三谷産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三谷産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三谷産業は東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する複合商社です。化学品、情報システム、空調設備工事、住宅設備機器などの多角的な事業を展開しています。直近の業績は売上高1,175億円で6期連続の増収、親会社株主に帰属する当期純利益は36億円で3期連続の増益を達成しました。


※本記事は、三谷産業の有価証券報告書(第101期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月11日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三谷産業ってどんな会社?


同社は化学品から住宅設備まで幅広い領域で事業を展開し、顧客の課題解決を支援する複合商社です。

(1) 会社概要


同社は1928年に石炭やセメントの販売を目的として開設され、1943年に現在の社名へ改称しました。その後、空調設備工事や情報システム関連など事業の多角化を進め、1994年にはベトナムへ進出して海外展開も開始しました。1988年に名古屋証券取引所第二部に上場し、2014年には東京証券取引所第二部への上場を果たしています。

現在は連結で3,569名、単体で629名の従業員を抱える規模に成長しています。筆頭株主は創業家である三谷充氏であり、第2位には事業会社である三谷、第3位には公益財団法人三谷育英会が名を連ねており、創業家や関連団体を中心とした安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
三谷 充 15.83%
三谷 9.71%
公益財団法人三谷育英会 7.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性3名の計19名で構成され、女性役員比率は15.7%です。代表取締役社長は三谷忠照氏が務めています。社外取締役は5名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
三谷 忠照 代表取締役社長 同社常務取締役組織構造担当兼情報活用担当等を経て、2022年6月より現職。
森 浩一 取締役副社長業務執行担当・営業統括 同社執行役員情報システム事業部長兼空調事業部長等を経て、2023年6月より現職。
竹内 昇 常務取締役人事担当兼空間デザイン統括担当 同社執行役員空調首都圏事業部長等を経て、2025年6月より現職。
内田 大剛 常務取締役財務担当兼広報担当 同社執行役員経営企画本部長等を経て、2025年6月より現職。
渡邊 伸寿 取締役品質担当兼生産・製造技術担当 富士通テクノロジ&ものづくり本部エグゼクティブディレクター等を経て、2020年7月より現職。
深堀 俊彰 取締役DX推進担当 同社執行役員ICTソリューション事業部長等を経て、2026年4月より現職。
三浦 秀平 取締役海外事業担当兼ベトナム事業企画促進室長 同社執行役員経営企画本部ベトナム事業企画促進室長等を経て、2023年4月より現職。
正元 敏之 取締役特命担当 同社執行役員情報システム事業部長等を経て、2023年6月より現職。
茂 知一 取締役危機管理担当兼関連事業担当兼社内情報システム担当兼CSR本部長兼社内システム室長 同社執行役員CSR本部長兼社内システム室長等を経て、2025年6月より現職。
山田 徹 取締役特命担当 同社執行役員ケミカル事業部長等を経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、花田光世(慶應義塾大学名誉教授)、長澤裕子(坂井法律事務所弁護士)、清木康(慶應義塾大学名誉教授)、増田幸宏(芝浦工業大学システム理工学部教授)、清水雅楽乃(アステナホールディングス常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化学品関連事業」「情報システム関連事業」などの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

化学品関連事業


化学品の販売や機能性材料の受託製造、医薬品原薬の製造等を提供しています。日本国内およびベトナムの製造業向けに資材の仕入販売を行うほか、独自のリサイクルビジネスによる資源循環にも取り組んでいます。

顧客への資材販売や受託製造による代金から収益を得ています。事業の運営は同社およびアクティブファーマやミライ化成などの子会社が担っています。

樹脂・エレクトロニクス関連事業


自動車関連等の金型の設計・製造、樹脂成形品の製造、電子部品の製造販売を提供しています。高度な技術力を活かし、製品開発の初期段階から量産までを包括的にサポートしています。

製造した樹脂成形品や電子部品の販売代金から収益を得ています。事業の運営は主にベトナムの現地子会社が主体となって行っています。

情報システム関連事業


システムインテグレーションやパッケージソフトウエアの開発、情報インフラ構築、クラウドサービスを提供しています。自治体や教育機関、民間企業のデジタルトランスフォーメーションを伴走支援します。

システムの導入費用や保守運用サポートのサービス料を受け取ることで収益を得ています。事業の運営は同社およびディサークルやコンフィデンシャルサービスなどの子会社が行っています。

空調設備工事関連事業


オフィスビルやマンション等の空調設備、給排水衛生設備、クリーンルームの設計・施工を提供しています。環境配慮型建築物への対応やデジタル技術を活用した高効率な提案を行います。

設計や施工の請負代金として顧客から収益を得ています。事業の運営は同社および三谷産業コンストラクションズなどの子会社が行っています。

住宅設備機器関連事業


システムキッチンや高級バスタブ、モジュラーファニチャー等の住宅機器の企画・製造・販売、ならびに設計・施工を提供しています。高級住宅市場に向けた独自のブランド戦略を推進しています。

住宅設備機器の販売代金および設置・内装工事の請負代金から収益を得ています。事業の運営は同社およびインフィル、JAXSON、Teseraなどの子会社が行っています。

エネルギー関連事業


法人向けの石油製品の販売や、民生用LPガス、家庭用燃料電池、太陽光発電システムの販売を提供しています。地域のインフラを支えるため、環境負荷の低減を考慮した最適なエネルギー供給を提案します。

エネルギーや周辺機器設備の販売代金から収益を得ています。事業の運営は同社および三谷産業イー・シーなどの子会社が行っています。

その他


コンピュータ等の事務機器に使用する消耗品の販売、移動体通信機器の販売、名刺・カード印刷、オフィスビルの保全管理、人材派遣等を提供しています。

各種商品の販売代金やサービスの提供に対する対価を受け取ることで収益を得ています。事業の運営は三谷産業アドニスなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の売上高は安定して成長を続けており、特に直近では1,175億円に達して過去最高を更新しています。経常利益も拡大傾向にあり、利益率も着実に改善しつつ全体の収益性が高まっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 844億円 904億円 959億円 1,031億円 1,175億円
経常利益 20億円 17億円 24億円 27億円 45億円
利益率(%) 2.3% 1.9% 2.5% 2.6% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 15億円 5億円 13億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高と売上総利益はともに拡大しており、事業の成長が確認できます。営業利益も大きく増加しており、営業利益率の上昇から本業における稼ぐ力が着実に高まっていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,031億円 1,175億円
売上総利益 199億円 227億円
売上総利益率(%) 19.3% 19.3%
営業利益 21億円 34億円
営業利益率(%) 2.0% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、主な項目として従業員給料が21億円(構成比11.1%)、手数料が14億円(同7.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


化学品関連事業が売上高の大きな割合を占めており、当期も順調に推移しています。また、情報システム関連事業が前期から大幅な増収となっており、すべての事業セグメントにおいて事業規模が拡大しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
空調設備工事関連事業 196億円 205億円
樹脂・エレクトロニクス関連事業 115億円 122億円
情報システム関連事業 102億円 166億円
化学品関連事業 402億円 447億円
エネルギー関連事業 71億円 72億円
住宅設備機器関連事業 129億円 143億円
その他 17億円 20億円
連結(合計) 1,031億円 1,175億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金で借入の返済を進めつつ、投資も手元資金で賄っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 42億円 86億円
投資CF -15億円 -7億円
財務CF -32億円 -74億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


お客様とのビジネスを軸に、仕入先や地域社会、株主、社員といった関係者間で調和を作り上げていくことを基本方針としています。また、さまざまな業界をつなぐネットワークの結び目としてイノベーションを促進し、社会の持続的な発展においてバランスのとれた真の最適を追求することを使命としています。

(2) 企業文化


財務的指標だけでなく非財務的指標として「Company Well-being Index」を策定し、持続的に事業を成長させながら価値創出や社会貢献を行う「良い会社」であり続けることを目指し、バランスのとれた経営を推進する価値観を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は次期の目標として以下の具体的な数値を掲げ、複数の事業セグメントを横断してさらなる成長を目指して経営を行っています。

* 売上高 1,130億円
* 営業利益 30億円
* 経常利益 39億円

(4) 成長戦略と重点施策


各事業で専門性を高めつつ、複合商社としての総合力を活かした付加価値の高い提案に注力しています。また、デジタル技術の実装を支援するサービスや循環型社会に向けたリサイクル技術の活用など、事業環境の変化を機会と捉えた事業展開を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的成長の源泉として、スキルやマインド、多様性を備えた人材の獲得・育成・定着を最重要課題と位置づけています。研修や技能教育を通じて個人の能力向上を図るだけでなく、異なるバックグラウンドを持つ社員同士が交流することでイノベーションを誘発し、組織の生産性を高める方針を掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.5歳 11.9年 7,673,710円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.9%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.4%
男女賃金差異(正規雇用) 74.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 51.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員エンゲージメントスコア(78.1点)、入社後3年間の定着率(80%)、年10日以上の有給休暇取得者数(70%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティとサイバー攻撃リスク


事業の運営において顧客の機密情報や個人情報を扱っているため、サイバー攻撃等による情報の漏洩やシステムの停止が発生した場合、信用の失墜や損害賠償の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制の変更リスク


医薬品医療機器等法をはじめ多岐にわたる法令や規則の適用を受けており、予期し得ない法的規制の発令や法解釈の変更等を受けた場合、事業活動が制限され業績に影響を与える可能性があります。

(3) 海外事業展開とカントリーリスク


ベトナムを中心に海外で事業を拡大していますが、政情の不安定化や経済情勢の変動、急激な為替変動など事業環境が著しく変化した場合、海外での活動が影響を受ける可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。