蔵王産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

蔵王産業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、環境クリーニング機器の専門商社です。欧米や中国等のメーカーから業務用・産業用等の清掃・洗浄機器を輸入し、国内全域で販売しています。当期は主力商品の需要一巡や大型機器の販売低迷により、売上高84億円、経常利益9億円の減収減益となりました。


※本記事は、蔵王産業株式会社 の有価証券報告書(第69期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

蔵王産業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. 蔵王産業ってどんな会社?


欧米や中国から業務用・産業用・家庭用の清掃・洗浄機器を輸入販売する専門商社です。

(1) 会社概要


1956年に蔵王産業を設立し、1967年より環境クリーニング機器の販売を開始しました。2004年にジャスダックへ上場し、2015年には東京証券取引所市場第一部へ指定されました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に移行しています。

同社(単体)の従業員数は237名です。大株主の構成は、筆頭株主が金融機関である株式会社三井住友銀行、第2位も同じく金融機関の株式会社千葉銀行、第3位は学校法人麻生塾となっており、特定の事業会社による支配色は薄い構成です。

氏名 持株比率
三井住友銀行 4.61%
千葉銀行 4.23%
学校法人麻生塾 4.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は沓澤孝則氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
沓澤 孝則 代表取締役社長 1993年同社入社。管理部長、取締役管理部長、常務取締役管理本部長、取締役副社長などを経て2021年6月より現職。
竹村 洋 常務取締役商事営業本 部 長 1996年同社入社。商事部長、取締役商事部長、取締役商事営業本部長を経て2021年6月より現職。
御幡 純平 常務取締役営業本部長 1997年同社入社。営業部長、取締役営業部長、取締役営業本部長を経て2021年6月より現職。
村上 正俊 取締役 1991年朝日新和会計社(現あずさ監査法人)入所。公認会計士・税理士。日豊産業取締役などを兼務し、2019年6月より現職。
会田 南 取締役 三井住友ファイナンス&リース常務執行役員、取締役専務執行役員、顧問を経て2021年6月より現職。


社外取締役は、村上正俊(公認会計士・税理士)、会田南(元三井住友FL専務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「環境クリーニング機器」に関連する事業を展開しています。

環境クリーニング機器事業


欧米や中国等のメーカーに同社仕様で製作させた業務用・産業用・コンシューマー向けの清掃機器・洗浄機器等を輸入し、国内全域で販売しています。主要商品には、動力清掃機、真空掃除機、自動床洗浄機、高圧洗浄機、スチーム洗浄機などがあります。また、強アルカリイオン電解水生成機や水質浄化剤なども取り扱っています。

収益は、顧客への機器販売代金のほか、部品販売やメンテナンスサービス、消耗品およびアクセサリーの販売から得ています。また、同業他社へのオリジナルブランド商品の提案による大量一括卸売販売(OEM)も行っています。運営は主に蔵王産業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は2023年3月期に96億円でピークに達した後、直近2期間は減少傾向にあります。経常利益も同様に2023年3月期の14億円を最高に、当期は9億円台まで低下しました。利益率も低下傾向にありますが、依然として10%を超える高い経常利益率を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 68億円 89億円 96億円 94億円 84億円
経常利益 10億円 13億円 14億円 12億円 9億円
利益率(%) 14.8% 14.9% 14.6% 13.1% 11.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 12億円 11億円 10億円 6億円

(2) 損益計算書


減収に伴い売上総利益、営業利益ともに減少しました。売上高は前期比で約10億円減少しましたが、売上総利益率は46.0%と高い水準を維持しています。営業利益率は前期の12.8%から10.8%へ低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 94億円 84億円
売上総利益 40億円 39億円
売上総利益率(%) 42.3% 46.0%
営業利益 12億円 9億円
営業利益率(%) 12.8% 10.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が12億円(構成比41%)、その他が6億円(同20%)を占めています。売上原価では、当期商品仕入高が49億円(構成比108%)を占めています。

(3) セグメント収益


各品目ともに減収となりました。清掃機器は大型の搭乗式清掃機器の受注残一巡により減少、洗浄機器は家庭用リンサーの需要一巡により減少しました。その他部門は工賃やパーツ販売が堅調に推移し、微増となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
清掃機器 18億円 15億円
洗浄機器 47億円 40億円
その他 29億円 30億円
連結(合計) 94億円 84億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラスを維持していますが、利益の減少や棚卸資産の増加等により前期比で収入が減少しました。投資CFは投資有価証券の償還によりプラスに転じました。財務CFは配当金の支払等によりマイナスとなっています。営業利益を確保しつつ資産の入れ替えを行い、株主還元を進めている「改善型」のキャッシュ・フローと言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 12億円 5億円
投資CF -2億円 1億円
財務CF -14億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「高品質な環境クリーニング機器等の販売を通じ、身近な環境の美化と安全、衛生、省力を社会に提供する」ことを経営の基本方針としています。市場に新たな提案を行うことで、顧客の清掃・洗浄等に関する問題を解決し、社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、顧客現場における実演販売(デモンストレーション)を営業の核としており、現場密着型の提案営業を重視する文化があります。市場や現場のニーズをもとにした商品開発力を武器に、顧客の要望を満足させる提案力を高めることに注力しています。

(3) 経営計画・目標


同社は株主利益重視の観点から、収益性と資本効率を高めることを目指しており、以下の経営目標を掲げています。

* ROE(自己資本利益率):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は業容拡大のため、実演販売・商品提案力の強化、商事営業本部の拡大、アフターサービス体制の充実に取り組んでいます。特にコンシューマー向け販路の拡大や、海外メーカーとの関係を活かしたOEM供給による新規取引先の開拓に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は現場密着型の提案(実演)営業を主体としているため、優秀な人材の確保と育成を永続的な発展に欠かせない要件と認識しています。変化の激しい労働市場に対応するため、女性、外国人、障がい者、再雇用者など多様な人材の確保に積極的かつ継続的に取り組む方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.8歳 13.4年 5,973,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(0.4%)、男性の育休取得率(16.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界の経済状況


環境クリーニング機器の需要は、製造業の設備投資動向やビルメンテナンス業界の業績に影響を受けます。景気後退による設備投資意欲の低下や、ビルメンテナンス業界での価格競争激化が、同社の商品販売や利益率に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レートの変動


取扱商品の約76%が欧米や中国メーカーからの輸入品であり、仕入代金は全て外貨建て(主に米ドル、ユーロ)で支払っています。為替予約等でリスクヘッジを行っていますが、円安(外貨高)は仕入コストを押し上げ、利益率を低下させる要因となります。

(3) 商品開発力


他社にない優れた商品の開発や、価格競争力のある仕入先の開拓が業績拡大の鍵となります。市場ニーズを捉えきれず、機能や価格面で魅力ある新商品を継続的に投入できない場合、将来の成長と収益性が低下する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。