日伝 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日伝 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日伝は、東京証券取引所プライム市場に上場する専門商社です。動力伝導機器、産業機器、制御機器などの機械設備や関連商品を主力事業として展開しています。直近の業績は、売上高1348億円、経常利益72億円、当期純利益52億円といずれも前期を上回り、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社日伝 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日伝ってどんな会社?


動力伝導機器や産業用制御機器を扱う専門商社として、モノづくりの現場を支えるソリューションを提供しています。

(1) 会社概要


同社は1952年に日本伝導として設立され、1989年に現社名の日伝へ商号変更しました。2006年に東証一部へ上場し、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行しました。近年では2024年3月に株式会社アペルザを子会社化するなど、事業基盤の強化を進めています。

連結従業員数は999名、単体では887名体制です。筆頭株主は同社の取引先等で構成される日伝共栄会で、第2位は同様に取引先持株会、第3位は資産管理会社と思われる株式会社利双企画となっています。

氏名 持株比率
日伝共栄会 12.51%
日伝仕入先持株会 8.10%
利双企画 5.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表者は代表取締役 社長執行役員である福家 利一氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
福家 利一 代表取締役 社長執行役員 1986年入社。営業推進部長、営業本部長などを経て2011年より社長を務める。
岡本 賢一 代表取締役 専務執行役員 1976年入社。東京支店長、東部ブロック長などを歴任し、2024年より現職。
寒川 睦志 取締役 常務執行役員 1985年入社。名古屋支店長、中部ブロック長などを経て2021年より管理本部長。
森田 淳二 取締役 常務執行役員 1982年入社。FA制御部長、営業推進本部長などを歴任し、2024年より現職。
佐々木 一 取締役 上席執行役員 1982年入社。九州支店長、営業本部長などを経て2024年より西部ブロック長。
檜垣 泰雄 取締役 常勤監査等委員 1986年入社。経営企画部長、管理本部長などを経て2021年より現職。


社外取締役は、古田清和(公認会計士)、川上勝(税理士)、寺嶋康子(キャリアコンサルタント)です。

2. 事業内容


同社グループは、「動力伝導機器」「産業機器」「制御機器」および「その他」事業を展開しています。

(1) 動力伝導機器


減速機、変速機、チェーン、ベルト、歯車、ベアリング、直動機器などの機械要素部品を製造業の顧客向けに提供しています。モノを動かすために不可欠な駆動・伝導部品を幅広く取り扱っています。

収益は、これらの商品を顧客へ販売した際の代金により得ています。運営は主に日伝が行っているほか、海外では日伝国際貿易(上海)有限公司などの現地法人が販売を担っています。

(2) 産業機器


コンベヤ、運搬機器、モータ、ファン、ポンプ、集塵・洗浄機器などの産業用機械器具を提供しています。工場内物流や環境改善に資する設備機器が中心です。

収益は、機器および関連システムの販売代金です。運営は日伝のほか、子会社の岡崎機械などが木工用機械等の産業機器販売を行っています。

(3) 制御機器


油圧・空圧機器、センサ、スイッチ、ロボット、通信・ネットワーク機器などを提供しています。工場の自動化(FA)や生産効率化に貢献する製品群です。

収益は、制御機器やシステムの販売代金です。運営は日伝に加え、子会社のエヌピーエーシステムが油圧システム等の設計・製造を行っています。

(4) その他


上記区分に含まれない関連商品やサービスを提供しています。電子購買ポータルサイトの運営や、除菌消臭装置の製造・販売なども含まれます。

収益は、商品販売代金やサービスの提供対価です。運営は日伝のほか、株式会社アペルザが製造業向けプラットフォームを提供し、株式会社空間洗浄Lab.などが関連事業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は1000億円台から1300億円台へと順調に拡大しており、特に直近では過去最高水準に達しています。利益面でも経常利益率は5%台前後で安定的に推移しており、堅実な収益力を維持しています。当期純利益も増加傾向にあり、事業規模の拡大とともに収益基盤も強化されています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,028億円 1,240億円 1,316億円 1,269億円 1,348億円
経常利益 42億円 61億円 68億円 64億円 72億円
利益率(%) 4.1% 4.9% 5.1% 5.1% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 40億円 46億円 45億円 52億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は15%台を維持しています。営業利益率も改善傾向にあり、本業の収益性が高まっています。販管費の増加を売上総利益の増加で吸収し、増益を確保する構造となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,269億円 1,348億円
売上総利益 191億円 207億円
売上総利益率(%) 15.0% 15.3%
営業利益 58億円 68億円
営業利益率(%) 4.6% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与が55億円(構成比40%)、減価償却費が13億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに売上高が増加しており、全般的に好調です。特に産業機器分野の伸び率が高く、コンベヤ関連機器などが堅調に推移しました。動力伝導機器や制御機器も安定的に成長しており、特定分野への偏りなくバランスの良い事業拡大が図られています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
動力伝導機器 530億円 559億円
産業機器 298億円 325億円
制御機器 441億円 461億円
その他 - 3億円
連結(合計) 1,269億円 1,348億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

日伝は、営業活動で資金を生み出し、投資活動で将来の成長に向けた資産形成を行い、財務活動で株主還元や自己株式取得を実施しています。営業活動では、利益や棚卸資産の減少等により資金を得ましたが、仕入債務の減少が影響しました。投資活動では、有形固定資産の取得支出がありましたが、有価証券の償還や売却、定期預金の払戻し等により資金が増加しました。財務活動では、自己株式の取得や配当金の支払いにより資金を使用しました。これらの活動の結果、期末の現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 50億円 45億円
投資CF -24億円 33億円
財務CF -49億円 -63億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは社是に「誠実」を掲げ、堅実経営に徹することを基本としています。その上で、「つくる人・つかう人の想いを繋ぎ、誠実にモノづくりの未来に貢献する」ことを存在意義(パーパス)として設定し、産業界のニーズを先取りしながら社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


ステークホルダーとの対話を通じて信頼関係を築くことを重視する文化があります。また、生産性と効率性を重視し、景気に左右されない自立成長型企業を目指す姿勢を持っています。社内では「誠実」を基軸とし、挨拶や約束を守るといった当たり前の行動を大切にする風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


第4次中期経営計画『New Dedication2026』を推進しており、中長期的かつ安定的に以下の経営指標を達成することを目標としています。

* 営業利益率:5.0%以上
* 1人当たりの営業利益額:7百万円以上
* 総資産経常利益率(ROA):6.5%以上
* 自己資本利益率(ROE):8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「市場戦略」と「コーポレート戦略」を重点施策として掲げています。市場戦略ではパートナーシップ強化や成長市場での拡大、社会・環境課題ビジネスへの取り組みを推進し、コーポレート戦略ではサステナビリティ経営、人財戦略、DXによる業務改革などを進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「誠実」をベースに、自立して前例のない路を切り拓く人材の育成を目指しています。人事制度改革として、転勤範囲ではなく職務・成果を軸とした等級制度への移行や、若手の早期登用、管理職のマネジメント力強化などを進め、多様な人材が活躍できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.4歳 13.6年 6,338,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 44.4%
男女賃金差異(全労働者) 67.6%
男女賃金差異(正規雇用) 71.4%
男女賃金差異(非正規) 29.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、1人当たり社内研修受講件数(0.7件)、有給休暇取得率(64.0%)、働きがい指標(4.86ポイント)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気変動リスク


多様な生産財を取り扱っており、国内の様々な業種と取引を行っていますが、業績は鉱工業生産指数や製造工業の稼働率指数などの統計数値と関連性が高くなっています。そのため、製造業の需給バランスの崩れや景気後退、顧客の在庫調整などの影響を受け、業績が変動する可能性があります。

(2) カントリーリスク


中国、タイ、ベトナム、アメリカに現地法人を展開しています。予期せぬ法規制の変更、テロや戦争による社会的混乱、現地の政治・経済状況の変化などが生じた場合、事業遂行に支障をきたし、業績に間接的な影響を与える可能性があります。

(3) 情報システム及び情報セキュリティリスク


情報システムの安全性確保に努めていますが、外部からの不正アクセスやウイルス侵入による情報漏洩、自然災害や事故によるシステム設備の損壊、通信トラブルなどでシステムが停止するリスクがあります。これにより業務停止や社会的信用の失墜を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。