大丸エナウィン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大丸エナウィン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する大丸エナウィンは、LPガスや住宅設備を扱うリビング事業を主軸に、アクア事業や医療・産業ガス事業を展開しています。直近の業績は、販売単価の下落等により減収となったものの、増益を確保しました。安定した経営基盤をもとに、さらなる企業価値向上を目指しています。


※本記事は、大丸エナウィン株式会社の有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大丸エナウィンってどんな会社?


LPガスなどのエネルギー供給を中心に、医療用ガスやミネラルウォーターなどを提供するインフラ企業です。

(1) 会社概要


同社は1951年に大丸工業として設立され、1954年にLPガスおよびガス器具の販売を開始しました。1991年には大阪証券取引所市場第二部特別指定銘柄に株式を上場しています。2002年に現在の大丸エナウィンに商号を変更し、2004年にはアクア推進部を設置してミネラルウォーターの販売を開始しました。

現在の同社グループは、連結従業員数676名、単体従業員数478名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は取引先持株会の大丸エナウィン共栄会で、第2位は事業会社のENEOSグローブです。

氏名 持株比率
大丸エナウィン共栄会 11.99%
ENEOSグローブ 6.50%
光通信KK投資事業有限責任組合 無限責任組合員光通信 4.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は居内清和が務めています。社外取締役比率は22.2%です。

氏名 役職 主な経歴
居内清和 代表取締役社長執行役員 1994年4月同社入社。大阪支店長、常務取締役リビング事業本部長などを経て2025年6月より現職。
古野晃 代表取締役会長 1971年3月同社入社。滋賀支店長、常務取締役リビング事業本部長、代表取締役社長などを経て2025年6月より現職。
青木重人 取締役専務執行役員営業統轄医療・産業ガス事業本部長兼医療ガス部長 1985年3月同社入社。滋賀支店長、医療・産業ガス事業本部長などを経て2026年4月より現職。
宮前雅彦 取締役常務執行役員総務部長兼情報企画部長 1985年6月同社入社。情報企画部長、執行役員総務部長などを経て2023年6月より現職。
塚本晃久 取締役上席執行役員財務部長 2011年11月大塚倉庫入社。2015年11月同社入社。財務部長などを経て2023年10月より現職。
越中紳浩 取締役上席執行役員在宅医療部長 2007年3月同社入社。滋賀支店課長、キンキ酸器代表取締役社長などを経て2024年6月より現職。
小川貢 取締役(監査等委員) 1986年4月同社入社。大阪支店副支店長、和歌山支店長、営業管理部長などを経て2023年6月より現職。


社外取締役は、松井大輔(ネクサス監査法人代表社員)、松本裕美(岸田・松本法律事務所)です。

2. 事業内容


同社グループは、「リビング事業」「アクア事業」「医療・産業ガス事業」を展開しています。

(1) リビング事業


プロパンガスやブタンガスのほか、石油製品や住宅設備機器を家庭用・業務用・工業用ユーザーへ小売・卸売販売しています。

顧客からガスの販売代金や住宅設備の販売・工事代金を受け取ります。運営は同社のほか、丸信ガス、湖東ガス、フモト商会などの子会社が行っています。

(2) アクア事業


自社工場で製造したミネラルウォーター「エフィールウォーター」や「スーパーバナジウム富士」などの宅配を行っています。

商品の販売代金を顧客から受け取ります。同社が主体となって運営を行っています。

(3) 医療・産業ガス事業


在宅医療機器のレンタルや保守管理、医療・産業用ガスの製造販売、産業機材の販売などを展開しています。

医師の処方に基づく在宅酸素療法等の機器レンタル料やガスの販売代金を受け取ります。運営は同社や子会社のキンキ酸器、近畿酸素が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、燃料価格の変動等の影響を受けつつも300億円規模の売上を安定して計上しています。経常利益も概ね10億円台で推移しており、直近では利益率が改善傾向にあるなど、底堅い収益力を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 265億円 306億円 299億円 334億円 327億円
経常利益 11億円 11億円 12億円 14億円 14億円
利益率(%) 4.0% 3.7% 3.9% 4.1% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 7億円 6億円 7億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高は前年を下回りましたが、売上総利益および営業利益は増益となりました。仕入価格に連動する販売単価の下落等があった一方で、在宅医療機器のレンタル増加などが利益率の向上に貢献しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 334億円 327億円
売上総利益 102億円 105億円
売上総利益率(%) 30.6% 32.1%
営業利益 13億円 13億円
営業利益率(%) 3.8% 4.0%


販売費及び一般管理費(92億円)のうち、給料が25億円(構成比27%)、運賃が9億円(同10%)、備品消耗品費が8億円(同9%)を占めています。売上原価は222億円です。

(3) セグメント収益


主力の事業であるリビング事業は仕入価格に連動する販売単価の下落等により減収となりました。一方、医療・産業ガス事業は在宅医療機器のレンタル増加などにより増収となり、成長を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
リビング事業 240億円 225億円
アクア事業 12億円 13億円
医療・産業ガス事業 81億円 90億円
連結(合計) 334億円 327億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスの「健全型」です。営業活動で得た資金で設備投資を行い、借入金の返済等も進めている安定した状態といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 20億円 27億円
投資CF -17億円 -23億円
財務CF -9億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「保安なくして繁栄なし」をモットーとしています。「保安の確保」「安定供給」を追求するとともに、快適で安全な暮らしのサポーターとなることを目指しており、地域社会に不可欠なインフラ企業としての使命を掲げています。

(2) 企業文化


同社グループは、行動指針として「和のこころ」「感謝をあらわす」「真摯で誠実に向き合う」「保安なくして繁栄なし」「持続的に成長する」という価値観を重視しています。安全・安心を最優先としつつ、多様な人材が真摯に業務に取り組み、持続的な成長を実現する文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループの経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標(KPI)として、営業利益および自己資本利益率(ROE)を重視しています。

* ROE:8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


事業ポートフォリオの最適化を図るため、リビング事業を維持発展させながら、アクア事業および医療・産業ガス事業を第2、第3の収益の柱として育成しています。営業力の強化や、M&A・営業権の譲受けによる新規販売先の獲得など、事業規模の拡大に積極的に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


地域社会の持続的発展への貢献を使命とし、地元出身者の採用を積極的に推進しています。職種別・階層別の研修を体系的に実施し、従業員の主体的なキャリア形成を支援するほか、各種休暇制度や柔軟な勤務制度を整備し、多様な人材が長期的に活躍できる組織基盤の強化を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 47.0歳 12.6年 5,296,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 84.6%
男女賃金差異(全労働者) 63.6%
男女賃金差異(正規雇用) 67.2%
男女賃金差異(パート・有期) 49.4%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用者比率(76.9%)、管理職の中途採用者比率(32.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 燃料の仕入価格の変動


LPガスの調達は輸入に依存しており、国際的な政治・経済情勢や為替変動、国内の需給関係によって仕入価格が変動します。これらを販売価格に転嫁できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 他エネルギーとの競合


LPガス事業はオール電化や都市ガスなどとの競争が激化しています。顧客が他エネルギーへ転換しユーザー数が減少した場合、収益に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 法的規制等への対応


ガス事業やミネラルウォーターの製造、医療・産業用ガスの販売において、各種法令や規制を受けています。法改正や薬価改定などが行われた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 保安及び品質管理


可燃性や毒性を有する高圧ガスを取り扱っており、万が一の漏洩や爆発等の事故が発生した場合、甚大な損害が生じるリスクがあります。また、ミネラルウォーターの品質問題が発生した場合も業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。