大水 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大水 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する、水産物卸売業を主力とする企業です。当連結会計年度の売上高は993億円(前期比0.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は11.9億円(前期比17.8%増)となり、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社大水 の有価証券報告書(第90期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大水ってどんな会社?


水産物卸売業を中核事業とし、中央卸売市場を拠点に関西圏の食卓を支える老舗企業グループです。

(1) 会社概要


1939年に大阪冷凍海老として設立され、1947年に大阪水産物へ、1948年に現商号である大水へと変更しました。大阪府や大阪市から水産物卸売人の許可を受け事業基盤を確立し、1997年に大阪証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、神戸海産物、京都魚市場などの吸収合併や子会社化を通じて拠点を拡大し、2013年には東京証券取引所市場第二部へ上場しました。現在は東証スタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は434名、単体では320名です。筆頭株主は事業会社であるニッスイで、第2位は同じく水産関連企業の極洋、第3位は金融機関の農林中央金庫となっており、業界大手や金融機関が安定的に株式を保有しています。

氏名 持株比率
ニッスイ 31.75%
極洋 8.70%
農林中央金庫 5.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性0名の計11名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は山橋英一郎氏です。社外取締役比率は18.2%です。

氏名 役職 主な経歴
山橋 英一郎 取締役社長(代表取締役) 日本水産(現ニッスイ)入社後、執行役員業務用食品部長などを歴任。2016年に大水取締役常務執行役員に就任し、2019年より現職。
湯上 信元 取締役営業部門統括兼海外販売部長 日本水産(現ニッスイ)入社。同社関西水産営業部長を経て、2009年に大水入社。営業本部長などを務め、2025年より現職。
児島 實 取締役大阪本場支社長 京都魚市場入社。大水大阪本場支社鮮魚1部長、常務執行役員大阪鮮魚統括などを経て、2025年より現職。
金岡 正倍 取締役神戸支社長兼神戸東部支社長 神戸海産物入社。大水執行役員大阪本場支社鮮魚3部長などを経て、2024年より現職。
三谷 拓己 取締役経営企画室担当 日本水産(現ニッスイ)入社。同社執行役員関西支社長などを経て、2025年より現職。
西山 康成 取締役管理部門統括兼経営管理部長 大水入社。管理本部経理部長、執行役員管理本部副本部長などを経て、2025年より現職。


社外取締役は、松葉知幸(弁護士・消費者ネット関西理事長)、谷内満(ニッスイ執行役員関西支社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「水産物販売事業」および「冷蔵倉庫等事業」を展開しています。

水産物販売事業


大阪・京都・神戸の中央卸売市場や大分県内の地方卸売市場を主な拠点として、鮮魚・冷凍魚・塩干加工品などの水産物全般を取り扱っています。国内外の産地から集荷した水産物を、市場内外の卸売会社、量販店、食品メーカーなどへ販売し、関西圏を中心とした消費地へ安定供給する役割を担っています。

主な収益源は、顧客への水産物販売に伴う売上代金です。運営は、同社および子会社の京都興産、丸魚食品、大分水産、別府魚市が行っています。市場営業部門における鮮魚や塩冷商品の販売に加え、市場外営業部門では量販店向け販売や海外輸出なども手掛けています。

冷蔵倉庫等事業


市場内および市場外流通の拠点として冷蔵倉庫を運営し、水産物販売事業における商品の保管・管理を行っています。適切な温度管理により生鮮品の品質を維持し、安定供給を支える物流機能としての役割を果たしています。

収益は、寄託者からの保管料や荷受作業料などから得ています。運営は、子会社の大阪東部冷蔵が行っています。同社グループの水産物販売事業における流通機能を補完する重要なインフラとなっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は900億円台後半から1,100億円超の水準で推移しており、直近では微増傾向にあります。利益面では、2022年3月期に一時的な赤字を計上しましたが、その後は回復し、経常利益および当期純利益ともに増加基調にあります。特に直近2期は利益率も改善傾向を示しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,142億円 888億円 985億円 985億円 993億円
経常利益 0.5億円 -1.2億円 6.0億円 10.0億円 8.2億円
利益率(%) 0.0% -0.1% 0.6% 1.0% 0.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 6.4億円 -0.5億円 5.2億円 8.8億円 10.9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微増しましたが、売上原価も同様に増加しており、売上総利益は微減となりました。また、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益は前期を下回っています。売上高営業利益率は依然として低い水準で推移しており、コストコントロールが課題となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 985億円 993億円
売上総利益 67億円 66億円
売上総利益率(%) 6.8% 6.7%
営業利益 8.3億円 6.8億円
営業利益率(%) 0.8% 0.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当・賞与が30億円(構成比51%)、市場使用料が5億円(同9%)を占めています。売上原価においては、商品仕入高が大半を占めています。

(3) セグメント収益


主力の水産物販売事業は、単価高の影響や冷凍スリミの販売好調により増収となりましたが、人件費等の固定費増加により減益となりました。冷蔵倉庫等事業は、保管料収入の減少により減収となり、電気料金や人件費の増加が響き減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
水産物販売事業 982億円 991億円 9.4億円 8.3億円 0.8%
冷蔵倉庫等事業 2.3億円 2.2億円 0.2億円 0.1億円 3.2%
調整額 - - -1.4億円 -1.6億円 -
連結(合計) 985億円 993億円 8.3億円 6.8億円 0.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 27億円 -11億円
投資CF 2億円 -3億円
財務CF -13億円 0.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.1%で市場平均をわずかに下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「自然の恵みに感謝し、古(いにしえ)からの食文化を守り、新たな食の創造に挑戦していきます」という企業理念を掲げています。水産資源の持続的利用と地球環境保全への思い、伝統ある食文化や卸売市場の役割を支える意志、そして環境変化を先取りし人々の健康と幸福に貢献する姿勢を示しています。

(2) 企業文化


水産物流通の担い手としての誇りを持ち、人々の健康と幸福に貢献することを基本としています。企業も社員も常に質の向上と変革を目指し、働きがいのある企業創りを推進する文化があります。また、関西を基盤としつつ世界を視野に入れた活動を行い、ステークホルダーからの信頼を高めることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


2030年度のあるべき姿として「活き活きと水産物の価値をお客様に提供し続ける企業」を掲げています。その実現に向けた中期経営計画(2023年度~2025年度)の最終年度となる2025年度の数値目標は以下の通りです。

* 売上高:1,040億円
* 営業利益:6.9億円
* 経常利益:7.9億円

(4) 成長戦略と重点施策


関西での確固たる基盤を維持しつつ、世界の水産市場をターゲットとした販売拡大を目指しています。また、生産性向上によるローコスト運営体制の構築や、新人事賃金制度の運用定着による組織風土の改革を進めています。さらに、物流体制の見直しと効率化を推進するため「物流企画部」を設置し、生産者や運送事業者との連携強化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のために、人材確保と育成、多様な人材の活用を推進しています。新卒・キャリア採用に加え、定年後の再雇用や外国籍人材の登用も積極的に行っています。また、階層別研修や自己啓発支援などの教育体制を充実させるとともに、安全衛生の徹底や健康経営の推進、ハラスメント防止対策などを通じて、働きがいのある職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.7歳 19.4年 6,665,893円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.5%
男性育児休業取得率 20.0%
男女賃金差異(全労働者) 80.8%
男女賃金差異(正規) 76.9%
男女賃金差異(非正規) 83.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役職者比率(9.3%)、年次有給休暇取得日数(8.4日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制について


卸売市場法に基づく水産物卸売業者として活動しているため、同法や関連法令への抵触による業務停止処分等は、経営に多大な影響を与える可能性があります。法令遵守の徹底や検査対応、環境変化に対応できる体制構築に取り組んでいます。

(2) 市況変動等について


主力事業である水産物販売は、天候や自然災害、資源保護による漁獲制限などの影響を受けやすく、入荷量や価格が変動するリスクがあります。適時適切な在庫確保や産地との関係強化により、安定集荷体制の構築に努めています。

(3) 食品の安全性について


食品を取り扱う企業として、品質管理や衛生管理の不備、食品情報の伝達ミスなどは、回収・廃棄費用や社会的信頼の低下を招くリスクがあります。品質管理委員会の設置やHACCPに沿った衛生管理の徹底により、安全性の確保を図っています。

(4) 基幹システムについて


業務の中核を担う基幹システムにおいて、自然災害やサイバー攻撃等によるシステム障害が発生した場合、業務停止や取引先へのサービス支障が生じる可能性があります。データセンターでの管理やシステムの冗長化、セキュリティ対策等によりリスク低減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。