※本記事は、株式会社東京會舘の有価証券報告書(第132期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京會舘ってどんな会社?
同社は1922年の創業以来、宴会場やレストランの経営、洋菓子の販売などを展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1920年に有馬パラダイス土地として設立され、1922年に東京會舘本舘を竣工開業しました。1949年に東京証券取引所へ上場しています。1982年には如水会館の営業を開始し、施設の受託運営も展開してきました。2019年には建て替えを終えた本舘が営業を再開し、現在に至ります。
現在の従業員数は単体で480名規模となっています。大株主の構成については、筆頭株主が事業会社のサントリーホールディングスで、第2位は取引先による持株会、第3位は日本生命保険相互会社となっており、安定した取引関係基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| サントリーホールディングス | 9.49% |
| 東京會舘取引先持株会 | 5.91% |
| 日本生命保険相互会社 | 5.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.0%です。代表取締役社長は渡辺訓章氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は30.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡辺訓章 | 代表取締役社長 | 1982年入社。浜松町東京會舘総支配人、本舘総支配人、開設準備室長などを経て、2017年より現職。 |
| 星野昌宏 | 専務取締役営業本部長 | 博報堂、ローランド・ベルガー等を経て2017年入社。常務取締役等を経て、2026年6月より現職。 |
| 山口健太郎 | 常務取締役営業推進部統括部長 | 帝国ホテルを経て2017年入社。取締役営業本部副本部長等を経て、2026年6月より現職。 |
| 吉田寛 | 取締役営業本部副本部長兼本舘総支配人 | 1988年入社。如水会館支配人、本舘総支配人等を経て、2026年4月より現職。 |
| 斉藤哲二 | 取締役調理本部長兼本舘総調理長 | 1978年入社。経団連ゲストハウス調理長、浜松町東京會舘調理長等を経て、2023年4月より現職。 |
| 蛯原望 | 取締役管理本部長兼総務部長 | 沖電気工業等を経て2011年入社。経理部長、管理本部副本部長等を経て、2026年4月より現職。 |
| 山田満男 | 取締役経理部長 | 東京銀行(現・三菱UFJ銀行)等を経て2024年入社。経理部参与等を経て、2026年6月より現職。 |
社外取締役は、島谷能成氏(東宝相談役)、合場直人氏(公益財団法人としま未来文化財団理事長)、福本ともみ氏(サントリーホールディングス社友)です。
2. 事業内容
同社グループは、「宴会」「食堂」「売店・その他の営業」などの事業を展開しています。
■(1) 宴会事業
本舘や受託施設において、顧客から受注した一般宴会や婚礼を実施するための場所、料理、飲料、接客サービスの提供を行っています。主に法人の大型宴会や個人の慶事などを対象としています。
収益源は、宴会や婚礼の実施に伴う会場費、飲食代、サービス料などです。運営は同社が単体で行っており、本舘を中心とした施設において営業体制の強化や高付加価値化を図っています。
■(2) 食堂(レストラン)事業
本舘や各営業所のレストランにおいて、季節性を取り入れた料理や飲料、それに伴うサービスを提供しています。平日の法人利用から週末の慶事利用まで、幅広い層の顧客を対象としています。
収益源は、店舗での料理や飲料の提供に対する飲食代金です。同社が各店舗の運営を担っており、施設の特色を生かした商品構成の充実や適正価格でのサービス提供によって収益を獲得しています。
■(3) 売店・その他の事業
本舘売店や各営業所において、伝統の焼菓子や半生菓子などの洋菓子類やギフト商品の販売を展開しています。宴会や婚礼の実施に伴う引菓子などの付帯需要にも対応しています。
収益源は、洋菓子を中心とした製商品の販売代金です。同社が製造から販売までを手掛けており、季節商品や新商品の継続的な投入を通じて安定的な収益の確保に努めています。
3. 業績・財務状況
同社の業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績推移を見ると、売上高は着実な成長を続けています。一時的に経常赤字となった時期もありましたが、その後は黒字化を果たし、直近では利益率も改善傾向にあります。全体として収益基盤の回復と成長が確認できます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 84億円 | 129億円 | 149億円 | 153億円 | 163億円 |
| 経常利益 | -7億円 | 3億円 | 10億円 | 12億円 | 15億円 |
| 利益率(%) | -8.1% | 2.1% | 6.6% | 8.2% | 9.1% |
| 当期純利益 | 8億円 | 2億円 | 15億円 | 9億円 | 10億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益状況を見ると、増収に伴い売上総利益が増加しており、収益性が向上しています。利益率も堅調に推移しており、営業利益の着実な伸びにつながっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 153億円 | 163億円 |
| 売上総利益 | 22億円 | 24億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.3% | 14.9% |
| 営業利益 | 13億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 8.3% | 8.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5億円(構成比48%)、雑費が2億円(同18%)を占めています。また、売上原価については、経費が73億円(構成比53%)、労務費が46億円(同33%)となっています。
■(3) セグメント収益
各事業区分の売上高を見ると、主力である宴会部門が牽引役となっており、順調に数値を伸ばしています。レストラン部門や売店・その他の営業部門も堅調に推移しており、全事業で増収を達成しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 宴会 | 108億円 | 116億円 |
| レストラン | 34億円 | 35億円 |
| 売店・その他の営業 | 8億円 | 9億円 |
| その他の収益 | 3億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 153億円 | 163億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローの状況は、営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と資産の回収によって借入返済等を進める改善型の局面にあると言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16億円 | 24億円 |
| 投資CF | -19億円 | 4億円 |
| 財務CF | -8億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「永い歴史と伝統により培われた、わが国を代表する国際社交場として、確かな味とサービス、格調高い施設を提供し、お客様のご要望にお応えするとともに、わが国の食文化の発展に貢献すること」を企業理念として掲げています。この理念の具現化に向け、「期待を超える上質な食と接客を提供すること」を長期ビジョンに定めています。
■(2) 企業文化
同社の競争優位性を支えているのは、創業以来培ってきた調理技術やレシピ、上質な空間にふさわしい接遇やサービスを、現場が自律的に磨き上げ、継承・発展させてきた企業文化です。従業員一人ひとりがプロフェッショナルとして専門性とホスピタリティを磨き続けられるよう、従業員同士が指導者と学習者の両方の役割を担い、自律的に成長できる育成風土を重んじています。
■(3) 経営計画・目標
同社は資本コストや株価を意識した経営を重視し、資本効率の向上に向けた取り組みを進めています。ステークホルダーにとって価値ある企業であり続けることを目指し、以下のような数値目標を掲げています。
* 中期経営計画最終年度におけるROE(自己資本利益率):8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
持続的な成長に向けた組織基盤の強化を最優先課題とし、人的資本や設備への戦略的な投資を通じてブランド力の向上を図る方針です。高付加価値戦略に基づく適正な価格体系を構築し、収益構造の安定化を目指します。また、AI等の技術革新を積極的に取り入れ、オペレーションの最適化や生産性向上を通じたコストコントロールを徹底することで、持続的な利益成長を実現する戦略を描いています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材の確保と定着を重要課題と位置づけており、幅広い職種で若手人材の採用を強化しています。従業員が理念やビジョンに共感し、働き甲斐を実感できる職場作りを推進するため、従業員同士の意見交換の場を設けています。また、階層別・部門横断型の研修を拡充し、専門性とホスピタリティを兼ね備えた人材の育成に注力するとともに、福利厚生の充実によるエンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.7歳 | 11.4年 | 4,952,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.0% |
| 男性育児休業取得率 | 44.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.3% |
| 男女賃金差異(正規労働者) | 85.8% |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | 64.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
(1) 食の安全性に関するリスク
同社は食品衛生対策委員会を設置し、講習会の実施や外部機関による衛生検査など万全の管理体制を敷いています。しかし、万が一ノロウイルスなどの食中毒が発生し食の安全性が問われる事態となれば、顧客からの信頼を損ね、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2) 店舗運営における自然災害等のリスク
店舗による事業展開を行っているため、大規模な地震や火災などの自然災害、あるいは不測の事故等が発生した場合、営業の継続が困難になるリスクがあります。同社は直下型地震等の防災訓練を実施し、緊急時における顧客対応の備えを強化しています。
(3) 退職給付債務に係る運用リスク
退職年金資産の運用において、運用利回りの悪化や超低金利政策の長期化による割引率の低下が発生した場合、数理計算上の差異が翌事業年度に費用処理されることになります。この結果、同社の財務状況や業績に悪影響を与える可能性があります。
(4) 顧客個人情報の漏洩リスク
多数の顧客個人情報を保有しているため、社内管理体制を厳重に整備しています。しかし、サイバー攻撃や犯罪行為などにより情報漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償の発生を招き、売上高の減少など業績に影響を及ぼすリスクが存在します。



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