% |
| 浜銀ファイナンス | 5.14% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は小島雅裕氏が務めています。社外取締役比率は約28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小島 雅裕 | 代表取締役社長 | 横浜銀行出身。2013年に入社し、総務部長、横浜魚市場運送社長などを経て2022年より現職。 |
| 源波 秀樹 | 専務取締役丸魚グループ営業統括 | 1992年入社。営業一部長、経営企画室部長、横浜魚市場運送社長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 柴原 哲 | 常務取締役川崎北部支社長 | 1987年入社。南部支社長、営業二部長などを経て、2022年より現職。 |
| 木村 孝幸 | 取締役執行役員本社営業統括部長 | 1982年入社。営業一部長として大物・鮮魚等を担当し、2024年より現職。 |
| 佐藤 彰 | 取締役 | 1993年入社。総務部長、管理統括部長などを経て、2025年より現職。川崎丸魚社長を兼務。 |
社外取締役は、堀晶子(佐藤・堀法律事務所弁護士)、工藤光和(元横浜銀行執行役員・リスク統括部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「水産物卸売事業」「水産物販売事業」「不動産等賃貸事業」「運送事業」の4つの報告セグメントを展開しています。
■水産物卸売事業
横浜市および川崎市の中央卸売市場、ならびに川崎市地方卸売市場において、水産物の卸売を行っています。全国の産地や商社から集荷した鮮魚、冷凍魚、塩干加工品などを、仲卸業者や売買参加者へ供給しています。
収益は主に、卸売市場内での水産物取引に伴う売上および手数料収入から得ています。運営は、同社および子会社の川崎丸魚が行っています。
■水産物販売事業
中央卸売市場等から仕入れた水産物を、市場を通さずに量販店や外食産業等へ直接販売する事業です。多様化する顧客ニーズに対応し、安定的な供給を行っています。
収益は、量販店や外食産業等の顧客への商品販売代金となります。運営は、子会社のハンスイおよび館山丸魚が行っています。
■不動産等賃貸事業
同社グループが保有する不動産の有効活用を目的とし、賃貸マンション等の賃貸を行っています。
収益は、賃借人からの賃貸料収入です。運営は、主に同社が行っています。
■運送事業
水産物およびその加工品の運送や荷役業務を行っています。市場流通における物流機能を担い、商品の配送を行っています。
収益は、荷主や顧客からの運送・保管料等です。運営は、子会社の横浜魚市場運送が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの5期間を見ると、売上高は400億円前後で推移しています。直近の2025年3月期は売上高398億円となり、前期比で増収となりました。利益面では、経常利益が2022年3月期を底に回復傾向にあり、2025年3月期は7.1億円、当期純利益も5.1億円と、利益率の改善が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 413億円 | 376億円 | 407億円 | 386億円 | 398億円 |
| 経常利益 | 2.2億円 | 1.0億円 | 4.5億円 | 5.8億円 | 7.1億円 |
| 利益率(%) | 0.5% | 0.3% | 1.1% | 1.5% | 1.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.9億円 | 1.6億円 | 3.8億円 | 4.1億円 | 5.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。営業利益率は0.9%となっており、卸売業特有の薄利構造ではありますが、前年の0.7%から改善が見られます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 386億円 | 398億円 |
| 売上総利益 | 33億円 | 34億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.4% | 8.4% |
| 営業利益 | 2.8億円 | 3.5億円 |
| 営業利益率(%) | 0.7% | 0.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当を含む「役員報酬・給料手当」が13億円(構成比43%)、運送・保管料が5.4億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、主力である水産物卸売事業は、外食向け商材の回復等により増収となりました。一方、水産物販売事業は仕入価格の上昇等の影響を受け減収となっています。不動産等賃貸事業と運送事業はともに堅調に推移し、増収を記録しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 水産物卸売事業 | 303億円 | 318億円 |
| 水産物販売事業 | 79億円 | 76億円 |
| 不動産等賃貸事業 | 1.7億円 | 1.8億円 |
| 運送事業 | 3.1億円 | 3.3億円 |
| 連結(合計) | 386億円 | 398億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
横浜丸魚は、財務基盤の安定と企業価値向上を目指し、必要に応じて銀行借入を実行し設備投資を行う方針です。
同社は、営業活動により潤沢な資金を獲得し、事業活動を支えています。一方で、投資活動では将来の成長に向けた投資を行っており、財務活動では借入や返済、配当金の支払いなどを行っています。これらの活動の結果、同社の資金は増加傾向にあります。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、水産物流通サービス業者として、安心・安全で良質な商品と心に感じるサービスにより顧客満足を追求することを基本方針としています。豊かな食生活への貢献とともに、人を大切にする経営によって、質の高い企業活動を目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは「Face To Face With」を基本コンセプトとし、何事にも面と向かって行動する姿勢を重視しています。「水産卸売事業を通じた社会貢献」「長期的視点の経営」「人を大切にする経営」をベースに、顧客や取引先との共創を通じて社会に新しい価値を提供することを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2023年度から2025年度までを対象期間とした「横浜丸魚グループ中期経営計画2023 ~Rebirth~」を策定しています。持続的な成長と発展を実現するため、株主への長期的利益還元を重要課題とし、連結自己資本配当率(DOE)1.0%を目安とした安定的な配当継続を目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「集荷力の強化」として、情報共有体制の構築や県内漁協とのネットワーク強化を進めています。「海外取引の強化」では、海外販売に強みを持つ企業とのパートナーシップにより販売拡大を目指します。また、「販売力の強化」として、鮮魚加工、養殖事業者との連携、ECサイト、地場魚販売の強化に加え、多様な人材が活躍できる人事制度のリニューアルを重点施策としています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人口構造の変化に対応し、活気ある企業であり続けるため、多様な人材の採用を促進しています。性別、年齢、国籍等を問わず個性を活かせる環境を目指し、人事制度のリニューアルを実施しました。具体的には、初任給や手当の増額、定年制の廃止、中途採用の積極活用などを通じ、従業員のモチベーション向上と人材育成を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.6歳 | 17.8年 | 6,172,186円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ワーキングマザー比率(27.2%)、喫煙率(27.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 安心・安全への対応
生鮮食料品等の流通を担う卸売業者として、品質管理を最重要項目と位置づけています。万が一、取扱商品の品質問題が発生した場合、多額の補償損失が発生し、同社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、品質管理室の設置や社員教育を通じて対策を強化しています。
■(2) 在庫商品の価格変動リスク
市況を勘案して商品の買付けを行っていますが、将来の需給バランスによっては価格変動により過剰在庫を抱えたり、商品評価損が発生したりする可能性があります。これに対し、毎月の在庫会議等で適正在庫の維持に努めています。
■(3) 市況変動による影響
主力の水産物卸売事業は、天候不順による漁獲量の減少や法的規制、輸入制限等により入荷量や価格が大きく変動するリスクがあります。特定魚種の減少に対しては、他魚種の集荷等により影響を軽減する方針です。



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