※本記事は、株式会社ロイヤルホテルの有価証券報告書(第100期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ロイヤルホテルってどんな会社?
ホテル事業を中心に、フルサービス型から宿泊主体型まで複数のホテルを全国展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1932年に新大阪ホテルとして創立され、1935年に開業しました。1961年には大阪証券取引所第二部に株式を上場し、1973年に現在のロイヤルホテルへと社名を変更しています。近年では、2024年に芝パークホテルの株式を取得して完全子会社化するなど、インオーガニックな成長とブランドの強化を推進しています。
同社グループは連結で2,032名、単体で1,141名の従業員を擁しています。筆頭株主は資本業務提携先であるベントール・グリーンオーク(BGO)グループの特別目的会社Blossoms Holding HK Limitedで、第2位および第3位はそれぞれアサヒビール、資本業務提携先の森トラストとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Blossoms Holding HK Limited | 23.59% |
| アサヒビール | 12.74% |
| 森トラスト | 12.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性1名の計14名で構成され、女性役員比率は7.1%です。代表取締役社長は植田文一氏が務めており、取締役11名のうち6名(54.5%)が社外取締役となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 植田文一 | 代表取締役社長 | 1985年ロイヤルホテル(現法人)入社。人事部やマーケティング部担当等を経て、2022年代表取締役常務執行役員。2023年より現職。 |
| 蔭山秀一 | 取締役会長 | 1979年住友銀行入行。三井住友銀行代表取締役副頭取、取締役副会長等を歴任。2017年ロイヤルホテル代表取締役社長を経て、2023年より現職。 |
| 荻田勝紀 | 代表取締役 副社長執行役員事業運営本部担当(兼)事業運営本部長 | 1989年入社。リーガロイヤルホテル京都総支配人、リーガロイヤルホテル(大阪)総支配人等を歴任。2023年代表取締役副社長執行役員を経て2026年より現職。 |
| 福田和師 | 取締役 常務執行役員経営企画本部担当(兼)経営企画本部長 | 1990年住友銀行入行。三井住友銀行の各種ポストを経て2018年ロイヤルホテル転籍。経営企画部長等を経て、2026年より現職。 |
| 田沼直之 | 取締役 執行役員リーガロイヤルホテル東京副担当 | 1991年入社。人事部長、リーガロイヤルホテル広島総支配人等を経て、2021年取締役執行役員。2026年より現職。 |
社外取締役は、松下正幸(元パナソニック副会長)、尾崎裕(元大阪ガス社長)、白井文(元尼崎市長)、岡本浩和(ベントール・グリーンオーク代表取締役)、中村俊郎(同社取締役)、國部毅(元三井住友銀行頭取)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ホテル事業」の単一セグメントのもと、国内外の顧客に向けて多様なサービスを展開しています。
ホテル事業では、宿泊、宴会、レストラン(料理飲食)、貸席などを提供しています。「リーガロイヤルホテル」ブランドをはじめとする複数のホテルを全国展開しており、フルサービス型のシティホテルに加えて、運営効率を高めた宿泊主体型ホテルなど、顧客の多様なニーズに応じた施設を運営しています。
収益源は、宿泊客からの室料、宴会場の利用料、直営レストランでの飲食代、テナントからの賃貸料、およびホテル運営の受託収入などです。運営は主にロイヤルホテルが行うほか、子会社のリーガロイヤルホテル東京、芝パークホテルなどが各地域のホテルを担い、ホテル附帯事業はロイヤルホスピタリティサービスが展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高はコロナ禍の影響から回復し、2026年3月期には約293億円まで成長しています。経常利益も赤字から黒字転換を果たして安定的に推移しており、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 165億円 | 264億円 | 207億円 | 252億円 | 293億円 |
| 経常利益 | -46億円 | -21億円 | 6億円 | 8億円 | 12億円 |
| 利益率(%) | -27.6% | -8.1% | 2.8% | 3.2% | 4.1% |
| 当期利益 | -48億円 | 133億円 | 9億円 | 17億円 | 12億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに拡大しています。特に売上総利益率は85%台に改善しており、主力事業における収益力の向上が見られます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 252億円 | 293億円 |
| 売上総利益 | 211億円 | 250億円 |
| 売上総利益率(%) | 83.8% | 85.2% |
| 営業利益 | 9億円 | 12億円 |
| 営業利益率(%) | 3.6% | 4.0% |
販売費及び一般管理費のうち、諸経費が118億円(構成比50%)、人件費が104億円(同44%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を投資や借入金の返済に充てる健全型です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 20億円 |
| 投資CF | -20億円 | -22億円 |
| 財務CF | -3億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「誇りうるナンバーワンホテルグループの創造を通じ、社会に貢献すること」を経営の基本理念として掲げています。お客様に「感動と満足を提供するホテルとなること」を目指し、多様なニーズに対応した商品を開発することで「最高級のホテルとしてのブランド」を確立し、全ての利害関係者が求める企業価値を高めることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「RISEの精神(あたたかなおもてなし、美味しい料理、心地よい空間)」を体現する人材こそがブランド価値の源泉であるとの認識を持っています。長年培ってきたサービス品質、技術、企業文化の継承に向け、知見や技能を体系的に共有・伝承する仕組みを重視し、持続的な価値創出を可能とする組織基盤を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2026『ReRISE』」では、長期的・持続的な企業価値の拡大を図るため、以下の2026年度(2027年3月期)の数値目標を掲げています。
・売上高:320億円
・営業利益:12億円
・営業利益率:3.8%
・経常利益:12億円
・当期純利益:7億円
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画において、「ホテルブランドカテゴリーの再編成・新規展開」「ホテル事業のバリューアップ」「新規出店パイプラインの拡大」を基本戦略として推進しています。宿泊主体型ホテルの新規出店による利益率の確保や、既存グランドホテルの大規模改装、オペレーションのDX化による生産性向上を図り、インバウンド需要の取り込みや海外セールス強化も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本への継続的投資と人事制度の高度化を通じた企業価値の向上を基本方針としています。年齢や在籍年数にとらわれず、意欲と能力を有する社員を適正に評価・登用する人事制度を整備し、若手社員にも早期から挑戦できる機会を提供しています。また、サービスや調理等の専門人材を積極的に登用し、女性活躍やダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.7歳 | 15.8年 | 4,609,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.2% |
| 男性育児休業取得率 | 78.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 71.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 52.3% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、温室効果ガス(GHG)排出量(23,391tCO2e)、特定プラスチック提供量(17.3t)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気、海外情勢等の影響
一般消費者の消費動向や企業の業績動向のほか、国家間の関係悪化、テロ、自然災害、流行疾患等の影響が、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。これに対し、リスク管理委員会を設置し、対策マニュアルやBCP(事業継続計画)を策定して対応体制を整備しています。
■(2) 食品の安全性及び表示
食事の提供と食品の販売において、食中毒や産地・原材料の誤表示等が生じた場合、信用の失墜から業績に影響を及ぼすおそれがあります。社内に安全衛生管理室を設け、法令遵守の徹底や定期的な衛生検査、メニュー表示チェック等を実施し、食の安全に対する未然防止に努めています。
■(3) 個人情報の漏洩
顧客等の個人情報を多数保有しており、万一情報が漏洩した場合、信用の失墜を招き業績に影響を与える可能性があります。社内規程の整備や情報システムのセキュリティ向上、従業員教育の充実等により管理体制を強化するとともに、保険を付保してリスクに備えています。
■(4) 施設の毀損、劣化等
ホテル事業用に多数の固定資産を所有しており、火災や台風、地震等の災害で施設が毀損・劣化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。計画的に建物・設備の点検・補修を行い、耐震補強等の防災対策工事を推進するとともに、保険による備えも行っています。



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