※本記事は、大丸エナウィン株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大丸エナウィンってどんな会社?
LPガス販売を主力とするエネルギー商社です。医療・産業ガスやミネラルウォーター事業など多角化を進めています。
■(1) 会社概要
1951年に溶接機材等の販売を行う大丸工業として設立され、1954年にLPガス販売を開始しました。1991年に大証二部に上場し、2000年には東証二部に上場しました。2002年に現社名の大丸エナウィンへ商号変更し、2004年にはミネラルウォーター販売を開始するなど事業を拡大。近年はM&Aによる商圏拡大を推進しています。
連結従業員数は668名、単体では469名です。筆頭株主は取引先持株会である大丸エナウィン共栄会で、第2位はLPガス元売大手のENEOSグローブ、第3位は通信サービス等の光通信となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大丸エナウィン共栄会 | 11.75% |
| ENEOSグローブ | 6.51% |
| 光通信 | 4.78% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は居内 清和氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 居内 清和 | 代表取締役社長執行役員 | 1994年入社。奈良営業所長、大阪支店長、リビング事業本部長などを歴任。2021年常務取締役、2023年取締役常務執行役員を経て、2025年6月より現職。 |
| 古野 晃 | 代表取締役会長 | 1971年入社。滋賀支店長、リビング事業本部長などを経て、2013年代表取締役社長に就任。2025年6月より現職。 |
| 青木 重人 | 取締役専務執行役員医療・産業ガス事業本部長兼医療ガス部長 | 1985年入社。滋賀支店長、新エネルギー部長などを歴任。2018年取締役医療・産業ガス事業本部長に就任。2025年6月より現職。 |
| 宮前 雅彦 | 取締役常務執行役員総務部長兼情報企画部長 | 1985年入社。情報企画部長を経て、2017年執行役員総務部長兼情報企画部長に就任。2018年取締役となり、2023年6月より現職。 |
| 塚本 晃久 | 取締役上席執行役員財務部長 | 公認会計士。監査法人トーマツ、大塚倉庫を経て、2015年入社。営業管理部長を経て、2018年財務部長に就任。2019年取締役となり、2023年10月より現職。 |
| 越中 紳浩 | 取締役上席執行役員在宅医療部長 | 警察局、医療機器会社を経て2007年入社。在宅・医療ガス部長、子会社キンキ酸器社長などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 小川 貢 | 取締役(監査等委員) | 1986年入社。和歌山支店長、営業管理部長などを経て、2022年取締役営業管理部長に就任。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、松井 大輔(公認会計士・税理士)、松本 裕美(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「リビング事業」、「アクア事業」、「医療・産業ガス事業」を展開しています。
■(1) リビング事業
家庭用・業務用・工業用のLPガスやブタンガス、石油製品の供給を行うほか、ガス機器や住宅設備機器の販売、リフォーム工事、設備工事などを手掛けています。個人顧客から法人顧客まで幅広くエネルギーと住まいに関するサービスを提供しています。
収益は、LPガスや石油製品、住宅設備機器の販売代金や工事代金などから得ています。LPガスは検針に基づく従量課金が基本です。運営は主に同社が行うほか、丸信ガス、湖東ガス、フモト商会、角丸エナジー、太陽プロパン、クサネンなどの連結子会社も各地域で販売を担っています。
■(2) アクア事業
ミネラルウォーターの製造および宅配サービスを展開しています。「知床らうす海洋深層水純水ブレンド(エフィールウォーター)」および「スーパーバナジウム富士」というブランドの水を取り扱っています。
収益は、一般家庭やオフィスなどの顧客に対するボトルウォーターの販売代金から得ています。運営は主に同社が行っており、自社工場(鈴鹿工場、山中湖工場)で製造し、自社配送網等を通じて顧客へ届けています。
■(3) 医療・産業ガス事業
医療機関や在宅患者向けに医療用ガスの販売や在宅医療機器(在宅酸素療法、CPAP等)のレンタル・保守管理を行うほか、産業用高圧ガスや産業機材の販売を行っています。
収益は、医療・産業用ガスの販売代金、在宅医療機器のレンタル料、産業機材の販売代金などから得ています。運営は同社および連結子会社のキンキ酸器、近畿酸素が行っており、高圧ガス充填設備を持つ拠点を活用して供給体制を構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2025年3月期までの直近5期間において、売上高は着実に拡大傾向にあります。特に直近の2025年3月期は売上高が300億円を超え、利益面でも経常利益や当期純利益が増加しました。利益率は安定して推移しており、堅実な成長を続けています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 214.2億円 | 265.1億円 | 306.4億円 | 299.1億円 | 334.2億円 |
| 経常利益 | 11.0億円 | 10.6億円 | 11.2億円 | 11.7億円 | 13.6億円 |
| 利益率(%) | 5.1% | 4.0% | 3.7% | 3.9% | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6.7億円 | 7.6億円 | 6.6億円 | 7.3億円 | 8.9億円 |
■(2) 損益計算書
2024年3月期から2025年3月期にかけて、売上高および各利益段階で増加が見られます。売上総利益率はほぼ横ばいで推移していますが、増収効果により売上総利益額は増加し、営業利益率も改善傾向にあります。販管費のコントロールも効いており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 299.1億円 | 334.2億円 |
| 売上総利益 | 99.6億円 | 102.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.3% | 30.6% |
| 営業利益 | 10.5億円 | 12.7億円 |
| 営業利益率(%) | 3.5% | 3.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が23億円(構成比26%)、運賃が9億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
リビング事業はLPガス販売単価上昇や数量増により増収増益となりました。医療・産業ガス事業は在宅医療機器レンタルやガス販売が好調で大幅な増益を達成しています。アクア事業は増収ながらも利益は微増にとどまりました。全セグメントで黒字を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| リビング事業 | 213.7億円 | 240.4億円 | 6.5億円 | 7.4億円 | 3.1% |
| アクア事業 | 12.2億円 | 12.3億円 | 0.6億円 | 0.6億円 | 5.1% |
| 医療・産業ガス事業 | 73.2億円 | 81.4億円 | 3.5億円 | 4.7億円 | 5.7% |
| 連結(合計) | 299.1億円 | 334.2億円 | 10.5億円 | 12.7億円 | 3.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
大丸エナウィンは、営業活動により安定的に資金を生み出し、事業拡大のための投資を継続しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や減価償却費、のれん償却額などにより、前連結会計年度に引き続きプラスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産の取得による支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入れによる収入と返済、長期借入金の返済、配当金の支払いなどにより、支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 22.8億円 | 20.2億円 |
| 投資CF | -14.5億円 | -16.7億円 |
| 財務CF | -9.8億円 | -8.6億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「保安なくして繁栄なし」をモットーに掲げています。「保安の確保」と「安定供給」を追求し、快適で安全な暮らしのサポーターとなることを目指しています。LPガス販売を中核に発展してきた歴史を背景に、安全・安心を事業の根幹に据えています。
■(2) 企業文化
「グループ協働でNextステージへPartⅡ~自ら考動(考えて動く)し実践あるのみ~」といったテーマを掲げ、社員一人一人が目標に向けて自由な発想で新たな商機を生み出すことを重視しています。グループ全体でのイノベーション創出と更なる成長・発展を目指す行動様式が推奨されています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、経営上の目標達成状況を判断する客観的な指標(KPI)として、営業利益および自己資本利益率(ROE)を重視しています。
* ROE 8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
事業ポートフォリオの最適化を目指し、各事業の自立と効率化を進めています。リビング事業ではM&Aや新規開拓による顧客基盤の拡大、CN推進部による脱炭素商材の普及を図ります。医療・産業ガス事業やアクア事業を第2、第3の柱とすべく、M&Aも含めた規模拡大施策を展開し、収益の安定化を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材の多様性確保と女性活躍推進を掲げ、女性管理職への登用や新入社員の女性総合職採用を積極的に進めています。また、保安法令遵守のための資格取得支援や各種研修制度を整備し、人材育成に注力しています。中途採用者の活用も進んでおり、役員や管理職への登用実績もあります。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.6歳 | 11.1年 | 5,275,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 61.5% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 62.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 64.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 54.0% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 燃料の仕入価格の変動
LPガスの調達は輸入に依存しているため、国際情勢や為替変動、国内需給の影響を受けます。仕入価格の変動を販売価格に完全に転嫁できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、事業ポートフォリオの最適化を図りリスク分散に努めています。
■(2) 他エネルギーとの競合
主力商品であるLPガスは、オール電化や都市ガスとの競争が激化しています。顧客が他エネルギーへ転換し契約数が減少した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。同社は災害時のバックアップエネルギーとしての優位性を訴求するなど、提案力の強化に取り組んでいます。
■(3) 季節的な変動要因
LPガスの消費量は気温や水温の影響を大きく受け、冬季に増加し夏季に減少する傾向があります。そのため、業績は下期に偏重する特性があります。また、暖冬などの特異な気象条件により販売量が減少した場合、業績に影響が出る可能性があります。



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