※本記事は、蔵王産業の有価証券報告書(第70期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 蔵王産業ってどんな会社?
環境クリーニング機器の専門商社として、清掃・洗浄機器の輸入販売を手がけています。
■(1) 会社概要
同社は1955年に計測機器類の販売を目的として創業し、翌1956年に蔵王産業を設立しました。1967年より業務用真空掃除機や自動床洗浄機等の環境クリーニング機器の販売を開始し、現在の主力事業へと成長しました。1994年に日本証券業協会に株式を店頭登録し、その後2007年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。2015年に市場第一部への指定を受けたのち、市場区分の見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。
現在、従業員数は単体で238名です。筆頭株主は金融機関の三井住友銀行で、第2位も同じく金融機関の千葉銀行、第3位には学校法人の麻生塾が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三井住友銀行 | 4.54% |
| 千葉銀行 | 4.23% |
| 学校法人麻生塾 | 4.23% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は沓澤孝則氏が務めています。社外取締役は3名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 沓澤 孝則 | 代表取締役社長 | 1993年同社入社。管理部長や常務取締役管理本部長、取締役副社長などを歴任し、2021年6月より現職。 |
| 竹村 洋 | 常務取締役 | 1996年同社入社。商事部長などを経て、2021年6月より常務取締役商事営業本部長に就任し、2025年6月より現職。 |
| 御幡 純平 | 常務取締役 | 1997年同社入社。営業部長や取締役営業本部長などを歴任し、2021年6月より常務取締役営業本部長に就任し、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、村上正俊(元あずさ監査法人パートナー)、会田南(元三井住友ファイナンス&リース専務執行役員)、大山邦子(カトープレジャーグループ取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「清掃機器」「洗浄機器」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 清掃機器
同社は、主に欧米や中国などの海外メーカーから仕様指定で製造させた業務用・産業用の清掃機器を輸入し、国内で販売しています。具体的な製品としては、動力清掃機、真空掃除機、カーペット清掃機やロボット清掃機などをラインナップしており、製造業やビルメンテナンス業者などを主要な顧客としています。
収益は、これらの機器の販売代金から得ています。事業の運営は主に蔵王産業が単体で行っており、顧客の現場における実演販売を通じて市場ニーズに応える提案営業を主体としています。
■(2) 洗浄機器
自動床洗浄機や高圧洗浄機、スチーム洗浄機などの洗浄機器を輸入・販売しています。コンシューマー市場向けの家庭用リンサーなども取り扱っており、ホームセンターなどに強い販売代理店との提携を通じた販売活動も展開しています。
収益モデルは、製品の販売代金によるものです。蔵王産業が主体となって運営しており、同業他社へのオリジナルブランド商品の提案による大量一括卸売販売(OEM)なども積極的に行い、販路の拡大を図っています。
■(3) その他
環境クリーニングに関連するその他の商材として、強アルカリイオン電解水生成機、水質浄化剤、一般家電製品などの販売を手がけています。また、販売した機器の部品提供やメンテナンスサービスも行っています。
収益は、関連商品の販売代金のほか、修理・メンテナンスに伴う工賃やパーツの提供から得ています。本事業も蔵王産業が主体となって全国の営業拠点にサービス員を配置し、アフターサービス体制を構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を振り返ると、売上高は84億円から96億円のレンジで推移しており、底堅い需要に支えられています。経常利益も毎年9億円から14億円規模を安定して計上しており、利益率は11%から15%前後と高い水準を維持しています。堅実な事業運営により、毎期安定的な当期利益を生み出していることが読み取れます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 89億円 | 96億円 | 94億円 | 84億円 | 88億円 |
| 経常利益 | 13億円 | 14億円 | 12億円 | 9億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 14.9% | 14.6% | 13.1% | 11.0% | 11.9% |
| 当期利益 | 12億円 | 11億円 | 10億円 | 6億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益・営業利益ともに堅調に伸長しています。利益率も高い水準を維持しており、主力商品の販売増や工賃等のサービス売上が寄与し、安定した収益構造を構築しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 84億円 | 88億円 |
| 売上総利益 | 39億円 | 42億円 |
| 売上総利益率(%) | 46.0% | 47.6% |
| 営業利益 | 9億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 10.8% | 11.6% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が14億円(構成比43%)、賃借料が3億円(同9%)、福利厚生費が3億円(同8%)を占めています。売上原価合計に対しては、当期商品仕入高が102%(商品期首・期末棚卸高の調整を含む)の規模で推移しています。
■(3) セグメント収益
主力の清掃機器は、搭乗式大型清掃機などの販売が堅調に推移し大幅な増収となりました。一方、洗浄機器は家庭用リンサーなどのコンシューマー向け商品の販売減により減収となっています。その他事業は工賃やパーツ販売が伸び、増収を確保しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 清掃機器 | 15億円 | 18億円 |
| 洗浄機器 | 40億円 | 38億円 |
| その他 | 30億円 | 31億円 |
| 連結(合計) | 84億円 | 88億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状態となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5億円 | 11億円 |
| 投資CF | 0.5億円 | -4億円 |
| 財務CF | -6億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「高品質な環境クリーニング機器等の販売を通じ、身近な環境の美化と安全、衛生、省力を社会に提供する」ことを経営の基本として掲げています。現場密着型の提案営業と商品開発力を武器に、市場に新たな提案を行うことで顧客の清掃・洗浄に関する課題を解決し、社会に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
現場ニーズに寄り添う顧客志向の営業スタイルを重視しています。顧客の現場における実演販売を核とし、現場の要望を満足させるための商品提案力を強みとしています。また、次世代の経営幹部をはじめ優秀な人材の確保と育成を永続的な発展に欠かせない要件と認識し、積極的な教育制度の整備に努める文化があります。
■(3) 経営計画・目標
株主利益重視の観点から、収益性と資本効率の向上を中長期的な経営目標として設定しています。現在は、この目標達成に向けた施策を推進しています。
* ROE(自己資本利益率)10%以上の達成
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の業容拡大に向け、実演販売と商品提案力の強化を図り、現場密着型の提案営業を深耕します。また、商事部の拡大を通じてホームセンター等のコンシューマー向け販売やOEM供給を強化し、新規販路を開拓します。さらに、全国の営業拠点にサービス員を配置してアフターサービス体制を充実させ、顧客満足度の向上を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
変化の激しい労働市場環境に対応するため、女性・外国人・障がい者・再雇用者など多様な人材の確保を積極的に進めています。特に女性の活躍機会の拡大やシニア層の就労機会確保を重要課題と位置づけています。また、社内AIの導入による一貫した教育体制の構築や、リスキリングの啓蒙、安全な職場環境の整備を通じて従業員満足度の向上を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.8歳 | 13.6年 | 6,073,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.4% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社は公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、車輛加害事故件数(12件)、従業員の持株会加入率(36.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 業界の経済状況と価格競争
同社の環境クリーニング機器事業は、主要顧客である製造業の国内設備投資動向やビルメンテナンス業界の企業業績の影響を受けます。景気悪化による設備投資の抑制や、機能に特徴のない商品における価格競争の激化、コンシューマー市場での同業他社参入による競争などが業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替レートの変動
取扱商品の約7割が欧米や中国などの海外メーカーからの輸入品であり、支払いは外貨建てで行われています。為替予約などによるリスクヘッジを行っていますが、大幅なユーロ高やドル高が進行した場合、仕入コストの上昇を招き、同社の利益率を低下させるリスクがあります。
■(3) 商品開発力と特定の海外メーカー依存
他社にない優れた新商品の継続的な開発が成長の鍵となりますが、市場のニーズを掴みきれない場合、収益性が低下する恐れがあります。また、中国や米国の特定メーカーからの仕入割合が比較的高く、何らかの理由でこれらの仕入が停止した場合、一時的に商品の確保が困難となる可能性があります。
■(4) 輸入品の調達期間と販売の機会損失
商品は主に海外からの輸入であり、国内の物流センターで保管されています。万が一、自然災害などで保管商品にダメージが生じた場合、次の商品入荷までに1〜2ヶ月を要します。調達期間の長期化による販売の機会損失が、同社の業績に影響を与えるリスクがあります。



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