※本記事は、北陸瓦斯株式会社の有価証券報告書(第175期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は日本基準です。
1. 北陸瓦斯ってどんな会社?
都市ガス事業を中心に、新潟県内でエネルギーの安定供給を担う地域密着型の企業です。
■(1) 会社概要
1913年に合同瓦斯として新潟市で設立され、1944年に現在の北陸瓦斯へ社名を変更しました。1947年に天然ガスベースへと移行し、地域に根ざしたエネルギー供給を拡大しています。2000年には東京証券取引所への上場を果たし、2025年には小千谷市からガス事業を譲り受けるなど、事業エリアを着実に広げています。
現在の体制として、従業員数は連結で652名、単体で450名です。大株主の筆頭は関連企業であり資材購入等の取引関係がある敦井産業で、第2位および第3位には奨学事業を行う公益財団法人が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 敦井産業 | 11.30% |
| 公益財団法人北陸瓦斯奨学会 | 9.61% |
| 公益財団法人敦井奨学会 | 7.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は敦井一友が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 敦井榮一 | 取締役会長(代表取締役) | 1985年敦井産業代表取締役社長、1994年北陸瓦斯代表取締役社長などを経て、2017年より現職。 |
| 敦井一友 | 取締役社長(代表取締役) | 2004年敦井産業常務取締役、2011年同社代表取締役社長などを経て、2017年より現職。 |
| 古俣祐輔 | 常務取締役(代表取締役) | 1988年北陸瓦斯入社。ICT推進部長、蒲原瓦斯代表取締役社長などを経て、2025年より現職。 |
| 清水崇之 | 常務取締役 | 1988年北陸瓦斯入社。長岡支社長、総務部長、営業部長などを経て、2025年より現職。 |
| 唐橋英輔 | 取締役供給部長 | 1996年北陸瓦斯入社。柏崎支社長兼柏崎供給センター長などを経て、2024年より現職。 |
| 阿達宏通 | 取締役 | 敦井産業常務取締役や北栄建設代表取締役社長などを経て、2023年より現職。 |
社外取締役は、小林宏一(小林石油会長)、鶴巻克恕(弁護士)、殖栗道郎(第四北越フィナンシャルグループ社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、以下の報告セグメントおよび事業を展開しています。
■都市ガス
一般家庭や業務用の顧客に対して都市ガスの製造、供給、販売や関連工事、ガス器具の販売を行っています。
ガス販売や工事の代金を顧客から受け取ることで収益を得ています。運営は主に北陸瓦斯や連結子会社の蒲原瓦斯が担っています。
■LPG
顧客にLPG(プロパンガス)や関連機器の販売、配管工事などを提供しています。
LPGの販売や工事代金を収益源としており、連結子会社である北陸天然瓦斯興業や蒲原瓦斯が事業を展開しています。
■ガス設備の保全・設計施工
都市ガス供給設備の保安点検や設計施工業務などを請け負っています。
親会社である北陸瓦斯からの業務委託費などが主な収益であり、連結子会社の北陸ガスエンジニアリングが担当しています。
■住宅設備機器の販売施工
住宅設備機器の販売や設置工事、ガスの検針業務などを提供しています。
機器販売代金や北陸瓦斯からの検針業務委託費を収益としており、連結子会社の北陸ガスリビングサービスが運営しています。
■土木・管工事
ガス管の敷設工事や一般土木工事などを行っています。
北陸瓦斯からのガス工事の一部発注などが収益源となっており、連結子会社の北栄建設が事業を行っています。
■太陽光発電
メガソーラー等を利用した再生可能エネルギーの発電事業を行っています。
売電収入を主な収益源としており、北陸瓦斯が運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、一時的な減益や赤字を経験したものの、その後は収益力が回復し、足元では増収増益と好調に推移しています。利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 524億円 | 696億円 | 614億円 | 618億円 | 644億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 7億円 | -6億円 | 17億円 | 42億円 |
| 利益率(%) | 2.6% | 1.0% | -1.0% | 2.7% | 6.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 4億円 | -18億円 | 20億円 | 32億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が順調に伸びる中、売上総利益および営業利益ともに増加し、収益性が高まっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 618億円 | 644億円 |
| 売上総利益 | 221億円 | 251億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.7% | 38.9% |
| 営業利益 | 14億円 | 38億円 |
| 営業利益率(%) | 2.3% | 5.9% |
供給販売費及び一般管理費のうち、減価償却費が58億円(構成比27%)、事業者間精算費が38億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である都市ガス事業がガス販売量の増加により増収となり、利益面でも大きく貢献して全体を牽引しています。一方、土木・管工事事業などは減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 都市ガス | 575億円 | 606億円 | 10.0億円 | 34.3億円 | 5.7% |
| LPG | 10.4億円 | 9.9億円 | 0.5億円 | 0.7億円 | 6.6% |
| ガス設備の保全・設計施工 | 2.9億円 | 2.8億円 | 0.8億円 | 0.8億円 | 27.0% |
| 住宅設備機器の販売施工 | 9.7億円 | 9.9億円 | 1.5億円 | 1.2億円 | 12.6% |
| 土木・管工事 | 18.7億円 | 14.6億円 | 0.8億円 | 0.8億円 | 5.5% |
| 太陽光発電 | 0.6億円 | 0.7億円 | 0.5億円 | 0.6億円 | 80.4% |
| 連結(合計) | 618億円 | 644億円 | 14億円 | 38億円 | 5.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で得た資金を、設備投資や事業譲受けなどの成長投資に充てるとともに、借入金の返済や配当支払いを行っている健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 78億円 | 90億円 |
| 投資CF | -49億円 | -100億円 |
| 財務CF | -14億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「ガス事業を通じて地域社会の発展に貢献するとともに、業績の向上を図り、お客さまや株主の皆さまから常に信頼・評価され、選択していただける企業であること」を基本方針としています。また、「安定供給、安全の確保、天然ガスの普及拡大」を使命として掲げています。
■(2) 企業文化
グループ会社や協力会社も含めた「オール北陸ガス」で地域密着の体制を築き、サービスの向上やエネルギー利用の創出を目指す文化があります。企業活動のあらゆる場面において企業倫理の向上と法令遵守の徹底を図り、社会的責任を確実に果たすことを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
ガス需要の維持拡大と新規事業やサービスの創出を推進し、安定的な収益構造を構築することで、収益性のさらなる向上を目指しています。また、顧客ニーズや環境変化に応じた付加価値の高いサービスを提供し続けることを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
ガス販売量の拡大を軸とした収益構造の構築、災害対応の経験を活かした事業基盤の強靭化、そして2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを進めています。M&Aによる供給区域拡大や、デジタル技術を活用したDX推進により、変化に強い経営体質を構築していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
変化の厳しい事業環境に対応し、持続的な企業価値向上を遂げるため、多様な人材確保を重要課題としています。働き方改革の推進による労働時間の適正化や多様な働き方の実現を目指すとともに、独自の「キャリア指南書」を活用した人材育成と、健康経営に資する職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.1歳 | 18.1年 | 5,841,328円 |
※平均年間給与は賞与を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 70.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 73.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 73.5% |
※同社は女性管理職比率について、公表義務の対象ではないため、有報には記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性応募者率(27.4%)、正社員1人あたりの月平均時間外労働時間(9.2時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 法令・制度の変更等による競合激化
小売全面自由化による新規参入者の出現やエネルギー政策の変更等により、エネルギー間競争が激化し、顧客数およびガス販売量が減少するリスクがあります。これに対し同社は、顧客ニーズに沿った新規事業や付加価値サービスの展開により、収益源の確保に努めています。
■(2) 気候変動・不況によるガス販売量への影響
ガス販売量は気温や水温の変動に影響を受けるため、冷夏や暖冬等の異常気象が発生した場合、販売量が大きく減少するリスクがあります。これに対し同社は、年間を通して需要変動の少ない機器の販売拡大など、多様な用途での新規需要獲得に取り組んでいます。
■(3) 自然災害・事故等による製造・供給設備への損害
大規模な自然災害や事故等により製造・供給設備に被害が発生した場合、ガスの供給に支障が生じ、復旧費用等の損害が発生するリスクがあります。これに対し同社は、導管の耐震化率向上によるバックアップ体制の構築や、定期的な災害対応訓練を実施しています。
■(4) 為替レートや原油価格の変動等による影響
原料価格は為替レートや原油価格の変動に影響を受けるため、調達コストの変動がガス料金へ反映されるまでのタイムラグにより、業績に影響を与えるリスクがあります。これに対し同社は、調達先の多様化を図りつつ価格動向を注視し、適切な対応を検討しています。



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