広島ガス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

広島ガス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム市場に上場し、広島県内で都市ガスやLPガスの供給を行うエネルギー事業者です。当連結会計年度は、LPガスの販売単価上昇等により売上高は前期比1.0%増の916億円と増収でした。一方、都市ガス販売量の減少等により経常利益は同43.4%減の19億円と減益になりました。


※本記事は、広島ガス株式会社 の有価証券報告書(第171期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 広島ガスってどんな会社?


広島県内の主要都市を供給エリアとし、都市ガスおよびLPガスの製造・供給・販売を行う地域密着型の総合エネルギー企業です。

(1) 会社概要


1909年に広島市にて設立され、1910年代に尾道や呉のガス会社と合併し事業基盤を拡大しました。1949年に広島証券取引所へ上場し、2000年には東京証券取引所市場第二部に上場、2015年に市場第一部銘柄に指定されました。2016年には廿日市工場の桟橋機能を拡大し標準LNG船の受け入れを開始するなど供給体制を強化しており、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。

同グループの連結従業員数は1,667名、提出会社単体では654名です。筆頭株主は産業ガス大手の岩谷産業で、第2位は保険会社の明治安田生命保険、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。岩谷産業とは資本業務提携を行っています。

氏名 持株比率
岩谷産業 11.08%
明治安田生命保険 5.61%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名(前田香織、秋田智佳子)の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長 社長執行役員は中川智彦氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
松藤研介 代表取締役会長 1983年入社。秘書部長、経営統括本部経理部長、エネルギー事業部長などを経て、2017年より代表取締役社長 社長執行役員。2024年4月より現職。
中川智彦 代表取締役社長社長執行役員 1987年入社。経営統括本部資材部長、原料部長、生産事業部長、経営企画部長などを歴任。2024年4月より現職。
谷村武志 取締役常務執行役員導管事業部長 1984年入社。導管事業部供給設備部長、廿日市工場長、経理部長、経営企画部長などを歴任。2019年4月より現職。
田村和典 取締役常務執行役員生産事業部長 1985年入社。エネルギー事業部呉支店長、導管事業部長などを経て、2020年4月より取締役常務執行役員生産事業部長。
沖田康孝 取締役常務執行役員総務部長 1986年入社。エネルギー事業部呉支店長、同副事業部長などを歴任。2022年7月より常務執行役員総務部長。2023年6月より現職。
吉﨑直 取締役常務執行役員エネルギー事業本部長 1988年入社。エネルギー事業部業務用エネルギー営業部長、呉支店長、産業用エネルギー営業部長などを歴任。2025年4月より現職。
水野直人 取締役常務執行役員 1991年入社。人事部長、原料部長、資源・海外業務部長などを経て、2024年6月より取締役執行役員。2025年4月より現職。


社外取締役は、椋田昌夫(広島電鉄代表取締役会長)、池田晃治(元広島銀行頭取)、尾崎裕(元大阪ガス社長)、前田香織(広島市立大学学長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ガス事業」、「LPG事業」および「その他」事業を展開しています。

ガス事業


広島県内の広島市、廿日市市、東広島市、呉市、尾道市、三原市、福山市を主な供給エリアとして、都市ガスの製造・供給および販売を行っています。また、ガス機器の販売やガス設備工事も手掛けています。

都市ガスの主原料である天然ガスは主に海外から輸入しており、販売収益はガスの利用量に応じた料金収入が中心です。運営は主に同社が行っており、ガスの加工は瀬戸内パイプライン、LNG船の運航管理はHG LNG SHIPPING CORPORATION、ガス機器販売や内管工事は広島ガスライフ等が担っています。

LPG事業


都市ガスの未供給区域において、LPガスの販売を行っています。また、LPガス機器の販売およびLPガス配管工事の施工等も手掛けています。

収益源はLPガスの販売収入や機器販売、工事代金などです。運営は、広島ガス北部販売をはじめとするグループ会社や、広島ガスプロパンが主体となって行っています。LPガスの充填業務については、広島ガスプロパン工業等が受託しています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、エンジニアリング関連事業、建設工事、機械器具設置工事、高齢者サービス事業等を行っています。

収益源は、工事代金やサービスの対価です。運営は、高圧ガス設備の検査や工事を行う広島ガステクノ・サービスや、高齢者介護事業を行うビー・スマイルなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 733億円 768億円 952億円 907億円 916億円
経常利益 35億円 46億円 74億円 34億円 19億円
利益率(%) 4.7% 6.0% 7.8% 3.7% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 53億円 37億円 52億円 23億円 17億円


売上高は2023年3月期に大きく伸長した後、900億円台で推移しています。一方、利益面では2023年3月期をピークに減少傾向にあり、当期は原材料価格の影響や都市ガス販売量の減少などにより、経常利益、当期利益ともに前期を下回る結果となりました。利益率も低下傾向にあります。

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高は微増しましたが、売上原価の増加などにより売上総利益は減少しました。販管費はほぼ横ばいで推移していますが、売上総利益の減少が響き、営業利益は前期に比べて大幅に減少しました。営業外収益の増加等があったものの、最終的な利益水準は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 907億円 916億円
売上総利益 288億円 262億円
売上総利益率(%) 31.8% 28.6%
営業利益 32億円 13億円
営業利益率(%) 3.5% 1.4%


販売費及び一般管理費のうち、減価償却費が55億円(構成比22%)、給料が53億円(同21%)を占めています。売上原価については、原料費が385億円(売上原価の59%)と最も大きな割合を占めています。

(3) セグメント収益


ガス事業は都市ガス販売量の減少などにより減収減益となりました。一方、LPG事業は販売単価の上昇などにより増収増益を達成しました。その他の事業も建設工事売上の増加により増収増益となっています。全体としては、主力のガス事業の苦戦が響き、連結営業利益は減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ガス事業 711億円 707億円 26億円 6億円 0.8%
LPG事業 172億円 180億円 3億円 4億円 2.3%
その他 24億円 29億円 1億円 2億円 7.3%
調整額 - - 2億円 1億円 -
連結(合計) 907億円 916億円 32億円 13億円 1.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、本業で稼いだ資金(営業CF+)を借入金の返済(財務CF-)や投資(投資CF-)に充てる「健全型」のパターンを示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 148億円 59億円
投資CF -97億円 -93億円
財務CF -132億円 -37億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「地域社会から信頼される会社をめざす」という経営理念を掲げています。この地域に暮らす人々の生活に欠かせないエネルギー供給事業者として、安心・安全なエネルギーを安定的に供給し続けることを最重要の使命としています。

(2) 企業文化


「このまち思いエネルギー。」というスローガンのもと、地域社会との共生を重視する文化があります。2030年ビジョンのスローガンには、広島ガスグループが提供する価値として、地域への想いや未来へのアクションを通じて笑顔あふれる社会の実現に貢献するという意思が込められています。

(3) 経営計画・目標


「広島ガスグループ2030年ビジョン」において、2030年度に連結経常利益70億円規模の企業グループへ成長することを目標としています。また、経営効率化と財務体質強化により、ROE(自己資本当期純利益率)の向上や自己資本比率の向上に努めています。

* ROA(総資産利益率):3.5%以上
* ROE:8.0%以上
* EBITDA(営業利益+減価償却費):160億円以上
* 自己資本比率:50%程度
* 連結配当性向:30%以上(短期的な利益変動要因を除く)

(4) 成長戦略と重点施策


「2025年度広島ガスグループ中期経営計画」に基づき、「都市ガス・LPG事業の深化」、「イノベーションの創出」、「経営基盤の強化」に取り組んでいます。特に脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギー電源の開発やグリーン電力の供給、森林保全活動などを推進し、新たな収益源の確保と環境貢献の両立を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「グループ組織力の強化」を基本戦略の一つに掲げ、人間力・現場力の育成を進めています。多様な価値観を尊重し、誰もが働きやすく能力を発揮できる職場環境づくりを目指し、ワーク・ライフ・バランスの推進や女性活躍推進などの「働き方改革」に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.2歳 18.9年 5,860,000円


※平均年間給与は、賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.2%
男女賃金差異(正規雇用) 74.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用人数に占める女性比率(37.5%)、キャリア採用の実施(2人)、障がい者雇用率(2.6%)、女性管理職昇格比率(15.4%)、有給休暇取得率(78.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原料調達支障による影響


都市ガスの主原料である天然ガスの大半を海外からの輸入に依存しているため、調達先の設備トラブルや輸送事故等による供給途絶リスクがあります。特にロシアからのLNG調達が困難になる可能性も想定されています。同社は調達先の多様化や自社LNG船の運用等により安定調達に努めるとともに、万一の際には他社融通やスポット調達等で安定供給を確保する方針です。

(2) 原材料等調達価格の変動


原油価格や為替相場の変動は原料価格に影響を与えます。原料費調整制度により販売価格へ反映されますが、タイムラグによる一時的な収益変動リスクがあります。また、電力事業における卸電力市場価格の変動や、持分法適用会社でのバイオマス燃料調達難なども業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はデリバティブ取引等によるヘッジや、自社電源の活用によりリスク低減を図っています。

(3) 脱炭素化への対応


世界的な脱炭素化の流れの中で、化石燃料である天然ガスやLPガスの使用が制限・禁止されるような制度変更が行われた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社はカーボン・オフセットガスの販売や再生可能エネルギー電源の開発、メタネーション技術の研究など、脱炭素社会に向けた取り組みを強化し、リスクへの対応と新たな事業機会の創出を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。