西部ガスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

西部ガスホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

西部ガスホールディングスは東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場し、九州地方を基盤に都市ガスやLPG、電力・その他エネルギー、不動産事業等を幅広く展開する総合エネルギー企業です。直近の業績では、主力のガス事業に加えて電力や不動産事業も堅調に推移し、増収ならびに二桁の経常増益を達成しています。


※本記事は、西部ガスホールディングス株式会社の有価証券報告書(第133期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 西部ガスホールディングスってどんな会社?


九州地方を地盤に都市ガスなどのエネルギー供給を担い、不動産や電力領域へも多角的に展開する企業です。

(1) 会社概要


1930年に東邦瓦斯から福岡・熊本・佐世保・長崎の各市の供給区域を分離して設立されました。1949年に福岡証券取引所、翌年に東京証券取引所へ上場しています。2014年にはひびきLNG基地が運用を開始しました。2021年に西部ガスホールディングスへと商号変更し、持株会社体制へ移行しています。

現在の従業員数は連結で3725名、単体で160名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)であり、第2位に西日本シティ銀行、第3位に福岡銀行が続きます。地域経済の発展に貢献する地場の主要な金融機関が上位株主に名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.67%
西日本シティ銀行 4.92%
福岡銀行 4.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長 社長執行役員を加藤卓二氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤卓二 代表取締役社長 社長執行役員 1985年入社。エネルギー企画部部長や営業計画部長を歴任。2021年に取締役常務執行役員に就任。2024年より現職。
道永幸典 代表取締役会長 1981年入社。情報通信部長や総務広報部長などを歴任。2019年に代表取締役社長 社長執行役員に就任し、2024年より現職。
上野俊幸 代表取締役 副社長執行役員 1987年入社。西商代表取締役社長や西部ガス営業計画部長などを経て、2024年に取締役常務執行役員営業本部長に就任。2025年より現職。
森田省吾 取締役 専務執行役員 1988年入社。経営企画部長や経営戦略部長を歴任。2024年に取締役常務執行役員に就任。2026年より現職。
御手洗淳 取締役 常務執行役員 1987年入社。秘書部長や広報部長を歴任。2023年に取締役監査等委員に就任し、2025年より現職。
前田慶太 取締役 1988年入社。都市リビング開発部長や事業開発部長を歴任。2025年に取締役常務執行役員に就任し、2026年より現職。


社外取締役は、部谷由二(元西日本鉄道副社長)、池内比呂子(テノ.ホールディングス社長)、髙田聖大(九州総合信用社長)、五島久(福岡銀行頭取)です。

2. 事業内容


同社グループは、ガス、LPG、電力・その他エネルギー、不動産の4つの報告セグメントおよびその他事業を展開しています。

(1) ガス


都市ガス等の製造、供給、販売や、ガス機器の販売、ガス消費機器の調査・検針等の付随業務を行っています。主に家庭用・業務用・産業用の顧客や他のガス事業者へ製品を供給しています。

都市ガスの販売収入やガス機器の販売代金、受託業務にかかる手数料が主な収益源です。事業の中核を担う西部ガスがガスの製造から供給・販売までを手掛け、製造受託をひびきエル・エヌ・ジーなどが担当しています。

(2) LPG


LPG(液化石油ガス)およびLPG用のガス機器の販売、それに伴う配管等の工事施工サービスを提供しています。また、都市ガスの原料用LPGの供給も行っています。

一般顧客からのLPG販売収入やガス機器販売代金、工事代金、および西部ガス向けの原料販売収益が主な収益源です。これらの運営は主に西部ガスエネルギーが行っています。

(3) 電力・その他エネルギー


ガス火力発電や太陽光などの再生可能エネルギーによる発電事業、熱供給事業、ガス設備の設計・施工業務などを展開しています。米国等での海外発電事業への出資も手掛けています。

電力の販売収入や熱供給にかかる料金、設備の設計・施工代金が主な収益源です。エネ・シードやエネ・シードひびきが発電事業を担い、西部ガステクノソリューションが熱供給事業を展開しています。

(4) 不動産


分譲マンションや戸建分譲などの不動産販売、住宅建築、宅地開発、オフィスビルや物流倉庫などの不動産賃貸事業を展開しています。タイなどの海外における不動産開発も進めています。

顧客からの不動産販売代金やテナントからの賃貸収入が主な収益源です。運営は主にエストラストや九州八重洲が手掛け、不動産賃貸については西部ガス都市開発が行っています。

(5) その他


食品販売、飲食店の経営、情報処理サービスの提供、炭素材や化成品の製造・販売、ベンチャー企業等への投資事業など、多角的な事業展開を行っています。

商品販売代金やサービス提供手数料、ファンドからの投資収益が主な収益源です。八仙閣が飲食店経営を、マルタイが食品販売を、西部ガス情報システムが情報処理サービスを担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は2153億円から2618億円へと成長傾向にあります。経常利益も100億円前後の安定した水準で推移しており、直近の2026年3月期には電力事業や国際エネルギー事業の成長により126億円まで拡大しました。一方で、当期利益は一時的な特別損失の計上等により変動が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2153億円 2663億円 2563億円 2544億円 2618億円
経常利益 6億円 118億円 104億円 106億円 126億円
利益率(%) 0.3% 4.4% 4.0% 4.2% 4.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 21億円 86億円 26億円 34億円 6億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の2544億円から2618億円へと増加し、それに伴って売上総利益も拡大しています。エネルギー供給におけるコストコントロールや新規事業の伸長が寄与し、営業利益も堅調な伸びを示しており、利益率も着実に改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2544億円 2618億円
売上総利益 770億円 813億円
売上総利益率(%) 30.3% 31.0%
営業利益 105億円 125億円
営業利益率(%) 4.1% 4.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料が109億円(構成比16%)、減価償却費が104億円(同15%)、委託作業費が97億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上動向を見ると、主力のガス事業が全体の大半を占めていますが、不動産事業が420億円、電力・その他エネルギー事業が306億円を売り上げており、収益源の多角化が進んでいることが分かります。特に不動産事業の成長が全体を牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ガス 1566億円 1511億円
LPG 218億円 215億円
電力・その他エネルギー 225億円 306億円
不動産 364億円 420億円
その他 170億円 164億円
連結(合計) 2544億円 2618億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 386億円 253億円
投資CF -300億円 -338億円
財務CF -67億円 29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「地域貢献」「責任」「和」を経営理念に掲げ、持続可能な社会の発展に率先して取り組むことを使命としています。あらゆるステークホルダーとのコミュニケーションを大切にし、真に価値ある企業市民として地域社会との共生を実現することで、持続可能で豊かな社会の実現をリードするポジションを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「安心を挑戦に、挑戦を次の安心に」という企業文化を大切にしています。エネルギーインフラを担う事業者としての「安心」を土台としながらも、それに安住することなく、未来を変える新たな価値創造に向けて積極的な「挑戦」を推奨する組織風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年度から2027年度を対象とするグループ中期経営計画「ACT2027」を策定し、ガスと電力の成長加速や不動産の安定収益確保を通じて利益最大化と資本効率向上を目指しています。具体的な数値目標は以下の通りです。

* 経常利益(3年合計):380億円
* ROE(2027年度):8.0%程度
* ROIC(2027年度):2.3%程度
* 自己資本比率(2027年度):23.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は中長期的な成長戦略として、トランジション需要の獲得やメタネーション技術の実証等による「カーボンニュートラルの推進」を最重要課題と位置付けています。また、自然災害等に備えたエネルギーサプライチェーンの強化や、財務規律に基づく戦略的なM&A等を通じて、エネルギー周辺領域を中心とした新たな価値の共創にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本経営を全戦略の基盤に位置づけ、従業員エンゲージメントの向上を最重要指標としています。経営戦略に連動する適所適材の配置や育成に加え、「挑戦を通じた成長支援」としてキャリア自律を促す環境を整備しています。また、多様な人材が属性にとらわれず互いを尊重し合い、最大限に能力を発揮できるDE&Iの推進にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.5歳 13.8年 6,555,364円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.4%
男女賃金差異(正規雇用) 71.8%
男女賃金差異(パート・有期) 62.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメントスコア(63.6%)、障がい者雇用率(2.6%)、プレゼンティーズム(78.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 社会環境の変化と事業戦略達成の遅れ


国内外の経済・社会情勢の変化や、グループ中期経営計画「ACT2027」において想定した事業戦略が未達成となるリスクがあります。同社はグループ内での人事交流や専門的な人材の採用等を通じて経営基盤の強化を図り、環境変化への迅速な対応に努めています。

(2) エネルギー需要への影響と競争激化


気候変動による猛暑や暖冬、低炭素社会への移行によりガス需要が縮小するリスクや、小売全面自由化に伴う他事業者との競争激化リスクがあります。これに対し、電力とのセット販売や付加価値の高いソリューションサービスの提供により顧客基盤の維持・拡大を目指しています。

(3) 原燃料調達およびガスの安定供給に関するトラブル


LNG等の原燃料の大半を海外に依存しているため、調達先でのトラブルや国際情勢により調達が滞るリスクがあります。さらに、ガス漏えい等の重大な事故が発生した場合、事業運営に支障をきたすため、調達先の分散化や保安対策の充実に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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