※本記事は、杉本商事株式会社 の有価証券報告書(第100期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 杉本商事ってどんな会社?
測定器具や工作用器具、機械工具などを専門に扱う商社です。地域密着型の営業展開に特徴があります。
■(1) 会社概要
同社は1938年に旭商店として設立され、1952年に現在の杉本商事へ改称しました。1953年には日之出工具、日測商会を合併し、主要な営業所を開設。その後、全国への営業所展開を進め、1992年に大阪証券取引所市場第二部へ上場しました。2003年には東京証券取引所市場第二部に上場し、2005年に同市場第一部(現プライム市場)へ指定替えとなりました。2014年には株式会社スギモトを子会社化するなど、業容を拡大しています。
現在の従業員数は連結で574名、単体で475名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社会長の杉本正広氏、第3位は通信サービスやOA機器販売等を行う事業会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.60% |
| 杉本正広 | 5.50% |
| 光通信 | 2.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長執行役員兼経営戦略本部長は杉本正行氏です。社外取締役比率は40.0%(取締役5名中2名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉本正行 | 代表取締役社長執行役員兼経営戦略本部長 | 2008年同社入社。広島営業所長、執行役員西部営業部長、常務執行役員管理本部長などを経て、2024年4月より現職。スギモト代表取締役を兼務。 |
| 杉本正広 | 取締役会長 | 1974年同社入社。東大阪営業所長、取締役、常務、代表取締役専務などを歴任。2000年に代表取締役社長に就任し、2023年6月より現職。 |
| 今中博幸 | 取締役常務執行役員営業本部長 | 1998年同社入社。鹿嶋営業所長、執行役員直需営業統括部長などを経て、2023年6月取締役常務執行役員に就任。2024年4月より現職。 |
社外取締役は、鶴由貴(弁護士)、吉田晴行(元クボタ専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「東部」「中部」「西部」「海外」の各報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 東部
東京を中心とする関東エリア等において、測定器具、工作用器具、機械工具、空圧・油圧器具等の販売を行っています。主な顧客は工場等を保有する製造業であり、地域密着型の営業を展開しています。
収益は、顧客への商品販売代金です。運営は主に杉本商事が行っており、大森、川崎、土浦など16の営業所を集約して報告セグメントとしています。
■(2) 中部
名古屋を中心とする中部エリアにおいて、機械、工具、工場用品、消耗品等の販売を行っています。自動車産業等の集積地において、多様な産業ニーズに対応した商品を供給しています。
収益は、顧客への商品販売代金です。運営は主に杉本商事が行っており、名古屋、浜松、堀田、小牧など15の営業所を集約して報告セグメントとしています。
■(3) 西部
大阪を中心とする関西・西日本エリアにおいて、機械器具を中心とした工場用副資材等の販売を行っています。同社の創業地を含む主力エリアであり、広範なネットワークを有しています。
収益は、顧客への商品販売代金です。運営は杉本商事および連結子会社の株式会社スギモトが行っており、日測、十三、日之出など28の営業所を集約して報告セグメントとしています。
■(4) 海外
海外市場に向けて、測定器具や機械工具等の輸出販売を行っています。各国のニーズに合わせた商品を供給し、グローバルな販売体制を構築しています。
収益は、海外顧客への商品販売代金です。運営は主に杉本商事の貿易部が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、第100期には495億円に達しました。経常利益も安定的で、利益率は5%後半から6%台を維持しています。当期純利益については、第100期は前期比で増加しています。全体として、堅調な業績推移を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 404億円 | 431億円 | 456億円 | 466億円 | 495億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 25億円 | 27億円 | 28億円 | 29億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 5.9% | 5.9% | 6.1% | 5.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 13億円 | 17億円 | 14億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約20%弱で安定しており、営業利益率も約5%の水準を維持しています。増収効果により、営業利益額も増加しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 466億円 | 495億円 |
| 売上総利益 | 93億円 | 98億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.9% | 19.8% |
| 営業利益 | 23億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 4.9% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が29億円(構成比40%)、賞与が10億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの売上高を見ると、全セグメントで増収となっています。特に中部は自動車業界等の動きが堅調で二桁増収となりました。海外も注力国向けが好調で増収です。東部は不透明感がある中で微増、西部も一部業界の設備投資等により微増となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 東部 | 113億円 | 118億円 |
| 中部 | 128億円 | 146億円 |
| 西部 | 209億円 | 214億円 |
| 海外 | 16億円 | 17億円 |
| 連結(合計) | 466億円 | 495億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
杉本商事は、営業活動で得た資金で投資活動や財務活動に必要な資金を賄い、健全な財務体質を維持しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や仕入債務の増加などにより、前年を上回る収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形固定資産の取得などにより、支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いなどにより、支出となりました。
同社は、急激な円安や部品供給制約、自然災害等による業績悪化に備え、月間平均仕入額の2ケ月相当分の現金同等物を確保しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 25億円 | 27億円 |
| 投資CF | -11億円 | -18億円 |
| 財務CF | -7億円 | -21億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、創業200周年に向けて会社を変革し、積極的に新たな事業へのチャレンジを目指しています。顧客視点を保ち、グループ一致団結して経営計画の達成に取り組むことを方針としています。また、資本コストに関する施策を打ち出し、既存株主の満足度向上と新規安定株主獲得に努めています。
■(2) 企業文化
同社グループは、地域密着型の提案営業を重視する文化を持っています。顧客とのリレーションを緊密化し、対面営業や課題解決型の提案営業の充実・拡大を図ることで、競合他社との差別化を目指しています。また、若手人材の確保と育成に注力し、専門知識の向上や新規ブランドの投入に努める姿勢も特徴です。
■(3) 経営計画・目標
第4次中期経営計画『Start of the next 100 years~変化へチャレンジ』において、大きく変化する環境に耐えられる筋肉質な体質への変革を目指しています。最終年度となる2027年3月期の連結数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:558億30百万円
* 営業利益:28億60百万円
* 経常利益:34億円
* 当期純利益:21億30百万円
■(4) 成長戦略と重点施策
新事業の開発としてDX商材の販売や他業種との連携を推進し、新市場への拡大では既存ネットワークの横展開やM&A戦略を進めます。ESG推進では地域貢献や気候変動対策を実施し、IT資源への投資により業務効率化を図ります。また、社員満足度の向上として福利厚生の充実やワークライフバランスの推進に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
顧客満足度の向上を実現できる人材の確保と育成を重要な経営課題としています。新市場開拓のための積極的な採用と、情報・技術提供が可能な提案型営業人材やセールスエンジニアの育成に注力しています。また、社員が安心して生活し生産性を向上できるよう、エンゲージメントの向上や福利厚生の充実、ワークライフバランスの推進を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.9歳 | 13.4年 | 6,621,595円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.5% |
| 男性育児休業取得率 | 13.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 79.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(35%)、有休取得平均(14日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製造業業績の影響
同社グループの取扱商品は主に国内の工場向けであり、産業機械、自動車、半導体等の設備投資や製造過程で使用されます。そのため、これらの産業の設備投資や工場稼働率が下降した場合、業績に直接的な影響を受ける可能性があります。
■(2) 人材の確保及び教育
顧客満足度の向上を実現するためには人材の確保と育成が不可欠です。提案型営業やセールスエンジニアの育成により差別化を図っていますが、必要な人材の確保・育成ができない場合、業績や事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) カーボンゼロ・気候変動リスク
地球温暖化等の気候変動リスクに対する世界的な動きの中で、温室効果ガスの排出量削減に向けた法的規制の強化や、産業構造・企業活動の変化が生じた場合、同社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。



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