山喜 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

山喜 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の老舗アパレルメーカー。主力事業はドレスシャツやカジュアルウェアの企画・製造・販売で、国内シェアトップクラスの実績を持ちます。直近の連結業績は売上高108億円、経常利益0.2億円。主力の量販店向け販売の減少や原材料高の影響等により、減収減益となりました。


#記事タイトル:山喜転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、山喜株式会社 の有価証券報告書(第73期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 山喜ってどんな会社?


1946年創業、ドレスシャツ(ワイシャツ)の国内トップシェアを誇る老舗アパレル企業。製造から販売まで一貫体制を構築しています。

(1) 会社概要


1946年にシャツの製造販売を開始し、1953年に法人設立。1994年に大阪証券取引所市場第二部へ上場しました。2014年から2015年にかけてCHOYAより事業の一部を譲受し、ブランド力を強化。2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。2024年にはフェールムラカミを子会社化しています。

連結従業員数は678名、単体では109名体制です。筆頭株主は代表取締役会長の宮本惠史氏で、第2位は主要仕入先である日清紡ホールディングスです。第3位の山喜共伸会は同社総務部内に所在しています。

氏名 持株比率
宮本 惠史 10.61%
日清紡ホールディングス 4.96%
山喜共伸会 4.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は白﨑雅郎氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
白﨑 雅郎 代表取締役社長 1980年同社入社。物流部門長、商品部門担当などを経て、2017年より現職。
宮本 惠史 代表取締役会長 1988年通商産業省退官後、同社入社。1992年社長就任を経て、2017年より現職。
野瀬 和良 取締役(監査等委員) 1987年同社入社。海外生産事業部長、執行役員などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、溝端浩人(公認会計士)、今枝史絵(弁護士法人御堂筋法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「国内販売」「製造」「海外販売」および「その他」事業を展開しています。

(1) 国内販売事業


日本国内において、ドレスシャツ、カジュアルウェア、レディースシャツ等の卸売および小売事業を行っています。また、それに付随する物流事業や不動産賃貸事業も展開しており、百貨店や量販店、専門店に加え、直販サイト「山喜オンラインショップ」などのECチャネルも運営しています。

収益は、各流通チャネルの顧客(小売店や消費者)からの商品販売代金や、保有不動産の賃貸料収入から得ています。運営は主に山喜が販売事業を、山喜ロジテックが物流業務を、山喜および関係会社が不動産賃貸事業を行っています。

(2) 製造事業


国内および海外において、ドレスシャツ、カジュアルウェア、レディースシャツ等の製造を行っています。コスト競争力のある海外生産拠点と、高品質な日本製を提供する国内工場を組み合わせた生産体制を構築しています。

収益は、グループ内の販売会社や外部顧客への製品供給による対価を得ています。運営は、国内では山喜ソーイング、フェールムラカミが、海外ではタイ・ヤマキ・カンパニー・リミテッド、ラオ・ヤマキ・カンパニー・リミテッドなどが担っています。

(3) 海外販売事業


海外市場におけるドレスシャツ、カジュアルウェア、レディースシャツ等の販売事業を行っています。主に中国市場での展開を進めており、現地での販売活動を行っています。

収益は、海外の顧客からの商品販売代金から得ています。運営は、上海山喜商貿有限公司が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は100億円前後で推移しています。利益面では、2021年3月期から2023年3月期にかけて赤字または低収益が続きましたが、2024年3月期に黒字転換しました。直近の2025年3月期は減収となり、利益率も低下していますが、黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 103億円 97億円 114億円 114億円 108億円
経常利益 △12.1億円 △9.6億円 △0.8億円 2.6億円 0.2億円
利益率(%) -11.7% -9.9% -0.7% 2.3% 0.1%
当期利益(親会社所有者帰属) △11.4億円 △10.5億円 0.6億円 2.3億円 1.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しました。売上総利益率は改善傾向にありますが、営業利益は前期の2.2億円から0.5億円へと縮小しました。特別利益として固定資産売却益などを計上したことで、最終的な当期純利益は確保されています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 114億円 108億円
売上総利益 32億円 31億円
売上総利益率(%) 28.0% 29.1%
営業利益 2.2億円 0.5億円
営業利益率(%) 1.9% 0.5%


販売費及び一般管理費のうち、雑給が6.9億円(構成比22%)、従業員給料が6.7億円(同22%)を占めています。売上原価については、製品売上原価が大部分を占めています。

(3) セグメント収益


国内販売事業は量販店向けの減少等により減収減益となりました。製造事業はフェールムラカミの子会社化により増収となりましたが、経費増加で赤字幅が拡大しました。海外販売事業は中国経済の低迷で減収となったものの、利益率の高い商品の販売により増益を確保しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
国内販売 99億円 91億円 2.0億円 1.5億円 1.7%
製造 23億円 27億円 △0.3億円 △1.4億円 -5.1%
海外販売 5.4億円 3.8億円 0.1億円 0.2億円 6.1%
連結(合計) 114億円 108億円 2.2億円 0.5億円 0.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.1%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は37.5%で市場平均(スタンダード市場製造業平均57.5%)を下回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 7.0億円 △1.7億円
投資CF 3.1億円 7.7億円
財務CF △12.1億円 △1.4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業以来、「最大の企業たらんより最良の企業たれ」を社是として掲げています。この理念のもと、常に豊かな感性と大胆な発想によって時代の変化に対応した様々なシャツファッションを提案し、生活文化の向上に貢献することを基本理念としています。

(2) 企業文化


同社は「株主・顧客・社員・取引先から信頼される企業」を行動指針としています。収益の向上とともに、全てのステークホルダーとの共存共栄を図る姿勢を重視しています。また、品質重視のポリシーを持ち、独自の品質管理マニュアルに基づいた厳格なチェック体制を敷いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2025年度(第74期)を最終年度とする「新中期3ヵ年経営計画」を推進しており、業績の回復と収益基盤の安定化を目指しています。

* 売上高:150億円
* 経常利益:4.3億円

(4) 成長戦略と重点施策


「オリジナルブランドの構築」「BtoCの強化」「新商品開発と売上拡大」を基本方針として掲げています。百貨店や量販店でのシェア拡大に加え、自社ECサイトの強化やSNSを活用したマーケティングにより顧客接点を拡充します。また、機能性素材を用いたシャツや、ビジネスカジュアル、レディース、ユニフォームなどの商品展開を強化し、収益性の向上に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人間としての平等」「能力の公平な評価」のもと、個人の能力が発揮できる環境作りと能力開発に努める方針です。ダイバーシティを推進し、性別や国籍等を問わず多様な人材が活躍できる職場を目指しています。また、eラーニングやITスキル研修を実施し、営業力・開発力・ITスキルを兼ね備えたマルチタスク人材の育成を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.5歳 16.1年 4,230,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.0%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) 63.3%
男女賃金差異(正規) 71.3%
男女賃金差異(非正規) 80.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) トレンドの変化によるリスク


主力のドレスシャツは比較的トレンドの影響を受けにくいアイテムですが、近年のワークスタイルの変化によるスーツ離れや、カットソー等の代替アイテムの台頭により、影響を受けるリスクが高まっています。同社は新素材開発やニュー・ワーク・スタイルの商品企画で対応を図っています。

(2) 天候・自然災害等によるリスク


ドレスシャツの実需期である春夏(4-7月)や秋冬(10-1月)に冷夏、長雨、台風等の異常気象が発生した場合、売上が低迷する可能性があります。また、生産拠点や輸送経路での災害により供給遅延が発生するリスクもあります。同社は季節商材の平準化や在庫確保等の対策を講じています。

(3) 海外生産に関するカントリーリスク


商品の約86%を海外で生産しているため、生産国における政情不安、紛争、治安悪化等により供給が滞るリスクがあります。同社はラオスやタイの自社工場のほか、中国、ベトナム等の協力工場を活用し、生産地域を分散させることでリスク回避に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。