※本記事は、エムティジェネックス株式会社の有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. エムティジェネックスってどんな会社?
オフィスビルの内装工事や駐車場運営管理などを手掛け、快適な都市環境を提供する企業です。
■(1) 会社概要
1945年に金網卸売業として創業し、1953年に会社を設立しました。1999年に森トラストと資本業務提携を結び、2002年に現在のエムティジェネックスへ商号を変更しています。2007年には戸田建設と業務提携しリニューアル事業を開始したほか、近年もM&Aにより電気設備工事などの事業領域を拡大しています。
従業員数は連結で151名、単体で33名体制です。筆頭株主は親会社であり不動産事業を展開する森トラストで、過半数の株式を保有しています。第2位は投資ファンドのUH Partners 2投資事業有限責任組合、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合となっており、事業会社と投資事業組合が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 森トラスト | 53.39% |
| UH Partners 2投資事業有限責任組合 | 7.68% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 6.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は松井徳彦氏が務めており、社外取締役比率は50.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 松井徳彦 | 代表取締役社長 | 1988年4月森ビル入社。森トラスト執行役員営業本部経営戦略部長、同社執行役員仙台支店長等を経て、2026年6月より現職。 |
| 鈴木均 | 取締役会長 | 1975年4月森ビル入社。森トラスト管理部長、同社代表取締役社長等を経て、2026年6月より現職。 |
| 篠﨑延夫 | 取締役リニューアル事業部長 | 1981年4月森ビル入社。森トラスト・ビルマネジメント総務部長、同社執行役員リニューアル事業部長等を経て、2019年6月より現職。 |
| 豊島正守 | 取締役営業企画部長兼ビル管理事業部長兼駐車場事業部管掌 | 1990年4月森ビル観光入社。森トラスト・ホテルズ&リゾーツ取締役営業部長等を経て、2026年6月より現職。 |
| 長野幸司 | 取締役管理部管掌 | 1992年4月ミサワリゾート入社。森トラスト財務部を経て、同社管理部経理課長。2021年6月より現職。 |
社外取締役は、安達智一(戸田建設建築営業統轄部副統轄部長)、櫻井俊樹(元国土交通省海事局次長)、井上善雄(エル・スタッフビジョン代表取締役社長)、奥村太久実(むさしの税理士法人代表社員)、福田実主(三菱HCキャピタルエグゼクティブ・エキスパート)です。
2. 事業内容
同社グループは、「リニューアル」「駐車場」「施設等保守管理」「保険代理」事業を展開しています。
■リニューアル事業
オフィスビルや住宅等の内装工事、リニューアル工事、外構工事等の請負および設計施工監理を行っています。親会社である森トラストが所有する不動産関連の工事受注を主な事業基盤としています。
顧客からの工事請負代金が主な収益源です。運営は主にエムティジェネックスが担うほか、子会社であるエムティアイテックが電気設備工事や電気通信工事を展開し、サービスを提供しています。
■駐車場事業
親会社が所有する駐車場の運営管理を受託しているほか、親会社から駐車場を賃借し、時間貸しおよび月極駐車場の運営・管理サービスを提供しています。
駐車場の利用者からの時間貸しおよび月極の利用料金、ならびに親会社からの駐車場運営管理の受託手数料が主な収益源です。事業の運営は主にエムティジェネックスが行っています。
■施設等保守管理事業
オフィス向けの衛生消耗品の販売をはじめ、電気設備システムの保守・保全作業、賃貸ビル管理など、不動産の運営管理に付随する幅広いサービスを提供しています。
顧客からの設備保守・管理手数料や、衛生消耗品等の物品販売代金が主な収益源です。運営はエムティジェネックスが行うほか、子会社のチヨダMEサービスが保守保全業務を担っています。
■保険代理事業
各種損害保険などの総合的なリスクマネジメントプランの企画・提案を行う保険代理業務を提供しています。親会社の森トラストに対しても積極的なプランの提案を行っています。
保険会社との委託契約に基づいて支払われる保険代理店手数料が主な収益源となっています。この事業の運営は、子会社である森トラスト保険サービスが専門的に担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5年間で約29億円から47億円へと順調に拡大を続けており、特に直近の事業年度では大規模オフィス工事の受注増により大幅な増収となっています。経常利益も売上拡大に伴い増加傾向にあり、10%台の安定した利益率を維持しながら着実な成長を実現しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 29.7億円 | 32.6億円 | 37.9億円 | 39.5億円 | 47.1億円 |
| 経常利益 | 3.4億円 | 3.8億円 | 4.5億円 | 4.3億円 | 4.9億円 |
| 利益率(%) | 11.5% | 11.7% | 11.9% | 10.9% | 10.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2.0億円 | 2.5億円 | 3.0億円 | 2.6億円 | 3.1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回って着地しています。一方で利益率については、中長期的な事業拡大を目指した採用費や広告宣伝費の増加などの影響もあり、前期と比較してやや低下する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 39.5億円 | 47.1億円 |
| 売上総利益 | 10.1億円 | 11.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 25.5% | 23.3% |
| 営業利益 | 4.1億円 | 4.6億円 |
| 営業利益率(%) | 10.4% | 9.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料・手当が1.7億円(構成比27%)、役員報酬が0.7億円(同11%)、のれんの償却額が0.5億円(同8%)を占めています。また、事業の特性上、売上原価の内訳として工事等にかかる外注加工費が高い割合を占める構造となっています。
■(3) セグメント収益
主力のリニューアル事業が大規模オフィス内装工事等の好調により大きく伸長したほか、駐車場事業や施設等保守管理事業も堅調に推移し、増収増益に貢献しました。一方、保険代理事業は契約ポートフォリオの見直しに伴い微減となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| リニューアル | 14.7億円 | 20.0億円 | 2.3億円 | 2.8億円 | 13.8% |
| 駐車場 | 14.6億円 | 15.9億円 | 2.7億円 | 2.9億円 | 18.3% |
| 施設等保守管理 | 9.6億円 | 10.6億円 | 0.8億円 | 0.9億円 | 8.1% |
| 保険代理 | 0.7億円 | 0.7億円 | 0.4億円 | 0.3億円 | 45.7% |
| 連結(合計) | 39.5億円 | 47.1億円 | 4.1億円 | 4.6億円 | 9.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.0億円 | 0.8億円 |
| 投資CF | -0.1億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | -1.1億円 | -0.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も77.9%といずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「時代のニーズに応じた快適な都市環境・オフィス空間の提供を通じて、持続的な社会の実現に貢献すること」を経営の基本方針として掲げています。同社が培ってきたビル管理業務における技術やノウハウを最大限に活かし、人々の生活やビジネスを支える基盤づくりを通じて社会に価値を提供することを目指しています。
■(2) 企業文化
取締役や従業員一人ひとりが社会における存在意義(Purpose)を強く認識し、健全な事業活動を遂行するための「行動準則」や「企業倫理規程」を定めています。コンプライアンスの遵守を徹底するとともに、人材を組織の持続的成長の担い手と位置づけ、社員のスキル向上や挑戦を後押しする文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
経営の効率化および株主利益を重視する視点から、経営における重要な指標として以下の数値を目標に掲げています。中長期的な視点で企業価値の向上を図り、安定的な収益基盤の維持と成長投資のバランスを取ることを目指しています。
* ROE(自己資本利益率):10%
■(4) 成長戦略と重点施策
安定的な収益基盤の維持に努めるとともに、これまで蓄積された内部留保資金を有効活用し、既存事業の拡大や新規事業参入に向けたM&Aを慎重に検討・推進します。同時に、事業規模拡大や親会社グループ外の顧客獲得に向けた営業強化、サービス品質や技術力を高めるための人材育成にも継続して注力していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
多様な人材の確保および活躍を重要な経営課題と位置づけ、社員が安心して長期的に能力を発揮できる環境整備を推進しています。人材育成費をコストではなく重要な資本投資と捉え、資格取得の積極的な支援や他事業部での研修・体験プログラムを実施することで、社員の自律的なキャリア形成と専門性の強化を後押ししています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 49.3歳 | 6.2年 | 5,908,494円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
同社および連結子会社は従業員規模が300人以下のため、有報には一部項目の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年次有給休暇取得率(82.1%)、長時間労働時間(月2.3時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 森トラストグループへの事業依存
同社は森トラストの子会社であり、同社および同グループ各社から駐車場運営、内装工事、ビル管理、保険契約などを多数受注しています。今後、親会社グループの事業展開や取引形態の見直しなどが行われた場合、同社の収益基盤や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 首都圏エリアへの事業集中
同社グループが運営・管理する駐車場および不動産物件は、東京都内に集中して展開されています。そのため、東京近郊において大規模な地震などの自然災害や不測の事態が発生し、管理物件が損壊・閉鎖に追い込まれた場合、事業活動に支障をきたし業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) M&Aに伴う事業展開リスク
事業拡大や新規事業参入を目的としたM&Aを経営戦略の柱の一つとしています。対象企業のデューデリジェンスを徹底し慎重に投資判断を行いますが、買収後に予期せぬ偶発債務が発生したり、想定通りのシナジー効果が得られず減損損失が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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