※本記事は、コニシ株式会社の有価証券報告書(第101期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. コニシってどんな会社?
接着剤やシーリング材などのボンド事業を軸に、化成品事業や工事事業をグローバルに展開する化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1925年に小西儀助商店として設立され、1952年に合成接着剤ボンドの生産を開始しました。1976年にコニシへ社名変更し、1997年に上場を果たしました。近年は、2024年にコニシ工営、丸安産業、サンライズを完全子会社化するなど、事業領域の拡大とグループ体制の強化を推進しています。
従業員数は連結で1,561名、単体で725名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は同社の取引先で組織する持株会であるコニシ共栄会、第3位は日本カストディ銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.26% |
| コニシ共栄会 | 7.59% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 2.46% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は松端博文氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 横田隆 | 取締役会長(代表取締役)グループCEO工事事業グループ管掌 | 1979年同社入社。ボンド事業本部の事業部長や工場長を経て、2013年代表取締役社長に就任。2021年より現職。 |
| 松端博文 | 取締役社長(代表取締役) | 1985年同社入社。ボンド事業本部の事業部長等を歴任後、化成品事業本部長を経て、2024年より現職。 |
| 岡本伸一 | 取締役CFO人事部・経営企画室・海外事業グループ管掌兼管理本部本部長兼総務部統括部長 | 1990年同社入社。社長室経営企画部や管理本部の統括部長を歴任。2023年に取締役CFOに就任し、2026年より現職。 |
社外取締役は、髙瀬桂子(髙瀬総合法律事務所)、肥後陽介(京都大学大学院教授)、中田基之(元近商ストア代表取締役副社長)、山田美樹(公認会計士山田美樹事務所)、森本千晶(泉州電業社外取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ボンド」、「化成品」、「工事事業」を展開しています。
■ボンド
工業用、一般家庭用、建築用、土木建設用の各種接着剤やシーリング材、ワックス、粘着テープの製造および販売を行っています。また、接着剤などの原料の仕入販売や製品倉庫の管理業務請負、運送業も手掛けています。
主な収益源は、接着剤やシーリング材などの製品販売代金や原料の仕入販売代金、物流業務の請負代金です。事業の運営は同社のほか、ウォールボンド工業、サンライズ、ボンド物流などの子会社が国内および海外で行っています。
■化成品
工業薬品、合成樹脂、樹脂成型品、電子部品材料、薄膜材料、医薬品原料、および接着剤やシーリング材の仕入販売を展開しています。自動車、電子電機、化学工業分野のメーカーなどを主要な顧客としています。
主な収益源は、取り扱う化学品や電子部品材料などの販売代金です。事業の運営は、同社をはじめ、丸安産業や海外子会社である科昵西貿易(上海)有限公司、PT.KONISHI INDONESIAなどが担っています。
■工事事業
社会インフラや建築ストック市場において、橋梁やトンネルなどのコンクリート構造物の補修、改修、補強工事を展開しています。国土強靱化基本計画の推進を背景に、老朽化したインフラ整備の需要に対応しています。
主な収益源は、土木建設工事の請負代金です。事業の運営は、コニシ工営、ボンドエンジニアリング、近畿鉄筋コンクリート、角丸建設、中信建設、中井土木などの国内子会社が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は5期連続で増加傾向にあり、順調な事業拡大が伺えます。経常利益も直近数期間は100億円を超える水準で安定して推移しており、利益率も8%前後を維持しています。親会社所有者帰属の当期利益についても、安定した利益水準を確保しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,137億円 | 1,233億円 | 1,330億円 | 1,357億円 | 1,366億円 |
| 経常利益 | 78億円 | 79億円 | 108億円 | 112億円 | 111億円 |
| 利益率(%) | 6.9% | 6.4% | 8.1% | 8.2% | 8.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 36億円 | 90億円 | 53億円 | 58億円 | 59億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および売上総利益は前期と比較して増加しており、売上総利益率も堅調に推移しています。一方で、販売費および一般管理費の増加などにより、営業利益および営業利益率は前期から微減となっていますが、安定した収益基盤を維持しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,357億円 | 1,366億円 |
| 売上総利益 | 275億円 | 280億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.3% | 20.5% |
| 営業利益 | 106億円 | 105億円 |
| 営業利益率(%) | 7.8% | 7.7% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬、従業員給料及び賞与が58億円(構成比33%)、荷造運搬費が31億円(同18%)、福利厚生費が13億円(同7%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメントごとの売上高を見ると、ボンド事業は堅調に推移し、化成品事業は自動車や電子電機分野向けの商材が好調で増収となりました。一方で工事事業は、大型工事案件の進捗遅れにより減収となり、事業ごとに明暗が分かれる結果となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ボンド | 739億円 | 743億円 |
| 化成品 | 369億円 | 392億円 |
| 工事事業 | 249億円 | 231億円 |
| 連結(合計) | 1,357億円 | 1,366億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 72億円 | 137億円 |
| 投資CF | -73億円 | -60億円 |
| 財務CF | -56億円 | -84億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「誠実な行動とチャレンジ精神で、多様な『つなげる』にこだわり、新たな価値を創造することで、関わる全ての人々に安心と笑顔を提供します」という企業理念を掲げています。接着や補修を通じた社会課題の解決に取り組み、持続可能で豊かな社会を未来につなぐことを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は品質方針として「生産者が一万本作った商品でも、お客様には買った一本が全て」を掲げており、品質第一と顧客第一の現場主義を重視しています。また、社員全員が企業倫理や法令遵守に基づく行動の重要性を共通認識し、「行動憲章」や「行動規範」に従った誠実な企業活動を実践する文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2027」を策定し、事業拡大と経営の効率化を図ることで、過去最高となる売上高と営業利益の達成を目指しています。また、株主還元の継続実施と資本効率の向上を重視し、連結配当性向30%以上の維持を目標として掲げています。
* 2027年3月期目標 連結売上高:1,500億円
* 2027年3月期目標 連結営業利益:115億円
* 2027年3月期目標 EBITDA:145億円
■(4) 成長戦略と重点施策
各事業のコア領域の強化に加え、電子電材や自動車などの成長市場向け製品の開発と新規開拓を推進しています。また、社会インフラの補修工事を強化し、生産能力の増強やDX推進に過去最大規模の設備投資を行う計画です。課題である人手不足には採用強化等の施策で対応し、事業拡大の体制を構築します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
従業員一人ひとりの成長と活躍を組織基盤とし、自律的なスキル習得とキャリア形成を支援しています。新規採用者の確保と定着率向上を図るとともに、経験者採用比率の維持や女性管理職比率の向上を通じ、社会環境の変化に迅速に対応できる多様性に富んだ組織力の強化を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.1歳 | 17.5年 | 7,959,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.4% |
| 男性育児休業取得率 | 76.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 65.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 77.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経験者採用比率(15.2%)、新卒入社3年後定着率(88.0%)、有給休暇取得率(67.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 海外市場の進出に伴うカントリーリスク
同社グループは中国や東南アジア市場での事業拡大を推進しており、現地に販売・生産拠点を有しています。しかし、各国の法規制や金融情勢などの社会的・政治的リスクを伴うため、予期せぬ事象が発生した場合、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原油価格の変動による原材料コスト増
同社が製造・販売する接着剤やシーリング材、化成品の多くは、石油化学製品を原材料として使用しています。そのため、原油価格の変動による原材料価格の高騰や仕入価格の上昇が起きた場合、利益率が圧迫され、業績に大きな影響を与える可能性があります。
■(3) エレクトロニクス・自動車分野の市況変動
化成品事業で取り扱うIT関連材や電子部品関連基材、薄膜材料などの販売動向は、電子・電機産業や自動車産業の景気動向に大きく依存しています。これらの業界における需要の減少や市況の悪化が生じた場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。



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