※本記事は、新光商事株式会社 の有価証券報告書(第72期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 新光商事ってどんな会社?
独立系のエレクトロニクス商社として、半導体・電子部品の販売やアセンブリ製品の提供を行っています。
■(1) 会社概要
1953年に新光商事として設立され、1957年に日本電気(NEC)と特約店契約を締結し事業基盤を築きました。1983年に東証二部へ上場し、1990年に東証一部へ指定替えを行っています。海外展開も早く、1977年のシンガポール現地法人設立を皮切りに、アジア・北米・欧州へ拠点を拡大してきました。
連結従業員数は577名、単体では297名です。筆頭株主は資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は外国法人のノーザン・トラスト・カンパニー、第3位は個人の野村絢氏です。2024年にはレスターと資本業務提携契約を締結しており、同社も主要株主に名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 11.10% |
| NORTHERN TRUST CO.(AVFC) RE NON TREATY CLIENTS ACCOUNT(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 8.98% |
| 野村 絢(常任代理人 三田証券株式会社) | 8.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長は小川達哉氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小川 達哉 | 代表取締役社長 | 1986年入社。欧州・香港の現地法人社長を経て、2008年に取締役就任。2013年より現職。現在は監査室・新規ビジネス営業部を担当。 |
| 細野 克宏 | 常務取締役 | 1989年入社。名古屋支店長を経て、2014年取締役に就任。2024年より現職。営業部門・開発技術部門を統括し、営業第一部等を担当。 |
| 一色 修志 | 取締役 | 1986年横浜銀行入行。同行市場営業部担当部長等を経て、2019年に入社し取締役に就任。管理部門を統括し、企画人事部等を担当。 |
| 小林 克衛 | 取締役 | 1990年日本電気入社。ルネサスエレクトロニクスを経て2013年に入社。2019年取締役に就任し、現在はソリューション技術部を担当。 |
| 井上 邦博 | 取締役 | 1988年入社。大阪支店長、シンガポール現地法人社長等を経て、2020年取締役に就任。現在は甲信越・西日本ブロック等を担当。 |
| 石戸 正典 | 取締役 | 1989年入社。千葉支店長、上海現地法人社長等を経て、2021年取締役に就任。現在は営業第二部や海外営業推進部を担当。 |
社外取締役は、吉池達悦(元日置電機社長)、石原敏彦(元富士電機執行役員)、坂巻吉輝(弁護士)、田中一恵(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子部品事業」、「アセンブリ事業」および「その他の事業」を展開しています。
■(1) 電子部品事業
マイコン、システムLSI、メモリ、半導体、コンデンサ、フェライトコア、液晶ディスプレイなど、多岐にわたる電子部品を産業機器や自動車電装機器メーカー等の顧客に提供しています。
収益は、顧客への商品販売による対価です。運営は主に新光商事が行っていますが、海外においてはSHINKO(PTE)LTD.やNOVALUX HONG KONG ELECTRONICS LIMITEDなどの現地法人がそれぞれの地域で販売を担っています。
■(2) アセンブリ事業
顧客の要望に合わせて電子部品を基板に実装したり、ユニット化したアセンブリ製品を提供しています。単なる部品販売にとどまらず、付加価値の高いモジュールとして納入します。
収益は、アセンブリ製品の販売対価です。運営は主に新光商事が行っており、香港のNOVALUX HONG KONG ELECTRONICS LIMITEDなどの連結子会社も一部取り扱っています。
■(3) その他の事業
ワークステーション、サーバなどの電子機器や設備装置の販売、およびマイクロコンピュータのソフトウェア受託開発を行っています。
収益は、機器の販売対価やソフトウェア開発の受託料です。運営は新光商事のほか、ノバラックスジャパンがサーバ等を、新光商事エルエスアイデザインセンターがソフトウェア開発を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2025年3月期は、主要取引先であったルネサスエレクトロニクスとの特約店契約終了の影響や、産業機器・自動車市場の需要低迷を受け、大幅な減収減益となりました。過去5期で見ると、2023年3月期をピークに売上・利益ともに減少傾向に転じており、当期は特に厳しい着地となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,029億円 | 1,352億円 | 1,791億円 | 1,758億円 | 1,160億円 |
| 経常利益 | 16億円 | 41億円 | 68億円 | 48億円 | 6億円 |
| 利益率(%) | 1.5% | 3.0% | 3.8% | 2.7% | 0.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 33億円 | 27億円 | 18億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
減収に伴い売上総利益が大きく減少しました。販売費及び一般管理費は抑制されましたが、売上総利益の減少幅が大きく、営業利益率は低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,758億円 | 1,160億円 |
| 売上総利益 | 147億円 | 92億円 |
| 売上総利益率(%) | 8.4% | 8.0% |
| 営業利益 | 49億円 | 6億円 |
| 営業利益率(%) | 2.8% | 0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が36億円(構成比42%)、賞与引当金繰入額が8億円(同9%)を占めています。売上原価においては、商品評価損が含まれており、当期は8億円が計上されています。
■(3) セグメント収益
主力の電子部品事業において、特約店契約終了や市場低迷の影響で売上が大きく減少しました。アセンブリ事業やその他の事業も減収となり、全セグメントで厳しい状況となりました。利益面でも電子部品事業の落ち込みが連結業績に大きく響いています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電子部品事業 | 1,492億円 | 919億円 | 61億円 | 16億円 | 1.7% |
| アセンブリ事業 | 179億円 | 166億円 | 8億円 | 7億円 | 4.0% |
| その他の事業 | 87億円 | 75億円 | 3億円 | 4億円 | 5.3% |
| 調整額 | - | - | -23億円 | -20億円 | - |
| 連結(合計) | 1,758億円 | 1,160億円 | 49億円 | 6億円 | 0.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 47億円 | 317億円 |
| 投資CF | 1億円 | -31億円 |
| 財務CF | -28億円 | -116億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「電子部品商社グループとして持続可能な社会の実現に貢献する」を経営理念に掲げています。多様化する事業課題に迅速かつ最適に対応し、企業価値の向上を図るとともに、人と地球環境を大切にする社会の実現への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
「変革の時代の中で、多様なエレクトロニクス商材・サービス等の提供を通じ存在価値を高め、進化する電子部品商社グループを具現化する」という経営方針のもと、事業環境の変化に対応する姿勢を持っています。創業以来の「人間尊重主義」を掲げ、社員一人ひとりの自己実現を企業の目的の一つとしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2026年3月期から2028年3月期までの中期経営計画を策定しました。特約店契約終了などの環境変化を踏まえ、新たな成長フェーズへの移行を目指しています。
* 2028年3月期 売上高:1,700億円
* 2028年3月期 当期純利益:45億円
* 2028年3月期 ROE:8.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
事業ポートフォリオの再構築と新規コア商材の創出を軸に成長を図ります。特に画像AIや生成AIを活用したソリューションビジネスへの挑戦や、戦略的パートナーシップ企業との共創を進めます。また、エリア戦略や新規事業領域の開拓を目的としたM&Aなどの成長投資も積極的に行います。
* 事業ポートフォリオの再構築
* 新規コア商材の創出・拡充
* エリア戦略、成長投資、M&A
* PBR1倍以上への対応
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
経営理念に基づき、「人間尊重主義」を掲げています。社員の成長意欲を満たせる環境の提供を企業の責任と考え、体系的な人材教育制度を整備しています。多様性を重視し、個々人を尊重・受容しながら、組織の力を最大限に発揮できる最適な人材登用と環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.5歳 | 14.7年 | 7,300,000円 |
※平均年間給与は、賞与、基準外賃金及び前払退職金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 2.6% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 75.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 49.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 56.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期) | 30.9% |
※提出会社の数値です。なお、男女賃金差異については、同一資格同一賃金としており、制度上の男女間格差はありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、温室効果ガス排出量(Scope1)(123t-CO2)、温室効果ガス排出量(Scope2)(298t-CO2)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) エレクトロニクス業界の需要動向
同社は半導体等の電子部品を取り扱う商社であるため、業績は電子・電気機器業界の需要や設備投資動向の影響を強く受けます。市場環境の変化により需要が変動した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(2) 顧客に対する信用リスク
多くの顧客に対し代金後払いでの取引を行っているため、多額の売掛金を有する顧客が財務的な問題に直面した場合、同社の業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 海外市場での事業拡大
アジアを中心とした海外市場での事業拡大を進めていますが、現地の金融市場や経済情勢、政情不安等の地政学リスクが顕在化した場合、顧客需要の減少などを通じて業績に影響を与える可能性があります。



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