ロイヤルホテル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ロイヤルホテル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のホテル運営会社。「リーガロイヤルホテル」ブランドを中心に、国内外の賓客を迎える高級ホテルや宿泊主体型ホテルを展開しています。直近の業績は、インバウンド需要の回復や株式会社芝パークホテル連結化などの効果により、売上高252億円、経常利益8億円と増収増益を達成しました。


#ロイヤルホテル転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社ロイヤルホテルの有価証券報告書(第99期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ロイヤルホテルってどんな会社?


関西を代表する名門「リーガロイヤルホテル」を運営し、国内外の賓客をもてなす老舗ホテルグループです。

(1) 会社概要


1932年に新大阪ホテルとして創立し、1935年に開業しました。1965年には旗艦店となる大阪ロイヤルホテル(現リーガロイヤルホテル(大阪))を開業し、日本の迎賓館としての地位を確立。2024年には株式会社芝パークホテルを完全子会社化するなど、ブランド力の強化と拠点拡充を進めています。

連結従業員数は1,985名、単体では1,096名です。筆頭株主はベントール・グリーンオーク・グループの投資目的会社であるBlossoms Holding HK Limited(23.59%)です。第2位はアサヒビール(12.74%)、第3位は森トラスト(12.69%)であり、事業会社や投資ファンドが大株主となっています。

氏名 持株比率
Blossoms Holding HK Limited(常任代理人 三井住友銀行デットファイナンス営業部長) 23.59%
アサヒビール 12.74%
森トラスト 12.69%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は植田文一氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
蔭山秀一 取締役会長 1979年住友銀行(現三井住友銀行)入行。2014年同行代表取締役兼副頭取執行役員。2017年ロイヤルホテル代表取締役社長を経て、2023年6月より現職。
植田文一 代表取締役社長ホテル運営本部担当(兼)ホテル運営本部長 1985年京都グランドホテル(現ロイヤルホテル)入社。人事部担当、セールス統括部担当などを歴任し、2023年6月より現職。
荻田勝紀 代表取締役副社長執行役員経営企画部・人事部担当(兼)サステナビリティ委員長 1989年同社入社。リーガロイヤルホテル京都総支配人、リーガロイヤルホテル(大阪)総支配人などを経て、2023年6月より現職。
浅沼吉正 取締役常務執行役員総務部・監査部担当(兼)経営企画部副担当(兼)コンプライアンス委員長(兼)リスク管理委員長(兼)食品安全衛生委員長 1986年住友銀行(現三井住友銀行)入行。大阪フィルハーモニー協会常務理事などを経て、2019年6月より現職。
田沼直之 取締役執行役員関連事業本部・ITシステム部・リーガロイヤルホテル東京・芝パークホテル・パークホテル東京担当(兼)関連事業本部長 1991年同社入社。リーガロイヤルホテル東京副総支配人、リーガロイヤルホテル広島総支配人などを歴任し、2021年6月より現職。


社外取締役は、松下正幸(パナソニックホールディングス特別顧問)、奥正之(三井住友フィナンシャルグループ名誉顧問)、尾崎裕(大阪瓦斯相談役)、白井文(元尼崎市長)、岡本浩和(ベントール・グリーンオーク常務取締役)、中村俊郎(ベントール・グリーンオーク取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ホテル事業」および「その他の事業」事業を展開しています。

(1) ホテル事業


国内外の顧客に対し、宿泊、料理飲食、貸席(宴会・婚礼)等のサービスを提供する事業です。旗艦ホテルである「リーガロイヤルホテル(大阪)」をはじめ、「リーガロイヤルホテル東京」「リーガロイヤルホテル広島」「リーガロイヤルホテル小倉」などのシティホテルや宿泊主体型ホテルを運営しています。

収益は主に顧客からの宿泊料、レストラン・バーでの飲食料、宴会場利用料などから得ています。運営は、同社のほか、株式会社リーガロイヤルホテル広島、株式会社リーガロイヤルホテル小倉、株式会社リーガロイヤルホテル東京、株式会社東京ロイヤルホテル、株式会社芝パークホテルなどの連結子会社が行っています。

(2) その他の事業


ホテルの外において、レストランや食堂の運営を行う事業です。具体的には、茨木カンツリー倶楽部食堂、住友クラブ食堂、住友ビル食堂など6店舗の営業を行っています。

収益は、施設の利用者からの飲食代金や、施設オーナーからの運営受託料などで構成されています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2022年3月期にかけては、感染症拡大の影響により大幅な赤字を計上しましたが、2023年3月期以降は回復基調にあります。特に2023年3月期は固定資産売却益により純利益が大きく跳ね上がりました。直近の2025年3月期は、宿泊需要の回復や子会社の新規連結などにより、本業の収益力を示す経常利益も黒字幅を拡大しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 156億円 165億円 264億円 207億円 252億円
経常利益 -69億円 -46億円 -21億円 6億円 8億円
利益率(%) -44.2% -27.6% -8.1% 2.8% 3.2%
当期利益(親会社所有者帰属) -93億円 -48億円 133億円 9億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益率は小幅ながら上昇しており、収益性は向上傾向にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 207億円 252億円
売上総利益 171億円 211億円
売上総利益率(%) 82.5% 83.8%
営業利益 6億円 9億円
営業利益率(%) 2.7% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、諸経費(地代家賃等)が102億円(構成比51%)、人件費が84億円(同42%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、部門別の売上高を見ると、客室部門が大幅に増加しています。これは宿泊需要の回復に加え、芝パークホテルの連結化が寄与しています。宴会部門や食堂部門も増収となっており、全体として回復傾向にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
客室 72億円 103億円
宴会 47億円 55億円
食堂 29億円 35億円
その他 57億円 59億円
連結(合計) 207億円 252億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」です。本業の営業活動で得たキャッシュを、新規連結子会社の株式取得や設備投資に充てるとともに、有利子負債の返済や配当支払を行っています。営業キャッシュ・フローは前期のマイナスからプラスに転じ、財務の健全性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -16億円 12億円
投資CF -5億円 -20億円
財務CF -0.4億円 -3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「誇りうるナンバーワンホテルグループの創造を通じ、社会に貢献すること」を経営の基本理念としています。顧客に「感動と満足を提供するホテルとなること」を目指し、「新規需要の開拓」と「マーケット毎の施策推進」を戦略の柱としています。これにより「最高級のホテルとしてのブランド」を確立し、全ての利害関係者が求める企業価値を高めていくことを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社グループは、パーパスとして「人を、地域を、日本を、世界を、あたたかい心で満たしていこう。」を掲げています。創業以来培ってきたおもてなしの心(あたたかい心)を大切にし、顧客や地域社会、世界に対して価値を提供していく姿勢を示しています。また、従業員の健康増進とワークライフマネジメントを推進する「ロイヤルホテル健康経営宣言」を掲げ、健康経営優良法人に認定されるなど、人を大切にする風土があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年度を最終年度とする中期経営計画2026『ReRISE』を策定しています。また、創業100周年となる2035年に向けた長期ビジョン「RIHGA VISION 2035」として、「安心のサービスと感動のおもてなしで世界中のお客様の期待を超える日本最高峰のホテルグループ」の実現を目指しています。経営上の目標達成状況を判断する指標として、以下の数値を重視しています。

* 売上高
* 営業利益
* 売上高営業利益率

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「ホテルブランドカテゴリーの再編成・新規展開」「ホテル事業のバリューアップ」「新規出店パイプラインの拡大」を基本戦略としています。ブランド再編では、トレンドや独自性を重視した「Xカテゴリー」を新設し、新規顧客層の開拓を図ります。バリューアップ策としては、リーガロイヤルホテル(大阪)の「ヴィニェット コレクション」への加盟や改装投資を実施しています。

また、芝パークホテルとの資本業務提携を通じ、インバウンド需要の取り込みやセールス力の強化といったシナジー創出に取り組みます。新規出店に関しては、ベントール・グリーンオークとのパイプライン契約を活用しつつ、沖縄、大阪なんば、福岡博多、広島平和大通りなどへの出店計画を推進し、拠点数の増加による成長を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人的資本の価値向上を企業価値向上の不可欠な要素と捉え、「働きやすい会社」「働きがいのある会社」の実現を目指しています。採用においては、新卒・中途に加え外国人材も積極的に採用し、インバウンド対応力を強化しています。特に調理人材については普通科高校からの採用も行い、実務を通じた育成に注力しています。また、階層別研修や語学研修、調理職の海外研修などを通じてプロフェッショナル人材を育成するとともに、人事制度改革により年功的な賃金制度の是正や多様な働き方の実現を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 16.9年 4,367,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.0%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.3%
男女賃金差異(正規) 72.8%
男女賃金差異(非正規) 56.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気、海外情勢等


宿泊、宴会、婚礼等の事業は、一般消費者の消費動向や企業業績、国家間の関係悪化、テロ、自然災害、感染症等の影響を受けやすい特性があります。過去には東日本大震災や新型コロナウイルス感染症の影響を受けました。同社はリスク管理委員会を設置し、対策マニュアルやBCP(事業継続計画)を策定して備えています。

(2) 食品の安全性及び表示


食事の提供や食品販売を行う上で、食中毒や産地・原材料の誤表示等が発生した場合、社会的信用の失墜により業績に影響を与える可能性があります。同社は安全衛生管理室を設置し、法令遵守の徹底や定期的な衛生検査、メニュー表示チェックなどを実施して未然防止に努めています。

(3) 個人情報の管理


事業を通じて顧客等の多くの個人情報を保有しており、万一の漏洩事故が発生した場合、信用の失墜により業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は社内規程の整備、システムセキュリティの向上、従業員教育の実施により管理体制を強化し、さらに保険を付保することでリスクに備えています。

(4) 労務関連


多くのパートタイム従業員を雇用しているため、社会保険や労働条件等の労務環境の変化による人件費増加が業績に影響を与える可能性があります。近年の各種保険料率の上昇も影響しています。同社は「人事運営の改革」を重要戦略として掲げ、従業員のモチベーション向上や労働環境の整備を進めることで対応しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。