日伝 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日伝 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場上場の日伝は、動力伝導機器や産業・制御機器など機械設備関連商品の販売を主力とする専門商社です。2026年3月期の業績は、半導体製造装置関連需要が堅調に推移し、売上高1,410億円、経常利益75億円の増収増益を達成。持続的な企業価値の向上と社会価値の創造に取り組んでいます。


※本記事は、株式会社日伝の有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 日伝ってどんな会社?


同社は動力伝導機器や産業・制御機器の専門商社として、日本のモノづくりを支える企業です。

(1) 会社概要


1952年に日本伝導として設立され、1989年に現在の日伝へ社名を変更しました。2004年にジャスダック上場を果たし、2006年には東京証券取引所第一部(現プライム市場)へ上場しました。近年は、2018年にエヌピーエーシステムを完全子会社化し、2024年にはアペルザを子会社化するなど、事業領域とオンラインプラットフォームの拡充を推進しています。

従業員数は連結で1,050名、単体で928名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は日伝共栄会で、第2位は日伝仕入先持株会、第3位は利双企画となっています。取引先や関係団体を中心とした安定した株主構成が特徴です。

氏名 持株比率
日伝共栄会 12.61%
日伝仕入先持株会 8.11%
利双企画 5.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は福家利一氏が務めています。社外取締役比率は約33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
福家利一 代表取締役 社長執行役員 1986年同社入社。京都支店長、営業本部長などを経て2011年6月より代表取締役社長。2021年4月より現職。
岡本賢一 代表取締役 専務執行役員営業統括 1976年同社入社。東京支店長、東部ブロック長などを経て2019年4月に専務取締役。2024年4月より現職。
寒川睦志 取締役 常務執行役員管理本部長 1985年同社入社。四国支店長、名古屋支店長、中部ブロック長などを経て2019年4月に常務取締役。2021年4月より現職。
森田淳二 取締役 常務執行役員営業推進本部長 1982年同社入社。東部MEシステム部長、東部ブロック長などを経て2018年6月に取締役。2024年4月より現職。
佐々木一 取締役 顧問西部ブロック管掌 1982年同社入社。九州支店長、営業本部長などを経て2021年4月に取締役上席執行役員。2026年4月より現職。
檜垣泰雄 取締役(常勤監査等委員) 1980年富士電機製造入社。1986年同社入社。経営企画部長、管理本部長などを経て2013年6月に取締役。2021年6月より現職。


社外取締役は、古田清和氏(元新日本監査法人社員・甲南大学名誉教授)、川上勝氏(川上会計事務所所長)、寺嶋康子氏(オフィステラ代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「動力伝導機器」「産業機器」「制御機器」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 動力伝導機器


減速機、変速機、チェーン・ベルト伝導用品、歯車、ベアリング、直動機器などの機械設備や新素材などの販売を行っています。主に製造業における各種生産設備向けに提供しています。

顧客企業への機器や部品の販売代金を収益源としています。事業の運営は、主に同社のほか、日伝国際貿易(上海)有限公司やNICHIDEN TRADING (Thailand) Co.,Ltd.などの海外子会社が担っています。

(2) 産業機器


コンベヤ、運搬機器、昇降機、保管システム、環境機器、ポンプなどの各種産業機器や荷役関連設備の販売を手掛けています。多様な製造現場の合理化や省力化、安全性向上を支援しています。

ユーザーに対する機械設備やシステムの販売代金を収益として受け取ります。同社が主体となって販売を行うほか、子会社の岡崎機械が木工用機械などの産業機器の販売を行っています。

(3) 制御機器


油圧・空圧機器、画像処理システム、センサー、ロボット、通信・ネットワーク機器など、工場の自動化(FA)に不可欠な制御関連機器を幅広く取り扱っています。

製造現場の自動化やDX化に寄与する製品の販売およびシステム提案の対価が収益源です。同社が販売を担うほか、子会社のエヌピーエーシステムが油圧システムなどの設計・製造を行っています。

(4) その他


除菌消臭装置の製造・販売や、ものづくり産業向けオンラインプラットフォームの提供など、新規領域での事業を展開し、多様化する顧客ニーズに対応しています。

製品の販売やプラットフォーム利用料などが収益源となります。主に空間洗浄Lab.が機器の製造・販売を行い、アペルザがオンラインプラットフォームの提供を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の業績は、製造業の自動化需要を背景に安定した推移を見せています。売上高は1,200億円台から1,400億円台へと拡大基調にあり、経常利益も70億円台に乗せるなど、堅調な利益水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,240億円 1,316億円 1,269億円 1,348億円 1,410億円
経常利益 61億円 68億円 64億円 72億円 75億円
利益率(%) 4.9% 5.1% 5.1% 5.3% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 40億円 46億円 45億円 52億円 52億円

(2) 損益計算書


売上高は増加したものの、営業利益率はわずかに低下しました。一方で、売上総利益率は約15%と安定した水準で推移しており、確固たる収益基盤を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,348億円 1,410億円
売上総利益 207億円 216億円
売上総利益率(%) 15.3% 15.3%
営業利益 68億円 66億円
営業利益率(%) 5.1% 4.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が61億円(構成比41%)、減価償却費が12億円(同8%)を占めています。売上原価は1,194億円で、売上高に対する原価率は約85%となっています。

(3) セグメント収益


商品区分別の売上高は、すべての領域で前年を上回る実績となりました。特に制御機器は、ロボットやセンサーなどの需要が堅調に推移し、全体の成長を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
動力伝導機器 559億円 573億円
産業機器 325億円 336億円
制御機器 461億円 497億円
その他 3億円 4億円
連結(合計) 1,348億円 1,410億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 45億円 43億円
投資CF 33億円 -5億円
財務CF -63億円 -28億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社是に「誠実」を掲げ、堅実経営に徹し、取引先をはじめとするステークホルダーと対話することにより信頼関係を築くことを基本方針としています。企業価値の向上を図るため産業界のニーズを先取りし、未来を拓く新分野に目を向けながら製造業全般の高度化や省力化を通して社会に貢献しています。

(2) 企業文化


同社は「誠実」であることにこだわり続け、突出した提案力と調達力を磨く文化を重視しています。また、『つくる人・つかう人の想いを繋ぎ、誠実にモノづくりの未来に貢献する』というパーパス(存在意義)を事業活動の判断軸として実践し、社会課題の解決による持続可能な社会の実現を目指しています。

(3) 経営計画・目標


景気に左右されない自立成長型企業を目指し、生産性と効率性を重視しています。中長期的に安定して以下の指標を達成することを目標としています。

* 営業利益率:5.0%以上
* 1人当たりの営業利益額:700万円以上
* 総資産経常利益率:6.5%以上
* 自己資本利益率:8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


2024年度から第4次中期経営計画「New Dedication2026~新たな貢献へ~」を推進しています。これまで培ってきた「商社機能」にサステナビリティの視点も加え、多様で複雑なモノづくりの課題対応を目指しています。

* パートナーシップ戦略
* 成長市場でのビジネス拡大
* 社会・環境課題ビジネスの取り組み
* サステナビリティ経営や業務改革・DXの推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「誠実」の発揮を根幹とし、ポジティブかつ柔軟な思考で新たなことに挑戦する人材の育成に取り組んでいます。多様な価値観を持つ社員が対話を通じて成長・活躍できるよう、キャリア形成支援やマネジメント力強化研修を展開するとともに、時短勤務制度の拡充など働きがいと心の豊かさを感じられる職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.7歳 13.5年 6,542,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 68.8%
男女賃金差異(全労働者) 67.9%
男女賃金差異(正規労働者) 71.4%
男女賃金差異(非正規労働者) 30.0%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(66.9%)、新卒女性総合職採用率(41.7%)、1人当たり社内研修受講件数(0.9件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動や製造業の動向

同社は多様な生産財を取り扱い、様々な業種と取引しています。鉱工業生産指数などと関連性が高く、製造業の需給バランスや景気変動、在庫調整の動向によっては同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外展開に伴うカントリーリスク

中国やタイ、ベトナム、アメリカに現地法人を設けており、予期しない法規の変更や社会的混乱、政治・経済状況の変化等により、事業遂行に問題が生じる可能性があります。対策として、役員や担当者を派遣し管理体制を強化しています。

(3) 情報セキュリティ及びシステム障害

業務の安全性を確保するためバックアップ体制などを構築していますが、外部からの不正アクセスやウイルス侵入、自然災害によるシステム不稼働が発生した場合、機密情報の漏洩や業務停止が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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