※本記事は、東映株式会社の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東映ってどんな会社?
映画やアニメ等の映像事業を中心に、シネコン経営やイベント催事など総合エンタメ事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1949年に映画配給を目的として設立され、1951年に東映へ商号変更しました。1952年に東証へ上場し、1956年には現・東映アニメーションを買収しています。1958年のテレビ映画製作開始や1975年の東映太秦映画村の開業などを経て、2000年にはシネコン事業を手がけるティ・ジョイを設立しました。
現在の従業員数は連結で1,965名、単体で445名です。筆頭株主はテレビ放送事業を展開し持分法適用関連会社であるテレビ朝日ホールディングスで、第2位はTBSテレビ、第3位は協業パートナーであるバンダイナムコホールディングスが名を連ね、事業会社との強力な資本提携関係が構築されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| テレビ朝日ホールディングス | 19.43% |
| TBSテレビ | 9.34% |
| バンダイナムコホールディングス | 7.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は吉村文雄が務めています。社外取締役は5名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 多田 憲之 | 代表取締役会長 | 1972年同社入社。常務取締役、代表取締役社長等を経て2023年より現職。 |
| 吉村 文雄 | 代表取締役社長映像本部長 | 1988年同社入社。コンテンツ事業部長、常務取締役等を経て2024年より現職。 |
| 和田 耕一 | 専務取締役経営管理本部長兼経営戦略部担当 | 1988年同社入社。経理部長、常務取締役等を経て2023年より現職。 |
| 鎌田 裕也 | 常務取締役不動産事業本部長兼不動産戦略部長 | 1991年同社入社。不動産戦略部長、不動産事業本部長等を経て2023年より現職。 |
| 小嶋 雄嗣 | 取締役映像企画部担当兼映像本部副本部長、撮影所事業部門長、京都撮影所長、太秦地区担当 | 1984年同社入社。東映テレビ・プロダクション専務等を経て2025年より現職。 |
| 早河 洋 | 取締役 | 1967年現・テレビ朝日ホールディングス入社。同社代表取締役社長等を経て2022年より現職。 |
| 堀口 政浩 | 取締役監査等委員(常勤) | 1985年同社入社。秘書部長、執行役員等を経て2022年より現職。 |
社外取締役は、野本弘文(元東急社長)、植木義晴(元日本航空社長)、塩生朋子(弁護士)、佐藤仁(元東急レクリエーション社長)、桂川志麻(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「映像関連事業」「興行関連事業」「催事関連事業」「観光不動産事業」「建築内装事業」を展開しています。
■映像関連事業
劇場用映画やテレビドラマ、アニメーション作品の製作・配給、およびそれらのDVD・ブルーレイ等の映像ソフト販売や版権ビジネスを展開しています。
映画興行会社からの配給収入や、放送局・配信事業者への放映権・配信権の販売によるライセンス収入が主な収益源です。製作・配給は同社や東映アニメーションなどが担っています。
■興行関連事業
映画館であるシネマコンプレックスの経営を中心とした事業を展開しています。一般の映画ファンが主な顧客層となります。
顧客からのチケット入場料や、劇場内でのフード・ドリンク、関連グッズの販売代金を収益として受け取ります。施設の運営は主にティ・ジョイが行っています。
■催事関連事業
同社作品に登場するキャラクターショーや文化催事の企画・運営、およびテーマパーク「東映太秦映画村」の運営を行っています。
イベントやテーマパークへの入場料、および現地でのグッズ販売などが主な収益源です。運営は同社や東映太秦映画村が行っています。
■観光不動産事業
全国に所有する商業施設やテナントビル、賃貸マンションなどの不動産賃貸事業と、ホテルの経営を行っています。
テナント等からの不動産賃貸料や、ホテル利用者からの宿泊・宴会・レストラン料金を収益として受け取ります。運営は同社や東映ホテルチェーンが行っています。
■建築内装事業
商業施設やシネマコンプレックス、マンション、公共施設などの建築工事および室内装飾工事の請負業務を行っています。
工事の発注者から受け取る請負代金が主な収益源となります。業務の運営は主に東映建工が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は概ね右肩上がりで推移しており、直近も増収を達成しています。経常利益に関しても安定して高水準を維持しており、力強い収益力を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,175億円 | 1,744億円 | 1,713億円 | 1,799億円 | 1,853億円 |
| 経常利益 | 233億円 | 402億円 | 353億円 | 400億円 | 435億円 |
| 利益率(%) | 19.8% | 23.0% | 20.6% | 22.2% | 23.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 22億円 | 60億円 | 62億円 | 42億円 | 81億円 |
■(2) 損益計算書
売上高と売上総利益がともに増加しており、粗利率も改善しています。それに伴い営業利益も堅調に伸びており、本業での安定した稼ぐ力を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,799億円 | 1,853億円 |
| 売上総利益 | 753億円 | 805億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.8% | 43.4% |
| 営業利益 | 352億円 | 361億円 |
| 営業利益率(%) | 19.5% | 19.5% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が170億円(構成比38%)、広告宣伝費が44億円(同10%)、地代家賃が43億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の映像関連事業がやや減収となった一方で、興行関連事業が大ヒット作の貢献により大幅な増収を達成しました。建築内装事業も好調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 映像関連事業 | 1,340億円 | 1,279億円 |
| 興行関連事業 | 190億円 | 252億円 |
| 催事関連事業 | 112億円 | 130億円 |
| 観光不動産事業 | 68億円 | 69億円 |
| 建築内装事業 | 89億円 | 122億円 |
| 連結(合計) | 1,799億円 | 1,853億円 |
同社のキャッシュ・フローは営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 336億円 | 267億円 |
| 投資CF | -175億円 | -47億円 |
| 財務CF | -46億円 | -19億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は58.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「愛される『ものがたり』を全世界に」を使命(ミッション)として掲げています。創業以来の組織力を活かし、同社を中心とする安定的なグループ経営のもとで、映像作品をはじめとする良質なエンターテインメントを世界中の人々に提供し続けることを最大の存在意義として事業を展開しています。
■(2) 企業文化
「To the World, To the Future -「ものがたり」で世界と未来を彩る会社へ-」というスローガンのもと、世界で愛されるコンテンツを数多く創造・発信することを目指す文化を持っています。多様で魅力的な作品群を生み出す源泉となる「企画製作力」や、マルチユース展開を実現する力を強みとして尊重しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期的な成長戦略である「東映グループ中長期VISION TOEI NEW WAVE 2033」において、企画からマルチユース展開までのグローバル化を推進し、国内外でのトップライン拡大とベースライン収益の向上を目指して、以下の数値目標を設定しています。
* 売上構成比率における海外割合50%
* 営業利益 ベースラインとして250億~400億円
* ROE8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
実写およびアニメ映像事業を強化・拡大し、グローバル展開を加速する戦略をとっています。新規IPの創出力増強と、国内外でのIPマルチユースの促進により、IPあたりの収益最大化とライフサイクルの長期化を目指します。
* コンテンツ投資:2,400億円
* 事業基盤強化に向けた投資:600億円
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
グローバル展開を見据えたIPの企画製作力およびマルチユース展開力の強化を図るため、「人」への投資を経営戦略の重点施策に位置付けています。「人材育成方針」に基づき能力開発プログラムを拡充し、「社内環境整備方針」のもとでダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を推進し、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境を構築します。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.3歳 | 14.1年 | 8,632,825円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 86.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 90.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全労働者におけるキャリア採用者比率(55.5%)、エンゲージメントスコア(63.6)、ハラスメント研修受講率(85.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コンテンツ産業ならではの風評リスク
映像作品や提供するサービスに関してソーシャルメディアを通じた積極的な情報発信を行っていますが、従業員の不適切な投稿や、社外関係者による不祥事、第三者による誹謗中傷が発生した場合、作品やブランドが風評被害を受け、業績に影響を及ぼす可能性があります。監視体制や従業員教育を強化して対策しています。
■(2) 知的財産権の侵害・訴訟に関するリスク
映像作品等のキャラクターや著作権、商標権について、海賊版や模倣品による権利侵害が発生するリスクがあります。また反対に、自社が利用する知的財産に関して第三者から訴訟を提起され、損害賠償義務を負う可能性もあります。法的措置を含めた厳正な対応と、従業員への教育の徹底により保護に努めています。
■(3) エンタメ市場の事業環境変化に伴うリスク
技術革新への対応の遅れによる優位性の低下や、既存の有力IPにおける原作の終了、新たなIPの原作利用権の喪失による収益の低下が懸念されます。また、劇場用映画はヒット予測が難しいため、収益が不安定になるリスクがあります。これを補うため、最新の映像技術の活用や、幅広いジャンルでの企画制作に注力しています。



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