日本電計 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電計 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電計は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、電子計測器等の販売や修理、校正などを主軸に展開するテクニカル商社です。自動車や電子・電機業界向けに次世代技術分野での投資需要を的確に捉え、直近の業績は増収増益と好調に推移しています。独自の技術提案力で企業の成長を支えるリーディングカンパニーです。


※本記事は、日本電計株式会社の有価証券報告書(第81期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 日本電計ってどんな会社?


電子計測器の販売や修理、校正を主軸に展開し、顧客の技術開発を支えるテクニカル商社です。

(1) 会社概要


1950年に設立され、電子計測器の販売等を開始しました。1990年のシンガポール支店開設を皮切りに東南アジアや中国へ海外展開を推進し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。近年も2024年にホクエンを子会社化するなど、国内外で事業基盤の拡大を継続しています。

現在の従業員数は連結で1214名、単体で679名です。筆頭株主は事業会社のあいホールディングスで、第2位は有限会社高田興産、第3位は日本電計取引先持株会となっています。

氏名 持株比率
あいホールディングス 21.53%
有限会社高田興産 8.58%
日本電計取引先持株会 5.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長営業本部長は和田史宣氏が務めています。社外取締役の比率は約45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
和田 史宣 代表取締役社長営業本部長 1988年同社入社。国際センター長や海外営業本部長等を歴任。常務や専務を経て、2026年4月より現職。
梶原 琢也 専務取締役事業本部長 1989年同社入社。新事業推進室長や国内営業本部副本部長等を歴任。常務取締役を経て、2024年4月より現職。
秋山 昌彦 専務取締役管理本部長 1990年三菱銀行入行。支社長等を歴任後、2020年同社入社。常務取締役等を経て、2026年4月より現職。
柳 丹峰 取締役 1991年同社入社。上海現地法人董事長や海外営業本部長等を歴任。代表取締役社長や会長等を経て、2026年4月より現職。
森田 幸哉 取締役会長 1987年同社入社。国内営業本部長等を歴任。代表取締役副社長や社長を経て、2026年4月より現職。
須田 克彦 取締役営業本部副本部長国内営業統括部長 1996年同社入社。オートモーティブ市場推進部長や事業推進統括部長等を歴任し、2026年4月より現職。


社外取締役は、佐久間涼(プールス取締役)、下村規夫(岩崎通信機常務執行役員)、小倉義夫(元ローデ・シュワルツ・ジャパン代理店営業部部長)、藤原敏夫(元岩崎通信機第二営業部担当部長)、呰真希(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「中国」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


国内市場において、電子計測器や電源機器、環境試験機器などの販売や修理、校正サービスを提供しています。自動車業界における次世代技術開発や、電子・電機業界におけるAI・データセンターなどの成長分野を顧客対象とし、自動化・省力化に寄与する設備投資需要を的確に捉えています。

顧客への機器販売代金や修理・校正等のサービス提供料を収益源としています。事業の運営は主に日本電計のほか、関連機器の製造や販売を担うアイコーエンジニアリングや新栄電子計測器、ホクエン、そして修理・校正を専門に行うユウアイ電子が担当しています。

(2) 中国


中国市場において、日系企業の海外進出や現地の需要拡大に対応し、電子計測器類の販売および修理、校正等のサービスを展開しています。加えて、研究機関や顧客の技術開発をサポートするための計測手法や受託試験技術の提供も行っており、現地の顧客ニーズに密着した活動を推進しています。

機器の販売代金や受託試験のサービス利用料などを主要な収益源としています。運営は販売子会社である電計貿易(上海)有限公司および電計科技発展(上海)有限公司が担うほか、受託試験場の運営や技術サポートについては電計科技研発(上海)股份有限公司が担当しています。

(3) その他


東南アジアや韓国、台湾、インド、アメリカ、ヨーロッパなどの各地域において、多様な電子計測器の販売や修理、校正サービスを提供しています。顧客企業のサプライチェーン見直しや生産拠点のシフトに弾力的に対応すべく、各地域の特性に応じた包括的な戦略を立案し事業を展開しています。

主な収益源は、海外の現地顧客や日系企業への機器販売代金およびサービス手数料です。各地域の独立した現地法人が事業を展開しており、タイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、ベトナム、韓国などのアジア各国のほか、米国やドイツ、ハンガリーの法人が運営を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の売上高は一貫して拡大を続けており、特に直近2期間は1,200億円を超える規模に成長しています。経常利益も底堅く推移し、足元では50億円を突破するなど、成長分野への積極的な投資捕捉が利益水準の底上げに寄与しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 919億円 1048億円 1085億円 1212億円 1331億円
経常利益 30億円 40億円 48億円 47億円 51億円
利益率(%) 3.3% 3.8% 4.4% 3.9% 3.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 26億円 27億円 34億円 31億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しており、堅調な収益構造を維持しています。成長に向けた人的資本投資やシステム関連投資の実施により販売管理費は増加傾向にありますが、増収効果により営業利益も着実に伸長しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1212億円 1331億円
売上総利益 169億円 185億円
売上総利益率(%) 14.0% 13.9%
営業利益 47億円 50億円
営業利益率(%) 3.9% 3.7%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が51億円(構成比38%)、賞与が23億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の日本セグメントが全社の売上を牽引しており、次世代技術関連の投資需要を的確に捉え堅調な伸びを示しています。中国セグメントも大幅な増収を記録する一方、その他セグメントは地域ごとの需要変動を受けつつも着実な収益貢献を果たしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 965億円 1020億円
中国 170億円 224億円
その他 78億円 87億円
連結(合計) 1212億円 1331億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業キャッシュ・フローがマイナスとなっている一方で、借入等の財務活動で資金を調達し、投資活動を継続している「勝負型」のキャッシュ・フロー状況です。将来の成長を見据えた先行投資を行っている局面とみられます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3億円 -36億円
投資CF 3億円 -1億円
財務CF 15億円 16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は41.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「計測技術で社会に貢献」をPurpose(存在意義)として掲げ、事業を通じた社会課題の解決に寄与することを目指しています。「テクニカル商社への転身」をVision(目指す姿)とし、計測技術を継続的に向上させて顧客に貢献し続けることで、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を追求しています。

(2) 企業文化


Values(価値観)として、「お客様に信頼される企業」「誠実で高い倫理観をもった企業」「みんなが幸せになれる企業」「地球を大切にする企業」を掲げています。社員の人間的な成長を最大限サポートし、社員がモチベーションやスキルを継続的に向上させるための企業風土や文化の醸成を重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年を見据えた成長戦略「INNOVATION2030」の第2期となる中期経営計画「INNOVATION2030 Ver.2.0」を推進し、株価やPBR、資本収益性を意識した経営を実践しています。

* 売上高1,360億円(2026年度目標)
* 営業利益52億円(2026年度目標)
* 経常利益52億円(2026年度目標)
* 自己資本利益率(ROE)10%以上の安定的・持続的な確保

(4) 成長戦略と重点施策


コアビジネスである電子計測器等の安定成長に加え、顧客へのシステム提案力の強化や成長市場への事業領域拡大を推進しています。また、次世代自動車や自動運転、AI・データセンター、GXなどの成長分野に対する投資拡大を的確に捕捉するべく、サプライチェーンの変革に対応したグローバル展開や経営基盤の強化に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


社員を最大の資産と位置づける「人的資本経営」を実践しています。企業理念の実現と事業成長に向けて、多様な働き方とキャリアパスを選択できる人事制度の高度化を図るとともに、賃上げや退職金制度の見直しなど処遇の改善を進め、優秀な人材の確保と定着、およびスキル向上を促進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.2歳 13.1年 7,570,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.4%
男性労働者の育児休業取得率 62.5%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 70.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) 68.3%
労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) 90.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、退職率(4.9%)、研修実施回数(33回)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国際紛争等に伴うサプライチェーンリスク


主力顧客である自動車や電機業界では生産拠点の分散化が進んでおり、各国の関税政策や地政学リスクの高まりがサプライチェーンに影響を及ぼす懸念があります。これに対し、アセアン諸国や中国、欧米などに販売拠点網を構築し、生産拠点のシフトへ弾力的に対応することでリスクの軽減を図っています。

(2) サイバーセキュリティのリスク


営業活動や売上・支払管理などの業務遂行においてコンピュータシステムを日常的に利用しているため、サイバー攻撃やシステム障害により業務が停止するリスクがあります。データセンターの活用による保護強化や日々のデータのバックアップ実施を通じ、情報セキュリティ体制の整備と被害の最小化に努めています。

(3) 主力業界の設備投資需要の変動リスク


主要な販売先である自動車業界や電機業界の景気後退に伴う設備投資の縮小は、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。このリスクを回避するため、次世代自動車の開発やAI・データセンター関連、GXなどの成長分野に対する新たな技術開発ニーズを積極的に取り込み、収益基盤の安定化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。