※本記事は、杉本商事株式会社の有価証券報告書(第101期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 杉本商事ってどんな会社?
■(1) 会社概要
1938年1月に大阪市で旭商店として設立され、1952年に杉本商事へと改称しました。1992年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2005年に東京・大阪証券取引所市場第一部へ指定されました。その後、全国各地に営業所や物流センターを開設して事業を拡大し、2014年にはスギモトを子会社化しています。
従業員数は連結で592名、単体で491名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は創業家出身であり現役員の杉本正広氏、第3位は投資ファンドである光通信KK投資事業有限責任組合となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.50% |
| 杉本正広 | 6.10% |
| 光通信KK投資事業有限責任組合 | 3.00% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員兼経営戦略本部長を杉本正行氏が務め、社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉本正行 | 代表取締役社長執行役員兼経営戦略本部長 | 2008年同社入社。広島営業所長や管理本部長などを経て2024年4月より現職。 |
| 杉本正広 | 取締役会長 | 1974年同社入社。代表取締役専務や代表取締役社長などを経て2023年6月より現職。 |
| 今中博幸 | 取締役常務執行役員営業本部長 | 1998年同社入社。鹿嶋営業所長や第三直需営業部長などを経て2024年4月より現職。 |
社外取締役は、鶴由貴(協和綜合パートナーズ法律事務所パートナー)、吉田晴行(元クボタ専務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「東部」「中部」「西部」「海外」および「その他」事業を展開しています。
■東部
東京を中心とした大森、川崎、土浦など17の営業所を展開し、主に半導体材料や製造装置関連に向けた測定器具や機械工具などを販売しています。
顧客への商品販売から収益を得ており、運営は同社が行っています。
■中部
名古屋を中心とした浜松、堀田、小牧など15の営業所を展開し、自動車や工作機械、半導体製造装置関連向けに機械要素部品や周辺機器を販売しています。
顧客への商品販売から収益を得ており、運営は同社が行っています。
■西部
大阪を中心とした日測、十三、日之出など29の営業所を展開し、鉄鋼やEV関連、半導体関連、データセンター向けに自動化設備や生産副資材を販売しています。
顧客への商品販売から収益を得ており、運営は同社およびスギモトが行っています。
■海外
貿易部が担当し、中国、ベトナム、インド、韓国、タイなどのアジア地域を中心に、半導体関連分野に向けた機械工具の輸出販売を行っています。
海外顧客への商品販売から収益を得ており、運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は安定して拡大基調にありましたが、直近では需要減速の影響などからわずかに減少に転じています。経常利益や当期純利益も増減を繰り返しながら概ね堅調に推移していましたが、直近ではコスト高などの要因により減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 431億円 | 456億円 | 466億円 | 495億円 | 486億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 27億円 | 28億円 | 29億円 | 26億円 |
| 利益率(%) | 5.9% | 5.9% | 6.1% | 5.9% | 5.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 17億円 | 14億円 | 21億円 | 16億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年を下回りましたが、売上総利益率はわずかに改善しています。しかし、販売費及び一般管理費が増加した影響を受け、営業利益は減少しており、本業の収益性にはやや下押し圧力がかかっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 495億円 | 486億円 |
| 売上総利益 | 98億円 | 97億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.8% | 20.0% |
| 営業利益 | 24億円 | 20億円 |
| 営業利益率(%) | 4.8% | 4.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が30億円(構成比39.0%)、賞与が10億円(同13.5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの売上動向を見ると、東部や中部では鉄鋼・建設・工作機械関連などの投資抑制の影響を受け減収となりました。西部も北米市場向けのEV関連分野が落ち込み微減となりましたが、海外はアジア地域での半導体関連分野の需要増が牽引し、増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 東部 | 118億円 | 114億円 |
| 中部 | 146億円 | 140億円 |
| 西部 | 214億円 | 213億円 |
| 海外 | 17億円 | 19億円 |
| 連結(合計) | 495億円 | 486億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金で投資と借入金の返済などの財務活動を賄う「健全型」となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 27億円 | 33億円 |
| 投資CF | -18億円 | -6億円 |
| 財務CF | -21億円 | -17億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は77.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「顧客満足度の向上」という基本的な経営方針を掲げています。機械工具販売業界において単なる商品提供にとどまらず、AI活用や自動化、省力化を通じて顧客の課題を解決する提案力が企業価値を左右する重要な要素であると位置づけ、提案力の強化と持続的な成長基盤の構築を目指しています。
■(2) 企業文化
「MOOVING ONE~100年の感謝を未来へつなぐ~」という前中期経営計画のスローガンを引き継ぎ、グループ一致団結してチャレンジし続ける文化を重視しています。また、地域密着型の提案営業を徹底し、若手人材の確保と育成を通じて他社との差別化を図る姿勢が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
第4次中期経営計画「Start of the next 100 years~変化へチャレンジ」を策定し、2027年3月期に向けた以下の連結経営数値目標を掲げています。
* 売上高:558億円
* 営業利益:29億円
* 経常利益:34億円
* 当期純利益:21億円
■(4) 成長戦略と重点施策
大きく変化する環境に耐えられる筋肉質な企業体質への転換を目指し、新事業の開発や新市場への拡大を推進しています。DX商材の販売開始や他業種との事業連携、M&A戦略を通じた未開拓地域・業種への展開を図るとともに、社内システムの高度化に向けたIT資源への投資を積極的に進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「顧客満足度の向上」を実現できる専門性の高い人材の確保と育成を最も重要な経営課題と位置づけています。新市場開拓に向けて積極的に採用を行うとともに、情報・技術の提供が可能な提案型営業の人材や、セールスエンジニアの育成に注力し、働きやすい環境の整備やワークライフバランスの充実を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.9歳 | 13.5年 | 6,567,093円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.5% |
| 男性育児休業取得率 | 69.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 68.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 73.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(25.9%)、年間有休取得日数(15.2日)、月間平均時間外労働時間(15.7時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製造業業績への影響
取扱商品の最終消費者は主に国内の工場であり、産業機械や自動車、半導体などの設備投資および製造過程で使用されるため、国内製造現場の設備投資動向や工場稼働率が低下した場合は、業績が直接的かつ多大な影響を受ける可能性があります。
■(2) 人材の確保および教育
「顧客満足度の向上」を実現できる提案型営業やセールスエンジニアの育成を重視していますが、業容拡大や新規出店を担える専門性の高い人材の確保・育成が計画通りに進まない場合、中長期的な事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 販売ルートの変化と競争激化
大規模な情報システムや物流センターを持つ競合企業が、IT技術を駆使してインターネット経由での汎用品販売を増やしています。顧客の集中購買の動きも進んでおり、同社の強みである対面営業や提案力で対抗できない場合、商圏内でのシェアが低下する可能性があります。



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