※本記事は、株式会社帝国ホテル の有価証券報告書(2026年3月期、2025年4月1日 ~ 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の開示情報に基づき作成しています。会計基準は 日本基準 です。
1. 企業概要:どんな会社?
帝国ホテルは、ホテル及び料飲施設の運営、不動産賃貸事業、並びにそれらに付帯するサービス事業活動を展開しています。同社グループは、ホテル事業と不動産賃貸事業を主軸に、幅広いサービスを提供しています。
単体従業員数は1,823名、連結従業員数は1,899名です。セグメントはホテル事業、不動産賃貸事業の2つです。
主な国内グループ会社は、帝国ホテルエンタープライズ、帝国ホテルサービス、帝国ホテルハイヤー、帝国ホテルキッチン(調理食品の製造及び売買)、ニューサービスシステムなどです。
2. 給与と働き方:どんな環境で働く会社か?
帝国ホテルは、日本のホスピタリティ業界を牽引する企業として、従業員の長期的なキャリア形成を支援する環境が整っています。給与水準は業界特性を反映しつつ、安定した働き方を重視する傾向が見られます。多様な人材が活躍できるような制度設計にも力を入れています。
■(1) 給与水準と在籍傾向:平均年間給与・勤続年数・年齢
同社では、従業員が長く働き続けられる環境が特徴です。平均勤続年数や平均年齢から、経験豊富な人材が多数在籍し、安定した組織基盤を築いていることがうかがえます。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 平均年間給与 | 5,822,000円 |
| 平均勤続年数 | 13.6年 |
| 平均年齢 | 38.1歳 |
| 単体従業員数 | 1,823人 |
| 連結従業員数 | 1,899人 |
| 単体のグループ内比率 | 96.0% |
同社は、確定給付型と確定拠出型の両方の退職給付制度を採用しています。確定給付型は給与や勤続年数に応じて給付額が決まる制度、確定拠出型は会社が拠出した資金を従業員が運用する制度です。これらの制度は、同社および一部の連結子会社に適用されています。
退職一時金制度もあります。ただし支給条件や金額の算定方法は有価証券報告書では確認できないため、就業規則や募集要項で確認する必要があります。
なお、確定給付型の退職給付債務は55.4億円となっています。
■(2) 人材戦略と報酬制度:育成方針と給与の決め方
同社グループは、従業員を価値創造の源泉と位置づけ、「人を原点とする帝国ホテルブランドをより進化させる」ことを目指しています。従業員満足度とサービスレベルの向上、そして収益向上へとつながる「価値共創サイクル」の実現に向け、人的資本の強化と多様性の推進を重点課題としています。人材育成においては、創業の精神や伝統を理解し最高のサービスを提供できる人材、イノベーションや変革を実現する人材、多様性を受容・活用できる人材の育成を方針としています。
社内環境整備では、自律的な能力向上を支援するため、語学研修や海外留学支援、自己啓発費用援助制度を整備しています。また、安心して働き続けられる環境として、ハラスメント対策の推進、法定以上の休業日数等を制度化した両立支援、健康経営宣言に基づく従業員の健康増進に取り組んでいます。従業員の給与は、業績や社会情勢、物価上昇、従業員のモチベーション維持・向上といった要素を総合的に勘案して決定されています。当連結会計年度においては、定期昇給に加え、ベースアップおよび手当の増額が実施されました。
■(3) 人的資本データ:多様性と働き方に関する指標
有価証券報告書の法定開示項目および任意開示指標を示します。各指標は、女性活躍推進法・育児介護休業法に基づく法定開示と、同社が独自に開示している任意指標から構成されています。
法定開示
提出会社単体の法定開示データです。人事制度上の男女間賃金格差はありませんが、男女の年齢構成・管理職比率・短時間勤務者数などを要因として、男女間で差異が生じています。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 20.5% |
| 男性の育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女の賃金格差(全労働者) | 68.7% |
| 男女の賃金格差(うち正規雇用労働者) | 74.0% |
| 男女の賃金格差(うちパート・有期労働者) | 55.7% |
連結子会社の法定開示
主要事業会社3社の数値のみ掲載します。
▼ 帝国ホテルエンタープライズ
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 15.6% |
| 男女の賃金格差(全労働者) | 86.7% |
| 男女の賃金格差(うち正規雇用労働者) | 83.9% |
| 男女の賃金格差(うちパート・有期労働者) | 96.0% |
育成
これらの指標は、提出会社単体のものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 無期雇用従業員一人あたりの研修費 | 2018年度比+26.8% |
流動性
これらの指標は、提出会社単体のものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 離職率 | 2018年度比△12.7% |
ダイバーシティ
これらの指標は、提出会社単体のものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 採用した労働者に占める女性労働者割合 | 64.1% |
| 男女の平均勤続年数差異 | 8.7年 |
| 障がい者雇用率 | 2.80% |
その他
これらの指標は、提出会社単体のものです。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 外国への派遣人数(海外ホテルでの研修や国際的コンクールへの従業員出場等) | 2018年度比+12.5% |
3. 事業の構造:どんなビジネスをしている会社か?
帝国ホテルは、ホテル運営と不動産賃貸事業を主軸とする企業グループです。国内外の顧客に対し、高品質な宿泊・料飲サービスを提供し、また賃貸用マンションの管理を通じて収益を上げています。
■(1) 事業内容と収益モデル:何で利益を上げているか
同社グループは、ホテル事業と不動産賃貸事業の二つのセグメントで事業を展開しています。ホテル事業が収益の大部分を占める主力事業であり、不動産賃貸事業も安定した収益源となっています。地域ごとの売上高では、本邦の外部顧客への売上高が連結損益計算書の90%を超えており、国内市場に重点を置いた事業展開となっています。
ホテル事業
ホテル事業は、ホテルや料飲施設の運営、およびそれに付帯するサービスを提供しています。帝国ホテル東京ではタワー館客室の稼働を段階的に再開し、帝国ホテル京都も新規開業しました。大阪・関西万博に関連するインバウンド需要の取り込みにも注力しており、宿泊、食堂、宴会、外販といった多岐にわたるサービスから収益を得ています。運営は、帝国ホテル、子会社5社、関連会社2社が行っています。
不動産賃貸事業
不動産賃貸事業は、賃貸用マンションの賃貸管理業務を行っています。入居率の改善により、安定した賃貸収入を収益源としています。運営は、帝国ホテルが行っています。
| セグメント | 売上高(2025年3月期) | 売上高(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ホテル事業 | 523億円 | 559億円 |
| 不動産賃貸事業 | 2.7億円 | 4.0億円 |
■(2) 業績トレンド:直近の売上・利益の推移
同社グループの過去5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益も、直近の数期で回復し、増加傾向を示しています。特に当期においては、親会社株主に帰属する当期純利益が大幅に増加しており、これは法人税等調整額の計上も影響しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 286億円 | 438億円 | 533億円 | 526億円 | 563億円 |
| 経常利益 | △78.3億円 | 16.5億円 | 33.0億円 | 20.6億円 | 26.6億円 |
| 経常利益率 | △27.4% | 3.8% | 6.2% | 3.9% | 4.7% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | △78.9億円 | 19.5億円 | 33.8億円 | 25.9億円 | 42.9億円 |
| 1株当たり当期純利益(円) | △66.47 | 16.45 | 28.46 | 21.79 | 36.22 |
■(3) 収益性と生産性:1人あたりの稼ぐ力を見る
同社グループの従業員1人あたりの売上高は、前期から増加しています。また、従業員1人あたりの営業利益も前期から増加しており、組織全体の生産性が向上している傾向が見られます。これらの指標の改善は、効率的な事業運営や収益体質の強化が進んでいることを示唆しています。
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 従業員1人あたり売上高(連結) | 29.0百万円 | 29.6百万円 |
| 従業員1人あたり営業利益(連結) | 0.9百万円 | 1.1百万円 |
4. 経営の安定性:どれくらい安心して働けそうか?
帝国ホテルグループの財務状況を見ると、本業で安定した資金を生み出しつつ、将来に向けた積極的な投資を行っていることがわかります。これにより、事業の成長と安定性の両面を追求している状況です。
■(1) 財務基盤:自己資本と手元資金の厚み
同社グループの財務基盤は、自己資本比率が当期で59.9%となっており、前期の65.7%から減少しています。これは東京証券取引所プライム市場の非製造業平均(24.2%)と比較して高い水準を示しています。ROE(自己資本利益率)は当期で9.1%であり、前期の5.9%から上昇しました。これはプライム市場平均(9.4%)に近い水準です。手元資金である現金及び預金は当期で123億円を確保しており、前期の114億円から増加しています。これらの状況は、同社グループが安定した財務体質を維持しつつ、収益性を向上させていることを示しています。
| 指標 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 純資産 | 453億円 | 491億円 |
| 自己資本比率 | 65.7% | 59.9% |
| ROE(自己資本利益率) | 5.9% | 9.1% |
| 現金及び預金 | 114億円 | 123億円 |
■(2) キャッシュフロー:事業・投資・財務の資金の流れ
同社グループのキャッシュフローを見ると、本業の稼ぎを示す営業活動によるキャッシュフローは当期に41.2億円の収入となりました。これは税金等調整前当期純利益の計上などによるものです。一方、投資活動によるキャッシュフローは△96.7億円の支出となり、有形固定資産の取得による支出が主な要因です。その結果、フリーキャッシュフローは△55.5億円のマイナスとなっています。これは本業で得た資金を上回る規模で、将来に向けた積極的な投資を行っている成長投資フェーズを示しています。財務活動によるキャッシュフローは79.4億円の収入となり、短期借入金の増加が主な要因です。これらの資金の流れは、同社グループが事業拡大のための投資を積極的に進め、その資金を借入金で賄っている状況を示しており、今後の事業成長への期待が持てる一方で、資金調達の状況も注視していくことが重要です。
| 項目 | 2025年3月期(前期) | 2026年3月期(当期) |
|---|---|---|
| 営業CF | 70.6億円 | 41.2億円 |
| 投資CF | △141.4億円 | △96.7億円 |
| 財務CF | △7.2億円 | 79.4億円 |
| フリーCF(営業CF+投資CF) | △70.7億円 | △55.5億円 |
■(3) 事業リスクと雇用への影響:転職時に押さえたいポイント
① 継続企業の前提に関するリスク
継続企業の前提に関する特記事項はありません。
② 事業構造・収益性に関するリスク
同社グループは、帝国ホテル東京の建て替え計画に関するリスクを認識しています。建て替え期間中の一部事業規模縮小による一時的な収益力低下や、物価上昇による資材・労務費の高騰が想定されています。また、売上高の約8割が東京本社に集中しているため、東京本社で予期せぬ問題が発生した場合、グループ全体の収益確保に大きく影響する可能性があります。
③ 人材・組織に関するリスク
同社グループは、労務関連のリスクとして、人手不足の深刻化による商品提供の滞りや、人件費・業務委託費の増加が収益確保に影響を与える可能性を挙げています。これに対し、人材育成の強化や多様な働き方に対応する制度整備、計画的な採用活動を通じて対応しています。
④ 雇用安定性・リストラ
解雇給付・リストラクチャリング引当金・構造改革費用の計上など、該当する記載はありません。
5. ビジョンと企業風土:どんな組織を目指している会社か?
帝国ホテルは、創業の精神を継ぎ、国際社会の発展と人々の豊かな生活に貢献することを目指しています。従業員の満足度とサービスレベルの向上を重視し、持続的な企業価値向上を図る企業です。
■(1) 経営理念とビジョン:会社はどこを目指しているか
同社グループの企業理念は「創業の精神を継ぐ日本の代表ホテルであり国際的ベストホテルを目指す企業として、最も優れたサービスと商品を提供することにより、国際社会の発展と人々の豊かでゆとりのある生活と文化の向上に貢献する」ことです。
目指すべき姿として「日本を代表するホテル」として帝国ホテルブランドを進化させ、いかなる経営環境下でも企業継続できる体制を構築し、2040年の開業150周年を目指しています。同社グループは、東京事業所建て替え後を見据えた『中長期経営計画』を策定しています。
■(2) 企業風土:大切にしている価値観とカルチャー
同社グループは、誠実で人間味あふれる従業員の存在が企業価値を高める上で何よりも大切な原点であると考えています。従業員の満足度を高めながらサービスレベルを向上させ、顧客満足度と収益を向上させる理想的なサイクルを重視しています。
人材育成においては、創業の精神や伝統を理解し最高のサービスを提供できる人材、イノベーションや変革を実現する人材、多様性を受容・活用し発展に繋げる人材を求めています。
サステナビリティ推進活動の基本方針として、健全な事業活動を通じた持続可能な経済成長と社会課題の解決、安全・信頼・公正・適正な活動、良き企業市民としての社会貢献、国内外情勢との検証による実効性向上を掲げています。
■(3) 経営課題と今後の重点テーマ
同社グループは、価値創造の原点である従業員が活き活きと働き、お客様へのサービス向上と満足度向上を持続的な企業価値向上に繋げることを重視しています。
具体的には、賃上げや業務の効率化、労働環境の一層の改善を行うなど、人的資本の強化を推進しています。
また、より多様な強みを持った人材が力を発揮できる環境を整えることで、社会情勢やお客様ニーズの変化に対応できる組織を目指しています。
6. 経営体制とガバナンス:誰がどう会社を動かしているか?
帝国ホテルは、透明性、健全性、効率性を重視したコーポレート・ガバナンス体制を構築しています。独立社外取締役が過半数を占める指名報酬諮問委員会を設置し、取締役会の監督機能強化と経営の監視体制の充実を図っています。
■(1) 株主構成:誰に支えられている会社か
同社は、複数の事業会社や金融機関によって支えられている資本構成となっています。筆頭株主は三井不動産であり、安定した基盤を持つ企業によって支えられていることが特徴です。
| 株主名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井不動産 | 33.20% |
| アサヒビール | 5.74% |
| 大和証券グループ本社 | 5.13% |
| 日本生命保険相互会社 | 4.67% |
| 富国生命保険相互会社 | 4.42% |
■(2) 経営陣の経歴:どんな人たちが会社を率いているか
同社の役員は19名(男性17名・女性2名)で構成され、女性役員比率は10.5%です。代表取締役社長執行役員は風間淳氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 定保英弥 | 取締役会長執行役員 | 1984年3月 同社入社、2013年4月 同社代表取締役社長 社長執行役員、2025年6月 同社取締役会長執行役員より現職。 |
| 徳丸淳 | 代表取締役副社長執行役員企画部、技術ソリューション部、人事部担当、兼SDGs推進担当 | 1986年3月 同社入社、2020年4月 同社代表取締役常務 常務執行役員、2025年6月 同社代表取締役副社長執行役員より現職。 |
| 古谷厚史 | 取締役専務執行役員事業開発部、総務部担当 | 1988年3月 同社入社、2020年6月 同社取締役執行役員総務部長、2026年4月 同社取締役専務執行役員より現職。 |
| 大和田寛 | 取締役常務執行役員プロジェクト推進部、不動産事業部担当 | 1994年4月 同社入社、2023年6月 同社取締役執行役員プロジェクト推進部長、2025年4月 同社取締役常務執行役員より現職。 |
| 今井徹 | 取締役常務執行役員経理部担当 | 1984年3月 同社入社、2021年6月 同社取締役執行役員、2026年4月 同社取締役常務執行役員より現職。 |
| 八島和彦 | 取締役執行役員帝国ホテル東京総支配人兼マーケティング部担当 | 1994年4月 同社入社、2023年4月 同社執行役員帝国ホテル東京総支配人、2023年6月 同社取締役執行役員帝国ホテル東京総支配人より現職。 |
社外取締役は、小路明善氏(アサヒグループホールディングス会長)、米山好映氏(富国生命保険相互会社取締役会長)、寺本秀雄氏(元第一生命ホールディングス代表取締役副会長執行役員)、野瀬裕之氏(サッポロビール会長)、徳田誠氏(三井不動産取締役副社長執行役員)、中田誠司氏(大和証券グループ本社取締役会長兼執行役)、藤本宣人氏(日本生命保険相互会社副社長執行役員)です。
同社は監査役会設置会社であり、取締役の業務執行に対する監督機能の向上と経営の健全性・効率性を高めるため、社外役員を選任しています。社外役員は、経営全般に関する豊富な経験と高度な専門性に基づき、客観的かつ独立した立場から監督・監視の機能を発揮しています。
■(3) 役員報酬の仕組み:経営責任とインセンティブの設計
同社の役員報酬は、企業価値の持続的な向上を促すインセンティブとして、株主利益と連動した報酬体系を基本方針としています。業務執行取締役の報酬は、役位に応じた基本報酬、業績連動報酬、および株式報酬で構成されています。社外取締役は主に監督機能を担うため、基本報酬のみが支給されています。
| 区分 | 人数 | 総額 | 1人あたり平均 |
|---|---|---|---|
| 取締役(社外除く) | 7名 | 2.9億円 | 41.9百万円 |
| 監査役(社外除く) | 2名 | 38百万円 | 19.0百万円 |
| 社外役員 | 9名 | 57百万円 | 6.3百万円 |
連結報酬等の総額が1億円以上の役員は存在しないため、個人別の開示は行われていません。
※本記事は、有価証券報告書などの公開情報から、転職・就職活動に役立つ情報をまとめたものです。内容の充実に努めていますが、掲載時点の情報であることをご留意ください。気になる点やご指摘があればお気軽にお知らせください。



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