※本記事は、英和株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 英和ってどんな会社?
工業用計測制御機器や産業機械などの製造および直接・卸販売を手掛ける技術総合商社です。
■(1) 会社概要
1947年に個人経営の英和商店として創業し、1948年に英和精器として法人化されました。1989年に大阪証券取引所新二部に株式上場を果たし、1996年に大証二部、2013年に東証二部へと指定替えを行いました。2001年のアイコンの完全子会社化などM&Aを通じて事業を拡大し、2022年に東証スタンダード市場へ移行しました。
従業員数は連結で400名、単体で346名の体制です。筆頭株主は光通信KK投資事業有限責任組合、第2位はUH Partners 2投資事業有限責任組合といずれもファンドが名を連ねており、第3位には事業会社である東京計器が資本参加しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 6.46% |
| UH Partners 2投資事業有限責任組合 | 5.98% |
| 東京計器 | 3.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は阿部吉典氏が務めており、社外取締役の比率は22.2%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 阿部吉典 | 代表取締役社長 | 1996年同社入社。経営企画部長、執行役員、取締役副社長兼営業本部長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
| 阿部健治 | 取締役会長 | 1969年同社入社。常務取締役、専務取締役管理本部長、代表取締役社長、CEOなどを経て、2023年6月より現職。 |
| 玉置崇久 | 取締役常務執行役員管理本部長 | 1988年同社入社。中部営業部長、取締役執行役員営業副本部長などを経て、2025年10月より現職。 |
| 加藤信義 | 取締役常務執行役員営業本部長 | 1995年同社入社。東京本社営業部長、取締役執行役員営業副本部長などを経て、2025年10月より現職。 |
社外取締役は、大熊裕明(元三井物産オートモーティブ代表取締役社長)、岡野喜子(元三井物産中部支社副支社長)です。
2. 事業内容
同社グループは単一セグメントで事業を展開していますが、主に取り扱う品目ごとに事業の概要を解説します。
同社は、工業用計測制御機器、環境計測・分析機器、測定・検査機器、および産業機械等の総合商社として事業を展開しています。顧客層は化学、鉄鋼、造船、社会インフラなど多岐にわたり、生産現場の省力化や環境負荷低減、設備の安定操業に貢献する製品やソリューションを提案しています。
収益源は、直接需要家向けの販売、卸販売、およびシステムやエンジニアリングサービスの提供による対価です。主に同社が販売活動を担うほか、子会社の双葉テックが製造を行い、東武機器などが東北地区でのFA機器販売や電気・計装工事の施工を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高および経常利益ともに右肩上がりで推移しており、堅調な成長を続けています。利益率も段階的に改善しており、安定した収益基盤の強化が図られていることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 374億円 | 413億円 | 433億円 | 471億円 | 488億円 |
| 経常利益 | 16億円 | 20億円 | 24億円 | 29億円 | 30億円 |
| 利益率(%) | 4.3% | 4.8% | 5.6% | 6.1% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 12億円 | 15億円 | 19億円 | 18億円 |
■(2) 損益計算書
売上高、売上総利益ともに前年を上回り、営業利益率も6.1%と高水準を維持しています。高付加価値型のソリューション提案が収益性向上に寄与しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 471億円 | 488億円 |
| 売上総利益 | 82億円 | 87億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.4% | 17.8% |
| 営業利益 | 28億円 | 30億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が25億円(構成比43%)、賞与引当金繰入額が9億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントであるため、事業全体の売上高の推移を示しています。高付加価値型の営業推進により、着実な増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 連結(合計) | 471億円 | 488億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的となる末期型の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | -2億円 |
| 投資CF | -3億円 | -3億円 |
| 財務CF | -9億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は57.9%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「事業は人なり、人は和なりを原点として事業を通じ会社の繁栄、社員の福祉、株主の利益、取引先との共存共栄の維持向上を図りつつ社会に奉仕貢献すること」を経営理念として掲げています。持続可能な社会の実現と企業価値の向上を経営上の重要な課題として位置づけています。
■(2) 企業文化
経営基本方針として「持続可能な成長に向けた5Sの強化<社員(Staff)、スキル(Skill)、戦略(Strategy)、組織(Structure)、システム・制度(System)>」を掲げています。多様な価値観を持つ社員の主体性や創造性を活かし、組織基盤の強化と生産性向上に取り組む文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画において、人的資本経営の推進やDX投資を通じて生産性向上に取り組み、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。以下の具体的な数値目標を掲げています。
・売上高:485億円
・経常利益:27億20百万円
・株主資本利益率(ROE):中長期的に11%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
既存顧客への深耕開発と成長ビジネスへの注力を戦略の柱とし、以下の重点施策を推進しています。
・DXの実現によるセンサーや情報通信機器の拡販
・GX(グリーントランスフォーメーション)の推進による環境負荷低減製品などのソリューション提供
・防災や減災対策に向けた特殊車両や産業機械の拡販
・現場密着営業を通じた新商材の発掘とクロス・セリングの推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最も重要な経営資源と位置づけ、社員の成長なくして企業価値の向上はないとの考えのもと、多様な人材の確保・育成・定着を図る戦略を推進しています。全社員に対する教育研修体系の拡充や、女性がキャリア形成を目指しやすい職場づくり、社内DXによる業務効率化を通じて、従業員エンゲージメントの向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.9歳 | 13.7年 | 7,414,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.9% |
| 男性育児休業取得率 | 62.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 53.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 59.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 58.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況による影響
同社の主力製品である工業用計測制御機器は、国内外の経済環境の悪化による設備投資の動向に大きく影響を受けます。設備更新需要が停止や遅延した場合、同社グループの業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 債権管理に係る影響
経済環境の変動によって取引先企業が倒産するリスクがあります。定期的な信用調査や大口取引での債権保全策など債権管理に努めていますが、倒産の規模や件数によっては、業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 機密情報保護に係る影響
事業展開において保有する機密情報や個人情報が、サイバー攻撃や不正アクセス、内部的過失により漏洩した場合、社会的信用の低下や損害賠償といった法的責任が発生し、業績に影響を与えるリスクがあります。



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