三谷産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三谷産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード・名証プレミアに上場する複合商社。化学品、情報システム、空調設備、樹脂・電子部品など多角的に事業を展開しています。2025年3月期は売上高が初の1,000億円を突破して5期連続の増収となり、営業利益も前期比24.4%増と大幅に伸長、純利益とともに過去最高益を更新しました。


※本記事は、三谷産業株式会社 の有価証券報告書(第100期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三谷産業ってどんな会社?


化学品、樹脂・電子、情報システム、空調設備など6つの事業領域を持つ、商社機能とメーカー機能を併せ持つ複合企業です。

(1) 会社概要


1928年に三谷合名会社金沢出張所として創業し、1949年に三谷石炭を設立、1951年に現商号へ変更しました。1988年に名古屋証券取引所市場第二部に上場し、1994年にはベトナムへ進出して海外事業を開始しました。2015年には東京証券取引所および名古屋証券取引所の市場第一部に指定されています。

2025年3月31日時点で、連結従業員数は3,563名、単体従業員数は597名です。筆頭株主は三谷充氏、第2位は三谷株式会社、第3位は公益財団法人三谷育英会となっており、創業家および関連団体が主要株主となっています。

氏名 持株比率
三谷 充 15.81%
三谷株式会社 9.71%
公益財団法人三谷育英会 7.64%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性3名(内、監査役1名含む)の計19名で構成され、女性役員比率は15.7%です。代表取締役社長は三谷忠照氏が務めています。社外取締役は5名で、取締役全体の約33%を占めます。

氏名 役職 主な経歴
三谷 忠照 代表取締役社長 2010年同社取締役就任。常務取締役組織構造担当兼人事担当兼情報活用担当等を経て、2017年より代表取締役社長。品質担当、組織戦略担当等を歴任し現職。
森 浩一 取締役副社長業務執行担当・営業統括 1984年入社。情報システム事業部長、空調事業部長等を歴任。2017年常務取締役。2023年6月より現職。
阿戸 雅之 専務取締役人事担当 1983年入社。ケミカル事業部長、海外事業部長等を歴任。2013年専務取締役就任。HIDEO代表取締役会長等を兼務し現職。
西野 誠治 専務取締役関連事業担当 1981年入社。情報システム事業部システム統括部長、フィールドサポート事業部長等を歴任。2017年専務取締役就任。財務担当等を経て現職。
竹内 昇 取締役危機管理担当兼空間デザイン統括担当 1988年入社。空調事業部首都圏営業部長、執行役員空調首都圏事業部長等を歴任。2019年取締役就任。組織構造担当等を経て現職。
渡邊 伸寿 取締役品質担当兼生産・製造技術担当 元富士通テクノロジ&ものづくり本部エグゼクティブディレクター。2017年Fujitsu Computer Products of Vietnam社長。2020年7月より現職。
内田 大剛 取締役財務担当兼広報担当 2010年入社。執行役員事業開発本部長、経営企画本部長等を歴任。2021年取締役就任。Carbon Ventures社長等を兼務し現職。
深堀 俊彰 取締役社内情報システム担当兼DX推進担当兼Chalaza推進室長 2001年入社、日本オラクルを経て2009年再入社。執行役員ICTソリューション事業部長等を歴任。2022年取締役就任。Inter-Technology Infrastructure Research社長兼務。
三浦 秀平 取締役海外事業担当兼ベトナム事業企画促進室長 2006年Aureole Construction Software Development入社。2013年同社社長室長。執行役員ベトナム事業企画促進室長を経て2022年取締役就任。
正元 敏之 取締役特命担当 2000年入社。執行役員情報システム事業部長を経て2021年ニッコー出向。2023年同社取締役就任。ニッコー常務取締役兼務。


社外取締役は、花田光世(慶應義塾大学名誉教授)、長澤裕子(弁護士)、清木康(慶應義塾大学名誉教授)、増田幸宏(芝浦工業大学教授)、清水雅楽乃(アステナホールディングス常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「化学品関連事業」「樹脂・エレクトロニクス関連事業」「情報システム関連事業」「空調設備工事関連事業」「住宅設備機器関連事業」「エネルギー関連事業」および「その他」事業を展開しています。

化学品関連事業


無機・有機化学品の販売や、機能性材料の受託製造・販売、医薬品原薬の製造・販売などを行っています。主な取扱商品は塩酸、硫酸、苛性ソーダ、健康食品素材、機能性樹脂、医薬中間体などです。また、化学品や環境に関わるコンサルティングも手掛けています。

主に製造業などの顧客から商品代金を受領するほか、受託製造による加工賃などが収益源となります。運営は同社や、子会社のアクティブファーマ、ミライ化成、三谷産業イー・シーなどが担当しています。ベトナムではAureole Mitani Chemical & Environmentなどが事業を展開しています。

樹脂・エレクトロニクス関連事業


金型の設計・製造・販売や、樹脂成形品の製造・販売、電子部品(セラミック基板、半導体製品等)の製造・販売を行っています。自動車関連部品や電子機器部品などが主要製品です。

自動車メーカーや電子機器メーカー等への製品販売が主な収益源です。運営は同社およびベトナム子会社のAureole Business Components & Devices、Aureole unit-Devices Manufacturing Serviceなどが行っています。

情報システム関連事業


システムインテグレーション、パッケージソフト開発・販売、ネットワーク構築、データセンター運用等のアウトソーシングサービスを提供しています。主要製品には「POWER EGG」などがあります。

企業や官公庁等の顧客からのシステム開発費、ソフトウェアライセンス料、保守運用費、クラウドサービス利用料などが収益となります。運営は同社や、子会社のディサークル、コンフィデンシャルサービス、ベトナムのAureole Information Technologyなどが行っています。

空調設備工事関連事業


オフィスビル、マンション、工場等の空調・給排水衛生・消防設備の設計・施工を行っています。また、リニューアル工事や電気・内装工事の設計・施工も手掛けています。

建設会社や不動産オーナー等からの工事請負代金が主な収益源です。運営は同社や、子会社の三谷産業コンストラクションズ、ベトナムでの設計積算を行うAureole Construction Software Developmentなどが担当しています。

住宅設備機器関連事業


システムキッチン、バスルーム等の住宅機器の販売・設計・施工や、家具の開発・販売を行っています。オリジナルブランドのバスタブやシステム収納なども展開しています。

住宅メーカー、建設会社、個人顧客等からの製品販売代金や工事代金が収益となります。運営は同社や、子会社のインフィル、JAXSON、Teseraなどが担当しています。

エネルギー関連事業


石油製品(重油、灯油、ガソリン等)やLPガスの販売、および家庭用燃料電池や太陽光発電システムの販売を行っています。

ガソリンスタンドや産業用顧客への燃料販売、一般家庭へのガス販売による代金が収益源です。運営は主に同社および子会社の三谷産業イー・シーが行っています。

その他


事務機器用消耗品の販売、旅行代理店、ビル管理、人材派遣などの事業を行っています。

各サービス利用者からの利用料や販売代金が収益となります。運営はミタニインベストメントや三谷産業アドニスなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第96期から第100期まで5期連続で増収を続けています。特に第100期には売上高が1,000億円を突破しました。利益面では、第98期に一時落ち込みましたが、その後回復し、第100期は経常利益、当期利益ともに期間中で最高水準に達しています。利益率は概ね2%台から4%台で推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 805億円 844億円 904億円 959億円 1,031億円
経常利益 33億円 20億円 17億円 24億円 27億円
利益率(%) 4.2% 2.3% 1.9% 2.5% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 23億円 14億円 10億円 21億円 24億円

(2) 損益計算書


直近2期間の傾向を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約19%で安定しています。営業利益は前期比で増加し、営業利益率も改善傾向にあります。全体として増収増益の基調を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 959億円 1,031億円
売上総利益 184億円 199億円
売上総利益率(%) 19.2% 19.3%
営業利益 17億円 21億円
営業利益率(%) 1.7% 2.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が46億円(構成比26%)、その他経費が30億円(同17%)を占めています。売上原価においては、商品および製品の仕入や工事原価が主要な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


当期は「空調設備工事関連事業」が大幅な増収増益となり、全社の業績を牽引しました。「化学品関連事業」も増収増益で堅調です。「情報システム関連事業」は増収増益、「エネルギー関連事業」も増収増益となりました。一方で「樹脂・エレクトロニクス関連事業」は減収減益、「住宅設備機器関連事業」は減収となり営業損失を計上しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
空調設備工事関連事業 149億円 196億円 12億円 22億円 11.5%
情報システム関連事業 95億円 102億円 9億円 10億円 9.4%
樹脂・エレクトロニクス関連事業 120億円 115億円 13億円 8億円 6.6%
化学品関連事業 370億円 402億円 3億円 5億円 1.2%
エネルギー関連事業 69億円 71億円 3億円 4億円 5.1%
住宅設備機器関連事業 141億円 129億円 -3億円 -5億円 -3.6%
その他 15億円 17億円 2億円 2億円 11.5%
調整額 - - -23億円 -24億円 -
連結(合計) 959億円 1,031億円 17億円 21億円 2.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で得た資金で借入金の返済を行い、投資も実施している「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。営業キャッシュ・フローは安定してプラスを維持しており、財務体質の健全化が進んでいます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 56億円 42億円
投資CF -9億円 -15億円
財務CF -38億円 -32億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.7%で市場平均(非製造業)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、顧客とのビジネスを軸に、仕入先、地域社会、株主、社員等の関係者間で調和を作り上げることを基本方針としています。また、知識や技術を活かして短期的課題解決と中長期的価値創出のバランスを追求し、異分野・異業種の交差点としてイノベーションを促進する役割を担うことを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「三谷産業グループ企業倫理憲章」に基づき、誠実かつ公正な事業活動を行うことを重視しています。また、財務的指標だけでなく非財務的指標として「Company Well-being Index」を策定し、長期的視野で持続的に成長し社会貢献する「良い会社」であり続けることを目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、経営目標達成のための客観的な指標として、売上高、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益を重視しています。次期(2026年3月期)の業績見通しとして以下の目標を掲げています。

* 売上高:1,100億円
* 営業利益:22.5億円
* 経常利益:29.5億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:24.5億円

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、商社機能とメーカー機能を併せ持つ複合力を活かし、各セグメントで高付加価値化やDX推進に取り組む方針です。空調設備ではZEB対応やICT活用、情報システムでは生成AI活用や新サービス「バーチャルCxO」の推進、樹脂・エレではEV化対応や高難度成形技術の確立を目指します。また、ベトナム事業のさらなる拡大や、オリジナルブランドの強化による住宅設備事業の収益改善も重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本の「増強」と「効率化」を掲げ、イノベーションの誘発、エンゲージメントの醸成、キャリア自律などを推進しています。性別や国籍等を問わず多様な人材を採用・育成し、テレワークやフレックス制などの柔軟な働き方を整備することで、社員一人ひとりの成長と活躍を支援する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 11.3年 7,060,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 74.5%


※対象となるパート・有期労働者は女性労働者のみであることから、雇用管理区分ごとの記載を省略しています。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 情報セキュリティに係るリスク


同社グループはシステムインテグレーションやアウトソーシング事業等において多くの機密情報・個人情報を扱っており、サイバー攻撃や情報漏洩が発生した場合、信用失墜や損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、セキュリティ体制の強化や第三者認証の取得、従業員教育等を継続的に実施しています。

(2) 投資有価証券の時価変動リスク


同社グループは取引関係の維持・拡大を目的として投資有価証券を保有しており、市場価格や発行会社の財政状態の変動により、同社の財政状態や業績に影響を与える可能性があります。これに対し、保有株式のリターン・リスクや資本コストに見合った保有意義を定期的に検証し、保有の可否を判断しています。

(3) 法的規制に係るリスク


医薬品医療機器等法をはじめとする多岐にわたる法令・規制の適用を受けており、予期せぬ規制強化や法解釈の相違等により事業活動が制限されたり、新たなコストが発生したりする可能性があります。法令遵守の徹底や情報収集、コンプライアンス教育、通報制度の整備等によりリスク低減を図っています。

(4) 製品・サービスの品質リスク


高付加価値製品・サービスの開発・提供に伴い、万が一品質不良が発生した場合、修補や賠償費用等により業績に影響を及ぼす可能性があります。品質マネジメントシステムによる管理体制の整備や、開発から製造までのプロセスレビュー、クレーム発生時の原因究明と再発防止策の徹底に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。