東京會舘 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京會舘 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京會舘はスタンダード市場に上場し、宴会場・結婚式場・レストランの経営および洋菓子販売を主要事業としています。当期は宴会・食堂部門の需要回復により売上高が伸長し増収となりましたが、前年の税効果会計による利益押し上げの反動等により最終利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社東京會舘 の有価証券報告書(第131期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東京會舘ってどんな会社?


大正時代から続く国際的な社交場としての伝統を持ち、宴会・結婚式場・レストラン運営と洋菓子販売を行う企業です。

(1) 会社概要


1920年に設立され、1922年に東京會舘本舘を開業しました。1949年には東京証券取引所に上場しています。数度の改築を経て、2019年に現在の本舘が新築・営業再開しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に上場しています。創業以来、格調高い施設とサービスを提供し続けています。

2025年3月31日現在、単体の従業員数は451名です。大株主構成は、筆頭株主が酒類・食品大手の事業会社で、第2位は取引先持株会、第3位は大手生命保険会社となっており、安定的な株主基盤を有しています。

氏名 持株比率
サントリーホールディングス 9.49%
東京會舘取引先持株会 5.61%
日本生命保険相互会社 5.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表取締役社長は渡辺 訓章氏が務めています。社外取締役比率は23.1%です。

氏名 役職 主な経歴
渡辺 訓章 代表取締役社長 1982年同社入社。浜松町東京會舘総支配人、本舘総支配人、営業本部長などを歴任し、2017年より現職。
鈴木 輝伯 代表取締役専務取締役管理本部長 1980年同社入社。経理部長、常務取締役管理本部長などを経て、2020年より現職。
星野 昌宏 常務取締役営業本部長兼マーケティング戦略部長兼本舘営業部長 博報堂、ローランド・ベルガー等を経て2017年同社入社。戦略本部副本部長などを経て、2023年より現職。
山口 健太郎 取締役営業推進部統括部長 帝国ホテルにて営業部部長などを歴任後、2017年同社入社。営業本部副本部長などを経て、2020年より現職。
吉田 寛 取締役本舘営業部副部長兼本舘総支配人 キャプテンクック等を経て1988年同社入社。本舘総支配人などを経て、2020年より現職。
斉藤 哲二 取締役調理本部長兼本舘総調理長 1978年同社入社。調理・製菓部長などを経て、2023年より現職。
蛯原 望 取締役管理本部副本部長兼経理部長 沖電気工業等を経て2011年同社入社。経理部長を経て、2023年より現職。


社外取締役は、島谷 能成(東宝代表取締役会長)、合場 直人(三菱地所顧問)、福本 ともみ(サントリーホールディングス社友)です。

2. 事業内容


同社グループは、「レストラン・宴会及びこれらに関連した業務」の単一セグメントですが、提供サービスにより以下の区分で事業を展開しています。

(1) 宴会部門


丸の内本舘をはじめとする施設において、結婚式や一般宴会の企画・運営を行っています。法人・個人を問わず、格調高い空間と料理、サービスを提供し、国際的な社交場としての役割を担っています。

収益は、顧客から受け取る挙式・披露宴の施行料や、パーティ・会議等の会場利用料、飲食代金等から構成されます。運営は同社が行っています。

(2) 食堂部門


本舘内のレストランや、外部施設内で受託運営するレストラン(如水会館、大手町営業所等)において、フランス料理や和食などを提供しています。伝統の味を守りつつ、時代のニーズに合わせたメニュー展開を行っています。

収益は、来店客からの飲食代金が主な収入源となります。運営は同社が行っています。

(3) 売店・その他の営業部門


「プティガトー」などの伝統的な洋菓子や、レトルト食品等の製造・販売を行っています。本舘内のショップや百貨店、オンラインショップ等で展開しており、贈答用としても高い評価を得ています。

収益は、顧客からの商品購入代金となります。運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期はコロナ禍の影響等により大幅な赤字となりましたが、その後は回復基調にあります。売上高は順調に伸長し、2024年3月期には149億円まで回復しました。当期(2025年3月期)は売上高153億円と増収を維持し、経常利益も12億円へ増加しましたが、当期純利益は税効果会計の影響等により減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 40億円 84億円 129億円 149億円 153億円
経常利益 -29億円 -7億円 3億円 10億円 12億円
利益率(%) -71.1% -8.1% 2.1% 6.6% 8.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -32億円 8億円 2億円 15億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期間において、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は12.9%から14.3%へ改善し、営業利益率も7.0%から8.4%へと向上しました。コストコントロールや適正価格での原材料調達等が奏功し、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 149億円 153億円
売上総利益 19億円 22億円
売上総利益率(%) 12.9% 14.3%
営業利益 10億円 13億円
営業利益率(%) 7.0% 8.4%


売上原価のうち、経費が71億円(構成比54%)、労務費が42億円(同32%)を占めています。販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4億円(構成比47%)、雑費が2億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


当期は各部門とも堅調に推移しました。宴会部門は大型宴会の獲得や単価向上により増収となり、食堂部門も法人需要の回復や週末の慶事利用により売上を伸ばしました。売店・その他の営業部門は、一部で受注減少があったものの、概ね前年並みの水準で推移しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
宴会 106億円 108億円
食堂 32億円 34億円
売店・その他の営業 11億円 11億円
連結(合計) 149億円 153億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東京會舘のキャッシュ・フローは、営業活動でプラスを確保しつつ、投資活動では将来に向けた資産形成を進めています。営業活動によるキャッシュ・フローは、本業で生み出された利益や、減価償却費といった非現金支出の増加により、プラスとなりました。一方、投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得や保険積立金の積み増しなどにより、支出超過となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金やリース債務の返済などにより、支出超過となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 19億円 16億円
投資CF -6億円 -19億円
財務CF -5億円 -8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来、日本を代表する国際社交場として、確かな味とサービス、格調高い施設を提供し、顧客の要望に応えるとともに、日本の食文化の発展に貢献することを企業理念としています。

(2) 企業文化


永い歴史と伝統により培われたブランド価値を重視し、すべてのステークホルダーとの共存共栄を図る文化があります。また、従業員一人ひとりがプロフェッショナルとしての技術を磨き続けることを求め、互いに「指導者」「学習者」として成長し合う風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画(2023~2025年度)」を推進しており、最終年度となる2025年度においては「持続的成長のための経営基盤の強化」を重点テーマの一つとしています。事業ミックスの最適化による増収増益を図り、企業価値の向上を目指しています。

* 経常利益目標:10.8億円(実績12.5億円で達成)

(4) 成長戦略と重点施策


企業価値の核を守りつつ、日々変化する市場環境に柔軟に対応し、ブランド価値の訴求と事業ミックスの最適化を継続することで需要を取り込む戦略です。具体的には、新本舘の設備投資による空間の上質感向上や、優秀な人材の確保、待遇改善による従業員満足度の向上など、人的資本経営にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


上質な食と接客を提供するため、従業員一人ひとりが技術を磨き続けるプロフェッショナル人材の育成を目指しています。従業員同士が教え合う育成体制の構築や、待遇改善による従業員満足度の向上、多様な人材の活用を意識した雇用環境の整備などを進め、人的資本への投資を強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.2歳 12.5年 4,980,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.0%
男性育児休業取得率 37.5%
男女賃金差異(全労働者) 79.6%
男女賃金差異(正規雇用) 86.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、認定資格取得者数(102名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品衛生および食品安全


ノロウイルス等の食中毒発生リスクがあります。万一問題が発生した場合、社会的信用の失墜により業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、専門委員会による指導や外部機関による検査を実施し、HACCPの考え方を取り入れた衛生管理を行っています。

(2) 防火・防災および事故


店舗展開を行っているため、大規模地震や火災等の災害により営業継続が困難になる可能性があります。防災訓練への参加や救命技能認定の取得推進など、緊急時の対応体制を整備しています。

(3) 退職給付債務


年金資産の運用環境悪化や割引率の低下等が、数理計算上の差異として翌事業年度の業績に悪影響を与える可能性があります。企業年金基金の運営状況を定期的にモニタリングする体制をとっています。

(4) 顧客個人情報の管理


多くの顧客情報を保有しており、漏洩が発生した場合は信用の失墜や損害賠償により業績に影響する可能性があります。情報管理委員会を通じた研修やセキュリティチェック等により、管理体制の強化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。