理経 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 理経 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の技術商社。IT・エレクトロニクス分野でシステム、ネットワーク、電子部品等を展開しています。第68期は防衛省向け案件の大幅増やシステム案件の寄与により、売上高は187億円(前期比54.4%増)、経常利益は10億円(同97.4%増)と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社 理経 の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 理経ってどんな会社?


IT及びエレクトロニクス業界において、国内外の先端技術や製品を輸入・販売する技術商社です。

(1) 会社概要


1957年に理経産業として設立され、1971年に現社名へ変更しました。1988年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2013年には米国駐在事務所を開設するなど海外展開を推進。2017年に株式会社エアロパートナーズおよび株式会社ネットウエルシステムの全株式を取得し子会社化しました。2022年の市場区分見直しにより、現在はスタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は174名、単体では138名です。筆頭株主は個人株主の石川大樹氏で、第2位は資産管理を行うモルガン・スタンレーMUFG証券、第3位は金融業の上田八木短資です。

氏名 持株比率
石川 大樹 8.57%
MSIP CLIENT SECURITIES 4.70%
上田八木短資 3.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長は猪坂 哲氏です。取締役10名のうち社外取締役は3名で、社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
猪坂  哲 代表取締役社 長事業統括本部長 1987年同社入社。大学官公庁営業部長、事業統括本部長などを歴任し、2016年より現職。
古畑 直樹 常務取締役総務部長 1987年同社入社。総務部長兼経理部長などを経て、2015年より現職。
小柳  誠 常務取締役 1982年同社入社。ネットワークソリューション部長、海外事業統括などを経て、2024年より現職。
古田 耕児 取締役企画戦略室長 1995年同社入社。エンジニアリング部長、企画戦略室長などを経て、2025年より情報システム室長も担当。
長谷川 章詞 取締役経理部長 1983年同社入社。経理部長代理などを経て、2009年より現職。
小金丸 裕晃 取締役事業統括副本部長海外事業推進室長 1989年同社入社。伝送・配信システム営業部長などを経て、2025年より伝送・配信システム営業部長も担当。
横山 晋司 取締役事業統括副本部長 1989年同社入社。部品機器営業部長、ビジネスイノベーション部長などを経て、2025年よりコンポーネントソリューション部長も担当。


社外取締役は、伊達 雄介(弁護士)、滝澤 明久(元冨士電線社長)、越野 純子(鈴茂器工取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システムソリューション」「ネットワークソリューション」「電子部品及び機器」の3つの報告セグメントを展開しています。

**(1) システムソリューション**
教育機関や官公庁向けのITインフラ、製造業向け3次元機械CAD、VR/ARコンテンツ、AI・IoTソリューションなどを提供しています。主な顧客は大学、官公庁、民間企業です。
ハードウェアやソフトウェアの販売代金、システム構築費用、保守サービス料などを収益源としています。運営は主に理経および子会社の株式会社ネットウエルシステムが行っています。

**(2) ネットワークソリューション**
衛星通信用伝送システム、自治体向け防災情報伝達システム、高速長距離無線LANシステムなどを提供しています。通信インフラ事業者や地方自治体が主な顧客です。
通信機器の販売代金、システム導入費用、運用保守サービス料などを収益源としています。運営は主に理経が行っています。

**(3) 電子部品及び機器**
電子部品、半導体、マイクロ波通信機器用部品、防衛省向け機材・航空機部品などを取り扱っています。防衛省や電機メーカーなどが主な顧客です。
製品の輸入販売による代金や保守サポート料を収益源としています。運営は主に理経および子会社の株式会社エアロパートナーズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は100億円台前半で推移していましたが、当期(2025年3月期)に187億円へと急拡大しました。これに伴い経常利益も前期の5億円から10億円へと倍増し、当期純利益も約7億円と過去最高水準に達しています。利益率も改善傾向にあり、収益性が高まっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 101億円 109億円 103億円 121億円 187億円
経常利益 2億円 2億円 2億円 5億円 10億円
利益率(%) 2.2% 1.9% 2.1% 4.3% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 1億円 1億円 4億円 7億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も28億円から35億円へと増加しました。売上総利益率は低下しましたが、増収効果により営業利益は5億円から11億円へと倍増しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 121億円 187億円
売上総利益 28億円 35億円
売上総利益率(%) 23.0% 18.9%
営業利益 6億円 11億円
営業利益率(%) 4.7% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が13億円(構成比54%)と過半を占めています。売上原価に関しては、商品仕入高などが主な構成要素となりますが、詳細な内訳データはありません。

(3) セグメント収益


「電子部品及び機器」セグメントが防衛省向け案件の増加等により売上高・利益ともに倍増し、全社の業績を牽引しました。「システムソリューション」と「ネットワークソリューション」は前期並みか微減となり、利益面でも減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
システムソリューション 38億円 37億円 1億円 0億円 0.7%
ネットワークソリューション 18億円 18億円 1億円 1億円 5.2%
電子部品及び機器 65億円 132億円 3億円 10億円 7.5%
連結(合計) 121億円 187億円 6億円 11億円 6.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「勝負型」のキャッシュ・フロー状態です。本業の営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスですが、これは売上急増に伴う売上債権の増加が主因であり、成長局面における一時的な現象と考えられます。不足資金は借入等の財務活動で調達しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -10億円 -3億円
投資CF -0.3億円 -0.7億円
財務CF 18億円 4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.3%で市場平均(スタンダード市場非製造業平均)とほぼ同水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社会変革を先取りした発想と先端技術を用いて、顧客ニーズに対応したソリューションを提供し、高度情報化社会に貢献することを基本方針としています。法令遵守、経営資源の有効活用、収益性向上を通じて企業価値を高め、株主・取引先・従業員と共に繁栄し、豊かな社会づくりと地球環境保全に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「ESG投資」「カーボンニュートラル」への対応や「SDGs」の課題解決を目指すとともに、多様性のある人的資本への投資や知的財産の保護を重視しています。また、リスク管理委員会によるガバナンス強化や、法令遵守を基本とした堅実な経営姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期から2028年3月期までの中期経営計画に基づき、最終年度である2028年3月期に以下の数値目標を達成することを目指しています。

* 連結売上高:202億円
* 連結営業利益:8億6千万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:5億1千8百万円
* ROE:8.8%

(4) 成長戦略と重点施策


「構造改革」「基盤強化」「企業価値」「社会貢献」の4つを基本方針として掲げています。具体的には、宇宙ビジネスや防衛装備品事業、VRを活用した訓練ソリューションなどの注力事業へのリソース集約、グループ会社との連携強化を進めています。また、M&Aや資本提携による市場拡大、積極的な人材採用と教育による基盤強化も重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様性に富み即戦力となる中核人材(スペシャリスト)の採用や、従業員給与のベースアップ、階層別・DX研修等の社員教育の充実を進めています。また、ワークライフバランスを重視した環境整備や、本社フロア増床による職場環境の改善など、人的資本への投資を強化し、競争力の優位性確保を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 47.6歳 16.8年 6,439,936円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 10.2%
男性労働者の育児休業取得率 -
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) -
労働者の男女の賃金の差異(非正規) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員のうち外国人比率(2.9%)、従業員のうち女性の比率(32.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

**(1) 製品の製造スケジュールの遅延、瑕疵**
海外メーカー等の製品製造スケジュール遅延や製品瑕疵が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に子会社では製品納期確保のために前渡金を行っていますが、その回収可能性や製品瑕疵もリスクとなります。

**(2) 販売代理店契約の終了**
国内外のメーカーとの販売代理店契約が一方的に打ち切られたり、不利な条件変更を伴う更新を拒絶する場合があります。また、仕入先の倒産等により事業が終了した場合、仕入や前渡金回収が困難になるリスクがあります。

**(3) 在庫リスク**
一部製品については見込発注を行っており、計画通りの販売ができず評価減の対象となる場合があります。これを防ぐため、予算委員会での見直しや不動在庫評価委員会による廃棄処分、発注処理基準の厳格化等で在庫適正化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。