※本記事は、株式会社大水の有価証券報告書(第91期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大水ってどんな会社?
関西を拠点に水産物の卸売を展開し、豊かな食文化と安全な食品流通を支える企業です。
■(1) 会社概要
1939年に大阪冷凍海老として設立され、1948年に大水へ商号変更しました。1997年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、その後東京証券取引所市場第二部を経て現在のスタンダード市場へ移行しています。2013年に大分水産が事業を開始し、2022年に別府魚市を子会社化するなど事業を拡大しています。
現在の従業員数は連結で438名、単体で325名です。筆頭株主は事業会社であり主要な仕入先でもあるニッスイで、第2位も同じく取引先の事業会社である極洋、第3位は金融機関の農林中央金庫となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ニッスイ | 31.59% |
| 極洋 | 8.66% |
| 農林中央金庫 | 5.09% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長執行役員は山橋英一郎氏が務めています。取締役7名のうち、社外取締役の比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山橋英一郎 | 取締役社長(代表取締役) | 日本水産入社、同社執行役員業務用食品部長などを経て、2025年より現職。 |
| 湯上信元 | 取締役営業部門統括兼海外販売部長 | 日本水産入社、同社関西水産営業部長や大分水産取締役などを経て、2026年より現職。 |
| 金岡正倍 | 取締役市場営業担当兼大阪本場支社長 | 神戸海産物入社、大水大阪本場支社鮮魚3部長などを経て、2026年より現職。 |
| 三谷拓己 | 取締役経営企画室・物流企画部担当 | 日本水産入社、同社執行役員関西支社長や大水社外取締役などを経て、2026年より現職。 |
| 西山康成 | 取締役管理部門統括 | 大水入社、同社管理本部経理部長や管理本部副本部長などを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、松葉知幸(元大阪弁護士会会長)、谷内満(ニッスイ執行役員関西支社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「水産物販売事業」および「冷蔵倉庫等事業」を展開しています。
■水産物販売事業
中央卸売市場および地方卸売市場などにおいて、鮮魚や塩干物、冷凍魚など多岐にわたる水産物の販売を行っています。全国の産地から商品を調達し、市場内外の卸売会社、量販店、食品メーカーなど幅広い顧客へ提供しています。
市場での水産物販売や、海外への輸出、加工メーカー向けの販売などから売上を得ています。運営は同社のほか、子会社である京都興産、丸魚食品、大分水産、別府魚市が行っています。
■冷蔵倉庫等事業
市場内および市場外流通の拠点として、水産物などの生鮮食料品を保管するための冷蔵倉庫を運営しています。水産物販売にかかる流通機能を補完し、商品の品質維持や安定供給に貢献しています。
顧客の物品を一定期間保管することによる保管料収入が主な収益源です。運営は主に子会社である大阪東部冷蔵が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は888億円規模から順調に拡大し、直近では1,058億円に達しています。経常利益は一時的に赤字となった時期もありましたが、その後は黒字転換を果たし、安定的に利益を計上する傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 888億円 | 985億円 | 985億円 | 993億円 | 1,058億円 |
| 経常利益 | -1.2億円 | 6億円 | 10億円 | 8億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | -0.1% | 0.6% | 1.0% | 0.8% | 1.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.5億円 | 5億円 | 9億円 | 11億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高および売上総利益ともに増加しています。利益率の変動は小幅にとどまっており、各種コストの上昇を吸収しながら着実な増益基調を維持していることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 993億円 | 1,058億円 |
| 売上総利益 | 66億円 | 71億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.7% | 6.7% |
| 営業利益 | 7億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 0.7% | 0.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当・賞与が31億円(構成比49%)、市場使用料が5億円(同9%)を占めています。売上原価は986億円となり、売上高に対する構成比は93%です。
■(3) セグメント収益
主力の水産物販売事業は、漁獲量の減少が見られたものの、販売単価の上昇などにより増収となりました。冷蔵倉庫等事業についても、保管料収入の増加により売上高が伸びています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 水産物販売事業 | 991億円 | 1,055億円 |
| 冷蔵倉庫等事業 | 2.2億円 | 2.3億円 |
| 連結(合計) | 993億円 | 1,058億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがマイナス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、本業は赤字または資金流出超過ですが、将来成長のため借入で投資を継続する勝負型の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -11億円 | -11億円 |
| 投資CF | -3億円 | -3億円 |
| 財務CF | 0.1億円 | 10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.3%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「自然の恵みに感謝し、古(いにしえ)からの食文化を守り、新たな食の創造に挑戦していきます」という企業理念を掲げています。水産資源の持続的利用や地球環境の保全に配慮しながら日本の食文化を支え、環境変化を先取りして人々の健康と幸福に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
経営理念において、「水産物流通の担い手として誇りを持ち」「社員全員が働きがいの持てる企業を創る」ことを行動の指針としています。組織や社員が常に質の向上を目指して変革を推進し、ステークホルダーからの期待に応えることで社会的信頼を高める文化を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
成長性と収益性を確保する観点から、売上高、営業利益、経常利益を重要な経営指標に位置づけています。新たな中期経営計画の策定を進めており、具体的な数値目標を設定しています。
・売上高1,060億円
・営業利益8億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「前を向き、スピードをもって構造改革を進める」を基本方針として掲げ、将来を見据えた事業基盤の強化に取り組んでいます。組織的な調達力・営業力の強化を重点課題とし、取引先との連携強化による付加価値の高い提案型営業を推進しています。また、物流機能の効率化やITツールの導入による生産性向上も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
変化する事業環境に対応し、顧客視点での提案型営業を推進するため、専門性と課題解決力を備えた人材の育成に注力しています。また、従業員の挑戦や成果を適正に評価する人事賃金制度の運用や、多様な経験を持つ人材が長期にわたり活躍できる環境整備を通じて、組織力の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.4歳 | 20.1年 | 6,688,810円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.6% |
| 男性育児休業取得率 | 16.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 63.9% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性役職者比率(9.6%)、年次有給休暇取得日数(8.4日)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 水産物の市況変動
天候の影響による漁獲量の増減や海洋環境の変化、政策的な輸出入の制限などにより、水産物の入荷量や市況が日々変動するリスクがあります。これに対応するため、適正な在庫の確保や産地との関係強化による安定的な集荷体制の構築に努めています。
■(2) 食品の安全性確保
食品を取り扱う上で、品質や衛生管理の不備によるリスクが内在しています。万一問題が発生した場合、商品の回収や社会的信用の低下を招く恐れがあるため、品質管理委員会の設置やHACCPに沿った衛生管理基準の順守を徹底しています。
■(3) 物流環境の変化とコスト上昇
物流業務の一部を外部委託しているなか、トラックドライバーの労働時間規制の強化や人手不足の深刻化により、輸送手段の確保や物流コストが上昇するリスクがあります。物流企画部を中心に事業者との連携を深め、物流の安定化に取り組んでいます。



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