※本記事は、株式会社キムラタン の有価証券報告書(第62期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. キムラタンってどんな会社?
子供服事業を祖業としつつ、近年はM&Aを通じて不動産事業を新たな収益の柱として拡大させている企業です。
■(1) 会社概要
1925年に創業し、ベビー衣料品の製造販売を開始。1974年に上場を果たしました。長らく子供服事業を主力としてきましたが、2018年に保育園事業(現在は休止)およびウェアラブル事業へ参入。2021年には不動産事業への参入を決定し、近年はM&Aを通じて不動産関連事業の拡大を進めています。
連結従業員数は30名、単体では20名です。筆頭株主は取締役の清川浩志氏で、第2位は個人投資家の澤田秀雄氏、第3位は清川氏が代表を務めるレゾンディレクションです。経営陣やその関連会社が大株主となっており、オーナー色の強い資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 清川 浩志 | 25.70% |
| 澤田 秀雄 | 17.40% |
| レゾンディレクション | 5.70% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は九鬼 祐一郎氏です。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 九鬼 祐一郎 | 代表取締役社長 | フジオフードグループ本社取締役副社長等を経て2024年6月より現職。 |
| 木村 裕輔 | 常務取締役 | 1986年同社入社。管理本部長、業務本部長等を経て2012年4月より現職。 |
| 清川 浩志 | 取締役 | レゾンディレクション代表取締役等を務める。2024年6月より現職。 |
| 染川 智香 | 取締役 | 税理士事務所等を経てレゾンディレクション取締役。2019年6月より現職。 |
社外取締役は、鈴木 孝男(元三菱ふそうトラック・バス取締役会長・CBEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「不動産事業」「アパレル事業」および「その他」事業を展開しています。
■不動産事業
不動産の賃貸、管理、および中古物件のリノベーション再販を行っています。また、不動産関連のマッチングプラットフォーム事業も展開しています。
収益は、賃貸物件からの賃料収入や、リノベーション物件の販売代金等です。運営は、キムラタンエステート、キムラタンプロパティ、イストグループ(イスト、ライブ、コネクト)、有限会社九建機材などが行っています。
■アパレル事業
ベビー・子供服、衣料雑貨等の企画・設計・販売を行っています。主な販路は、百貨店内のインショップや自社直販サイトなどのネット通販です。
収益は、消費者への商品販売代金です。店舗運営業務については、主に子会社のキムラタンリテールに委託して運営を行っています。
■その他事業
ウェアラブルIoT技術を用いた園児見守りソリューション「cocolin」を提供しています。保育施設等に対し、園児の午睡見守りや体調チェックなどのサービスを展開しています。
収益は、ウェアラブルデバイス等の機器販売代金や、システム利用料等のサービス対価です。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2024年3月期まで減少傾向にありましたが、2025年3月期はM&Aの効果等により増加に転じています。利益面では、経常損失が続いていましたが、2025年3月期は黒字化しました。一方、最終損益は赤字計上となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 47億円 | 42億円 | 35億円 | 13億円 | 18億円 |
| 経常利益 | -4.3億円 | -6.1億円 | -10.4億円 | -0.2億円 | 0.1億円 |
| 利益率 | -9.2% | -14.4% | -29.2% | -1.5% | 0.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -4.2億円 | -8.9億円 | -11.3億円 | 0.4億円 | -0.5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益率も改善傾向にはありませんが、営業黒字を確保しています。販管費の増加を売上総利益の増加で吸収しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 13億円 | 18億円 |
| 売上総利益 | 5億円 | 7億円 |
| 売上総利益率 | 42.7% | 41.3% |
| 営業利益 | 0.4億円 | 1.3億円 |
| 営業利益率 | 2.9% | 7.7% |
販売費及び一般管理費のうち、業務委託料が1.0億円(構成比17%)、給料及び手当が0.9億円(同16%)、支払手数料が0.9億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
不動産事業はM&Aにより大幅な増収増益となり、全体の利益を牽引しています。アパレル事業は減収となり、セグメント損失が継続しています。その他事業は横ばいです。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 不動産事業 | 9億円 | 14億円 | 1億円 | 3億円 | 20.0% |
| アパレル事業 | 4億円 | 4億円 | -0.9億円 | -1.0億円 | -27.3% |
| その他事業 | 0.3億円 | 0.3億円 | 0.0億円 | -0.0億円 | -4.6% |
| 連結(合計) | 13億円 | 18億円 | 0.4億円 | 1.3億円 | 7.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動によるキャッシュ・フローと財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、健全型に分類されます。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態ですが、同社の場合は事業再構築の過程にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 0.7億円 | 3.3億円 |
| 投資CF | -1.6億円 | -3.3億円 |
| 財務CF | 5.0億円 | -2.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)はデータなしですが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は11.2%でスタンダード市場の非製造業平均48.5%を大きく下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業100年を迎え、次の100年に向けた新たな事業展開として、「衣・健・住」を軸とした戦略的ビジネスモデルを推進しています。これら3領域への集中投資とシナジー創出により、収益性の向上と社会的価値の両立を目指しています。
■(2) 企業文化
アパレル事業においては「キムラタンらしさ」を追求した独自のブランド価値の確立を重視しています。現状の経営資源を有効に活かすために差別化された領域への集中戦略に転換し、ターゲット層を絞り込んだブランドポジショニングを行う方針です。
■(3) 経営計画・目標
持続的な増収・増益の実現を目指すとともに、キャッシュ・フローの最大化と自己資本の充実を図り、経営の安定性を高めることを目標としています。また、M&Aやアライアンスを含めた柔軟かつ機動的な経営判断を通じて、企業価値の長期的な向上に努めるとしています。
■(4) 成長戦略と重点施策
不動産事業では、M&Aで取得したイストグループのリノベーション再販事業を新たな柱とし、マッチングプラットフォーム事業との連携や不動産特定共同事業の活用により収益モデルの多角化を進めます。アパレル事業はニッチ層への集中とデジタルマーケティングによるブランド価値再構築を図ります。ウェアラブル事業は高齢者見守り領域へ拡張します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
将来の成長・持続的な発展や競争力向上のためには、長期的な視点に立った人的資本に関する戦略が必要であるとしています。従業員のスキルや能力向上、組織の強化、事業の多様化などを考慮した戦略立案を進めるとともに、組織文化の整備や従業員のモチベーション向上にも注力し、人的投資の効果最大化に取り組む方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 53.3歳 | 23.1年 | 4,454,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は常時雇用する労働者数が100人以下であり、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況・消費動向に関するリスク
国内の景気変動や個人消費の低迷、所得環境の悪化などにより、需要が減少し、売上や利益率が悪化する可能性があります。また、景気後退時には資金調達環境も厳しくなるため、財務基盤の安定確保が課題となる懸念があります。
■(2) 不動産市況変動リスク
金利水準や景気動向等の要因により不動産市場が変動した場合、再販事業や賃貸事業において、不動産価格の下落による販売利益率の低下や、保有物件の含み損による減損損失の計上等のリスクが顕在化する可能性があります。
■(3) 空室率・入居率に関するリスク
保有する賃貸物件において、エリアの人口動態や競合物件の増加、建物の老朽化等により、空室率の上昇や賃料の下落が発生する可能性があります。これにより、不動産事業の収益性が低下する恐れがあります。
■(4) 建築・改修コストの上昇リスク
再販事業におけるリノベーション等は、資材価格や施工単価の上昇によるコスト圧迫を受けやすい構造です。建材価格の高騰や人手不足による工賃上昇等により、改修コストが増加し利益計画に影響を与える可能性があります。



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