東映 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東映 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東映は東京証券取引所(プライム市場)に上場する総合エンターテインメント企業です。主要事業として映像関連事業や興行関連事業などを展開しています。直近の業績は、売上高が前期比5.0%増、親会社株主に帰属する当期純利益が12.5%増となり、増収増益で着地しました。


#記事タイトル:東映転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、東映株式会社 の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東映ってどんな会社?


映画・テレビ・アニメ等の多様な映像制作と配給、興行を核に、イベントや不動産事業も展開する総合エンターテインメント企業です。

(1) 会社概要


1949年に東京映画配給として設立され、1951年に東映へ商号変更しました。1956年には日動映画(現東映アニメーション)を買収し、アニメ事業の礎を築いています。2000年にはティ・ジョイを設立してシネマコンプレックス事業へ本格参入しました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

2025年3月31日現在、グループ全体の従業員数は1,764名、単体では434名です。筆頭株主は持分法適用関連会社かつその他の関係会社であるテレビ朝日ホールディングス、第2位はTBSテレビ、第3位はバンダイナムコホールディングスとなっており、主要な取引先でもある事業会社が上位株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
テレビ朝日ホールディングス 19.62%
TBSテレビ 9.43%
バンダイナムコホールディングス 8.03%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は吉村文雄氏が務めています。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
吉村 文雄 代表取締役社長映像本部長 1988年同社入社。コンテンツ事業部長、コンテンツ事業部門担当、映像本部副本部長などを経て、2023年4月より現職。
多田 憲之 代表取締役会長 1972年同社入社。映画宣伝部長、秘書部長、総務部長などを経て、2014年代表取締役社長に就任。2023年4月より現職。
和田 耕一 専務取締役経営管理本部長兼経営戦略部担当 1988年同社入社。経理部長、経営戦略部担当などを経て、2022年経営管理本部長に就任。2023年6月より現職。
鎌田 裕也 常務取締役不動産事業本部長兼不動産戦略部長 1991年同社入社。不動産開発部長兼不動産営業部長、不動産戦略部長を経て、2022年不動産事業本部長に就任。2023年6月より現職。
小嶋 雄嗣 取締役映像本部副本部長兼撮影所事業部門長、京都撮影所長、太秦地区担当 1984年同社入社。東映テレビ・プロダクション専務取締役などを経て、2022年取締役就任。2024年4月より現職。
早河 洋 取締役 1967年日本教育テレビ(現テレビ朝日ホールディングス)入社。同社社長、会長兼CEOなどを歴任し、2012年6月より現職。
堀口 政浩 取締役監査等委員(常勤) 1985年同社入社。経営戦略部長、秘書部長などを経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、野本弘文(東急会長)、植木義晴(日本航空特別理事)、塩生朋子(弁護士)、佐藤仁(東急レクリエーション相談役)、桂川志麻(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「映像関連事業」「興行関連事業」「催事関連事業」「観光不動産事業」「建築内装事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 映像関連事業


劇場用映画の製作配給、テレビ映画の製作配給、パッケージソフトの製作販売、版権許諾、CM制作などを行っています。劇場用映画やテレビ映画に加え、アニメーション作品の製作やキャラクターの商品化権許諾も重要な柱です。映像作品の多様な展開を通じて、幅広い顧客層へエンターテインメントを提供しています。

収益は、映画館からの配給収入、テレビ局からの放映権料、配信事業者からの配信権料、商品化権許諾によるロイヤリティ収入などが主な源泉です。運営は、実写作品の製作配給等を東映、アニメーション製作を東映アニメーション、パッケージソフト販売を東映ビデオが担うなど、グループ各社が連携して行っています。

(2) 興行関連事業


直営劇場やシネマコンプレックス(複合映画館)の経営を行っています。映画ファンや一般の観客に対して、最新の映像作品を鑑賞するための快適な空間とサービスを提供しています。

収益は、観客からの映画鑑賞料金(チケット収入)および劇場内での飲食・グッズ販売収入が中心です。運営は、主にティ・ジョイがシネマコンプレックスの経営を行っています。

(3) 催事関連事業


同社グループが製作した作品に登場するキャラクターショーや文化催事の企画・運営を行っています。また、京都にある「東映太秦映画村」というテーマパークの運営も行い、観光客やファンに向けて体験型のエンターテインメントを提供しています。

収益は、イベントやテーマパークの入場料、関連商品の販売収入などから得ています。運営は、主に東映が事業展開を行い、東映太秦映画村については東映京都スタジオが東映から施設を賃借して経営を行っています。

(4) 観光不動産事業


賃貸施設の運営およびホテルの経営を行っています。不動産賃貸では商業施設やオフィスビル等をテナントへ提供し、ホテル事業では宿泊や宴会サービス等を一般顧客や法人顧客へ提供しています。

収益は、テナントからの賃貸料収入およびホテルの宿泊料・飲食料収入です。不動産賃貸業は主に東映が展開し、ホテル事業については東映ホテルチェーンに運営業務を委託しています。

(5) 建築内装事業


建築工事や室内装飾の請負を行っています。商業施設やオフィス、住宅などの建設・内装工事を顧客より請け負っています。

収益は、施主からの工事請負代金です。運営は、東映建工が行っています。

(6) その他事業


物品の販売等を行っています。

収益は、商品の販売代金です。運営は、持分法非適用非連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は第100期に大きく伸長した後、高い水準を維持しています。経常利益も第100期以降、高収益体質が継続しており、利益率は20%を超える水準で推移しています。当期純利益も安定的に確保されており、全体として堅調な業績トレンドを示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,076億円 1,175億円 1,744億円 1,713億円 1,799億円
経常利益 187億円 233億円 402億円 353億円 400億円
利益率(%) 17.4% 19.8% 23.0% 20.6% 22.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 73億円 90億円 150億円 140億円 157億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。売上総利益率は39.0%から41.8%へと改善しました。営業利益率も17.1%から19.5%へと上昇しており、収益性が向上しています。販売費及び一般管理費も増加していますが、増収効果が上回りました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,713億円 1,799億円
売上総利益 669億円 753億円
売上総利益率(%) 39.0% 41.8%
営業利益 293億円 352億円
営業利益率(%) 17.1% 19.5%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が157億円(構成比39%)、広告宣伝費が43億円(同11%)を占めています。売上原価においては、具体的な費目別の内訳は財務諸表本体には記載がありませんが、映像制作費や興行関連費用などが含まれています。

(3) セグメント収益


当期は、映像関連事業がヒット作品や配信権販売の好調により増収増益となり、全体の業績を牽引しました。催事関連事業もイベントやキャラクターグッズ販売が好調で増収となりましたが、利益は若干減少しました。興行関連事業は前年のヒット作の反動等で減収減益となりました。観光不動産事業と建築内装事業は増収を確保しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
映像関連事業 1,260億円 1,340億円 263億円 337億円 25.1%
興行関連事業 202億円 190億円 19億円 8億円 4.1%
催事関連事業 101億円 112億円 14億円 13億円 11.3%
観光不動産事業 65億円 68億円 26億円 25億円 37.2%
建築内装事業 86億円 89億円 4億円 5億円 5.6%
調整額 -55億円 -50億円 -33億円 -36億円 -
連結(合計) 1,713億円 1,799億円 293億円 352億円 19.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

東映グループは、営業活動により生み出した資金を成長投資へ優先的に配分することを財務戦略としています。

同社は、営業活動を通じて資金を創出し、投資活動では設備投資等を行い、財務活動では借入や返済、配当金の支払いを行っています。

当連結会計年度においては、営業活動によるキャッシュ・フローが増加し、投資活動によるキャッシュ・フローは支出超過、財務活動によるキャッシュ・フローも支出超過となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 221億円 336億円
投資CF -98億円 -175億円
財務CF -75億円 -46億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは『愛される「ものがたり」を全世界に』を使命として掲げています。東映を中心とする安定的なグループ経営のもと、映像作品をはじめとする良質なエンターテインメントを全世界に提供し続けることを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社グループは、「創造力」「実現力」「行動力」の三位一体の力を発揮し、結集できる体制の構築を目指しています。コンテンツを生み出す「創造力」、グループのノウハウを活用して実らせる「実現力」、そしてコンテンツを全世界へ発信していく「行動力」を、あらゆる業務で発揮することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、中長期的な成長戦略として『東映グループ中長期VISION「TOEI NEW WAVE 2033」』を策定しています。10年後に目指す姿として「世界で愛されるコンテンツを数多く創造発信している」状態を掲げ、以下の経営指標を目標としています。

* 売上構成比率における海外割合が50%
* 営業利益 ベースラインとして250億~400億円
* ROE8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「TOEI NEW WAVE 2033」の実現に向け、実写・アニメ映像事業の強化・拡大とグローバル展開の加速を成長戦略としています。具体的には、映像事業収益の最大化、コンテンツのグローバル展開へのチャレンジ、人的投資の拡大、経営基盤強化に取り組んでいます。また、2033年に向けた成長投資として総額3,000億円規模のキャピタルアロケーションを計画しています。

* コンテンツ投資:2,400億円
* 事業基盤強化に向けた投資:600億円(製作設備関連投資360億円、不動産関連投資240億円)

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、個の成長を促す能力開発プログラムの拡充と挑戦機会の提供を行う「人材育成方針」と、D&I推進により働きやすい環境を整える「社内環境整備方針」を掲げています。具体的には、人権の尊重、戦略的な採用と配置、D&I推進と職場環境の整備、「個」の強化の4つを重点領域とし、人的資本経営を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.3歳 14.3年 8,716,774円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.3%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 76.0%
男女賃金差異(正規雇用) 79.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 87.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ハラスメント研修受講人数(1,007名)、映適認定本数比率(100%)、全労働者におけるキャリア採用者比率(44.7%)、グループ間交流人数(55名)、エンゲージメントスコア(63.5)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 災害リスク


映画劇場、テーマパーク、ホテル等の商業施設や撮影所において事業を行っているため、地震や台風等の自然災害、火災や事故等が発生した場合、人的被害や施設損壊により事業運営に支障が生じる可能性があります。これに対し、事業継続計画の整備や安否確認システムの導入、訓練の実施等の対策を講じています。

(2) 労働・安全衛生に関するリスク


従業員の長時間労働は健康障害や業務遂行の支障につながるだけでなく、労働災害等の事故が発生すれば損害賠償や社会的信用の失墜を招く可能性があります。同社グループは働き方改革を推進し、労務管理の徹底やリモートワークの推進、エンゲージメントサーベイによるモニタリング等を実施しています。

(3) 個人情報等の機密情報の取り扱いに関するリスク


顧客等の個人情報を多数保有しており、不適切な取り扱いや外部流出、不正利用が生じた場合、法的処分や訴訟、社会的信用の毀損につながる可能性があります。個人情報取り扱いに関するルールやガイドラインの策定、定期的な教育実施、管理体制の整備等により対策を行っています。

(4) 著作権等の知的財産権に関するリスク


保有する知的財産権について海賊版等による権利侵害が発生しており、海外やインターネット等で十分な保護を受けられない可能性があります。また、第三者の知的財産権を侵害したとして訴訟提起されるリスクもあります。各種対策の強化や侵害発生時の法的措置、従業員への教育等を実施しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。