※本記事は、三信電気株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三信電気ってどんな会社?
1951年創業の老舗エレクトロニクス商社です。半導体・電子部品の販売を行うデバイス事業と、ICTインフラ構築等のソリューション事業を両輪としています。
■(1) 会社概要
1951年に設立され、1985年に東証二部へ上場、1996年には東証一部へ指定替えを行いました。1970年代後半から香港、シンガポールなどに現地法人を設立し海外展開を加速させています。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行し、2024年には子会社の三信ネットワークサービスなどを吸収合併し体制強化を図っています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は616名、単体では496名です。筆頭株主は信託銀行であり、第2位はエレクトロニクス専門商社の新光商事が名を連ねています。また、第3位以降も金融機関や事業会社が主要株主として構成されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.52% |
| 新光商事 | 6.50% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長執行役員(CEO)は鈴木俊郎氏です。社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鈴木俊郎 | 代表取締役社長執行役員(CEO)監査室担当 | 1982年入社。総務部長、経営戦略室長などを経て2014年社長就任。2024年より現職。 |
| 松永光正 | 取締役会長執行役員 | 1980年入社。1996年社長就任。2014年会長就任。2016年会長執行役員(CEO)などを経て2024年より現職。 |
| 坂本浩司 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1984年入社。人事部長、管理本部副本部長などを経て2021年より現職。 |
| 原田浩司 | 取締役常務執行役員ソリューション営業本部副本部長 | 1985年日本電気入社。2017年同社入社。大阪支店長などを経て2024年より現職。 |
| 村上淳一 | 取締役上席執行役員財経本部長 | 1989年住友銀行入行。2021年同社入社。財経本部副本部長などを経て2025年より現職。 |
| 岩上均 | 取締役上席執行役員第三販売促進ユニット長および海外営業ユニット長 | 1988年入社。香港現法出向、三信国際貿易社長などを経て2025年より現職。 |
| 御園明雄 | 取締役常勤監査等委員 | 1982年入社。経理部長、財務部長などを経て2024年より現職。 |
| 三浦伸一 | 取締役常勤監査等委員 | 1980年入社。香港現法ゼネラル・マネージャー、物流センター長などを経て2024年より現職。 |
社外取締役は、西野實(元長谷工コーポレーション代表取締役専務執行役員)、藤岡昭裕(元三井住友DSアセットマネジメント取締役副社長)、山本昌平(丸の内中央法律事務所パートナー弁護士)、毛塚邦治(毛塚会計事務所代表公認会計士・税理士)、安達美奈子(ホーチキ商事代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デバイス事業」および「ソリューション事業」を展開しています。
■デバイス事業
主にエレクトロニクスメーカーに対し、半導体(システムLSI、マイコン、パワー半導体、液晶ディスプレイドライバIC、メモリ等)や電子部品(コネクタ、コンデンサ、液晶パネル等)を販売しています。また、ソフト開発やモジュール開発等の技術サポートも提供しています。
収益は、顧客への商品販売代金や技術サービス料から得ています。運営は、同社およびSANSHIN ELECTRONICS (HONG KONG) CO., LTD.などの海外現地法人、株式会社TAKUMIなどが行っています。
■ソリューション事業
ICTを活用したネットワーク機器やセキュリティ製品の設計・構築から運用保守までをワンストップで提供しています。また、販売・生産管理などの基幹系業務システムや、人事・給与・会計等のアプリケーションをオンプレミスからクラウドまで多様な形態で提供しています。
収益は、機器・システムの販売代金、構築費用、保守サービス料などから得ています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近で増加傾向にあり、1573億円規模に達しています。利益面では、経常利益率が3%台で推移しており、直近の当期純利益は35億円と前期比で増益となりました。全体として安定した黒字経営を維持しつつ、事業規模を拡大させています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,128億円 | 1,236億円 | 1,611億円 | 1,402億円 | 1,573億円 |
| 経常利益 | 19億円 | 36億円 | 55億円 | 39億円 | 49億円 |
| 利益率(%) | 1.7% | 2.9% | 3.4% | 2.8% | 3.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 19億円 | 16億円 | 23億円 | 29億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益も拡大しました。売上総利益率は約11%前後で安定して推移しています。営業利益は横ばいから微増となっており、コストコントロールを行いつつ事業拡大を進めている様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,402億円 | 1,573億円 |
| 売上総利益 | 156億円 | 165億円 |
| 売上総利益率(%) | 11.1% | 10.5% |
| 営業利益 | 57億円 | 58億円 |
| 営業利益率(%) | 4.1% | 3.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が42億円(構成比39%)、業務委託費が11億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
デバイス事業は為替の円安基調や車載向けビジネスの増加により増収増益となりました。ソリューション事業もDX推進ニーズを背景にネットワークシステム等が好調で、売上・利益ともに伸長しています。両セグメントともに収益性が向上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| デバイス事業 | 1,249億円 | 1,393億円 | 21億円 | 28億円 | 2.0% |
| ソリューション事業 | 153億円 | 181億円 | 18億円 | 22億円 | 12.0% |
| 連結(合計) | 1,402億円 | 1,573億円 | 39億円 | 49億円 | 3.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラスを維持し、借入金の返済や配当支払いを行いつつ、将来に向けた投資も自己資金の範囲内で実施している健全型です。本業で稼いだ現金を適切に配分しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 57億円 | 40億円 |
| 投資CF | -4億円 | -22億円 |
| 財務CF | -59億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「テクノロジーの新しい可能性を探究し、人々の豊かな暮らしと社会の発展に貢献します」というミッションを掲げています。また、人と技術と英知を磨き、顧客の課題解決のベストパートナーとして選ばれる企業、人々の安心・安全を守り、持続可能な地球環境を未来につなぐ企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「信用、信念、信実」を社是として掲げています。これらを大切にする価値観(バリュー)とし、すべての社員が誇りとやりがいを持って働き、成長と幸福を実感できる企業を目指しています。幅広いステークホルダーと相互理解を深め、共に発展していくことを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2027年3月期を最終年度とする「V76中期経営計画」を策定しています。持続的な企業価値向上に向け、事業構造の最適化や資本効率の改善に取り組んでいます。
* ROE:8.0%以上
* 経常利益:50億円以上
* 親会社株主に帰属する当期純利益:35億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
安定してROE8%以上を実現する事業構造の構築に向け、デバイス事業では集約・効率化による収益性向上や成長市場へのリソースシフトを進めています。ソリューション事業では、アプリケーションやプラットフォーム関連の収益性向上に加え、消防・防災関連やDX/AIなどの新規ビジネス創造による成長性向上に注力しています。
* デバイス事業:成長市場へのリソースシフト、技術力による競争力向上
* ソリューション事業:DX/AIをはじめとする新規ビジネスの創造
* 財務戦略:資本構成の最適化、資産効率の向上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な企業価値向上の始発点は人材価値の向上であると考え、積極的な人的資本投資を行っています。専門スキルを持つ人材の採用や、性別・国籍を問わない多様な人材の確保を進めています。また、公平な評価・処遇やDXによる労働生産性の向上を通じ、従業員のエンゲージメントを高める環境整備に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.4歳 | 15.8年 | 6,986,097円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.3% |
| 男性育児休業取得率 | 55.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 62.1% |
| 男女賃金差異(非正規) | 35.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人管理職比率(10.8%)、中途採用者管理職比率(35.1%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気候変動問題に関するリスク
気候変動への対応が遅れた場合、競争力低下や社会的信用の失墜を招く可能性があります。炭素税導入によるコスト増や、顧客の環境配慮型調達への対応遅れがサプライチェーンからの除外につながるリスクがあります。また、自然災害による拠点の被災やサプライチェーン寸断のリスクも想定されています。
■(2) 主要仕入先への依存リスク
デバイス事業では、仕入先上位3社グループからの仕入高が約70%を占めています。主要仕入先の戦略変更、工場稼働停止、企業再編などが発生した場合、同社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。これに対し、海外メーカー製品の拡充やAI/IoTソリューションへの注力によりリスク分散を図っています。
■(3) 主要得意先への依存リスク
デバイス事業の大口顧客は民生用機器メーカーが多く、上位4社グループへの売上高は約45%を占めています。特定顧客の戦略変更や生産調整が業績に影響する可能性があります。ソリューション事業も大口顧客比率が高いため、クラウドサービス等の新メニュー投入や新規顧客開拓により顧客基盤の拡大を進めています。
■(4) 在庫の陳腐化リスク
顧客への安定供給のため一定水準の在庫を保有していますが、顧客の生産計画変更等により在庫が陳腐化した場合、商品評価損の計上が利益を圧迫する可能性があります。在庫委員会による適正水準の維持や、顧客情報の早期入手、仕入先との協議を通じてリスク低減に努めています。



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