※本記事は、川辺株式会社の有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 川辺ってどんな会社?
同社は、ハンカチーフやタオルなどの身の回り品と香水の販売を行う、コト提案型の卸売・小売企業です。
■(1) 会社概要
1923年2月に東京でハンカチーフ製造卸売業として創業しました。1951年にスカーフ、1980年にタオルの取扱いを開始し、2004年にジャスダック証券取引所へ株式を上場しました。2010年には香水などの販売事業を開始し、直近では持続的な成長に向けてサステナビリティ活動の推進や新規事業への展開を図っています。
現在の従業員数は連結で213名、単体で162名です。筆頭株主は同社の親会社である事業会社の一広で、第2位は個人の丸山三千夫氏、第3位は事業会社の伊藤忠商事となっています。親会社の一広とは商品の製造や販売において密接な提携関係にあります。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 一広 | 55.03% |
| 丸山三千夫 | 3.01% |
| 伊藤忠商事 | 2.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長兼営業統括本部長は岡野将之氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岡野将之 | 代表取締役社長兼営業統括本部長 | 1991年同社入社。営業統括本部商品本部長などを経て、2019年代表取締役社長兼営業統括本部長に就任。2026年より現職。 |
| 越智康行 | 代表取締役経営企画室長 | 2002年一広代表取締役副社長。2016年一広代表取締役社長に就任。2022年同社代表取締役経営企画室長となり現職。 |
| 戸上太一 | 取締役グループ会社統括本部長兼川辺(上海)商貿有限公司董事長 | 1992年同社入社。百貨店本部長などを経て、2024年に川辺(上海)商貿有限公司董事長に就任。2026年より現職。 |
| 有田二郎 | 取締役経営管理統括本部長 | 1983年同社入社。経営管理統括本部長兼管理本部長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、貞末奈名子(メーカーズシャツ鎌倉代表取締役社長)、梶原健司(千趣会相談役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「身の回り品事業」および「フレグランス事業」を展開しています。
■身の回り品事業
ハンカチーフ、スカーフ、マフラー、タオル、雑貨などを扱い、直営店舗での販売および卸売業を展開しています。国内外の著名ブランドとのライセンス契約による商品のほか、自社企画のオリジナル商品やキャラクター商品を広く提供しています。
運営は主に同社が行っています。商品の製造については、親会社の一広がタオルを、子会社のレインボーワールドがハンカチーフなどを、ソルティーがタオルや雑貨などを製造して同社へ供給する体制をとっています。また、上海の子会社が現地での卸売を担っています。
■フレグランス事業
香水の直営店舗での販売および卸売業を展開しています。海外の有名メゾンブランドやラグジュアリーブランドの香水を輸入し、単一ブランド店や複数ブランドの集積店を通じて、百貨店や専門店などの顧客に向けて販売を行っています。
運営は主に同社が行っています。デジタルマーケティングによる認知拡大や新規店舗の積極的な出店を推進しており、新たな顧客層の獲得と市場シェアの拡大を目指しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は100億円台後半から130億円の規模で安定して推移しており、直近の数期間では連続して増収を達成しています。利益面では過去に赤字を計上した時期もありましたが、その後は黒字転換を果たして安定的な利益を確保しており、直近は先行投資の影響で一時的な減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 108億円 | 126億円 | 131億円 | 128億円 | 130億円 |
| 経常利益 | -1.2億円 | 2.1億円 | 3.6億円 | 4.2億円 | 3.2億円 |
| 利益率(%) | -1.1% | 1.6% | 2.7% | 3.3% | 2.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2.8億円 | 1.8億円 | 2.5億円 | 3.6億円 | 1.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加傾向にあり、売上総利益率も改善しています。一方で、新規出店や人員体制の強化といった先行投資に伴い、販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益は減少しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 128億円 | 130億円 |
| 売上総利益 | 53億円 | 56億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.2% | 43.3% |
| 営業利益 | 3.1億円 | 1.9億円 |
| 営業利益率(%) | 2.4% | 1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、雑給が11億円(構成比20%)、給料が10億円(同19%)、広告宣伝費が4.9億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
身の回り品事業はインバウンド需要やキャラクター商品が好調に推移し、増収となりました。フレグランス事業は新規出店による売上貢献があったものの、卸売や地方百貨店の減収による影響で減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 身の回り品事業 | 106億円 | 109億円 |
| フレグランス事業 | 21億円 | 21億円 |
| 連結(合計) | 128億円 | 130億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.8億円 | 7.1億円 |
| 投資CF | -1.4億円 | -1.8億円 |
| 財務CF | -3.6億円 | -1.1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
顧客第一主義を経営の根幹とし、「革新」的な発想に則った企業活動を通じて、一人でも多くの人々に「喜び」と「満足」を与えることで、より豊かで平和な社会の実現に貢献することを経営理念として掲げています。また、「人と人の繋がりを大切にするコト提案型企業を目指す」という経営ビジョンを定めています。
■(2) 企業文化
同社は、中期経営計画のスローガンとして「心動かす企業になる。心動かす人になる。」を掲げています。行動指針には、常に感謝の言葉を伝えること、誠実でルールを守ること、常に挑戦すること、仲間を大事にすること、そして健康であることを定めており、ステークホルダーへの価値創造を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2026」において、グループシナジーの最大化をテーマに事業ポートフォリオ改革と経営資源の最適化を進めています。採算性の向上を最重要課題とし、計画の最終年度である2029年3月期の目標として以下の数値を掲げています。
* 売上高:140億円
* 営業利益:3.5億円
* 経常利益:5億円
* ROE:5.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
商品を売ることから世界観を売ることへと転換し、「推し活消費」を推進するイベントの強化を図ります。また、婦人傘に加えて紳士傘の本格展開を進め、M&Aやアライアンスを通じて新たな価値創造を目指します。さらに、SNS発信やデジタルマーケティングの強化によってECビジネスを拡大し、ブランド力の向上と顧客との接点強化に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「企業価値の持続的向上は人材によって実現される」との考えのもと、従業員を最も重要な経営資本と位置づけています。デジタル化に対応できる人材の育成や、階層別教育による中核人材の育成を推進し、多様な価値観を尊重する組織風土の醸成や働きやすい職場環境の整備を通じて、中長期的な企業価値向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 48.5歳 | 16.7年 | 4,966,131円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.5% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全) | 44.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 70.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 70.6% |
※全労働者に占める非正規労働者の女性の比率が高く賃金水準も低いため、全労働者の男女賃金格差が大きくなっています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ライセンス契約に関するリスク
国内外の著名ブランドと商標使用などのライセンス契約を締結して商品を展開していますが、これらの契約は2〜3年の期間が多く、更新時の条件改定やライセンス提供元のM&Aによる経営方針の変更などが発生し、提携関係を維持できなくなった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 知的財産権に関するリスク
自社企画商品の開発において、特許や意匠、商標などの知的財産権について専門機関を通じて調査を行っていますが、第三者の権利を完全に把握することは困難です。将来的に第三者から知的財産権の侵害を理由とする損害賠償や販売差止の訴えを受けた場合、事業活動に影響を与える可能性があります。
■(3) 海外生産拠点におけるカントリーリスク
商品の生産活動を中国やアジア地域を中心に行っており、法規制の変更、テロや紛争などの地政学的リスク、為替変動の影響を受けやすい体制です。これらのリスクが顕在化した場合や、生産の一極集中により流通の再編やコスト上昇が生じた場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。



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