※本記事は、株式会社フォーバルの有価証券報告書(第45期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. フォーバルってどんな会社?
中小・中堅企業の利益貢献を目指し、情報通信機器の販売やコンサルティング、通信サービス等を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1980年に新日本工販として設立され、1988年に店頭登録を行いました。1991年に現社名へ変更し、2000年には子会社フォーバルテレコムが上場しています。2010年以降はカンボジアやベトナム等に現地法人を設立して海外展開を進め、2024年にはタニタヘルスリンク等を子会社化しました。
連結従業員数は2,424名、単体では776名です。筆頭株主は会長が代表を務める有限会社エス・エヌ・ケーで、第2位は創業者の大久保秀夫氏、第3位は法人株主のUHPartners2です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社エス・エヌ・ケー | 26.60% |
| 大久保 秀夫 | 13.10% |
| 株式会社UHPartners2 | 9.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は中島 將典氏です。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大久保 秀夫 | 代表取締役会長 | 1980年同社設立代表取締役社長。フォーバルテレコム代表取締役会長等を経て2010年より現職。 |
| 中島 將典 | 代表取締役社長 | 1987年同社入社。常務取締役営業本部長、フォーバルテレコム代表取締役社長、同社副社長等を経て2010年より現職。 |
| 谷井 剛 | 常務取締役 | 1996年フォーバルテレコム入社。同社社長を経て2022年同社取締役、同年より現職。 |
| 加藤 康二 | 常務取締役 | 日本ビクターを経て1996年同社入社。管理本部長、取締役管理本部長等を経て2014年より現職。 |
| 鈴木 弘之 | 取締役(監査等委員) | 2013年同社入社。役員付担当部長、内部統制室長を経て2019年より現職。 |
社外取締役は、松坂 祐輔(弁護士)、小野 隆弘(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「フォーバルビジネスグループ」「フォーバルテレコムビジネスグループ」「総合環境コンサルティングビジネスグループ」「人的資本経営」および「その他」事業を展開しています。
■(1) フォーバルビジネスグループ
主に中小・小規模企業を顧客とし、オフィス用OA・ネットワーク機器の販売や卸販売、サービスの取次、コンサルティングサービスを提供しています。
収益は、機器の販売代金やサービスの対価として顧客から受領します。運営は主にフォーバル、フォーバルテクノロジー、プロセス・マネジメント、エルコム、Meisinなどの子会社が行っています。
■(2) フォーバルテレコムビジネスグループ
中小・小規模企業に対し、VoIPやモバイルなどの通信サービス全般、電力などのユーティリティ・ビジネス、普通印刷、保険サービスなどを提供しています。
収益は、通信サービスや電力サービスの利用料、印刷代金、保険代理店手数料などを顧客や保険会社から受領します。運営は主にフォーバルテレコム、トライ・エックス、タクトシステム、保険ステーションなどが行っています。
■(3) 総合環境コンサルティングビジネスグループ
代理店やエンドユーザーに対し、太陽光発電システム、オール電化・エコ住宅設備、LED照明などの製品卸販売や工事請負を行っています。
収益は、製品の販売代金や工事代金を顧客から受領します。運営は主にアップルツリーが行っています。
■(4) 人的資本経営
技術者派遣事業、IT教育サービス事業、健康経営支援事業などを提供しています。当連結会計年度より報告セグメントとして新設されました。
収益は、派遣料、教育サービス受講料、健康支援サービス利用料などを顧客から受領します。運営はアイテック、フォーバルカエルワーク、タニタヘルスリンク、エフピーステージなどが行っています。
■(5) その他
上記セグメントに含まれない事業として、海外進出支援コンサルティングやIT関連サービスなどを展開しています。
収益は、コンサルティング料やサービス利用料を顧客から受領します。運営はビジカや海外現地法人などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。特に当期は売上高が700億円台に達し、経常利益も約40億円と過去最高水準を更新しました。利益率も安定して5%前後を維持しており、着実な成長が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 498億円 | 515億円 | 595億円 | 635億円 | 726億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 29億円 | 27億円 | 35億円 | 40億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 5.5% | 4.6% | 5.4% | 5.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 18億円 | 17億円 | 20億円 | 22億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。原価率は横ばいですが、販売費及び一般管理費のコントロールにより、営業利益率は5.2%と改善傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 635億円 | 726億円 |
| 売上総利益 | 225億円 | 253億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.4% | 34.8% |
| 営業利益 | 32億円 | 37億円 |
| 営業利益率(%) | 5.1% | 5.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が96億円(構成比45%)、その他経費が89億円(同41%)を占めています。事業拡大に伴う人員増やM&A関連費用が増加要因となりました。
■(3) セグメント収益
主力のフォーバルビジネスグループは可視化伴走型経営支援事業が好調で増収増益を達成しました。フォーバルテレコムビジネスグループも電力サービス等の増加により増収増益です。総合環境コンサルティングは増収ながら販管費増で減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| フォーバルビジネスグループ | 333億円 | 378億円 | 21億円 | 26億円 | 6.9% |
| フォーバルテレコムビジネスグループ | 227億円 | 252億円 | 10億円 | 12億円 | 4.6% |
| 総合環境コンサルティングビジネスグループ | 53億円 | 63億円 | 0.9億円 | 0.7億円 | 1.2% |
| 人的資本経営 | 22億円 | 32億円 | 3億円 | 3億円 | 8.9% |
| その他 | - | - | - | - | - |
| 調整額 | 11億円 | 12億円 | -2億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 635億円 | 726億円 | 32億円 | 37億円 | 5.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.6%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 32億円 | 41億円 |
| 投資CF | -11億円 | -14億円 |
| 財務CF | -15億円 | -33億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社名の由来である「For Social Value」を語源とし、「社会価値創出企業」として中小・小規模企業の利益に貢献できる「新しいあたりまえ」づくりに挑戦しています。ユーザーの立場から情報通信業界の矛盾や問題を打破する新しいビジネスモデルを提案し、世の中に浸透させることを目指しています。
■(2) 企業文化
社員が持つべき人間性として「明・元・素(明るく元気で素直)」を大切にし、結果にこだわる「実力主義」と、ビジョンを共有し協力する「強い仲間意識」を重視しています。また、全てのステークホルダーに対してビジネスを通じて「幸せの分配」を行うことを企業価値としています。
■(3) 経営計画・目標
事業構造や環境の変化が激しいため、現段階では売上高利益率や資本回転率などの具体的な経営指標目標は設定していません。適切な指標を設定した時点で開示する方針です。一方で、「2030年までにカーボンニュートラルを目指す」宣言を行い、2020年度を基準年として毎年10%のGHG排出量削減を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「企業ドクター(次世代経営コンサルタント)」として、情報通信、海外、環境、人材・教育、起業・事業承継の5分野で差別化を図り、中小・小規模企業の利益貢献を目指しています。現在は国の「F-Japan戦略」を推進し、自治体等と連携してDX・GX人材を育成し、地方創生と地域経済活性化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材」を最も重要な価値の源泉と位置づけ、「フォーバルパーソンとしての基盤づくり」と「事業人材の育成」の二軸で育成に取り組んでいます。特に「可視化伴走支援事業」の中核となる企業ドクターの育成を急務とし、ESG経営の知識習得やDXアドバイザー検定等の資格取得を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.8歳 | 11.2年 | 5,767,275円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 12.3% |
| 男性育児休業取得率 | 107.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 40.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、男性の育児休業平均日数(17.7日)、DXアドバイザー検定取得率(45.0%)、ESGアドバイザー検定取得率(73.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化
主要顧客である中小企業を取り巻く経済状況の影響を受けます。景気悪化や感染症等の影響で中小企業の経営環境が悪化した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。また、売上高の約18%がリース会社経由の回収であるため、リース業界の環境変化もリスク要因となります。
■(2) 新規事業・サービスの立ち上げ
収益性の高い新規事業や、「Society5.0」を見据えた次世代情報通信技術による新サービスの開発に取り組んでいますが、開発の遅れや市場の支持が得られなかった場合、またアライアンス先の事業方針の影響等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人材の確保及び育成
コンサルティングサービスの質を維持・向上させるためには人材の確保と育成が不可欠です。想定通りに人材確保や育成が進まない場合、競争力が低下し業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、働き方改革や教育システムの強化に取り組んでいます。
■(4) 取引先に関するリスク
通信サービスの仕入先である電気通信事業者は少数に限定されています。これらの事業者の政策変更等により、通話料原価や取次手数料の条件が不利に変更された場合、同グループの業績に影響を与える可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。