コニシ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コニシ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コニシは東京証券取引所プライム市場に上場する接着剤最大手です。「ボンド」ブランドで知られ、産業用から家庭用まで幅広く展開。化学品の商社機能やインフラ補修工事も柱としています。直近決算では売上高、利益ともに過去最高を更新し、増収増益を達成。安定した財務基盤と成長投資の両立を図っています。


※本記事は、コニシ株式会社 の有価証券報告書(第100期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コニシってどんな会社?


コニシは、一般家庭用から産業用まで幅広い接着剤「ボンド」を製造販売する国内最大手の化学メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1925年に株式会社小西儀助商店として設立されました。1952年に合成接着剤「ボンド」の生産を開始し、日本の接着剤市場を牽引してきました。1976年に現社名へ変更し、1997年には東京証券取引所および大阪証券取引所の市場第一部に上場しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はプライム市場に移行しています。

連結従業員数は1,537名、単体では727名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社の取引先で構成される持株会、第3位も資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 12.79%
コニシ共栄会 7.10%
株式会社日本カストディ銀行(信託口) 2.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役会長グループCEOは横田隆氏、社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
横田 隆 取締役会長(代表取締役)グループCEO 1979年同社入社。ボンド事業本部生産本部本部長などを経て2013年代表取締役社長。2021年より現職。
松端 博文 取締役社長(代表取締役) 1985年同社入社。ボンド営業本部本部長、研究開発・生産グループCEOなどを経て2024年より現職。
大山 啓一 取締役副会長 1984年同社入社。研究開発・生産・物流グループCEOなどを経て2021年代表取締役社長。2024年より現職。
日下部 悟 取締役 1980年同社入社。ボンド営業本部本部長、土木建設グループCEOなどを経て2025年より現職。
巖 利彦 取締役 1984年同社入社。ボンド事業本部本部長、研究開発・生産本部本部長などを経て2025年より現職。
岡本 伸一 取締役CFO管理本部本部長兼人事部・経営企画室担当 1990年同社入社。経営企画部統括部長、管理本部本部長などを経て2023年より現職。
榎本 真也 取締役監査等委員(常勤) 1982年同社入社。滋賀工場長、栃木工場長、土木開発部統括部長などを経て2021年より現職。


社外取締役は、髙瀬桂子(弁護士)、肥後陽介(京都大学大学院工学研究科教授)、川田憲治(元埼玉りそな銀行社長)、中田基之(元近鉄百貨店専務)、山田美樹(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ボンド」「化成品」「工事事業」および「その他」事業を展開しています。

ボンド


一般家庭用から住宅・建材用、産業用まで幅広い接着剤、シーリング材、ワックス、粘着テープ等を製造販売しています。顧客は一般消費者から建設業者、自動車・電子部品メーカーまで多岐にわたります。近年は環境配慮型製品や高機能品の開発に注力しています。

製品販売による代金を顧客から受け取るビジネスモデルです。運営は主にコニシが行い、製造は連結子会社のサンライズやウォールボンド工業などが担当しています。また、海外では中国、ベトナム、インドネシア等に製造・販売拠点を展開しています。

化成品


化学工業薬品、合成樹脂、電子機能材料などを扱う商社事業です。自動車、電子電機、塗料、樹脂加工などの幅広い業界に向けて、原材料や部材を供給しています。顧客のニーズに合わせた提案力と調達力を強みとしています。

商品の販売による代金を顧客から受け取るビジネスモデルです。運営は主にコニシと連結子会社の丸安産業が行っています。海外では中国、インドネシア、台湾などに関連会社を展開し、グローバルな調達・販売ネットワークを構築しています。

工事事業


社会インフラ(橋梁、トンネル等)や建築ストック市場(マンション、公共施設等)における補修・改修・補強工事を請け負っています。接着剤メーカーとしての技術とノウハウを活かした独自の工法を提案し、施工管理まで一貫して行います。

工事請負代金を顧客(官公庁、建設会社、マンション管理組合等)から受け取るビジネスモデルです。運営はコニシ工営、ボンドエンジニアリング、近畿鉄筋コンクリート、角丸建設、中信建設などの連結子会社が担っており、全国的な施工体制を整えています。

その他


上記セグメントに含まれない事業として、主に不動産の賃貸業務を行っています。保有する土地や建物などの不動産資産を有効活用し、安定的な収益確保を図っています。

テナントからの賃貸料収入を受け取るビジネスモデルです。運営は主にコニシが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が順調に拡大傾向にあります。原材料価格の高騰等の影響を受けつつも、価格転嫁や高付加価値製品の販売拡大により、経常利益も増加基調を維持しています。特に直近では売上高、利益ともに過去最高水準で推移しており、安定した収益力を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,078億円 1,137億円 1,233億円 1,330億円 1,359億円
経常利益 74億円 78億円 79億円 108億円 112億円
利益率(%) 6.9% 6.9% 6.4% 8.1% 8.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 37億円 36億円 90億円 53億円 58億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は20%台を維持しており、安定しています。営業利益率は前年から微増しており、コストコントロールが進んでいることがうかがえます。全体として、増収効果が利益増に寄与する堅調な収益構造となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,330億円 1,359億円
売上総利益 267億円 276億円
売上総利益率(%) 20.0% 20.3%
営業利益 103億円 106億円
営業利益率(%) 7.7% 7.8%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬、従業員給料及び賞与が56億円(構成比33%)、荷造運搬費が31億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


ボンド事業は建築コスト上昇の影響を受けたものの、新製品採用や産業資材分野の拡販により増収増益でした。化成品事業は中国経済減速や自動車分野の影響で減収となりましたが、電子電機分野の伸長により増益を確保しました。工事事業は順調な完工により大幅な増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ボンド 716億円 739億円 66億円 69億円 9.3%
化成品 393億円 369億円 13億円 14億円 3.7%
工事事業 219億円 249億円 22億円 23億円 9.1%
その他 2億円 2億円 1億円 2億円 88.2%
調整額 -10億円 -13億円 -0.1億円 -0.4億円 -
連結(合計) 1,330億円 1,359億円 103億円 106億円 7.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

コニシは、営業活動により71億円超の資金を生み出しました。これは、税金等調整前当期純利益が堅調であったことなどが主な要因です。一方、投資活動では、有形固定資産や定期預金への投資により73億円超の資金を使用しました。財務活動では、自己株式の取得や配当金の支払いに56億円超の資金を使用しました。これらの結果、当連結会計年度末の資金残高は200億円となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 81億円 72億円
投資CF -52億円 -73億円
財務CF -86億円 -56億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「つなげる」ことを理念とし、ボンド事業、化成品事業、工事事業の3事業を展開しています。顧客のニーズに合った製品・商品の開発や製造、サービスの提供を通じて社会およびステークホルダーの信頼に応えていくとともに、収益力の向上と企業価値の増大を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「誠実な行動とチャレンジ精神で、多様な『つなげる』にこだわり、新たな価値を創造することで、関わる全ての人々に安心と笑顔を提供します」という企業理念を掲げています。これに基づき、法令遵守や公正性を重視しつつ、地球環境や社会課題への取り組みを通じて、持続可能で豊かな社会の実現を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は「中期経営計画2027(2025年3月期~2027年3月期)」を推進しており、さらなる事業拡大と経営の効率化を図っています。2027年3月期の数値目標として、過去最高となる業績を目指しています。

* 連結売上高:1,500億円
* 連結営業利益:115億円
* EBITDA:145億円

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、新製品の市場導入による新規開拓や成長分野への注力を推進しています。また、生産・物流・DX関連に過去最大規模となる設備投資を行い、事業拡大と効率化を図ります。各事業においては、非住宅分野や成長市場向け製品の開発、インフラ補修工事の拡大などを重点施策としています。

* 成長投資:生産、物流、DX関連に約150億円の設備投資を計画

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を持続的な成長に不可欠な資本と捉え、育成・活用に取り組んでいます。研修やタレントマネジメントシステムによる能力開発に加え、多様な視点が創造される組織風土の醸成を目指しています。また、従業員が安心して長くいきいきと働けるよう、ワークライフバランスを重視し、多様な働き方に対応できる制度や職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.0歳 17.4年 7,565,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.0%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.2%
男女賃金差異(正規雇用) 66.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 83.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性基幹職人数/基幹職人数(10.4%)、女性新入社員/新入社員(30.0%)、有給休暇取得平均日数(14.1日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外市場への進出に係るリスク


中国や東南アジア(ベトナム、インドネシア等)に製造・販売拠点を展開し、事業拡大を進めています。これらの地域における法規制の変更、政治的・経済的混乱、為替変動などのカントリーリスクが顕在化した場合、同社グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原油価格の変動の影響


主力製品である接着剤やシーリング材の多くは、石油化学製品を主原料としています。また、化成品事業でも石油化学製品を主要商品として扱っています。そのため、原油価格の変動は原材料コストや仕入価格に直結し、販売価格への転嫁が遅れた場合や需要への影響により、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 市況変動によるリスク


化成品事業が取り扱うIT関連材や電子部品関連基材、薄膜材料などは、電子・電機産業や自動車産業の需給動向の影響を受けやすい特性があります。これらの主要顧客業界の景況感や生産動向が変動した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 工事事業に関連するリスク


工事事業は工期が長期にわたるケースが多く、期間中の資材価格高騰や労務費上昇などの事業環境の変化が採算性に影響する可能性があります。また、施工中の事故や災害、施工対象物の瑕疵などが発生した場合、損害賠償や信用失墜につながり、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。