武蔵野興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

武蔵野興業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

スタンダード市場に上場する同社は、映画事業と不動産事業を主力としています。直近の連結業績は、売上高14億円(前期比6.4%増)、経常利益0.9億円(同366.0%増)、当期純利益0.6億円(同1,292.3%増)と増収増益で着地しました。主力映画館の興行好調や教習所入所者増が寄与しています。


※本記事は、武蔵野興業株式会社 の有価証券報告書(第154期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 武蔵野興業ってどんな会社?


1920年創業の老舗企業です。新宿での映画興行を祖業とし、現在は不動産賃貸や自動車教習所の運営も行う複合サービス企業です。

(1) 会社概要


1920年5月に映画興行を目的として設立され、新宿に「武蔵野館」を開館しました。1949年9月に東京証券取引所へ上場し、1981年1月には埼玉県に株式会社寄居武蔵野自動車教習所を設立しています。1986年10月に現在の商号へ変更しました。2022年4月の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

連結従業員数は48名、単体では25名という規模です。筆頭株主は代表取締役社長の河野義勝氏、第2位は有限会社河野商事、第3位は株式会社リサ・パートナーズです。創業家および関連会社による持株比率が高い構成となっています。

氏名 持株比率
河野義勝 31.11%
有限会社河野商事 9.55%
株式会社リサ・パートナーズ 9.54%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は河野義勝氏が務めています。取締役4名のうち2名が社外取締役であり、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
河 野 義 勝 代表取締役社長 1986年8月同社入社。常務取締役、専務取締役、取締役副社長を経て、2005年6月より現職。
河 野 優 子 常務取締役営業担当兼内部統制担当 2009年4月同社顧問。同年6月取締役就任。2009年11月より現職。営業担当および内部統制担当を兼務。


社外取締役は、マッシュー アイアトン(YOSHIMOTO ENTERTAINMENT U.S.A., INC CEO)、朝山英夫(株式会社パンジャパン代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「映画事業」「不動産事業」「自動車教習事業」「商事事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 映画事業


東京都新宿区にて映画館「新宿武蔵野館」(3スクリーン)および「シネマカリテ」(2スクリーン)を経営しています。また、映画関連事業として配給なども行っています。

映画館におけるチケットおよび売店での関連商品販売が主な収益源です。運営は同社が行っており、映画関連事業については連結子会社の武蔵野エンタテインメント株式会社が同社と連携して行っています。

(2) 不動産事業


埼玉県さいたま市大宮区の商業テナントビル、東京都杉並区の賃貸マンション、東京都目黒区の商業テナントビルをそれぞれ1棟経営しています。また、不動産の仲介関連業務も行っています。

テナントからの賃貸収入および不動産仲介手数料が主な収益源です。運営は同社が行っていますが、目黒区の物件は連結子会社の自由ケ丘土地興業株式会社が所有する建物を同社が賃借して経営しています。

(3) 自動車教習事業


埼玉県大里郡寄居町において自動車教習所を経営しています。普通自動車免許をはじめとする各種運転免許の教習および高齢者講習などを提供しています。

教習生からの教習料金が収益源であり、入金された対価を前金として受け取り、教習の進捗に応じて収益を認識します。運営は連結子会社の株式会社寄居武蔵野自動車教習所が行っています。

(4) 商事事業


東京都目黒区において、飲食店「ピーターラビットガーデンカフェ」の経営委託を行っています。

飲食店における飲食サービスの提供対価が収益源です。運営は連結子会社の自由ケ丘土地興業株式会社が行っています。

(5) その他


同社および連結子会社の自由ケ丘土地興業株式会社において、自動販売機手数料等の収益を得ています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は12億円〜13億円台で推移しており、直近では増加傾向にあります。利益面では、経常利益率が1.5%〜7.0%の間で変動しており、当期は前期から大幅に改善しました。当期利益についても、赤字の期もありましたが直近は黒字を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 12億円 13億円 14億円 13億円 14億円
経常利益 0.9億円 0.6億円 0.3億円 0.2億円 0.9億円
利益率(%) 7.0% 5.0% 1.9% 1.5% 6.4%
当期利益(親会社所有者帰属) -2.9億円 0.0億円 0.0億円 -0.3億円 0.1億円

(2) 損益計算書


売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益は前期の約3.3倍となり、営業利益率も向上しました。コストコントロールと増収効果により、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 13億円 14億円
売上総利益 6.3億円 6.8億円
売上総利益率(%) 49.4% 49.9%
営業利益 0.2億円 0.7億円
営業利益率(%) 1.6% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.6億円(構成比27%)、役員報酬が1.3億円(同21%)、地代家賃が1.0億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


映画事業は増収により赤字幅が縮小しました。不動産事業は安定的に推移しています。自動車教習事業は入所者数が好調で増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
映画事業 4.0億円 4.6億円 -0.6億円 -0.3億円 -6.2%
不動産事業 5.8億円 5.8億円 3.2億円 3.3億円 56.1%
自動車教習事業 2.9億円 3.0億円 0.4億円 0.4億円 13.4%
商事事業 0.1億円 0.1億円 0.1億円 0.1億円 100.0%
その他 0.1億円 0.1億円 0.1億円 0.1億円 96.8%
連結(合計) 13億円 14億円 0.2億円 0.7億円 5.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 0.4億円 2.0億円
投資CF -0.2億円 -0.7億円
財務CF -0.1億円 -0.3億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.8%でスタンダード市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、映画文化の多様性を通じて「人々に夢と楽しみと感動を提供する」という経営理念を掲げています。創業時の礎に沿い、「映画事業を通じて社会に健全な娯楽を提供するとともに、映画文化の発展に寄与すること」を経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


1920年の開館以来、映画興行事業を中心に、不動産賃貸や自動車教習など、顧客のニーズに応えられる複合的なサービス事業展開を念頭に置いた企業経営を行っています。お客様の期待に応えられる企業グループ経営を行うことを重視しています。

(3) 経営計画・目標


主力事業である映画事業は経済環境や消費マインドの影響を受けやすいため、特定の経営指標を用いた経営目標は定めていません。しかし、資本コストや資本収益性を十分に意識したうえで、収益基盤の強化と中長期的な収益積み上げを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


基幹事業である映画事業と不動産事業に重点的に経営資源を配分し、利益の中長期的な積み上げと復配の実現を目指しています。映画事業では集客力のある良質な作品の上映とコスト意識を持った運営により黒字安定化を図り、不動産事業では収益物件の強化等により安定的な収益確保を目指します。また、自動車教習事業では高齢者講習等への注力や地域社会との連携強化を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人々に夢と楽しみと感動を提供する」という理念に基づき、顧客の多様性に対応できる社内人的資本の多様性を重視しています。採用では性別や国籍を問わず個人のパーソナリティを重視し、入社後はOJTや研修を通じて育成を行います。また、残業時間の削減や有給休暇の取得促進など、働きやすい環境整備を継続的に行い、シニア人材の活用にも力を入れています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 49.8歳 12.8年 4,249,265円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(60.1%)、女性社員比率(24.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 劇場用映画の興行成績に関するリスク


映画事業は上映作品の集客力によって興行成績が大きく左右されます。映画ファンの嗜好が多様化する中、劇場の立地や特性も考慮しつつ、集客力が見込める作品を選択することが重要です。また、映画配給事業においても、公開状況や配給成績が計画と乖離した場合、グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自然災害等の発生によるリスク


映画、不動産、自動車教習、商事などの各事業において、地震や台風等の自然災害、火災、事故等が発生した場合、設備の損害や人的被害が生じ、事業活動の継続に支障をきたす可能性があります。これらにより、グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 経済状況・消費動向に関するリスク


各事業は主に個人顧客を対象としているため、景気悪化による消費低迷が続いた場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。また、自動車教習事業においては原油価格高騰による燃料費増加のリスクがあります。セグメントごとの財務安定化を図り、バランスの取れた経営を目指すことで影響を最小限に抑える方針です。

(4) 不動産賃貸に関するリスク


不動産賃貸事業において、入居テナントの撤退や賃料減少が発生した場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。また、設備の老朽化に伴う維持管理費用の増加、自然災害による損害、事故等による信用力低下などが、グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。