※本記事は、株式会社ナガホリ の有価証券報告書(第65期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ナガホリってどんな会社?
宝飾品の製造から卸売、小売までをグループで一貫して手掛け、ラグジュアリー市場を開拓する企業です。
■(1) 会社概要
1961年に長堀真珠店として創業しました。1988年に東京証券取引所市場第二部に上場を果たしています。その後、ニコロポーロやエスジェイジュエリーなどの子会社化を通じて製造・卸売・小売の一貫体制を強化してきました。2025年には翔を完全子会社化し、百貨店チャネルのさらなる強化を図っています。
現在の従業員数は連結で484名、単体で300名です。筆頭株主は事業会社であるリ・ジェネレーションで、第2位は資産管理会社とみられるエムエフ長堀、第3位は個人株主の布山高士氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| リ・ジェネレーション | 11.56% |
| エムエフ長堀 | 7.69% |
| 布山 高士 | 6.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は長堀慶太氏が務めています。取締役7名のうち2名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長堀 慶太 | 代表取締役社長 | 協和銀行を経て1993年に同社入社。商品本部長や関連会社代表を歴任し、2008年より現職。 |
| 吾郷 雅文 | 常務取締役管理本部長 | 協和銀行を経て2017年に同社入社。総務部長や関連会社役員を歴任し、2020年より現職。 |
| 白川 文彦 | 取締役 | 1988年に同社入社。商品部門やブランド事業部門の要職、関連会社代表を歴任し、2022年より現職。 |
| 中尾 直 | 取締役商品本部長 | 1985年に同社入社。ジュエリー事業部商品部長や商品本部副本部長を歴任し、2023年より現職。 |
| 浦島 一彰 | 取締役営業本部長 | 太陽神戸三井銀行を経てセビアン等の代表を歴任。2024年に同社に入社し、2025年より現職。 |
社外取締役は、洲桃麻由子氏(すもも法律事務所代表弁護士)、米村敏朗氏(元警視総監)です。
2. 事業内容
同社グループは、「宝飾事業」「貸ビル事業」「太陽光発電事業」を展開しています。
■(1) 宝飾事業
主に宝飾品の製造から卸売、小売までを一貫して手掛けています。自社ブランドに加え、海外ハイジュエリーブランドの総代理店としても展開し、百貨店などの富裕層マーケットやショッピングモール、GMSなど幅広い顧客層に向けた商品を供給しています。
収益源は、卸売および小売による商品販売代金です。製造は同社およびソマが担い、卸・小売は同社、エスジェイジュエリー、仲庭時計店、翔が展開しています。また、ナガホリリテールがショッピングモール等で小売事業を行っています。
■(2) 貸ビル事業
所有する不動産資産を有効活用し、安定的な収益基盤を確保するために貸ビル事業を展開しています。東京都や大阪府などの地域に賃貸用ビルを保有し、事業者向けのオフィススペース等を提供しています。
収益源は、保有不動産のテナントから受け取る賃貸収入(家賃)です。主に同社が事業の運営主体となり、グループ全体の財務基盤安定化をサポートする役割を担っています。
■(3) 太陽光発電事業
環境問題への対応と自然エネルギーの利用・普及促進を目的として、太陽光発電事業を展開しています。発電設備を稼働させ、事業活動に必要な電力を実質的に再生可能エネルギーで賄うとともに、外部への売電も行っています。
収益源は、発電した電力の外部への売電による収入です。主に子会社のソマが福島県相馬市の工場等で事業を展開しており、グループ主要3拠点の使用電力量を上回る規模の発電を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は安定して成長を続けており、特に直近の2期間では大幅な増収を記録しています。経常利益と当期純利益についても、地金相場の高騰などの外部要因や販売強化の施策が奏功し、最新期には飛躍的な伸びを示し、収益力の大幅な改善が確認できます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 169億円 | 177億円 | 218億円 | 229億円 | 294億円 |
| 経常利益 | 3億円 | 5億円 | 10億円 | 7億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 1.5% | 3.0% | 4.6% | 2.8% | 5.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.4億円 | 0.5億円 | 3億円 | 3億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の堅調な伸びに伴い、売上総利益も順調に拡大しています。原価率の上昇を抑えつつ利益を確保しており、営業利益は前期比で大幅な増益を達成しました。収益性の改善が明確に表れています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 229億円 | 294億円 |
| 売上総利益 | 57億円 | 72億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.8% | 24.5% |
| 営業利益 | 7億円 | 17億円 |
| 営業利益率(%) | 3.2% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が18億円(構成比32%)、販売促進費が10億円(同19%)を占めています。売上原価は222億円であり、商品や地金等の仕入が大部分を占めていると考えられます。
■(3) セグメント収益
主力の宝飾事業が売上高・利益ともにグループ全体を牽引しています。地金相場の高騰などの外部環境を追い風に、宝飾事業の売上高は大幅に増加しました。貸ビル事業と太陽光発電事業は規模は小さいものの、安定した利益貢献を続けています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 宝飾事業 | 228億円 | 292億円 | 7億円 | 16億円 | 5.6% |
| 貸ビル事業 | 0.7億円 | 1億円 | 0.5億円 | 0.5億円 | 50.0% |
| 太陽光発電事業 | 0.5億円 | 0.5億円 | 0.1億円 | 0.2億円 | 46.7% |
| 連結(合計) | 229億円 | 294億円 | 7億円 | 17億円 | 5.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続(勝負型)
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -10億円 | -10億円 |
| 投資CF | 0.6億円 | -10億円 |
| 財務CF | 3億円 | 28億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「宝飾品を通じて、人類の高い文化生活に貢献するために、広く世界に市場を求め、人間性豊かな理想の会社を築き、永遠の繁栄を図ること」を経営理念として掲げています。また、「社業を通じて、株主・取引先・社員の最大多数の最大幸福の実現を目指し、社員一人一人が誠実に働くこと」を経営の基本方針として定めています。
■(2) 企業文化
同社は、経営戦略の中で「『社員のモチベーション向上』⇒『業績の向上』⇒『社員の処遇向上』⇒『社員のモチベーション向上』を繰り返す好循環の輪を実現し、すべての社員にとって働き甲斐のある企業集団を目指す」というビジョンを掲げています。社員の多様性を尊重し、専門性の高い人材の発掘・育成や、女性活躍の機会を推進する環境づくりを重んじる文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、10年後のビジョンとして「ジュエリー業界のリーディングカンパニーとしてのポジションを確固たるものとする」ことを目標に定めています。中期的には、グループ内事業部門単位別損益管理制度のもと、収益力やキャッシュ・フローの改善を目指しています。
・売上高営業利益率の向上
・ROE(自己資本利益率)の改善
・フリー・キャッシュ・フローの創出
・売上高経常利益率の向上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、中期経営計画『Beyond Growth』において、持続的成長と収益性向上の両立を図る成長戦略を掲げています。既存チャネルの梃入れと並行して、富裕層マーケットや海外市場への開拓を進める方針です。商品面では、自社のラグジュアリー基幹3ブランド(NADIA、DAVID MORRIS、SCAVIA)の育成に注力するとともに、事業ブランドとしての『NAGAHORI』の確立を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、好循環の輪による「より一層働き甲斐のある企業グループへの進化」を目指す人材戦略を掲げています。具体的には、中長期的な視野での新卒採用や高い専門性を持つ人材の中途採用を通じて「人材採用の多様化」を図ります。また、社員の能力や適性に応じた「適材適所に向けた配置・異動」を実施し、ブランドマネジメント知識の習得や管理職のマネジメント能力強化に向けた「人材育成の見直し」を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 47.3歳 | 14.1年 | 4,561,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.6% |
| 男性育児休業取得率 | 0.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 71.4% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、目標女性管理職比率(40%以上)、育児休業復職率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 為替相場、地金相場の変動リスク
同社グループの取引高の内、約48億円がダイヤモンドや色石などの輸出入取引(USドル建、ユーロ建)となっています。また、地金相場は国際市況等の影響を受けて変動するため、為替や相場の急激な変動が同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、在庫管理や仕入管理を適切に行い、機動的な対応に努めています。
■(2) 貸倒債権の発生リスク
同社グループは、安定的な収益確保のためには売上高の増大や販管費の節減のほかに、貸倒債権発生の防止が重要な要素であると認識しています。取引先の経営悪化による貸倒れが発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これを防ぐため、取引先の分散度を高めるとともに、厳格な与信管理の徹底に取り組んでいます。
■(3) 有利子負債依存度に関するリスク
同社グループの事業活動における運転資金および設備資金は、自己資本に加えて銀行借入等によって調達されています。総資産額に占める有利子負債の割合は直近で約44.1%に達しており、将来的な金利変動が支払利息の増加を招き、同社グループの経営成績やキャッシュ・フローに影響を及ぼすリスクがあります。



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