アドヴァン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アドヴァン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するアドヴァングループは、建築用仕上材や住宅設備機器の輸入販売を主に展開する企業です。直近の業績は、仕入コストの上昇や工期遅延の影響により減収と営業減益になった一方、円安進行に伴う為替予約評価益の計上により経常利益は大幅な増益を記録しています。


※本記事は、株式会社アドヴァングループの有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アドヴァングループってどんな会社?


同社は世界中の建築用仕上材や住宅設備機器を輸入し、国内の建設業界へ直接販売する総合建材メーカーです。

(1) 会社概要


1975年に輸入セラミックタイルの販売を目的として設立され、1995年に株式を店頭登録しました。2000年には東京証券取引所市場第一部に上場し、2021年にアドヴァングループへ商号を変更しています。2024年にはユニットバス関連会社を吸収合併し、複合的な提案を可能にするなど事業領域を拡大しています。

現在、同社グループの従業員数は連結で217名、単体で114名となっています。筆頭株主は役員及びその近親者が全額出資する不二総業であり、第2位にも同様に創業者一族の関連とみられる資産管理会社が名を連ねており、安定した資本基盤を構築しています。

氏名 持株比率
不二総業 49.90%
山形兄弟 7.50%
岡秀朋 3.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は末次廣明氏が務めており、取締役の社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山形雅之助 代表取締役会長 1993年入社、取締役商品部長、代表取締役専務等を経て、2004年に代表取締役社長に就任。2019年より現職。
末次廣明 代表取締役社長 1985年入社、営業本部長、取締役副社長営業統括等を経て、2019年より現職。
山形朋道 代表取締役副社長 1995年入社、東京支店営業部部長、経理部長、物流担当等を経て、2024年より現職。
山形さとみ 専務取締役総務経理本部長 2003年入社、経営企画室長、人事採用統括等を経て、2022年より現職。


社外取締役は、森藤眞治氏(元東急建設常務執行役員)、笹枝章夫氏(元高瀬物産専務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建材関連事業」「不動産賃貸事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 建材関連事業


店舗や商業施設、住宅などで使用される床・壁用のタイルや石材などの建築用仕上材に加え、水廻り商品やシステムキッチン等の住宅設備機器を輸入販売しています。輸入商品は世界のトップメーカーと共同開発し、施主や工務店、工事会社などへ直接販売しています。

商品の販売代金や請負工事の代金を顧客から受け取るモデルです。運営は主に同社が行うほか、子会社のヤマコーが商品の一部を仕入れて工事等とともに展開し、アドヴァンテックの吸収合併によりユニットバス関連の製造・販売も手掛けています。

(2) 不動産賃貸事業


同社ビルや物流センター、社宅などの不動産物件を管理・運用し、グループ内の企業に対して賃貸しています。

対象不動産を同社やアドヴァンロジスティクスへ賃貸し、賃貸料収入を得ています。この事業の運営は、子会社であるアドヴァン管理サービスが担っています。

(3) その他事業(物流管理業)


グループで取り扱う輸入建築資材や住宅設備機器等の物流管理を行い、商品の入出庫業務や在庫管理を担当しています。

グループ内での物流業務受託に伴う手数料等を収益源としています。この事業は、子会社のアドヴァンロジスティクスが運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は減少傾向にありますが、経常利益や当期利益は為替予約の評価益など営業外収益の影響で大きく変動しています。直近では仕入コスト増等で本業の営業利益は減少したものの、円安に伴う為替予約評価益の計上により最終増益となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 203億円 185億円 170億円
経常利益 162億円 88億円 121億円
利益率(%) 79.8% 47.3% 71.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 103億円 60億円 81億円

(2) 損益計算書


直近の損益状況を見ると、減収に加え、資源高や円安の影響で仕入コストが上昇したため売上総利益率が低下しました。また、販売費及び一般管理費が高水準で推移したことにより、営業利益率も下落しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 185億円 170億円
売上総利益 74億円 66億円
売上総利益率(%) 40.0% 38.8%
営業利益 32億円 22億円
営業利益率(%) 17.3% 12.9%


販売費及び一般管理費のうち、減価償却費が10億円(構成比24%)、給料及び手当が8億円(同18%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の建材関連事業は、高水準の仕入コスト増や建設現場の技能者不足に伴う工期遅延の影響を受け、減収となりました。一方、不動産賃貸事業は賃貸契約の状況等を背景に堅調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建材関連事業 184億円 169億円
不動産賃貸事業 1億円 2億円
連結(合計) 185億円 170億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 19億円 50億円
投資CF 12億円 -32億円
財務CF -16億円 -67億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も71.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


総合メーカーとして、商品のデザイン性・機能性・コストに徹底したこだわりを持ち、お客様に満足していただける商品を提供することで社会に貢献していくことをグループ経営の基本方針としています。世界の一級品を納得価格でお届けする総合メーカーを目指しています。

(2) 企業文化


「昨日より今日、今日より明日」をモットーとし、固定概念や過去の成功体験にとらわれることなく、常に新しいチャレンジを行うことで社内に逆境を生み出し、次のステップに進んでいくことを「アドヴァンらしさ」として大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社は為替変動による為替予約評価損益が経常利益や最終利益に大きく影響するため、経営の効率や収益性を測る指標として「営業利益(率)」を重視しています。また、財務体質の強化とともに企業の経営効率を判断するうえで重要な指標となる「ROE(自己資本当期純利益率)」の向上にも一層努めていく方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


業界トップクラスのショールーム施設や最新鋭の物流センターへの継続的な設備投資を成長の原動力と位置づけ、競争力強化を図っています。また、ユニットバスやシステムキッチンなど住宅設備分野への注力や、環境認証取得商品などのサステナブルな商品の開発・販売を推進し、総合メーカーとしての発展を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な企業価値向上に向け、多様な人材が能力を最大限に発揮できる環境整備と人材育成を基本方針としています。業務のマニュアル化の推進や、OJTを通じた若手技術者の育成、資格取得の支援などにより個々のスキルアップを促し、心身ともに健康かつ安全に働くことができる職場環境づくりに努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.2歳 13.5年 6,635,323円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.1%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は一部の項目について公表義務の対象ではないため、有報には記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況の変動による影響


中東情勢の緊迫化や資材・エネルギー価格の高騰による仕入コストの上昇、また国内の建設業界における技能者不足に起因する工期遅延などが、同社の商品の納品スケジュールや売上計上時期に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外からの商品仕入への依存


同社は欧州やアジアなど海外メーカーからの商品仕入れが大部分を占めるため、海上運賃の急騰やコンテナ不足などグローバルなサプライチェーンの混乱が長引いた場合、商品の安定供給や業績に支障をきたすリスクがあります。

(3) 為替相場の変動


海外からの商品仕入れは主に外貨建てで行われているため、為替相場に著しい変動が生じた場合には利益に影響を与えます。同社は為替予約によりリスク軽減を図っていますが、期末の評価損益によって経常利益などが大きく変動する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。