※本記事は、株式会社キムラタンの有価証券報告書(第63期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. キムラタンってどんな会社?
創業100年の歴史を持つ老舗企業で、アパレル事業から不動産関連事業への事業転換を進めています。
■(1) 会社概要
1925年4月に創業し、1948年に木村坦商店として設立されました。1974年に大阪証券取引所第2部へ上場を果たし、その後東証1部を経て、2022年4月に東証スタンダード市場へ移行しています。近年は事業ポートフォリオの転換を図り、2021年より不動産事業へ参入し、イストグループやSwanStyleなどのM&Aを通じて同領域の強化を推進しています。
同社グループの従業員数は連結で34名、単体で20名です。筆頭株主は同社取締役の清川浩志氏で、第2位は澤田秀雄氏、第3位は清川浩志氏が代表取締役を務めるレゾンディレクションです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 清川浩志 | 27.40% |
| 澤田秀雄 | 19.70% |
| レゾンディレクション | 5.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は九鬼祐一郎氏が務めています。社外取締役の比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 九鬼祐一郎 | 代表取締役社長 | 山一證券入社後、松井証券専務、アーク取締役副社長、フジオフードグループ本社取締役副社長を経て、2024年4月に同社入社。同年6月より現職。 |
| 木村裕輔 | 常務取締役 | 1986年同社入社。管理本部長、業務本部財務経理部長などを経て、2007年取締役に就任。2012年4月より現職。 |
| 清川浩志 | 取締役 | 清川建設(現レゾンディレクション)取締役、まるき葡萄酒代表取締役などを経て、2019年1月同社顧問。同年6月代表取締役を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、染川智香(清川建設取締役)、鈴木孝男(三菱ふそうトラック・バス取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産事業」、「アパレル事業」および「ウェアラブル事業」を展開しています。
■不動産事業
中古物件のリノベーションによる販売(再販事業)や、不動産特定共同事業法に基づく小口化投資商品の提供、空き家の再生、および不動産賃貸事業を行っています。資源の有効活用と地方活性化を両立させた高付加価値な住宅を市場に再供給しています。
主な収益源は、販売用不動産の売却代金および賃貸収入です。事業の運営は、親会社であるキムラタンのほか、キムラタンエステート、キムラタンプロパティ、イストグループ、SwanStyleなどの各子会社が担っています。
■アパレル事業
ベビー・子供服や衣料雑貨等について、自社企画・設計による独自性と品質にこだわった高付加価値製品を展開しています。「キムラタンらしさ」を追求したブランド価値の再構築と、特定のターゲット層に向けた差別化戦略に注力しています。
主な収益源は、一般消費者からの製品購入代金です。国内では自社ネット通販を通じた直接販売を中心に、一部百貨店でのインショップ運営を行っており、店舗運営業務は子会社のキムラタンリテールに委託しています。
■ウェアラブル事業
ウェアラブルIoT技術を活用した園児の午睡見守りや体調変化のチェックサービスを全国の保育施設に提供しています。また、少子高齢化社会を見据え、高齢者向けの室内熱中症対策商品等の販売も手掛けています。
主な収益源は、見守りソリューションのサービス利用料および機器の販売代金です。当事業の開発、サービスの提供、および商品の販売は、主に親会社のキムラタンが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、アパレル事業の縮小に伴い売上高は一時減少しましたが、不動産事業への転換により直近では増収傾向にあります。一方で、事業構造の変革に伴う先行投資やコスト負担増により、経常利益・当期純利益は赤字が続く厳しい状況です。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 42.4億円 | 35.5億円 | 12.8億円 | 17.6億円 | 25.3億円 |
| 経常利益 | -6.1億円 | -10.4億円 | -0.2億円 | 0.1億円 | -0.6億円 |
| 利益率(%) | -14.4% | -29.2% | -1.5% | 0.6% | -2.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -8.5億円 | -10.4億円 | -0.8億円 | -0.9億円 | -1.7億円 |
■(2) 損益計算書
M&Aを含む不動産事業の拡大によって売上高は増加したものの、原価率の高い不動産再販事業の構成比上昇により売上総利益率は大きく低下しています。また、事業拡大に伴う費用の増加によって営業利益は減益となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 17.6億円 | 25.3億円 |
| 売上総利益 | 7.3億円 | 7.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.3% | 29.6% |
| 営業利益 | 1.3億円 | 0.9億円 |
| 営業利益率(%) | 7.7% | 3.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.3億円(構成比20%)、支払手数料が1.1億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
不動産事業はM&A効果と再販事業の伸長により大幅な増収を達成しました。一方、アパレル事業は店舗閉鎖やネット通販の低調で減収となり、ウェアラブル事業は導入施設の順調な増加により増収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 不動産事業 | 13.7億円 | 22.0億円 |
| アパレル事業 | 3.6億円 | 2.9億円 |
| ウェアラブル事業 | 0.3億円 | 0.4億円 |
| 連結(合計) | 17.6億円 | 25.3億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業型のキャッシュ・フローを描いています。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.3億円 | 10.7億円 |
| 投資CF | -3.3億円 | -6.0億円 |
| 財務CF | -2.7億円 | -2.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失のため算出されておらず、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は16.7%でスタンダード市場の非製造業平均(48.5%)を大きく下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業100年を機に「衣・健・住」を軸とした戦略的ビジネスモデルを推進しています。これら3領域への集中投資とシナジー創出によって、収益性の向上と社会的価値の両立を実現し、持続可能な成長と企業価値の最大化を目指しています。
■(2) 企業文化
社会課題の解決と収益性の両立を重視し、アパレル事業ではターゲット層を絞り込んだ「キムラタンらしさ」の追求によるブランド価値再構築を図っています。また、柔軟かつ機動的な経営判断を通じてM&Aやアライアンスを積極的に推進する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
安定的かつ健全な財務基盤の構築と、持続的な増収・増益を中長期的な目標として掲げています。不動産事業の4領域のバランス最適化や、アパレル事業のデジタルマーケティング強化等による収益性の回復、ウェアラブル事業での成長エンジンの確立を進めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
不動産事業を新たな柱とし、中古住宅の再販事業やマッチングプラットフォームの運営、小口不動産投資スキームの導入による多角化を推進します。また、少子高齢化を見据えてウェアラブルIoTの応用領域を介護分野へ拡張し、高齢者向け見守りサービスを展開します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業環境の変化に柔軟に対応し持続的な成長を実現するため、従業員一人ひとりの能力向上と挑戦を支援する風土醸成に取り組んでいます。職種に応じた専門性やマネジメント能力の向上を図るべく、各種研修の提供や新たな役割への挑戦を後押しする環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 53.5歳 | 22.5年 | 4,722,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は常時雇用する労働者数が100人以下であり公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 不動産市況とコスト変動リスク
不動産市場の動向や金利水準の変動により、再販事業や賃貸事業の販売利益率が低下する可能性があります。また、資材価格や施工単価の高騰によってリノベーション等の改修費用が想定以上に膨らみ、収益を圧迫するリスクがあります。
■(2) 不動産取得における競争激化
良質な収益物件や仕入れ価格が魅力的な中古住宅へのアクセスは年々難しくなっています。不動産仕入れ競争の激化によって仕入れ価格が上昇した場合、利益率の低下や価格上昇による長期保有リスクが顕在化する恐れがあります。
■(3) 天候および季節的要因
アパレル事業の主力である子供服は季節商品であるため、気温や天候の変動に大きく左右されます。異常気象によって販売シーズンの短縮や在庫滞留が発生した場合、値引き販売の増加や販売機会の喪失が生じるリスクがあります。



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