川辺 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

川辺 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の川辺は、ハンカチーフやスカーフ等の身の回り品事業と香水を扱うフレグランス事業を展開しています。第80期は、インバウンド需要の回復や価格改定効果により利益面が改善し、売上高は微減ながらも営業利益・経常利益ともに増益となりました。


※本記事は、株式会社川辺 の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 川辺ってどんな会社?


ハンカチーフ・スカーフ等の身の回り品や香水の製造・販売・輸入を手掛ける専門商社です。

(1) 会社概要


1923年にハンカチーフ製造卸売業として創業し、1942年に株式会社へ改組しました。1979年に株式を公開し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しています。2010年には香水等の販売事業を開始して事業領域を拡大しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証スタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は212名、単体では154名です。筆頭株主は親会社でタオル製品の製造販売を行う一広、第2位は個人株主、第3位は総合商社の伊藤忠商事です。

氏名 持株比率
一広 55.02%
丸山 三千夫 3.01%
伊藤忠商事 2.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は岡野将之氏です。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
岡野 将之 代表取締役社長 1991年入社。商品本部長、企画部長などを経て、2019年より社長を務める。2021年より現職。
越智 康行 代表取締役経営企画室長 2002年一広代表取締役副社長。2004年同社取締役、常務、専務を経て、2022年より現職。一広代表取締役社長を兼務。
戸 上 太 一 取締役営業統括本部長兼グループ会社統括本部長兼川辺(上海)商貿有限公司董事長 1992年入社。百貨店本部長、東京支店長、商品本部長などを歴任。2024年より現職。
有 田 二 郎 取締役経営管理統括本部長 1983年入社。商品本部政策部部長、大連一広毛巾有限公司董事総経理などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、安田耕司(元三菱地所SC営業部長)、貞末奈名子(メーカーズシャツ鎌倉代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「身の回り品事業」および「フレグランス事業」を展開しています。

(1) 身の回り品事業


ハンカチーフ、スカーフ、マフラー、タオル、雑貨等の製造、販売および輸出入を行っています。主要な販売先は百貨店、量販店、専門店などです。

収益は主に商品販売による代金です。運営は主に川辺が行い、親会社の一広からタオル商品を仕入れ、子会社のレインボーワールドが捺染製造を行い、子会社のソルティーが製品を製造して川辺に販売しています。また、中国においては川辺(上海)商貿有限公司が卸売りを行っています。

(2) フレグランス事業


海外の有名ブランド香水の輸入・販売および直営店舗での販売を行っています。

収益は主に商品販売による代金です。運営は川辺が行っています。百貨店内のフレグランスコーナーや直営店に加え、卸売りも展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第76期から第80期までの業績推移を見ると、売上高は110億円から130億円前後で推移しています。利益面では第76期・第77期に赤字を計上しましたが、第78期以降は黒字化し、回復傾向にあります。特に第80期は経常利益、当期純利益ともに前期を上回り、収益性が向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 113億円 108億円 126億円 131億円 128億円
経常利益 -3.8億円 -1.2億円 2.1億円 3.6億円 4.2億円
利益率(%) -3.4% -1.1% 1.6% 2.7% 3.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -4.2億円 -2.8億円 1.8億円 2.5億円 3.6億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高は減少しましたが、売上総利益は増加し、売上総利益率が改善しています。販売費及び一般管理費は増加傾向にあり、営業利益率は上昇しています。コストコントロールと価格転嫁等の施策により、収益性が改善していることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 131億円 128億円
売上総利益 51億円 53億円
売上総利益率(%) 38.9% 41.2%
営業利益 2.5億円 3.1億円
営業利益率(%) 1.9% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料が10.4億円(構成比21.0%)、雑給が9.7億円(同19.6%)、広告宣伝費が5.0億円(同10.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


身の回り品事業は売上が減少しましたが、価格見直しや原価削減策が奏功し、増益となりました。フレグランス事業はインバウンド需要や単一ブランド店の好調により増収となり、利益面でも黒字化を達成しました。全体として売上は減少したものの、各セグメントの収益改善により連結利益は増加しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
身の回り品事業 110億円 106億円 5.7億円 5.8億円 5.5%
フレグランス事業 21億円 21億円 0.1億円 0.1億円 0.6%
調整額 - - -2.3億円 -1.8億円 -
連結(合計) 131億円 128億円 3.6億円 4.2億円 3.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営上のリスク及び経済環境の急激な変化に備えるため、一定の流動性を確保することを基本方針としております。
営業活動では、税金等調整前当期純利益の増加や売上債権・仕入債務の変動等により、資金が増加しました。
投資活動では、有価証券や固定資産の取得、不動産賃貸による収入と支出等により、資金が減少しました。
財務活動では、借入金の増減や配当金の支払い等により、資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 3.4億円 3.8億円
投資CF -3.2億円 -1.4億円
財務CF -1.3億円 -3.6億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「顧客第一主義」を経営の根幹とし、「革新」的な発想に基づいた企業活動を通じて、一人でも多くの人々に「喜び」と「満足」を与えることで、より豊かで平和な社会の実現に貢献することを経営理念としています。また、人と人の繋がりを大切にするコト提案型企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、「すべての中心は心。心を動かす企業になる。」というスローガンのもと、5つの行動指針を定めています。「ありがとう」が常に言える(感謝)、誠実でルールを守る(責任)、常に挑戦する(改革)、仲間を大事にする(協力)、体を大事に健康である(健康)を掲げ、ステークホルダーへの価値創造を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は『中期経営計画2023 NEXT』において、2026年3月期(連結ベース)の数値目標を掲げ、採算性の向上を最重要課題として経営基盤の確立に努めています。

* 売上高:145億50百万円
* 経常利益:3億円
* 配当性向:40%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「グループ全体で連携したモノ作りと販売」を基本戦略とし、新しいモノ作り、新規販路開拓、生産性向上、収益確保を目指しています。重点戦略として、既存事業の再生と成長、プリント工場を活かしたオリジナルの創造、OMO強化による顧客接点の向上、フレグランス事業の強化を掲げています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


成長を支える基盤強化の一環として、人財育成の強化と挑戦しやすい環境整備を進めています。将来的な人手不足に対し、省人化への投資を行うとともに、評価制度や処遇、働き方、福利厚生などを見直し、人材の確保と定着を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 48.5歳 17.4年 4,887,513円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.8%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 44.1%
男女賃金差異(正規雇用) 69.8%
男女賃金差異(非正規) 65.7%


※男性育児休業取得率については、有価証券報告書に数値の記載がありません(「―」表記)。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、残業時間(月平均)(2.0時間)、有給休暇取得率(74.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ライセンス契約について


同社は国内外の著名ブランドとライセンス契約を締結し商品を展開していますが、契約期間は2~3年のものが多く、契約更新時の条件改定やライセンス供給側の経営方針転換などの影響を受ける可能性があります。提携関係の維持が困難になった場合、財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 知的財産権及び訴訟の可能性について


自社企画商品に関して知的財産権の調査・登録を行っていますが、第三者の権利侵害を完全に防ぐことは困難です。将来的に知的財産権の侵害を理由とした損害賠償や差止請求などの訴訟を受ける可能性があり、その場合、商品の開発や販売に支障が生じ、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 生産拠点について


中国・アジア地域を中心に生産活動を行っているため、予期せぬ法規制の変更、テロ、戦争、地政学的リスクなどが存在します。これらが顕在化した場合、生産活動に支障が生じる可能性があります。また、為替変動や生産コストの上昇などの影響を受ける可能性もあります。

(4) 人材確保と人件費抑制について


ファッションの流行を捉えた商品開発には、優秀なデザイナーやマーチャンダイザーなどの人材が不可欠です。しかし、現状では余剰人員がおらず、多数の優秀な従業員が同時期に離職した場合や、適格な人材の確保が不十分な場合、事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。