北海道瓦斯 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北海道瓦斯 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライムおよび札証に上場し、北海道を基盤にガスや電力等の総合エネルギー事業を展開しています。2025年3月期連結業績は、ガス・電力の販売量が増加したものの、原料費調整制度による販売単価の低下やデジタル投資等の経費増により、前期比で減収減益となりました。


※本記事は、株式会社北海道瓦斯 の有価証券報告書(第179期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 北海道ガスってどんな会社?


北海道全域を対象に都市ガスや電力の供給を行う総合エネルギー企業です。寒冷地の生活インフラを支えています。

(1) 会社概要


1911年に設立され、翌1912年に札幌、小樽、函館でガス供給を開始しました。1949年に東京証券取引所へ上場し、1996年からは天然ガスの導入を開始しています。事業領域の拡大を進め、2016年には電力小売事業を開始し、総合エネルギーサービスへの展開を加速させています。

連結従業員数は1,563名、単体では865名です。大株主の構成は、資産管理を行う信託銀行のほか、同業の事業会社である東京ガスや、生命保険会社などが名を連ねており、安定的な株主構成となっています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.55%
東京瓦斯 4.84%
日本生命保険相互会社 3.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.0%です。代表取締役社長には川村智郷氏が就任しています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
川村 智郷 代表取締役社長社長執行役員監査・リスク管理担当デジタルトランスフォーメーション・構造改革推進本部長 1992年入社。エネルギー企画部長、執行役員DX・構造改革推進本部長等を経て、2022年6月より現職。
大槻 博 代表取締役会長 1972年入社。常務取締役、代表取締役副社長、代表取締役社長 社長執行役員等を歴任し、2022年6月より現職。
井澤 文俊 取締役常務執行役員経営企画本部長 1988年入社。執行役員企画部長、北海道LNG代表取締役社長等を歴任し、2021年4月より現職。
前谷 浩樹 取締役常務執行役員生産供給本部長技術開発研究所・人材開発センター担当 1991年入社。執行役員スマートエネルギーシステム&ネットワーク推進副本部長等を経て、2023年4月より現職。
金沢 明法 取締役常務執行役員エネルギーサービス事業本部長 1988年入社。執行役員営業企画部長、北ガスフレアスト代表取締役社長等を経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、岡田美弥子(北海道大学大学院教授)、小磯修二(地域研究工房代表理事)、綿貫泰之(北海道旅客鉄道社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ガス」「電力」「エネルギー関連」および「その他」事業を展開しています。

(1) ガス


札幌市、小樽市、函館市、千歳市、北見市を主な供給区域として、都市ガスの製造・供給および販売を行っています。また、北海道LNGがLNGの出荷・輸送業務を行うほか、室蘭ガスなどの関連会社も各地域でガスの供給・販売を担っています。

収益は、家庭用および業務用の顧客から受け取るガス料金等が主な柱です。運営は同社が行うほか、検針業務等は北ガスサービス、保安・点検業務等は北ガスフレアストなどのグループ会社が受託しています。また、北海道LNGや石狩LNG桟橋などの関連会社が設備の賃貸を行っています。

(2) 電力


北海道内を販売区域として、電力の発電および販売を行っています。自社電源の活用に加え、再生可能エネルギー電源の開発も推進しており、太陽光発電や木質バイオマス発電事業などを展開しています。

収益は、電力の契約者から受け取る電気料金等です。運営は同社が行っていますが、北ガスジェネックスが太陽光発電事業を行い同社へ電力を販売しているほか、持分法適用関連会社の苫小牧バイオマス発電も木質バイオマス発電による電力を同社へ販売しています。

(3) エネルギー関連


札幌市・函館市周辺の新興団地を中心に簡易ガス事業およびLPGの販売を行っているほか、ガス配管工事、ガス機器の販売・貸付、冷温熱供給事業などを展開しています。地域熱供給事業では、札幌市内の特定地区において冷温水・蒸気等を供給しています。

収益は、顧客からのLPG販売代金、ガス工事代金、ガス機器販売代金、熱供給に係る料金等です。運営は同社および北ガスジェネックス、北ガスジープレックス、北海道熱供給公社などが行っています。

(4) その他


ガスや電力等のエネルギー事業以外の関連サービスを展開しています。これには、ビジネスサポート事業やシステム機器の販売、不動産業などが含まれています。

収益は、各サービスの提供に対する対価や不動産賃貸料等です。運営は主に北ガスサービスがビジネスサポート事業等を、北ガスジープレックスが不動産業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期に大きく伸長した後、高水準で推移していますが、直近では微減となっています。利益面では、2024年3月期に過去最高益水準を記録しましたが、直近の2025年3月期は減益となりました。全体として、高い利益率を維持しつつ安定した収益基盤を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,182億円 1,270億円 1,748億円 1,739億円 1,703億円
経常利益 55億円 73億円 134億円 159億円 144億円
利益率(%) 4.6% 5.8% 7.7% 9.1% 8.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 31億円 44億円 90億円 101億円 94億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、売上総利益率は28.2%から29.6%へと改善しています。一方、営業利益は減益となり、営業利益率も低下しました。これはデジタル基盤強化などの将来に向けた投資コストが増加したことなどが要因です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,739億円 1,703億円
売上総利益 491億円 504億円
売上総利益率(%) 28.2% 29.6%
営業利益 156億円 143億円
営業利益率(%) 9.0% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料が49億円(構成比14%)、委託作業費が37億円(同10%)、減価償却費が84億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


「電力」セグメントは家庭用販売が増加したものの全体では減収増益となり、利益率は12.4%と高い水準を示しました。「ガス」セグメントは原料費調整の影響で減収減益となりました。「エネルギー関連」は機器販売の減少等により減益となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ガス 1,042億円 1,025億円 136億円 126億円 12.3%
電力 302億円 289億円 29億円 36億円 12.4%
エネルギー関連 381億円 378億円 16億円 11億円 2.9%
その他 14億円 11億円 2.5億円 1.5億円 13.5%
調整額 - - -27億円 -31億円 -
連結(合計) 1,739億円 1,703億円 156億円 143億円 8.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、安定的な長期調達を基本としつつ、必要に応じて短期借入金等も活用し、資金調達の多様化を図っています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の減少等により、前連結会計年度に比べ減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得増加等により、支出額が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債償還や借入金返済等により、支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 317億円 298億円
投資CF -168億円 -201億円
財務CF -82億円 -79億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、2050年以降のカーボンニュートラル時代を見据え、「エネルギーと環境の最適化による快適な社会の創造」の実現を掲げています。省エネを基盤としながら、脱炭素社会への備えを進め、北海道におけるエネルギー供給の安定と環境負荷低減の両立を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Challenge2030」において、従来の慣行から抜け出し、非効率・不合理なものを排除して事業にとって最適なものを追求する姿勢を重視しています。また、DXを最大限活用して業務改革を遂行し、社会や経済の急激な変化にも迅速・柔軟に対応できる組織づくりを目指しています。

(3) 経営計画・目標


2030年度を中間点と位置づけた経営計画「Challenge2030」を推進しています。2025年度はフェーズ2の初年度にあたり、以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高:2,000億円
* 連結営業利益:160億円
* 連結有利子負債:500億円台
* 自己資本比率:50%超

(4) 成長戦略と重点施策


「総合エネルギーサービス事業の進化による分散型社会の形成」「カーボンニュートラルへの挑戦」「デジタル技術の活用による事業構造変革」の3つを主要施策としています。天然ガスの普及拡大やエネルギーマネジメントシステムの標準化、再生可能エネルギー電源の開発加速、情報プラットフォーム「Xzilla」の活用による業務改革を推進し、持続可能な事業構造への変革を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員の多様な能力が発揮できる人事処遇制度の整備や、女性の職域拡大、定年延長によるシニア人材の活躍推進に取り組んでいます。また、DX人材の育成プログラムや各種研修、キャリア支援を通じて、専門家集団の育成と企業の持続的な競争力向上を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.6歳 18.6年 7,220,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.7%
男性育児休業取得率 85.7%
男女賃金差異(全労働者) 67.0%
男女賃金差異(正規雇用) 67.7%
男女賃金差異(非正規) 56.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員に占める女性割合(17.2%)、CO2削減貢献量(140万トン ※2030年度目標)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原料調達に関する不測の事態


LNG等の原料調達において不測の事態が生じ、長期にわたり調達が困難となった場合、都市ガスや電力の供給に支障を及ぼす可能性があります。同社は調達先の多様化や緊急融通調達体制の構築等によりリスク軽減を図っています。

(2) 自然災害の発生


大規模な地震等の自然災害により、製造・供給設備に被害が発生した場合、ガス供給に支障が生じる可能性があります。また、大規模停電や発電設備のトラブルが発生した場合も事業収支に影響を及ぼす可能性があります。同社はBCPの策定や設備の耐震化、非常用電源の整備等を進めています。

(3) ガス製造・供給設備のトラブルの発生


製造・供給設備において漏えいや故障等のトラブルが発生した場合、供給支障や顧客への被害が生じ、対応費用や社会的信用の低下により業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は計画的な点検・更新やバックアップ体制の整備により、事故防止と影響の最小化に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。