ヤギ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ヤギ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する繊維専門商社。創業130年以上の歴史を持ち、マテリアルやアパレル、ブランド・リテール事業などを展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高834億円(前期比増)、当期利益18億円(前期比増)で増収増益となりました。


※本記事は、株式会社ヤギ の有価証券報告書(第113期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ヤギってどんな会社?


創業130年を超える老舗の繊維専門商社です。原料から製品まで幅広く扱い、グローバル展開を推進しています。

(1) 会社概要


1893年に大阪で綿糸商として創業し、1918年に株式会社八木商店を設立しました。1995年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2013年には東京証券取引所市場第二部に上場しました。その後、2022年の東京証券取引所の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しています。

同社グループの従業員数は連結で768名、単体で268名です。株主構成については、筆頭株主はヤギ共栄会で、第2位は個人株主、第3位はみずほ銀行となっています。

氏名 持株比率
ヤギ共栄会 10.98%
清原 達郎 7.79%
みずほ銀行 4.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名、計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長執行役員は八木隆夫氏が務めています。社外取締役比率は36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
八木 隆夫 代表取締役社長執行役員 1999年インドネシア石油(現INPEX)入社。2011年ヤギ入社。経営企画、人事、情報システム、法務等の管理部門を担当し、2015年常務取締役を経て、2021年4月より現職。
山岡 一朗 取締役専務執行役員コーポレート本部長 1991年入社。営業第二本部の各事業部長や部門長を歴任。常務取締役営業第二本部長、マテリアル・アパレルセグメント統括などを経て、2024年4月より現職。
三橋 大作 取締役常務執行役員ブランド・リテール本部長兼 アパレル第二本部長 1995年入社。営業部門の事業部長を歴任し、2020年執行役員。アパレル事業本部長などを経て、2025年4月より現職。
藤本 貴史 取締役常務執行役員アパレル第一本部長 1993年入社。営業部門の事業部長を歴任し、2020年執行役員。アパレル事業本部長などを経て、2025年4月より現職。
八木 靖之 取締役上席執行役員ライフスタイル本部長 1998年キヤノン入社。2018年ヤギ入社。経営企画本部長代理、管理本部長などを経て、2024年4月より現職。
長戸 隆之 取締役上席執行役員グローバルマテリアル  本部長兼株式会社ヴィオレッタ 代表取締役社長(現任) 1988年入社。営業部門長や経営企画本部長、イノベーション開発室長を歴任。ヴィオレッタ代表取締役社長を経て、2025年6月より現職。
山本 浩志 取締役(監査等委員) 1985年入社。営業事業部長や物流部長、総務部長などを歴任。執行役員管理本部総務部長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、玉巻裕章(元伊藤忠商事執行役員)、池田佳史(弁護士法人栄光代表社員)、小山茂和(元ベネフィット・ワン常務取締役)、栗山由美(元東京化成工業CMO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「マテリアル事業」、「ライフスタイル事業」、「アパレル事業」、「ブランド・リテール事業」、「不動産事業」を展開しています。

**(1) マテリアル事業**
原料(糸)およびテキスタイル(生地)の製造販売を行っています。合繊メーカーや生地メーカー、アパレルメーカーなどを主な顧客とし、国内外で事業を展開しています。

収益は、顧客への製品販売による対価として得ています。運営は主にヤギ、ヴィオレッタ、イチメン、山弥織物などが担当しています。

**(2) ライフスタイル事業**
生活資材、寝装品、生活雑貨などの製造販売を行っています。幅広い生活関連製品を取り扱い、多様なニーズに対応しています。

収益は、製品の販売代金です。運営は主にヤギ、日本パフ、ツバメタオルなどが担当しています。

**(3) アパレル事業**
繊維二次製品のOEM(相手先ブランド製造)およびODM(設計・製造)事業を行っています。アパレルメーカーやセレクトショップ等を顧客とし、製品の企画から生産までを手掛けています。

収益は、製品の納入による売上です。運営は主にヤギ、SOMIC、YAGI VIETNAM COMPANY LIMITEDなどが担当しています。

**(4) ブランド・リテール事業**
自社ブランドの卸売および小売事業を展開しています。独自のブランド価値を構築し、消費者へ直接的または間接的に製品を提供しています。

収益は、卸売による販売代金および小売店舗での製品販売収入です。運営は主にヤギ、WEAVA、TATRAS S.R.L.などが担当しています。

**(5) 不動産事業**
所有する不動産の賃貸事業を行っています。オフィスビルやマンションなどの賃貸を通じて、安定的な収益確保を目指しています。

収益は、テナントからの賃貸料収入です。運営は主にヤギ、マルスが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は800億円台で安定的に推移しており、直近では微増傾向にあります。利益面では、過去には赤字の期も見られましたが、直近2期においては経常利益率が4%前後に改善し、当期純利益も黒字を維持するなど、収益性の向上が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,142億円 775億円 864億円 828億円 834億円
経常利益 23億円 14億円 20億円 32億円 38億円
利益率(%) 2.0% 1.8% 2.3% 3.9% 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 -2億円 -1億円 13億円 18億円

(2) 損益計算書


売上高は微増ながら、売上総利益が増加したことで売上総利益率が改善傾向にあります。営業利益も増加しており、本業の収益性が高まっています。コストコントロールと利益率の高い事業へのシフトが進んでいることが窺えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 828億円 834億円
売上総利益 220億円 242億円
売上総利益率(%) 26.5% 29.0%
営業利益 32億円 36億円
営業利益率(%) 3.8% 4.3%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が57億円(構成比28%)、従業員給与が35億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


マテリアル事業とライフスタイル事業は減収となりましたが、アパレル事業、ブランド・リテール事業、不動産事業は増収となりました。特にブランド・リテール事業は2桁増収と好調です。全体としてはアパレル事業の増収などが寄与し、連結売上高は微増となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
MaterialSegment 237億円 221億円
LifestyleSegment 81億円 73億円
ApparelSegment 411億円 426億円
BrandRetailSegment 93億円 107億円
RealEstateSegment 6億円 6億円
連結(合計) 828億円 834億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 21億円 46億円
投資CF -14億円 -34億円
財務CF -21億円 4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は創業以来の社是である「終始一誠意」を規範としています。時代と社会の変化に機敏に対応しつつ、新しい価値の創造とグローバルな挑戦を行い、人々の生活に喜びを与え、豊かな社会に貢献していくことを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社グループは、多様性こそが商社の競争力の源泉と捉えています。「VISION」に掲げる互いを讃え合う文化風土の醸成を継続し、全ての従業員が公平かつ平等な待遇を受けられる環境づくりに取り組んでいます。また、自らチャレンジできる環境整備を重視し、フラットな組織風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を最終年度とする中期経営計画「Heritage to the future」を推進しています。経営の効率性を高めながら新しい価値を創造するリーディングカンパニーを目指し、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:900億円
* 営業利益:36億円
* 経常利益:38億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:26.5億円

(4) 成長戦略と重点施策


「事業」「グローバル」「グループ経営」「人材」「ESG」の5つを基本戦略としています。事業戦略ではセグメントの収益力強化とポートフォリオの選択と集中を進め、グローバル戦略ではサステナブル・ブランド・デジタルの3視点で展開します。また、DX基盤の構築やCSV経営の実践にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材の質と量を中長期的に維持・向上させるため、人事制度の刷新や教育・研修プログラムの充実を図っています。また、多様な人材の確保と定着を目指し、キャリア採用の拡大や働きやすい環境整備を推進しています。健康経営の実践やダイバーシティ&インクルージョンの実現にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.8歳 14.5年 8,487,076円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.7%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 57.4%
男女賃金差異(正規雇用) 65.3%
男女賃金差異(非正規) 58.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェックにおけるワークエンゲージメント指標(49.6pt)、サーキュラーエコノミーに関する取り組み件数(3件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 環境・社会及び企業イメージに関するリスク

サステナビリティ経営への対応不足によりステークホルダーが離反し、株価やブランド力が低下する可能性があります。また、CSR関連の人権問題やコンプライアンス違反が発生した場合、不買運動や取引停止等に発展し、経営成績に影響を及ぼす恐れがあります。

(2) 法令遵守及びコンプライアンスリスク

国内外での事業展開において、関税法や品質表示法、人権関連法令等の違反が発生、あるいは看過されるリスクがあります。ハラスメント行為や不正取引等は企業イメージの棄損に直結し、経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティ及び個人情報管理リスク

サイバー攻撃や内部不正による機密データ・個人情報の漏洩、システム停止等は、業務の停滞や社会的信用の低下を招く恐れがあります。これに伴う損害賠償責任の発生などが、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。