※本記事は、日邦産業の有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日邦産業ってどんな会社?
産業資材の専門商社およびファブレスメーカーとして、電子部品や自動車向け樹脂成形品をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1952年に日邦産業を設立し、炭素製品の販売を開始しました。1968年にはプラスチック成形工場を開設して製造分野へ進出しています。1987年の台湾支店開設を皮切りに海外展開を本格化させ、タイ、マレーシア、中国、ベトナム等に生産拠点を設立しました。2004年にジャスダック証券取引所へ株式上場を果たしています。
現在の従業員数は連結2,765名、単体334名です。筆頭株主はフリージア・マクロスで、第2位および第3位はそれぞれ資産管理等の業務を行う機関投資家です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| フリージア・マクロス | 19.73% |
| BRIDGESTREAM LIMITED, AS TRUSTEE OFAXC STRATEGIC OPPORTUNITIES (常任代理人立花証券) | 12.40% |
| BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND(常任代理人三菱UFJ銀行) | 6.64% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は岩佐恭知氏です。社外取締役比率は54.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 岩佐恭知 | 代表取締役社長 | 同社入社後、製造部門や海外営業部長等を経て、中華圏・海外商事統括や事業本部長を歴任。2016年より現職。 |
| 三上仙智 | 常務取締役 | INAX等を経て同社入社。経営企画部長やコーポレート本部長等を歴任し、2023年より現職。 |
| 中村篤志 | 取締役商事本部長 | 同社入社後、エレクトロニクス事業本部の営業部門等を経て事業本部長に就任し、2019年より現職。 |
| 岡島雄二 | 取締役 メカトロニクス 本部長 | 同社入社後、一宮工場の工場長や品質保証本部長等を歴任。メキシコ合弁会社の社長も務め、2024年より現職。 |
| 川邊浩之 | 取締役(常勤監査等委員) | 同社入社後、開発・企画部門や精密機器事業本部長、稲沢事業所拠点長等を歴任し、2022年より現職。 |
社外取締役は、後藤昌弘(後藤昌弘特許法律事務所開所所長)、土地陽子(キリンホールディングス社外監査役)、梅野勉(シモジマ社外取締役)、池田桂子(中部日本放送社外取締役)、蒲生貞一(蒲生貞一税理士事務所開所所長)、玉置浩一(玉置公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エレクトロニクス」「モビリティ」「医療・精密機器」および「その他」事業を展開しています。
■エレクトロニクス
電子部品や住宅設備の関連メーカーに対して、高機能材料、加工部品、治工具、機器等を国内外で販売しています。
運営は日邦産業および連結子会社8社が専門商社ならびにファブレスメーカーとして展開し、商品の販売対価として収益を得ています。
■モビリティ
自動車メーカーや自動車部品メーカーに対して、樹脂成形品およびその組立品を核とした様々な自動車関連部品を国内外で製造・販売しています。
運営は日邦産業および日邦メカトロニクス等の連結子会社8社が行っており、製品の販売対価として顧客から収益を得ています。
■医療・精密機器
医療機器メーカーやプリンターメーカー等に対して、樹脂成形品およびその組立品等を国内外で製造・販売しています。
運営は日邦産業および連結子会社6社が担い、医療機器や精密機器部品等の販売対価として収益を得ています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、タイの国際地域統括本部におけるマネジメント業務等で構成されています。
運営はNIPPO GLOBAL MANAGEMENTが行い、関係会社に対する事務および営業支援等のサービス提供対価として収益を得ています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が持続的に拡大しており、464億円まで成長しています。利益面についても、経常利益率が安定して4〜5%台で推移しており、市場環境の変化を受けつつも着実な利益創出が確認できます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 355億円 | 389億円 | 419億円 | 449億円 | 464億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 19億円 | 22億円 | 21億円 | 23億円 |
| 利益率(%) | 4.0% | 4.8% | 5.1% | 4.7% | 4.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 5億円 | 16億円 | 14億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および売上総利益ともに増加傾向にあり、堅調なトップラインの成長が利益の拡大に寄与しています。売上総利益率は17%台、営業利益率も4%台半ばと安定した水準を維持しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 449億円 | 464億円 |
| 売上総利益 | 76億円 | 81億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.8% | 17.4% |
| 営業利益 | 20億円 | 21億円 |
| 営業利益率(%) | 4.4% | 4.5% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が22億円(構成比37%)、賞与引当金繰入額が6億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
エレクトロニクスおよびモビリティの両セグメントが着実に売上を伸ばしており、全体の成長を牽引しています。一方、医療・精密機器セグメントの売上高はほぼ横ばいで推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| エレクトロニクス | 208億円 | 215億円 |
| モビリティ | 167億円 | 176億円 |
| 医療・精密機器 | 74億円 | 73億円 |
| 連結(合計) | 449億円 | 464億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 7億円 |
| 投資CF | -17億円 | -15億円 |
| 財務CF | -11億円 | 11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.3%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「新しい価値の創造を通じて、会社の繁栄と社員の幸福増進の一致を計り、社会の恩恵に報いることを使命とする」という経営理念を掲げています。また、お客様のものづくりを支えるテクニカルイノベーターとして、「異色ある価値を提供し、世界をリードするお客様のモノづくりを支えること」を存在目的に定めています。
■(2) 企業文化
同社は、良き企業市民として遵守すべき「コンプライアンス宣言・行動憲章」の下にサステナビリティ方針を定め、社員の存在を強みとするユニークで地域に根差したグローバル企業への変革に挑戦し続けています。また、「従来のやり方で成果を上げた人よりも、新しいことに挑戦し、失敗を恐れず行動した人を評価する」という挑戦を奨励する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2025」では、定量目標として以下を掲げて経営を行っています。
・連結営業利益3ヵ年累計57.3億円
・連結株主資本利益率(ROE)3ヵ年平均10.0%以上
・最終年度(2026年3月期)の営業利益20億円
■(4) 成長戦略と重点施策
長期ビジョン「長期経営目標2031」の実現に向けて、メーカー事業の構成比を3分の2超へ拡大し、新たな事業である「Ecoプロダクツ事業」を軌道に乗せ、第4の事業の柱に成長させることを目指しています。また、財務規律を見直した上で、積極的な成長投資や人的資本投資を実行していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、競争優位の源泉であるテクニカルイノベーターたる従業員を中心に企業価値の向上を目指しています。多様な視点や価値観を尊重し、従業員間の協働を通じて一人ひとりの能力を最大限に引き出すワークエンゲージメントの高い職場環境づくりに努めています。また、高度専門人材の採用や育成により、技術競争力の維持・向上を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.1歳 | 11.3年 | 5,702,857円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 66.7% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 61.4% |
| 男女賃金差異(正規従業員) | 69.2% |
| 男女賃金差異(非正規従業員) | - |
※非正規従業員の男女賃金差異について、同社では雇用形態(嘱託社員、契約社員)ごとに算出しており、非正規全体としての合算数値は記載されていません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック指数(95)、従業員満足度指数(58.4%)、離職率(5.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 品質保証に関わるリスク
製品に販売後の不具合が発生した場合、リコール費用等で応分の賠償請求を受ける可能性があり、業績に影響を及ぼすおそれがあります。これに対し、品質管理体制の強化や内部品質監査活動を進め、全社的な品質マネジメントシステムの継続的な改善に取り組んでいます。
■(2) 情報漏洩に関わるリスク
保有する機密情報が漏洩した場合、取引先との取引停止や賠償請求を受けるおそれがあります。同社では、情報セキュリティ基本方針や各種管理規程を定め、機器の持ち出し制限やシステムへのアクセス制限により、情報漏洩リスクの低減と監視の強化に努めています。
■(3) サプライチェーンの変更に関わるリスク
パートナー企業の事業方針の変更や顧客の調達方針の変更により、サプライチェーンに影響が生じた場合、業績に悪影響を及ぼすおそれがあります。このリスクを抑制するため、パートナー企業との連携強化や、事業戦略の推進による自社の付加価値向上に取り組んでいます。
■(4) 原材料や部材の調達に関わるリスク
資源価格の高騰による原材料等の値上げ分を売価に転嫁できない場合や、供給逼迫で安定的な調達が困難になった場合、業績に影響を与える可能性があります。顧客や調達先との情報共有に努め、需給調整と在庫保有による生産活動の平準化を進めています。



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