※本記事は、株式会社西部ガスホールディングス の有価証券報告書(第132期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 西部ガスホールディングスってどんな会社?
福岡県を中心に都市ガス供給を行うエネルギー企業。不動産や電力事業も展開し、総合エネルギー企業へ進化。
■(1) 会社概要
1930年に設立され、福岡県を中心にガス供給事業を開始しました。1949年に福岡証券取引所、1974年に東京証券取引所に上場しました。2021年には持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。2025年3月末現在、連結従業員数は3,840名、単体は186名です。
筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位および第3位は地元福岡を基盤とする地方銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.84% |
| 福岡銀行 | 4.95% |
| 西日本シティ銀行 | 4.92% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長社長執行役員は加藤卓二氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 道 永 幸 典 | 代表取締役会長 | 1981年入社。常務執行役員、代表取締役社長を経て2024年4月より現職。 |
| 加 藤 卓 二 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1985年入社。エネルギー企画部部長、常務執行役員等を経て2024年4月より現職。 |
| 山 下 秋 史 | 取締役顧問 | 1984年入社。代表取締役副社長執行役員等を経て2025年4月より現職。 |
| 沼 野 良 成 | 取締役常務執行役員 | 1986年入社。西部瓦斯長崎社長等を経て2023年6月より現職。 |
| 豊 田 康 弘 | 取締役 | 1987年入社。常務執行役員人財戦略部長等を経て2025年4月より現職。 |
| 森 田 省 吾 | 取締役常務執行役員 | 1988年入社。西部瓦斯執行役員経営企画部長等を経て2024年6月より現職。 |
| 下 田 正 浩 | 取締役監査等委員(常勤) | 1986年入社。執行役員生産部長等を経て2021年6月より現職。 |
| 御 手 洗 淳 | 取締役監査等委員(常勤) | 1987年入社。執行役員広報部長等を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、部谷由二(元西日本鉄道副社長)、池内比呂子(テノ.ホールディングス社長)、髙田聖大(九州総合信用社長)、五島久(福岡銀行頭取)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ガス」「LPG」「電力・その他エネルギー」「不動産」および「その他」事業を展開しています。
■(1) ガス事業
都市ガスの製造、供給および販売を行っています。また、ガス機器の販売やガス工事も手掛けています。
主な収益源は顧客からのガス料金および機器代金、工事代金です。運営は主に西部瓦斯が行い、ひびきエル・エヌ・ジーが製造を受託しています。
■(2) LPG事業
LPG(液化石油ガス)の供給および販売、関連機器の販売、配管工事を行っています。
顧客からのLPG料金や機器代金が主な収益源です。運営は主に西部ガスエネルギーが行っています。
■(3) 電力・その他エネルギー事業
電力の小売り、熱供給事業、太陽光等の再生可能エネルギー発電事業を行っています。
顧客からの電気料金や熱供給料金が収益となります。運営は西部ガステクノソリューションやエネ・シード等が行っています。
■(4) 不動産事業
分譲マンションの販売、不動産の賃貸、住宅の建築・販売を行っています。
マンションや住宅の販売代金、賃貸物件の賃料収入が主な収益です。運営はエストラスト、西部ガス都市開発、九州八重洲等が担っています。
■(5) その他
情報処理サービス、飲食店の経営、物品販売などを行っています。
システム利用料や飲食代金等が収益源です。運営は西部ガス情報システムや八仙閣等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年3月期をピークに変動していますが、2500億円以上の規模を維持しています。利益面では、2022年3月期に一時的に利益率が低下しましたが、その後は4%台の経常利益率で推移しており、安定した収益力を示しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,920億円 | 2,153億円 | 2,663億円 | 2,563億円 | 2,544億円 |
| 経常利益 | 46億円 | 6億円 | 118億円 | 104億円 | 106億円 |
| 利益率(%) | 2.4% | 0.3% | 4.4% | 4.0% | 4.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 5億円 | 132億円 | 62億円 | 64億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となりましたが、売上総利益率は30%台を維持しています。営業利益は増加し、営業利益率は4%台に改善しました。コストコントロールが奏功し、収益性が向上していることが分かります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,563億円 | 2,544億円 |
| 売上総利益 | 775億円 | 770億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.2% | 30.3% |
| 営業利益 | 97億円 | 105億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が107億円(構成比16.1%)、減価償却費が106億円(同15.9%)を占めています。売上原価では、原材料費などが主要な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
主力のガス事業は減収増益となりましたが、不動産事業は利益率が高く、全社利益への貢献度が大きくなっています。LPG事業は営業損失を計上しています。電力・その他エネルギー事業は増収ながらも減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ガス | 1,594億円 | 1,558億円 | 52億円 | 55億円 | 3.5% |
| LPG | 254億円 | 271億円 | -3億円 | -1億円 | -0.2% |
| 電力・その他エネルギー | 221億円 | 233億円 | 8億円 | 5億円 | 2.2% |
| 不動産 | 427億円 | 423億円 | 37億円 | 43億円 | 10.2% |
| その他 | 256億円 | 251億円 | 11億円 | 11億円 | 4.6% |
| 調整額 | -188億円 | -191億円 | -10億円 | -9億円 | - |
| 連結(合計) | 2,563億円 | 2,544億円 | 97億円 | 105億円 | 4.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
西部ガスホールディングスは、安定的な資金確保のため、運転資金は自己資金と短期借入、設備投資資金は長期借入と社債発行を基本とする財務政策を採っています。
営業活動では、未収入金等の増加により資金が増加しました。投資活動では、貸付けによる支出が増加し、資金が減少しました。財務活動では、短期借入金の返済による支出が増加し、資金が減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 221億円 | 386億円 |
| 投資CF | -282億円 | -300億円 |
| 財務CF | -40億円 | -67億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「地域貢献」「責任」「和」を経営理念として掲げています。また、「西部ガスグループビジョン2030」において、「つながりをチカラに未来を変える価値の創造に挑み、持続可能で豊かな社会の実現をリードする」ことを2030年のありたい姿として定めています。
■(2) 企業文化
同社は、すべてのステークホルダーとのコミュニケーションを大切にし、真に価値ある企業市民として地域社会との共生を目指しています。「西部ガスグループ企業行動指針」に基づき、法令遵守や社会規範の尊重、安全・安心の確保、環境保全への取り組みなどを重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2025年度から2027年度までの3年間を対象とする中期経営計画「ACT2027」を策定しています。2027年度に向けた主な経営指標目標は以下の通りです。
* 経常利益(3年合計):380億円
* ROE:8.0%程度
* ROIC:2.3%程度
* 自己資本比率:23.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画「ACT2027」では、ガスと電力を中心とするエネルギー事業の成長加速と、不動産事業の安定的な収益確保による利益最大化を目指しています。重点取り組みとして、天然ガスの普及拡大や電源の脱炭素化による「カーボンニュートラルへの取り組み推進」、不動産事業の推進やデジタル技術を活用した「地域やお客さまとの『つながり』強化」などを掲げています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、中期経営計画において「人的資本経営の強化」を重点取り組みの一つとして掲げています。「人財」への投資を強化することで従業員エンゲージメントを向上させ、企業価値の最大化を図る方針です。また、多様な人材が幸せに働くことができる環境整備を進め、従業員を大切にする企業風土の醸成を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.4歳 | 13.2年 | 5,971,706円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.2% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 50.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、グループ横断的な要員配置(5件)、ソウゾウ大学への参加人数(43名)、障がい者雇用率(2.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 社会情勢や景気の変動等の社会環境の変化
経済・金融情勢の変化や景気変動、感染症の流行等が売上減少や取引先の倒産を引き起こし、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、グループビジョン2030や中期経営計画「ACT2027」に基づき、エネルギー事業の成長や不動産事業の収益確保、経営管理の高度化により対応を図っています。
■(2) 事業戦略達成の遅れ
新たな中期経営計画の戦略実行やグループ会社への経営支援、経営基盤強化が遅れた場合、事業計画の達成に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、経営戦略部や新たに設置したエネルギー統括部、不動産統括部が中心となり、グループ連携や統制の強化を推進しています。
■(3) 企業の社会的責任の変化や法令等の変更
気候変動対応などのサステナビリティ課題への取り組み不足や、エネルギー関連政策・法令の変更への対応遅れが、事業運営や業績に影響を与える可能性があります。カーボンニュートラル実現を最重要課題と捉え、「アクションプラン」に基づき天然ガスシフトやガスの脱炭素化等を推進しています。



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