※本記事は、北海道瓦斯株式会社の有価証券報告書(第180期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 北海道瓦斯ってどんな会社?
北海道におけるエネルギー供給の基盤を担い、ガスや電力の事業を軸に総合エネルギー展開を進める企業です。
■(1) 会社概要
1911年に設立され、翌年に札幌、小樽、函館でガス供給を開始しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、長きにわたり地域インフラを支えてきました。2016年には電力小売事業を開始して総合エネルギー事業への展開を本格化させ、2023年には情報プラットフォーム「Xzilla」をリリースするなどデジタル化にも注力しています。
同社グループは、連結で1,641名、単体で876名の従業員を擁しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業会社の東京瓦斯、第3位は日本生命保険相互会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.31% |
| 東京瓦斯 | 4.84% |
| 日本生命保険相互会社 | 3.88% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長の川村智郷氏をはじめとする経営陣が事業を牽引しています。また、取締役8名のうち3名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川村 智郷 | 代表取締役社長 社長執行役員 監査・リスク管理担当 デジタルトランスフォーメーション・構造改革推進本部長 | 1992年入社。エネルギー企画部長等を経て、2021年執行役員デジタルトランスフォーメーション・構造改革推進部長。2022年より現職。 |
| 大槻 博 | 代表取締役会長 | 1972年入社。1998年取締役、2002年代表取締役副社長、2008年代表取締役社長などを経て、2022年より現職。 |
| 井澤 文俊 | 取締役 常務執行役員 エネルギーサービス事業本部長 | 1988年入社。企画部長、北海道LNG代表取締役社長等を経て、2026年より現職。 |
| 前谷 浩樹 | 取締役 常務執行役員 生産供給本部長 保安推進部・技術開発研究所・人材開発センター担当 | 1991年入社。エネルギービジョンプロジェクト部長などを経て、2024年より現職。 |
| 金沢 明法 | 取締役 | 1988年入社。監査室長、北ガスフレアスト代表取締役社長などを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、岡田美弥子(北海道大学経済学部経営学科長)、小磯修二(一般社団法人地域研究工房代表理事)、綿貫泰之(北海道旅客鉄道代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ガス」「電力」「エネルギー関連」および「その他」の事業を展開しています。
■(1) ガス
都市ガスおよびLNGの製造・供給・販売を行っており、札幌市、小樽市、函館市、千歳市、北見市などを主な供給区域としています。一般家庭や業務・産業向けにエネルギーを安定供給し、毎月の使用量に応じたガス料金から収益を得ています。
事業の運営は同社が行うほか、室蘭市などでは子会社の室蘭ガスが供給・販売を担い、LNG出荷・輸送などは北海道LNGが担当するなど、複数社で安定供給体制を支えています。
■(2) 電力
北海道内全域を販売区域として、電力の発電および販売を行っています。顧客が使用した電力量に基づく電気料金を主な収益源としています。
同社自身が発電・販売を行うほか、太陽光発電事業を手がける北ガスジェネックスや、木質バイオマス発電事業を行う関連会社の苫小牧バイオマス発電から電力を仕入れる体制を構築しています。
■(3) エネルギー関連
札幌市や函館市周辺の新興団地を中心としたガス小売事業やLPG販売、冷温水や蒸気などの熱供給事業、ガス配管工事、ガス機器の販売などを展開しています。ガス機器の販売代金や工事代金、LPG・熱供給の利用料が主な収益源です。
同社のほか、北ガスジェネックス、北ガスジープレックス、エナジーソリューション、北海道熱供給公社などが各事業の運営を担っています。
■(4) その他
同社からの受託業務のほか、ビジネスサポート事業、システム機器の販売、さらには賃貸住宅の企画開発事業など、主力エネルギー事業を補完し多角化を図る領域を展開しています。サービス提供に対する手数料や販売代金が収益源です。
これらの事業は主に、北ガスサービスや北ガスライフロントといった子会社が運営を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は一時的な変動を挟みつつも概ね成長傾向にあり、直近では1,745億円に達しています。経常利益も着実に拡大し、利益率は安定して9%台を推移するなど、収益基盤の強化が進んでいることがうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,270億円 | 1,748億円 | 1,739億円 | 1,703億円 | 1,745億円 |
| 経常利益 | 73億円 | 134億円 | 159億円 | 144億円 | 165億円 |
| 利益率(%) | 5.8% | 7.7% | 9.1% | 8.5% | 9.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 44億円 | 90億円 | 101億円 | 94億円 | 106億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も前期から堅調に伸長しています。利益率も改善傾向にあり、事業全体の収益性が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,703億円 | 1,745億円 |
| 売上総利益 | 504億円 | 550億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.6% | 31.5% |
| 営業利益 | 143億円 | 164億円 |
| 営業利益率(%) | 8.4% | 9.4% |
販売費及び一般管理費のうち、減価償却費が88億円(構成比23%)、給料が54億円(同14%)を占めています。また、売上原価の多くは都市ガスの製造・供給に伴う原料費や製造経費で構成されています。
■(3) セグメント収益
主力のガス事業において販売量が増加したことで、売上高は堅調に推移しました。また、エネルギー関連事業も新築物件向けの器具販売・工事や冷温熱の販売量増が寄与し、全体の増収につながっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ガス | 1,025億円 | 1,057億円 |
| 電力 | 289億円 | 275億円 |
| エネルギー関連 | 378億円 | 395億円 |
| その他 | 11億円 | 18億円 |
| 連結(合計) | 1,703億円 | 1,745億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるプラスのキャッシュ・フローで借入金の返済を行い、事業への投資資金も手元の営業キャッシュ・フローで概ね賄えている「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 298億円 | 270億円 |
| 投資CF | -201億円 | -165億円 |
| 財務CF | -79億円 | -120億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.6%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も49.1%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「エネルギーと環境の最適化による快適な社会の創造」の実現を掲げています。北海道において、複雑化する社会課題やエネルギー環境の変化に対応しながら、地域社会への貢献と持続可能な成長を目指しています。
■(2) 企業文化
コンプライアンスを重視し、「北ガスグループ倫理方針」「北ガスグループ行動規範」に基づき誠実かつ公正な事業運営を徹底しています。従業員一人ひとりが意欲高く能力を発揮できる組織づくりと、多様性を尊重する文化を育んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2050年のカーボンニュートラル時代を見据えた経営計画「Challenge 2030」において、2030年度の中間目標を定めています。
・連結売上高:2,000億円
・連結営業利益:160億円
・連結有利子負債:500億円台
・自己資本比率:50%超
■(4) 成長戦略と重点施策
総合エネルギーサービス事業の進化を通じた「高度な分散型エネルギー社会」の構築を推進しています。デジタル技術を活用した事業構造変革や、再生可能エネルギー開発による地域課題の解決に注力しています。
・データ活用型営業による天然ガスの普及拡大
・太陽光や風力などの再エネ電源の開発・拡大
・情報プラットフォーム「Xzilla(くじら)」の活用による業務改革
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「最大の資本」である従業員の多様性を尊重し、能力を最大限発揮できる環境整備を推進しています。自律を促すセレクト型研修やキャリア支援、DX人材の育成などを通じて、「感じ」「考え」「行動」する人材像への成長を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.6歳 | 18.7年 | 7,596,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.6% |
| 男性育児休業取得率 | 90.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 59.2% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員割合(17.7%)、女性育児休業取得率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 災害・事故発生による事業中断リスク
LNG等の原料調達において不測の事態が生じた場合や、大規模な自然災害、ガス製造・供給設備のトラブルが発生した場合、都市ガスや電力の供給に支障を及ぼす可能性があります。これに対し、事業継続計画(BCP)の策定や設備の耐震性向上などの対策を講じています。
■(2) エネルギー環境変化や政策変更によるリスク
エネルギーや環境に関する国の政策・制度の変更、脱炭素に向けた社会動向などにより、市場競争が激化し収益に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、再生可能エネルギーの導入拡大や次世代技術への取り組みを進め、競争力の維持に努めています。
■(3) 情報管理やサイバー攻撃に関するリスク
社内外のデータを扱う情報プラットフォーム等を運用するなかで、システム不具合やサイバー攻撃による重要情報の流出、業務停滞が生じるリスクがあります。セキュリティ対策の徹底や専門組織によるインシデント対応体制の整備により、リスクの最小化を図っています。



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