ジェコス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジェコス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のジェコスは、JFEグループに属し、建設仮設材の賃貸・販売や工事を行う重仮設事業を主力としています。直近の決算では、建設コストの上昇や低採算物件の抑制などにより、売上高は前期比13.0%減の減収となりましたが、価格適正化等の効果により営業利益は9.7%増の増益を確保しています。


※本記事は、ジェコス株式会社 の有価証券報告書(第58期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジェコスってどんな会社?


ジェコスは、JFEグループの中核企業として、建設現場に不可欠なH形鋼や鋼矢板などの「重仮設材」の賃貸・販売を行う業界のリーディングカンパニーです。

(1) 会社概要


1968年、建設工事用仮設鋼材の賃貸・販売を目的に設立されました。1994年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1996年には同第一部へ指定替えとなりました。2004年に現在の商号であるジェコスへ変更。2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行し、2024年にはみずほリースと資本業務提携契約を締結しました。

同社グループは連結従業員1,379名、単体757名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は鉄鋼製品の製造・販売を行うJFEスチールであり、第2位株主はリース・ファイナンス事業を展開するみずほリースです。同社はJFEホールディングス、JFEスチールおよびみずほリースの関連会社に位置付けられています。

氏名 持株比率
JFEスチール 27.58%
みずほリース 20.00%
JFE商事 8.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は野房喜幸氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
野房 喜幸 代表取締役社長 JFEスチールにて常務執行役員、専務執行役員などを歴任。2021年4月に同社顧問に就任し、同年6月より現職。
田村 挙勝 代表取締役 1990年同社入社。大阪営業本部第2営業部長、工事本部東京工事部長、常務執行役員などを経て、2024年6月より現職。
石澤 毅 取締役 JFEスチールにて建材技術部長などを務めた後、2020年に同社執行役員に就任。現在はジェコス設計代表取締役社長も兼務。


社外取締役は、佐藤健介(みずほリース常務執行役員)、浅野幹雄(元豊田通商代表取締役副社長)、村田恒子(元パナソニック理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、「重仮設事業」および「建設機械事業」を展開しています。

(1) 重仮設事業


H形鋼、鋼矢板、鋼製山留、覆工板などの建設仮設材の賃貸・販売に加え、仮設工事の設計・施工を行っています。建設現場における掘削工事等の基礎となる部分を支える製品・サービスを提供しており、建設会社等を主要な顧客としています。

収益は、建設会社等からの仮設材の賃貸料、販売代金、および工事代金等が主な源泉です。運営は主にジェコスが行うほか、株式会社オトワコーエイが仮設工事や基礎杭工事等を、GECOSS VIETNAM CO., LTD.がベトナムでの事業を担当しています。

(2) 建設機械事業


建設現場で使用される高所作業車などの建設用機械の賃貸を行っています。重仮設事業と情報を共有し、連携営業を行うことでシナジー効果の創出を図っています。

収益は、建設会社等から受け取る建設用機械の賃貸料が中心です。運営は主に連結子会社のレンタルシステム株式会社が行っており、同社グループ内での連携を通じてサービスを提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1,100億円から1,200億円台で推移していましたが、当期は減収となりました。一方、経常利益は50億円から60億円台で安定的に推移しており、当期の利益率は前年を上回っています。当期純利益も堅調に推移し、安定した収益基盤を維持していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,102億円 1,140億円 1,205億円 1,282億円 1,116億円
経常利益 65億円 52億円 49億円 66億円 68億円
利益率(%) 5.9% 4.6% 4.1% 5.2% 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 46億円 33億円 36億円 45億円 49億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上原価の低減が進んだことで売上総利益および売上総利益率は向上しました。営業利益率も改善しており、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,282億円 1,116億円
売上総利益 221億円 233億円
売上総利益率(%) 17.2% 20.9%
営業利益 62億円 69億円
営業利益率(%) 4.9% 6.1%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が88億円(構成比53%)、給与諸手当が64億円(同39%)を占めています。

(3) セグメント収益


重仮設事業は、低採算物件の受注抑制等により売上高は減少しましたが、価格適正化等の効果で増益となりました。建設機械事業は、資産構成の見直しによりリース品の収益は改善しましたが、中古資産販売の減少等により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
重仮設事業 1,146億円 982億円 63億円 66億円 6.8%
建設機械事業 136億円 134億円 4億円 3億円 2.4%
連結(合計) 1,282億円 1,116億円 66億円 68億円 6.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金で投資や借入返済を行っている「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 21億円 88億円
投資CF -48億円 -33億円
財務CF -9億円 -36億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「安心、安全な社会の建設への貢献」というコンセプトを掲げています。この理念のもと、鋼材をリースし再利用するという事業モデルを通じて、SDGsに合致した持続可能な社会の実現や、災害復旧・国土強靭化への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、安全と健康の確保を最優先とし、性別を問わず活躍の場を用意して働きがいの向上に資する施策を推進しています。また、持続可能な社会の実現に向け、再生可能エネルギーやゼロカーボン投資に関連する案件に取り組むなど、社会との協調を重視する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は2025年から2027年までの中期経営計画を策定しています。「今後の事業環境変化を見据えた成長基盤の確立と、その成長戦略を支える労働生産性向上」を基本方針とし、2028年3月期の数値目標として以下を掲げています。

* 営業利益:85億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:60億円
* ROE:8.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


重仮設事業では、適正対価の取得による収益力向上や、首都圏での施工能力向上、土木工事の受注拡大に注力します。また、鉄構加工・橋梁分野ではインフラ更新需要の取り込みを図ります。建設機械事業では、新商品や高採算商品の拡充、資産構成の見直しを進め、JFEグループやみずほリースとの連携強化により収益基盤を再構築します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出す人的資本経営を推進しています。多様な人材が能力を発揮できる場を提供し、キャリアプランに合わせた人材育成や、フレックスタイム制・在宅勤務等の柔軟な働き方の整備を進めています。また、社員の健康増進を重要な経営課題と位置づけ、健康経営にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 17.0年 7,889,811円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.5%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 61.6%
男女賃金差異(正規雇用) 61.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 53.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役職者比率(3.1%)、障がい者雇用率(3.46%)、平均年休取得率(68.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設業界への依存


同社グループの事業は建設業界の動向と密接に関わっており、民間および公共の建設投資の増減が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。建設需要の低迷やプロジェクトの延期・中止などは、業績の下振れ要因となります。

(2) 事故等による影響


建設作業所や工場での作業において、予期せぬ事故が発生した場合、納入遅延や工期の遅れ等により損失補償の責任を負う可能性があります。安全衛生管理の徹底や啓蒙活動を行っていますが、重大な事故の発生は経営成績等に悪影響を与える可能性があります。

(3) 鋼材価格等の変動


取扱商品であるH形鋼や鋼矢板等の販売価格は、市況や原材料価格の変動の影響を受けます。販売価格の低迷や鋼材価格の高騰に対し、コスト削減や価格転嫁等の対策が進まなかった場合、収益性が低下するリスクがあります。

(4) 金利変動の影響


事業活動に必要な資金の一部を金融機関からの借入金で調達しているため、市場金利が上昇した場合には支払利息が増加し、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。