#ヤギ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、ヤギの有価証券報告書(第114期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヤギってどんな会社?
各種繊維製品の売買や輸出入を主たる業務としてグローバルに展開する専門商社です。
■(1) 会社概要
1893年に大阪で綿糸商として創業しました。1918年に八木商店を設立し、1989年にヤギへと商号変更しています。1995年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2022年の市場区分見直しにより東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。近年はツバメタオルの子会社化などM&Aも推進しています。
従業員数は連結で799名、単体で271名です。筆頭株主は同社の関連団体であるヤギ共栄会で、第2位は創業家で代表を務める八木隆夫氏、第3位はみずほ銀行などの金融機関が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ヤギ共栄会 | 11.23% |
| 八木隆夫 | 5.05% |
| みずほ銀行 | 4.96% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は八木隆夫氏が務めています。社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 八木隆夫 | 代表取締役社長執行役員 | 1999年にインドネシア石油(現INPEX)へ入社。2011年に同社へ入社し、経営企画室長代理や管理部門長などを経て、2016年より現職。 |
| 山岡一朗 | 取締役専務執行役員 | 1991年に同社へ入社。営業第二本部第三事業部長や営業第三部門長などを歴任し、2024年にコーポレート本部長、2026年より現職。 |
| 三橋大作 | 取締役常務執行役員アパレル第二本部長兼リテール本部長兼事業支援本部長 | 1995年に同社へ入社。営業第二部門第三事業部長やブランド・リテール本部長などを経て、2026年より現職。 |
| 藤本貴史 | 取締役常務執行役員アパレル第一本部長 | 1993年に同社へ入社。営業第二本部第一事業部長やアパレル本部長などを歴任し、2025年より現職。 |
| 八木靖之 | 取締役上席執行役員 | 1998年にキヤノンへ入社。2018年に同社へ入社し、管理本部長やライフスタイル本部長などを経て、2026年より現職。 |
| 長戸隆之 | 取締役上席執行役員グローバルマテリアル本部長 | 1988年に同社へ入社。経営企画本部長やイノベーション開発室長などを歴任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、玉巻裕章(元伊藤忠商事執行役員)、池田佳史(弁護士)、小山茂和(元日本長期信用銀行仙台支店長)、栗山由美(元ソニー)です。
2. 事業内容
同社グループは、マテリアル事業、ライフスタイル事業、アパレル事業、ブランド・リテール事業、不動産事業を展開しています。
■マテリアル事業
原料となる糸およびテキスタイル(生地)の製造と販売を行っています。国内外の衣料品メーカーやアパレル企業などを主な顧客とし、強みであるオーガニックコットンをはじめとする環境に配慮した幅広い素材を供給しています。
顧客への糸や生地の販売代金から収益を得ています。運営は同社のほか、イチメンや山弥織物などの子会社が行っています。
■ライフスタイル事業
生活資材や寝装品、生活雑貨の製造販売を行っています。化粧雑貨市場に向けたパフ関連商品や、高品質なタオル製品などを展開し、一般消費者や小売店に対して製品を提供しています。
消費者や小売店への製品販売代金から収益を得ています。パフの製造販売は日本パフが、タオル製品の製造販売はツバメタオルなどの子会社が運営しています。
■アパレル事業
繊維二次製品のOEM(受託製造)およびODM(企画からの受託製造)事業を展開しています。アパレルブランドやセレクトショップ向けに、高機能・高付加価値な商材を中心に製品の企画から生産までを担っています。
委託元企業からの製品の製造・納入代金から収益を得ています。運営は同社を中心に、海外の生産管理拠点となる子会社と連携して行っています。
■ブランド・リテール事業
自社ブランドの製品を卸売りおよび小売店舗で販売しています。実店舗の運営に加えて、SNSやインフルエンサーを活用したプロモーションを展開し、一般消費者に向けたブランドの認知度向上と販売拡大を図っています。
店舗やオンラインショップでの製品販売代金から収益を得ています。運営はWEAVAなどの子会社が主体となって行っています。
■不動産事業
所有する不動産の有効活用を目的として、賃貸事業を展開しています。オフィスビルや住宅、駐車場などの施設を保有し、法人や個人のテナントに対して賃貸スペースを提供しています。
テナントからの賃貸料や管理費などから収益を得ています。運営はマルスなどの子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は800億円前後で安定して推移しており、当期は859億円を計上しました。経常利益は継続的な増益基調にあり、当期は48億円と直近5年間で最高益を記録しています。利益率も順調に改善しており、収益力の向上が見られます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 775億円 | 864億円 | 828億円 | 834億円 | 859億円 |
| 経常利益 | 14億円 | 20億円 | 32億円 | 38億円 | 48億円 |
| 利益率(%) | 1.8% | 2.3% | 3.9% | 4.5% | 5.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2億円 | -1億円 | 13億円 | 26億円 | 37億円 |
■(2) 損益計算書
当期の売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率および営業利益率も前期を上回っており、コスト上昇の環境下においても付加価値の向上や価格転嫁が適切に進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 834億円 | 859億円 |
| 売上総利益 | 242億円 | 272億円 |
| 売上総利益率(%) | 29.0% | 31.7% |
| 営業利益 | 36億円 | 42億円 |
| 営業利益率(%) | 4.3% | 4.9% |
販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が65億円(構成比28%)、従業員給与が37億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期はアパレル事業が機能性素材へのニーズ拡大等により主力として業績を牽引しました。また、ブランド・リテール事業が増収に伴い大きく成長しています。一方で、マテリアル事業は市場環境の停滞や価格競争の影響により減収となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| マテリアル事業 | 247億円 | 237億円 |
| ライフスタイル事業 | 47億円 | 49億円 |
| アパレル事業 | 426億円 | 434億円 |
| ブランド・リテール事業 | 107億円 | 133億円 |
| 不動産事業 | 6億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 834億円 | 859億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 46億円 | 44億円 |
| 投資CF | -34億円 | -36億円 |
| 財務CF | 4億円 | -30億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も56.6%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、創業以来の社是である「終始一誠意」を規範とし、新しい経営理念として「Business to Belief」を掲げています。この理念のもと、単なる商取引の枠を超え、その先にある思想や信念を軸に新たな価値を創るビジネスのあり方を進化させることで、企業価値の向上と社会貢献の同時追求を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「終始一誠意」という社是を行動の原点としており、あらゆるステークホルダーとの公正な関係構築を重視しています。また、多様性こそが商社の競争力の源泉であると捉え、ダイバーシティ&インクルージョンの実現と、社員同士が互いを讃え合う文化風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は「中期経営計画2029」を策定し、業界内で独自のポジションを確立することで「持続可能な競争優位の確立」を目指しています。具体的な数値目標として、最終年度における以下の達成を掲げています。
* 売上高960億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、マテリアル事業およびアパレル事業を「収益事業」、ブランドおよびリテール事業を「成長事業」と定義し、収益事業で得た利益を成長事業へ戦略的に再配分することで事業ポートフォリオの変革を図ります。また、各セグメントを有機的に繋ぐ独自の循環型価値創造モデルを推進し、持続的な高収益構造への転換を加速させます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、自らの仕事を「意味ある仕事」として再定義し、新しい価値づくりの起点として社会に貢献できる「自律型人材」の育成を人材戦略の中核に据えています。ハイパフォーマーの行動特性を分析し、採用・育成・配置・評価へ一気通貫したタレントマネジメントを展開することで、長期的な競争優位性の確保を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.7歳 | 14.3年 | 9,002,299円 |
※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.1% |
| 男性育休取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 57.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 65.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 54.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 環境・社会・人権に関するリスク
事業活動やサプライチェーンにおいて、環境配慮の不足や労働環境などの人権侵害、衣服の廃棄問題といったサステナビリティ上の課題への対応が不十分な場合、企業イメージやブランド価値の低下を招き、ステークホルダーからの信頼喪失や取引停止に繋がる可能性があります。
■(2) レピュテーションリスク
SNSやマスメディアを通じて同社グループに関する誤報や風評が急速に拡散された場合や、ESG・ガバナンスに関連する取り組みへの誤解や批判が生じた場合、ブランド価値が毀損され、営業活動や採用活動、株価等に多大な影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 法令・規制に違反するリスク
国内外で様々な活動を展開する中で、下請法や関税法、知的財産関連法、労働基準法などの関連法令や規制に違反する事態が発生した場合、事業活動に制限を受け、社会的信用の大幅な低下を招くことで、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 情報システム及び情報セキュリティに関するリスク
標的型攻撃やマルウェア感染などの外部からのサイバー攻撃、内部不正による機密情報の持ち出し、生成AIの不適切利用による情報漏洩などが発生した場合、業務の停止や効率性の低下を招き、被害の規模によっては業績に影響を及ぼす可能性があります。



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