※本記事は、株式会社マサルの有価証券報告書(第70期、自 2024年10月1日 至 2025年9月30日、2025年12月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. マサルってどんな会社?
マサルは、超高層ビルのシーリング防水工事で実績を持つ、防水・改修工事および設備工事の専門企業グループです。
■(1) 会社概要
同社は1957年に設立され、1968年には日本初の超高層ビルである三井霞が関ビルのシーリング防水工事を施工しました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しに伴い東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。2024年にはイノベイトを設立、空気設備工業を子会社化するなど、グループ体制を強化しています。
現在、同社グループは連結従業員数171名、単体137名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業家資産管理会社の操上、第2位は取引先持株会であるマサル協力企業持株会、第3位は主要取引先である化研マテリアルとなっており、創業家と関係先が安定的に株式を保有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社操上 | 16.30% |
| マサル協力企業持株会 | 5.15% |
| 化研マテリアル株式会社 | 4.84% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は勝又健氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 勝又 健 | 代表取締役社長社長室担当 | 1992年入社。第1営業部長、経営戦略室長を経て2020年より現職。 |
| 苅谷 純 | 代表取締役会長 | 1985年入社。シーリング事業本部長、代表取締役社長を経て2020年より現職。 |
| 操上 悦郎 | 取締役副社長 | 1989年入社。シーリング・防水事業部長、経営企画室長を経て2013年より現職。 |
| 髙橋 聡一郎 | 取締役営業推進室長兼安全環境部担当 | 1989年入社。社長室副室長、第2営業部長を経て2024年12月より現職。 |
| 蛭子屋 新一 | 取締役営業推進室副室長(設計施主・営業情報分析担当) | 1992年入社。第1営業部長、生産計画部長を経て2024年12月より現職。 |
社外取締役は、七海覚(元株木建設千葉営業所所長)、細渕英男(元安藤・間取締役常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建設工事業」および「設備工事業」事業を展開しています。
■(1) 建設工事業
建物の新築防水工事、改修工事、直接受注工事の施工に加え、建築材料販売や機材のレンタルを行っています。特に超高層ビルのシーリング防水工事に強みを持ち、ゼネコンやビルオーナーを主要顧客としています。
収益は、顧客からの工事請負代金や資機材の販売代金から得ています。運営は主に同社および株式会社イノベイトが行っています。
■(2) 設備工事業
空調・冷暖房・給排水等の設備工事の施工に加え、排気装置を主体とした乾燥・塗装装置、集塵装置等の産業用機械の組立・設置・メンテナンスを行っています。
収益は、設備工事の請負代金および機械装置の設置・メンテナンス代金から得ています。運営は株式会社マサルファシリティーズおよび空気設備工業株式会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年9月期から2025年9月期までの業績推移です。売上高は78億円から106億円へと拡大傾向にあり、特に直近の2025年9月期は大幅な増収となっています。利益面でも、経常利益率は3.3%〜6.2%の範囲で推移しており、直近では高い利益率を確保しています。
| 項目 | 2021年9月期 | 2022年9月期 | 2023年9月期 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 78億円 | 70億円 | 86億円 | 89億円 | 106億円 |
| 経常利益 | 4億円 | 2億円 | 5億円 | 4億円 | 7億円 |
| 利益率(%) | 5.4% | 3.3% | 6.0% | 4.7% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 2億円 | 3億円 | 3億円 | 4億円 |
■(2) 損益計算書
2024年9月期と2025年9月期の比較です。増収効果により売上総利益が増加し、営業利益も大幅に伸長しました。営業利益率は4.6%から6.0%へと改善しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年9月期 | 2025年9月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 89億円 | 106億円 |
| 売上総利益 | 18億円 | 22億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.0% | 20.9% |
| 営業利益 | 4億円 | 6億円 |
| 営業利益率(%) | 4.6% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が5億円(構成比34%)、賞与引当金繰入額が2億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの業績です。建設工事業は安定的に推移し、利益の柱となっています。設備工事業は大型案件の完工などにより売上が急拡大し、利益も倍増しました。
| 区分 | 売上(2024年9月期) | 売上(2025年9月期) | 利益(2024年9月期) | 利益(2025年9月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建設工事業 | 81億円 | 92億円 | 4億円 | 6億円 | 6.2% |
| 設備工事業 | 9億円 | 15億円 | 0億円 | 1億円 | 4.7% |
| 調整額 | - | - | 0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 89億円 | 106億円 | 4億円 | 6億円 | 6.0% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
マサル社のキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
同社は、営業活動により多額の資金を獲得しました。これは、仕入債務の減少や法人税等の支払いがあったものの、未成工事支出金の減少や売上債権の減少が主な要因です。投資活動では、保険の解約等による収入により、わずかながら資金が増加しました。財務活動では、長期借入金の借入による収入があったものの、長期借入金の返済や社債の償還により、資金が使用されました。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
企画提案力・技術開発力・施工力を総合的に強化し、顧客ニーズに合う高品質の商品を提供すること、また専門業者としての見識を再構築し企業イメージの向上を図ることを基本方針としています。新築市場およびリニューアル市場において顧客の信頼に応え、社会の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「100年選ばれ続ける会社を目指す!」を長期的なテーマとして掲げ、急激に変化する経営環境の中でも永続的な成長ができる総合専門工事会社となることを目指しています。SDGsへの取り組みも強化し、長期的視野での態勢整備と業務推進により、業容拡大と業績向上を図る姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2021年10月から2030年9月までの9ヵ年に及ぶ長期経営計画のもと、最終年度の達成目標として以下の3つのテーマを掲げています。
* ゼネコン上位10社でのシェアNo.1
* ROE 15%
* 成長性分野開拓
■(4) 成長戦略と重点施策
「ゼネコン上位10社でのシェアNo.1」に向けた営業情報の共有や受注体制の強化、仮設工事との業務提携などによる受注領域の拡大を推進しています。また、生産性向上として着工前検討会の強化や、周辺分野へのM&Aを含む戦略的投資を実行し、成長性分野の開拓に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
労働集約型ビジネスである建設業において「労働力の確保」と「イノベーション」を主要課題と認識しています。性別や国籍を問わない採用、ウェルネス推進室による健康維持、男性育休取得促進などを進めています。育成面では、若年層への専門知識研修とOJT、中長期的な社内共通知識の習得を通じて、マネジメント力の高い人材の育成を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年9月期 | 45.2歳 | 12.1年 | 6,627,859円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職新卒採用の女性割合(59.7%)、年次有給休暇の取得率(76.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 取引先の信用のリスク
取引先に関して審査や信用不安情報の収集を行っていますが、発注者や協力会社等に信用不安が生じた場合、資金回収の懸念や工期の遅延など、予定外の事態により業績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 建設市場の動向
主たる事業である防水工事業は請負形態をとっており、受注先の動向による受注額の増減や、競合他社との受注競争激化による低採算化などが発生した場合、収益力の低下を通じて業績等に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 重大事故の発生
安全管理には万全を期していますが、施工中に予期しない重大事故が発生した場合、関係諸官庁からの行政処分を受けることなどにより、社会的信用の失墜を含め、業績等に影響を及ぼす可能性があります。



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