※本記事は、山喜の有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 山喜ってどんな会社?
アパレル製品の製造および販売を主力とする同社の特徴を紹介します。
■(1) 会社概要
1946年7月に創業者が大阪市でシャツの製造販売を開始しました。1953年に山喜商店を設立し、1980年に現在の山喜に商号変更しています。1994年4月に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2022年に東京証券取引所のスタンダード市場へ移行しました。タイや中国、ラオス等に海外子会社を設立し事業を拡大しています。
同社グループは、連結従業員数594名、単体従業員数89名で事業を展開しています。筆頭株主は創業者一族の宮本惠史氏で、第2位は事業会社の主要な取引先である日清紡ホールディングス、第3位は山喜共伸会です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 宮本惠史 | 10.61% |
| 日清紡ホールディングス | 4.96% |
| 山喜共伸会 | 4.57% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役会長の白﨑雅郎氏が経営を牽引しています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 白﨑雅郎 | 代表取締役会長 | 1980年3月同社入社。2009年4月山喜ロジテック社長。2014年6月常務取締役を経て、2017年4月代表取締役社長に就任。2026年4月より現職。 |
| 宮本惠史 | 取締役相談役 | 1988年6月通商産業省退官後、同社入社。1992年11月代表取締役社長、2017年4月代表取締役会長を経て、2026年4月より現職。 |
| 記村俊行 | 取締役営商部門長補佐国内生産部門長 | 1996年1月同社入社。2019年4月営業第2事業部長などを歴任。2024年6月執行役員を経て、2025年6月取締役に就任。2026年4月より現職。 |
| 山口良彦 | 取締役営商部門長補佐 | 1988年3月同社入社。2019年4月営業第1事業部長などを歴任。2024年6月執行役員を経て、2025年6月取締役に就任。2026年4月より現職。 |
社外取締役は、溝端浩人氏(溝端公認会計士事務所開設)、乾一良氏(乾公認会計士事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内販売」「製造」「海外販売」の報告セグメントを展開しています。
■国内販売
日本国内におけるアパレル商品の卸売および小売事業を展開しています。主に百貨店、量販店、メンズ専門店、消費者向けの自社オンラインショップ等に対して、ドレスシャツやビジネスカジュアル、オーダーシャツなどの商品を販売しています。
収益源は、販売先からの商品販売代金や不動産賃貸収入等です。運営は主に同社および子会社の山喜アソシエが販売事業を担い、山喜ロジテックが物流業務、同社および山喜ロジテック、山喜ソーイングが不動産賃貸事業を行っています。
■製造
国内および海外においてアパレル製品の製造を行っています。日本国内の工場に加え、ラオスなどの海外自社工場や協力工場を活用し、シャツをはじめとする高品質なアパレル製品の生産体制を構築しています。
収益源は、グループ内および外部からのアパレル製品の製造代金等です。運営は主に山喜ソーイング、フェールムラカミ、ラオヤマキカンパニーリミテッドが担当しています。
■海外販売
海外市場において、アパレル商品や材料の販売事業を展開しています。中国やタイなどの第三国市場や欧米、アジア市場において、新規取引先の開拓などを通じて事業を推進しています。
収益源は、海外の顧客等に対する製品および材料の販売代金です。運営は主に上海山喜商貿有限公司、タイヤマキカンパニーリミテッドが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は100億円前後で推移していましたが、直近ではオフィスウェアのカジュアル化等の影響で100億円を割り込みました。経常利益と当期純利益についても、黒字転換した時期があったものの、直近では原価の上昇や事業構造改善費用の計上等により再び赤字となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 97億円 | 114億円 | 114億円 | 108億円 | 99億円 |
| 経常利益 | -10億円 | -0.8億円 | 3億円 | 0.2億円 | -3億円 |
| 利益率(%) | -9.9% | -0.7% | 2.3% | 0.1% | -3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -11億円 | 0.6億円 | 2億円 | 2億円 | -9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が減少する中、原材料価格の高止まりや円安の影響による製品原価の上昇を受け、売上総利益も減少しています。販売費及び一般管理費は物流費の抑制等により微減したものの、営業利益は赤字に転落しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 108億円 | 99億円 |
| 売上総利益 | 31億円 | 27億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.1% | 27.4% |
| 営業利益 | 0.5億円 | -3億円 |
| 営業利益率(%) | 0.5% | -3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、雑給が7億円(構成比23%)、従業員給料が6億円(同21%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内販売は消費者の節約志向等により減収となっています。製造は主要取引先からの発注数量減少等が響きました。海外販売はタイ法人の事業再編により売上が計上されたものの、上海法人の人件費増加等で厳しい状況が続いています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 国内販売 | 91億円 | 84億円 |
| 製造 | 14億円 | 12億円 |
| 海外販売 | 2億円 | 3億円 |
| 連結(合計) | 108億円 | 99億円 |
同社は本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況(事業検討型)にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -2億円 | -5億円 |
| 投資CF | 8億円 | 2億円 |
| 財務CF | -1億円 | -3億円 |
財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は32.4%で市場平均を下回っています。なお、企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)については当期のデータがありません。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、創業以来「最大の企業たらんより最良の企業たれ」を社是とし、常に豊かな感性と大胆な発想によって時代の変化に対応した様々なシャツファッションを提案し、生活文化の向上に貢献することを基本理念として掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、「株主・顧客・社員・取引先から信頼される企業」を行動指針としています。収益の向上とともに共存共栄を図ることを目指し、あらゆる人がそれぞれの個性と能力を最大限に発揮し、互いを尊重して認め合うことで組織が成長する文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度を初年度とする「新・中期経営計画」に基づき、収益構造の見直しおよび経営基盤の強化に取り組んでいます。最終年度には持続的な成長収益基盤の再構築を目指し、以下の具体的な数値目標を掲げています。
・売上高110億円
・営業利益2.3億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「抜本的な構造改革による経営体質の転換」と「企画・製造・販売を一体化した製販一体型ビジネスモデルの構築」を基本方針とし、「オンリー1シャツメーカー」に挑戦しています。事業展開領域をビジネスウェアに絞り、オリジナリティを軸とした企画・開発を推進するとともに、同社主導による売場展開を目指します。また、営業体制の強化や生産拠点の集約、在庫水準の適正化を通じて新たな価値創出を牽引します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
社会環境や経済状況の変化に対し、スピード感をもって変化し、成長し続ける人材の育成を重視しています。階層別研修や社内研修の充実を図り、必要なスキルをタイムリーに取り入れています。また、海外子会社の生産性向上のため、外国人技能実習生の受け入れによるスキルアップと現地工場の管理職育成を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.5歳 | 17.8年 | 4,930,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.1% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 59.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 70.2% |
※男性育児休業取得率は対象者がいないため「-」としています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) トレンドの変化によるリスク
主力アイテムであるドレスシャツは実用衣料に近いものの、近年のスーツ離れやオフィスカジュアル化の進展により、トレンド変化の影響を受けるリスクが高まっています。同社はこれをチャンスと捉え、新素材の開発やビジネスカジュアル向けの商品企画を積極的に推進しています。
■(2) 天候・自然災害等によるリスク
近年の異常気象や長引く夏の暑さ、局地的な暴風雨等の自然災害により、実需期の売上が低迷するリスクがあります。また、海外工場や輸送経路における被災で供給が遅延するリスクもあり、季節波動の平準化や一定在庫の確保による代替品の提供で対応しています。
■(3) 海外生産に関するカントリーリスク
ラオスなどの自社工場や中国、ベトナム等の協力工場における政情不安や紛争、テロ、治安悪化等により、商品の供給が滞るリスクがあります。同社はこれらのリスクを回避するため、生産地域を分散させ、カントリーリスクが1か所に集中しない体制を整えています。
■(4) 取引先に関するリスク
取引先の倒産や予期せぬ経営破綻が生じた場合、貸倒れの発生や商品供給の遅延などのダメージを被るリスクがあります。定期的な信用調査や与信管理サービスの活用に加え、保証会社による包括的なバルク特約付保証取引契約を締結し、リスク低減に努めています。



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