日本電計転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、日本電計株式会社の有価証券報告書(第80期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本電計ってどんな会社?
日本電計は、電子計測器や関連システムの販売と校正・修理等の技術サービスを提供するテクニカル商社です。
■(1) 会社概要
同社は1950年に設立され、関東一円で電子部品の販売を開始しました。1990年にシンガポール支店を開設して以降、中国や東南アジアなど海外展開を加速させました。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場再編に伴い東京証券取引所スタンダード市場へと移行しています。
同社グループは連結従業員1160名、単体610名の体制で事業を運営しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は情報機器等の事業を展開するあいホールディングスで、第2位は高田興産、第3位には日本電計取引先持株会が名を連ねており、取引先との強固な関係性が伺えます。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| あいホールディングス | 21.50% |
| 有限会社高田興産 | 9.11% |
| 日本電計取引先持株会 | 5.76% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は森田幸哉が務めており、社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 森田幸哉 | 代表取締役社長 | 1987年同社入社。名古屋営業所長、海外営業本部副本部長、常務取締役国内営業本部長等を経て、2022年4月より現職。 |
| 柳丹峰 | 取締役会長 | 1991年同社入社。上海電恵測試儀器設備有限公司董事長、専務取締役海外営業本部長、代表取締役社長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 梶原琢也 | 専務取締役事業本部長 | 1989年同社入社。千葉営業所長、国内営業本部副本部長、常務取締役営業本部長等を経て、2024年4月より現職。 |
| 和田史宣 | 専務取締役営業本部長 | 1988年同社入社。国際センター長、取締役海外営業本部長、常務取締役営業本部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 秋山昌彦 | 常務取締役管理本部長 | 1990年三菱銀行入行。秋田支社長や大森支店長等を経て、2020年同社入社。2024年4月より現職。 |
| 木村裕二 | 取締役国内営業統括部長補佐 | 1986年同社入社。仙台営業所長、韓国現地法人責任者、取締役営業本部副本部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 菊田嘉 | 取締役東北エリア担当 | 1989年同社入社。ひたちなか営業所長、取締役海外営業本部長、取締役国内営業統括部等を経て、2025年4月より現職。 |
社外取締役は、佐久間涼(プールス取締役)、佐藤哲(マイクロ・トーク・システムズ取締役)、小倉義夫(元ローデ・シュワルツ・ジャパン代理店営業部部長)、藤原敏夫(元岩通計測取締役営業本部長)、佐野恵子(J.Bridge合同会社代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「中国」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 日本
国内市場において、電子計測器、電源機器、環境試験機器等の販売、および修理・校正・保守などの技術サービスを提供しています。自動車業界の次世代技術開発や、電機業界における通信インフラ整備・IoT関連の設備投資を行う企業を主要な顧客としています。
収益源は、顧客企業に対する各種計測機器の販売代金や、修理・校正等に伴うサービス料です。事業の運営は主に日本電計が主体となって行うほか、アイコーエンジニアリングやユウアイ電子、新栄電子計測器、ホクエンなどのグループ子会社が専門領域を担っています。
■(2) 中国
中国市場においても、国内と同様に幅広い電子計測器や関連機器の販売、修理、校正等のサービスを展開しています。現地の製造拠点や研究開発施設を持つ日系企業をはじめ、現地のローカル企業などを顧客として、計測に関する技術的課題の解決をサポートしています。
収益源は、現地顧客からの機器販売代金や受託試験のサービス料などです。事業の運営は、販売子会社である電計貿易(上海)有限公司や電計科技発展(上海)有限公司が担うほか、受託試験場を運営する電計科技研発(上海)股份有限公司などが独自に展開しています。
■(3) その他
中国以外の海外市場、具体的には韓国、台湾、東南アジア(タイ、シンガポール、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピン)、インド、米国、欧州において、電子計測器等の販売や修理サービスを提供し、顧客のグローバルなサプライチェーン網を支援しています。
収益モデルは、各地域の顧客からの機器販売代金やサービス料の受け取りです。運営は、NIHON DENKEI (THAILAND) CO.,LTD. や DENKEI KOREA CO.,LTD.、DENKEI CORPORATION AMERICAS などの各現地法人が独立した単位として行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は着実な右肩上がりの成長を継続しています。特に直近では企業の自動化や研究開発投資の堅調な需要を背景に、売上高が1200億円を突破しました。経常利益などの利益面も一時的な足踏みはありつつも、5年前と比較して利益水準は大幅に向上し、底堅い収益力を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 827億円 | 919億円 | 1048億円 | 1085億円 | 1212億円 |
| 経常利益 | 21億円 | 30億円 | 40億円 | 48億円 | 47億円 |
| 利益率(%) | 2.6% | 3.3% | 3.8% | 4.4% | 3.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 14億円 | 19億円 | 26億円 | 27億円 | 34億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で大きく伸長し、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は高付加価値な製品提案等により一定水準を維持しており、将来に向けた人的資本やシステムへの先行投資をこなしながらも、営業利益率は約4%と安定した収益性を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1085億円 | 1212億円 |
| 売上総利益 | 155億円 | 169億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.2% | 14.0% |
| 営業利益 | 44億円 | 47億円 |
| 営業利益率(%) | 4.1% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が48億円(構成比39%)、賞与が16億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントで増収を記録しています。日本事業は自動車や通信関連の研究開発投資需要を的確に捉えて大きく成長しました。中国事業は景気減速の影響が残るものの受注強化により売上を伸ばし、その他地域も韓国やベトナム等の堅調な推移により順調に事業を拡大しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 852億円 | 965億円 |
| 中国 | 161億円 | 170億円 |
| その他 | 72億円 | 78億円 |
| 連結(合計) | 1085億円 | 1212億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日本電計は、事業活動を通じて得た資金を効率的に活用し、安定的な財務基盤の構築を目指しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権の増加があったものの、利益や仕入債務の増加などにより、前年同期と比較して収入額が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却収入が取得支出を上回ったことで、収入超過となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の増加や長期借入による収入が、長期借入金の返済や配当金の支払いを上回ったことで、収入超過となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 36億円 | 3億円 |
| 投資CF | -8億円 | 3億円 |
| 財務CF | -35億円 | 15億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「計測技術で社会に貢献」をパーパス(存在意義)として掲げ、お客様の発展を支えることで持続可能な社会の実現を目指しています。また、将来のビジョン(目指す姿)として「テクニカル商社への転身」を掲げ、単なる製品の供給にとどまらない付加価値の提供を追求しています。
■(2) 企業文化
同社のバリュー(価値観)には、「お客様に信頼される企業」「誠実で高い倫理観をもった企業」「みんなが幸せになれる企業」「地球を大切にする企業」という4つが掲げられています。社員を最大の資産と捉え、社員の人間的な成長を最大限サポートすることを経営の重要課題として企業文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年を見据えた成長戦略の第2期として、中期経営計画「INNOVATION2030 Ver.2.0」を推進しています。企業価値向上の指標として、自己資本利益率(ROE)10%以上の安定的・持続的な確保を経営上の重要指標に位置づけています。
- 売上高:1,240億円
- 営業利益:45億円
■(4) 成長戦略と重点施策
自動車業界における次世代技術や、電子業界のデジタル化(DX・5G・IoT)など、将来の成長分野への投資拡大の動きを的確に捕捉することを目指しています。顧客へのシステム提案力の強化やグローバルビジネスの拡充による事業領域の拡大に加え、人的資本への積極的な投資とシステム整備による経営基盤の強化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社の企業理念や経営戦略に資する有能な人材を確保・育成することを基本方針としています。評価・給与制度の改定やキャリア申告制度の導入など処遇の改善を進めるとともに、階層別・職種別の体系的な研修制度を構築し、社員がモチベーションやスキルを継続的に向上できる環境整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.3歳 | 13.3年 | 6,926,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.7% |
| 男性育児休業取得率 | 40.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 66.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 68.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員エンゲージメントサーベイの総合満足度(3.90点)、勤続意向(4.06点)、退職率(4.2%)、研修実施回数(23回)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場経済状況の変動による需要縮小
同社の売上を支える電子計測器の需要は、自動車業界や電機業界の設備投資動向に大きく依存しています。景気後退により顧客企業の設備投資が縮小した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。同社は自動運転や5G・IoT等の成長分野のニーズを取り込むことでリスク軽減に努めています。
■(2) サプライチェーン再編と国際紛争等の影響
取扱製品が使用される主要産業ではサプライチェーンが世界的に複雑化しており、各国の関税政策や国際情勢の変化により生産拠点が移管される動きがあります。こうした予測不能な事態による影響リスクに対し、同社は海外各地に現地法人を設立し、顧客の生産拠点のシフトに柔軟に対応できる体制を構築しています。
■(3) 競合環境の激化と収益性の低下
電子計測器の卸売市場においても価格競争は激しく、競争激化により十分な収益性が保てなくなるリスクが存在します。これに対し、同社は顧客ニーズにスピーディーに対応し、付加価値の高いシステム提案や粗利益率の高い海外製品の拡充に取り組むことで、収益性の確保と競争力の維持を図っています。



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