ナガホリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナガホリ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ナガホリはスタンダード市場に上場し、宝飾品の製造・卸売・小売を主力とする企業です。直近の業績は、インバウンド需要や個人消費の回復により売上高は増加しましたが、株主対応等の費用計上で減益となりました。富裕層向け販売や自社ブランド育成、海外市場開拓に注力しています。(140文字)


※本記事は、株式会社ナガホリ の有価証券報告書(第64期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ナガホリってどんな会社?


ナガホリは、宝飾品の製造から卸売、小売までを一貫して手掛けるジュエリー業界の老舗企業です。

(1) 会社概要


1961年に長堀真珠店として創業し、翌1962年に法人化されました。ダイヤモンドや貴金属製品の製造卸として成長し、1983年に株式店頭登録、1988年には東京証券取引所市場第二部に上場しました。その後、イタリアのハイジュエリーブランド「スカヴィア」の取り扱い開始や、小売事業の再編を経て、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。近年では英国ブランド「デヴィッド・モリス」の日本総代理店契約を締結するなど、ブランドポートフォリオの拡充を進めています。

同グループは連結従業員数474名、単体従業員数301名の体制で事業を展開しています。大株主については、筆頭株主は投資業務を行うリ・ジェネレーションで、第2位は創業家関連とみられる有限会社エムエフ長堀、第3位は個人株主の布山高士氏となっています。

氏名 持株比率
リ・ジェネレーション 11.56%
エムエフ長堀 7.69%
布山 高士 6.34%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は長堀慶太氏が務めています。社外取締役比率は28.6%(取締役7名中2名)です。

氏名 役職 主な経歴
長堀 慶太 代表取締役社長 1987年協和銀行入行。1993年同社入社。常務取締役商品本部長、ソマ代表取締役社長等を経て、2008年6月より現職。
吾郷 雅文 常務取締役 1987年協和銀行入行。2017年同社入社。管理本部総務部長、執行役員を経て、2020年6月より現職。
白川 文彦 取締役 1988年同社入社。ブランド事業部長、ジュエリー事業部長、生産事業本部長等を歴任。2022年11月より仲庭時計店代表取締役社長を兼務。
中尾 直 取締役 1985年同社入社。ジュエリー事業部商品部長、執行役員商品本部長を経て、2023年6月より現職。
浦島 一彰 取締役 1991年太陽神戸三井銀行入行。セビアン代表取締役社長等を経て、2024年7月同社入社。2025年6月より現職。


社外取締役は、洲桃麻由子(弁護士・すもも法律事務所代表)、米村敏朗(元警視総監・内閣危機管理監)です。

2. 事業内容


同社グループは、「宝飾事業」、「貸ビル事業」および「太陽光発電事業」を展開しています。

(1) 宝飾事業

ダイヤモンド、真珠、色石、ファッションジュエリーなどの宝飾品全般に加え、時計等の製造・販売を行っています。顧客は百貨店、専門店、量販店などの法人顧客および一般消費者です。商品の調達は海外・国内からの仕入のほか、自社工場や子会社での製造も行っています。

収益は、百貨店等への卸売による販売代金や、直営店・展示会等での一般消費者への小売販売代金から成ります。運営は主にナガホリが行い、製造は子会社のソマやエスジェイジュエリー、小売はナガホリリテールや仲庭時計店などが担っています。

(2) 貸ビル事業

大阪府その他の地域において、保有する不動産(オフィスビル等)の賃貸を行っています。安定的な収益源として位置づけられています。

収益は、テナントからの賃貸料収入です。運営はナガホリが主体となって行っています。

(3) 太陽光発電事業

再生可能エネルギーの固定価格買取制度に基づき、太陽光発電による電力の供給を行っています。

収益は、発電した電力の売電収入です。運営は主に子会社のソマが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間で増加傾向にあり、特に直近2期は200億円台で推移しています。経常利益は黒字を維持していますが、利益率は3%前後で推移しており、直近では減益となりました。当期利益についても黒字を確保していますが、特別損失の計上などにより変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 163億円 169億円 177億円 218億円 229億円
経常利益 -0.4億円 2.5億円 5.4億円 10.0億円 6.5億円
利益率(%) -0.3% 1.5% 3.0% 4.6% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) -5.3億円 0.4億円 0.5億円 2.6億円 2.7億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、229億円となりましたが、売上原価の増加により売上総利益は微減となりました。販管費の増加もあり、営業利益は前期の10億円から7億円へ減少しました。営業利益率は3.2%となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 218億円 229億円
売上総利益 58億円 57億円
売上総利益率(%) 26.5% 24.8%
営業利益 10億円 7億円
営業利益率(%) 4.7% 3.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が約17億円(構成比34%)、販売促進費が約8億円(同17%)を占めています。売上原価は売上高に対して75.2%を占めています。

(3) セグメント収益


宝飾事業は売上が伸長したものの、利益は減少しました。貸ビル事業と太陽光発電事業は売上・利益ともに前期を下回りました。主力の宝飾事業が全社売上の大半を占めていますが、利益率の低下が見られます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
宝飾事業 217億円 228億円 9億円 7億円 2.9%
貸ビル事業 0.8億円 0.7億円 0.6億円 0.5億円 72.9%
太陽光発電事業 0.5億円 0.5億円 0.2億円 0.1億円 21.5%
連結(合計) 218億円 229億円 10億円 7億円 3.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -5.2億円 -9.7億円
投資CF -5.3億円 0.6億円
財務CF 4.1億円 3.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.2%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.5%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


宝飾品を通じて人類の高い文化生活に貢献するために、広く世界に市場を求め、人間性豊かな理想の会社を築き、永遠の繁栄を図ることを経営の理念としています。10年後のビジョンとして「ジュエリー業界のリーディングカンパニーとしてのポジションを確固たるものとする」ことを掲げています。

(2) 企業文化


社業を通じて、株主・取引先・社員の最大多数の最大幸福の実現を目指し、社員一人一人が誠実に働くことを経営の基本方針としています。また、「社員のモチベーション向上」が業績や処遇の向上につながり、さらなるモチベーション向上を生むという好循環の輪を実現し、すべての社員にとって働き甲斐のある企業集団を目指しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画『Beyond Growth』~成長のその先へ~において、グループ内事業部門単位別損益管理制度のもと、収益力やキャッシュ・フローの改善、資産の効率運用を重視しています。効率性を測る指標としてフリー・キャッシュ・フロー及び売上高経常利益率を重視し、安定した収益確保により株主価値の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「選択と集中」の方針のもと、富裕層マーケットをコアとする販売チャネルや商品ブランドに重点的に経営資源を投下します。既存チャネル(百貨店・卸売)の梃入れとともに、新市場(ダイレクトマーケット、富裕層、海外)の開拓を進めます。商品戦略では、「NADIA」「DAVID MORRIS」「SCAVIA」のラグジュアリー基幹3ブランドへの注力と育成を図り、事業ブランドとしての「NAGAHORI」確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


一層働き甲斐のある企業グループへの進化を目指し、人材採用の多様化を図るとともに、組織の見直しと適材適所に向けた配置・異動を行っています。また、人材育成の見直しを進めることで、「社員のモチベーション向上」等の好循環の輪の実現を図る方針です。女性が管理職として活躍できる雇用環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.6歳 13.5年 4,427,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.9%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 63.6%
男女賃金差異(正規) 65.6%
男女賃金差異(非正規) 62.2%


※男性労働者の育児休業取得は途上であり実績ありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の割合(34.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 貸倒債権の発生リスク

安定的な収益確保のためには、売上高の増大や販管費の節減に加え、貸倒債権発生の防止が重要です。取引分散度を高めるとともに、与信管理の徹底に取り組んでいますが、予期せぬ貸倒れが発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替相場、地金相場の変動リスク

同社グループの取引高のうち、約36億円がダイヤモンドや色石等の輸出入取引となっており、主に米ドル建やユーロ建で行われています。為替相場の変動は仕入コストや収益に影響を与え、地金相場の変動も製品原価や販売価格に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 事業環境の変化と個人消費の動向

宝飾事業は売上の約99%を占めていますが、個人消費の回復やインバウンド需要が見られる一方で、物価高や地政学的リスクによる先行き不透明な状況が続いています。顧客の嗜好変化や経済環境の悪化が、宝飾品の需要減少につながる可能性があります。

(4) 有利子負債依存度

営業活動の運転資金の一部は銀行借入等により調達しており、総資産に占める有利子負債の割合は約39.9%となっています。将来の金利変動により支払利息負担が増加した場合、経営成績に影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。