※本記事は、株式会社UEX の有価証券報告書(第71期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. UEXってどんな会社?
ステンレス鋼やチタンなどを扱う専門商社として、金属材料の販売から加工、機械装置のエンジニアリングまで幅広く展開する企業です。
■(1) 会社概要
1955年に株式会社雄司商店として設立され、ステンレス・特殊鋼の販売を開始しました。1990年に日本証券業協会へ店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たしました。その後、主要事業であるステンレス鋼販売の拡大に加え、製造・加工分野の子会社化を進め、2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。
2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は519名、単体では293名です。大株主には、取引関係にある大手総合商社や鉄鋼メーカーが名を連ねています。筆頭株主は事業提携関係にある大手総合商社で、第2位は主要仕入先であるステンレス鋼メーカー、第3位も鉄鋼関連の商社となっており、業界内での結びつきの強さがうかがえます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 住友商事 | 6.53% |
| 日鉄ステンレス | 6.32% |
| 三井物産スチール | 3.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は秀髙雅紀氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岸本 則之 | 取締役会長 | 1979年同社入社。経営企画、経理、総務部門を歴任し、専務取締役を経て2012年より代表取締役社長。2025年3月より現職。 |
| 秀 髙 雅 紀 | 代表取締役社長 | 1986年新日本証券(現みずほ証券)入社。2011年同社入社。経営企画部長、取締役常務執行役員などを経て2025年3月より現職。 |
| 合 瀨 雄 介 | 取締役 | 1989年同社入社。九州支店長、大阪支店長、ユーザー営業部長などを歴任。2024年4月より執行役員営業統括、同年6月より現職。 |
社外取締役は、伊藤哲夫(元環境省自然環境局長)、小佐井優(元住商鋼管代表取締役社長)、新倉陽子(元出光興産デジタル・ICT推進部コミュニケーションリード)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ステンレス鋼その他金属材料の販売事業」「ステンレス鋼その他金属加工製品の製造・販売事業」および「機械装置の製造・販売及びエンジニアリング事業」を展開しています。
■(1) ステンレス鋼その他金属材料の販売事業
ステンレス鋼板、鋼管、条鋼など多様な金属材料の切断・加工および販売を行っています。半導体装置用のステンレス鋼管や、鋳造・鍛造品、機械加工部品なども取り扱っており、幅広い産業分野の顧客へ素材を供給しています。
主に商品を販売した対価として収益を得ています。運営は、同社が中核となり、子会社の令和特殊鋼、UEX管材、日進ステンレス、ナカタニが行っています。また、ステンレス急送が商品の配送業務を担っています。
■(2) ステンレス鋼その他金属加工製品の製造・販売事業
ステンレス鋼製のウェザーカバー(換気扇用カバー)のOEM生産や、ステンレス鋼管および加工製品の製造・販売を行っています。建築関連や産業機器向けの部材として利用されています。
製品の販売対価が主な収益源です。国内では株式会社大崎製作所がウェザーカバーのOEM生産を行い、中国国内においては上海威克斯不銹鋼有限公司がステンレス鋼管等の製造・販売を行っています。
■(3) 機械装置の製造・販売及びエンジニアリング事業
食品産業や化学産業向けを中心とした一般産業用装置の設計・製作を行っています。顧客のニーズに合わせた機械装置やエンジニアリングサービスを提供しています。
装置の販売や設計・製作請負による対価を収益としています。運営は、主に上野エンジニアリング株式会社が行っており、同社から仕入れた商品を元に装置の設計・製作を手掛けています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、売上高は500億円前後で推移しています。利益面では2023年3月期に高い水準を記録しましたが、その後は減少傾向にあります。直近では売上高、利益ともに前期を下回っており、利益率は低下しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 494億円 | 455億円 | 538億円 | 521億円 | 503億円 |
| 経常利益 | 5億円 | 23億円 | 44億円 | 23億円 | 17億円 |
| 利益率(%) | 1.0% | 4.9% | 8.1% | 4.3% | 3.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1億円 | 9億円 | 23億円 | 13億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益計算書を見ると、売上高の減少に伴い売上総利益が縮小しています。売上総利益率、営業利益率ともに低下しており、収益性がやや低下していることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 521億円 | 503億円 |
| 売上総利益 | 99億円 | 95億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.1% | 18.9% |
| 営業利益 | 21億円 | 18億円 |
| 営業利益率(%) | 4.0% | 3.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が28億円(構成比37%)、荷造運搬費が12億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の金属材料販売事業は、販売価格の低下などにより減収減益となりました。加工製品事業も需要軟調により減収減益です。一方、機械装置・エンジニアリング事業は大口案件の寄与により大幅な増収増益となりましたが、全体への影響は限定的でした。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ステンレス鋼その他金属材料の販売事業 | 502億円 | 481億円 | 20億円 | 17億円 | 3.5% |
| ステンレス鋼その他金属加工製品の製造・販売事業 | 14億円 | 13億円 | 0.4億円 | 0.3億円 | 2.0% |
| 機械装置の製造・販売及びエンジニアリング事業 | 5億円 | 9億円 | 0.0億円 | 0.6億円 | 6.8% |
| 連結(合計) | 521億円 | 503億円 | 21億円 | 18億円 | 3.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は「勝負型」のキャッシュ・フロー状態にあります。本業の営業キャッシュ・フローがマイナスとなる一方で、借入等による資金調達を行い、投資活動を継続しています。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 10億円 | -12億円 |
| 投資CF | -6億円 | -5億円 |
| 財務CF | -0.5億円 | 20億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は33.7%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「UEXの志」として、「日本一のステンレス・チタン商社として、世のため人のために役立ちたい。」という企業理念を掲げています。この理念のもと、価値ある流通機能を提供することで社会に貢献し、取引先・社員・株主といったステークホルダーの満足度向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「働きやすく、安心で安全な企業風土の醸成」を掲げています。法令遵守の徹底はもちろんのこと、有給休暇の取得促進や時間外労働の削減、健康経営の実践などを通じて、社員が安心して働ける環境作りを推進しています。また、多様性を受け入れ尊重する組織風土の醸成にも取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経営施策の実行にあたり、営業利益の絶対額および営業利益率の目標値を設定しています。また、資本効率を測る尺度としてROE(自己資本利益率)を経営指標として採用し、中長期的な目標を定めています。キャッシュ・フローの充実にも注力する方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
成熟期を迎えたステンレス流通業において、単なる問屋機能からの脱却を目指しています。具体的には、高付加価値が見込める加工品販売の強化や、顧客ニーズに基づく用途開発の提案営業を推進します。また、半導体・脱炭素・国土強靭化などの成長市場へ社内横断的に取り組み、シェア拡大を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中長期的な企業価値向上のため、多様な視点や価値観を持つ人材の確保と育成を重視しています。特に女性や外国人の登用を課題とし、数値目標を設定して推進しています。また、中途採用社員への研修拡充やインストラクター制度の適用など、多様な人材が活躍できる組織風土の醸成に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.7歳 | 16.4年 | 7,212,049円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員の管理職に占める割合(1.6%)、中途採用者の正社員・継続雇用嘱託に占める割合(60.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況について
国内を中心に事業展開しているため、国内景気の動向や需要の増減が業績に影響を与える可能性があります。また、競合他社との競争において、価格・納期・品質などの競争力が相対的に低下した場合、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) ステンレス鋼価格の変動について
主力事業であるステンレス鋼販売の売上高は全体の約9割を占めています。同事業は商品在庫を保有して販売するため、ステンレス鋼価格が急激に下落した場合、売上総利益率が低下するリスクがあります。価格は需給動向や原料価格(ニッケル等)により変動します。
■(3) 金利の変動について
競争力維持のために必要な在庫や設備の資金の多くを借入金で調達しており、有利子負債残高は約121億円あります。そのため、将来的に金利が上昇した場合には、支払利息の増加により経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(4) 与信リスクについて
販売先との取引の多くが信用取引であるため、厳格な信用管理を行っていますが、不測の事態により販売先の信用状態が悪化し、債権の回収遅延や貸倒れが発生した場合、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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