アルビス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アルビス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所(プライム市場)に上場する、北陸地方を基盤とした食品スーパーマーケットチェーンです。直近の連結業績は営業収益982億円で前期比微増収、経常利益26億円で微減益となりましたが、最終利益は特別損失の減少等により増益を確保しています。北陸3県に加え、愛知県・岐阜県へも店舗展開を進めています。


※本記事は、株式会社アルビス の有価証券報告書(第58期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アルビスってどんな会社?


富山県、石川県、福井県の北陸3県を中心に、愛知県や岐阜県にも食品スーパーマーケットを展開する企業です。

(1) 会社概要


1968年に富山県で食料品卸売事業本部として北陸チューリップチェーンを設立し、1992年に現在のアルビスへ商号変更しました。1995年に名古屋証券取引所市場第二部へ上場し、2015年には東京証券取引所市場第一部へ指定されました。その後、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。直近では2024年9月にパスコの株式を取得して子会社化するなど、M&Aによる事業拡大も進めています。

現在の従業員数は連結で991名、単体で931名です。筆頭株主は事業会社である三菱商事で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は従業員持株会であるアルビス共栄会持株会です。三菱商ことは食品流通分野で関係を深めています。

氏名 持株比率
三菱商事 16.19%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.95%
アルビス共栄会持株会 4.70%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は池田 和男氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
池田 和男 代表取締役社長 1985年丸伸入社。同社商品本部長、営業本部長、管理本部長、専務取締役などを経て2018年5月より現職。
吉原 絹彦 取締役常務執行役員営業本部長 1993年三菱商事入社。ローソン理事執行役員などを経て2024年同社入社。2025年5月より現職。
上野 弘樹 取締役常務執行役員製造本部長 1982年丸大食品入社。2019年同社入社。アルデジャパン社長、同社執行役員等を経て2025年4月より現職。


社外取締役は、加世多達也(元北陸銀行取締役専務執行役員)、松村篤樹(あおぞら経営代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「スーパーマーケット事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) スーパーマーケット事業


富山県、石川県、福井県の北陸3県および愛知県、岐阜県において、食品スーパーマーケット「アルビス」を運営し、一般消費者に生鮮食品、加工食品、日用雑貨などを販売しています。地域密着型の店舗展開を行い、地元の旬の食材を中心に鮮度の高い商品を提供しています。

収益は、店舗に来店する一般消費者からの商品販売代金によるものです。運営は主にアルビスが行っています。同事業は同社グループの中核であり、売上高の大部分を占めています。

(2) その他事業


スーパーマーケット事業を補完する機能として、惣菜や精肉加工品の製造、リサイクル事業などを行っています。

収益は、グループ会社への製品供給や業務受託による対価が中心ですが、一部外販も行っています。運営は、惣菜製造等を株式会社アルデジャパン、リサイクル事業等をアルビスクリーンサポート株式会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、営業収益は900億円台で安定的に推移しており、直近の2025年3月期は982億円と過去最高水準となっています。経常利益は2022年3月期に30億円を超えましたが、その後は原材料価格の高騰や電気料の高留まり等の影響を受け、20億円台半ばで推移しています。当期純利益は増減があるものの黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
営業収益 942億円 921億円 946億円 978億円 982億円
経常利益 29億円 30億円 25億円 27億円 26億円
利益率(%) 3.1% 3.3% 2.6% 2.7% 2.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 21億円 17億円 15億円 16億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は微増し、売上総利益率も改善しています。これはプライベートブランド商品等の高利益商品の販売強化やプロセスセンターの生産性向上が寄与したものです。一方で、営業利益率は若干低下しました。これは賃上げ等の人的資本投資や新規出店・改装に伴う経費増、光熱費の高止まりなどが影響しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 967億円 972億円
売上総利益 290億円 296億円
売上総利益率(%) 30.0% 30.5%
営業利益 21億円 21億円
営業利益率(%) 2.2% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が98億円(構成比34.5%)、その他が48億円(同16.9%)を占めています。売上原価については、商品仕入によるものが大半を占めています。

(3) セグメント収益


同社は食品スーパーマーケット事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載はありません。

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アルビスのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

同社は、営業活動により資金を獲得し、投資活動で事業拡大のための支出を行い、財務活動で資金調達と返済を行っています。営業活動では、利益創出に加えて、減損損失の計上や棚卸資産の増加、支払債務の減少などが資金の増減に影響しました。投資活動では、主に有形固定資産の取得や貸付金の増加、敷金・保証金の差入れにより、多額の資金を使用しました。財務活動では、長期借入れによる多額の収入があった一方で、借入金の返済や配当金の支払い、自己株式の取得により資金が減少しました。これらの活動の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 45億円 31億円
投資CF -23億円 -49億円
財務CF -27億円 25億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「食を通じて地域の皆様の健康で豊かな生活に貢献します」を企業理念に掲げています。また、「より新鮮でより美味しく安全な商品をお値打ち価格でお届けします」を経営理念とし、食の楽しみや喜びを通じて健康で豊かな地域社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「アルビスマインド」を作成し、企業理念や行動精神を基盤とした「アルビスグループ企業行動指針」の周知徹底を図っています。お客様との信頼を大切にし、誠実な企業であることを目指す姿勢や、コンプライアンスを自らの問題として捉える意識を重視しています。また、「つなぐアルビス」をキーワードに全員参加型のサステナビリティ活動も推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は第四次中期経営計画において、10年後のありたい姿「笑顔あふれる幸せな食卓と健康をサポートし、地域と共に成長する価値創造企業」の実現を目指しています。最終年度となる2027年3月期には、以下の数値目標を掲げています。

* 店舗数:77店舗
* 営業収益:1,203億円
* 営業利益:35億円
* 経常利益:41億円
* ROE:8.2%

(4) 成長戦略と重点施策


「私のお店と言ってもらえるアルビスファンを増やす」を中期経営方針とし、以下の5つの重点施策に取り組んでいます。商品開発専門部署の設置や店舗改装への投資、海産プロセスセンターの新設による生産性向上、地域社会との関係強化などを推進しています。

* お客さまを笑顔にする商品の提供
* お客さまが楽しく快適に買い物できる店づくり
* 働きがい、やりがいを感じられる職場環境の実現
* 持続的な成長に向けた業務基盤の強化
* 事業を通じた地域社会の課題解決

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「働きがい、やりがいを感じられる職場環境の実現」を掲げ、従業員エンゲージメントの向上を目指しています。多様な人材の確保に向け、女性活躍推進や中途採用の強化に取り組むとともに、階層別教育やDX人材育成などの研修制度を充実させています。また、ライフステージに合わせた働き方の選択制度など、社内環境の整備も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 10.7年 5,175,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.4%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 87.5%
男女賃金差異(正規) 83.0%
男女賃金差異(非正規) 97.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(65.0%)、従業員満足度調査(67.6%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食品の安全性について


同社グループは食料品を主に取り扱っているため、食中毒や異物混入など、食の安全に対する信頼を損なう問題が発生した場合、売上高の減少や信頼低下により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、食品安全方針を定め、商品調達時の品質確認や店舗での衛生管理、製造子会社でのISO規格に基づく管理体制の運用など、グループ全体で安全・衛生管理に取り組んでいます。

(2) 競争激化について


北陸3県、愛知県、岐阜県の商圏内において、同業のスーパーマーケットだけでなく、ドラッグストアやコンビニエンスストアなどの異業態との競争が激化しています。これにより売上の減少やコスト増が発生し、業績に影響を与える可能性があります。同社は鮮度の高い生鮮食品の強化や顧客ニーズに即した販売促進により差別化を図り、競争力を維持しています。

(3) 人材育成・確保について


積極的な出店やM&Aによる事業成長を目指していますが、それに伴う十分な人員確保や人材育成が追いつかない場合、成長戦略に支障をきたす可能性があります。特に専門性の高い人材や店長等の育成が重要です。同社は多様な人材の採用に加え、等級別の業務配置や教育研修を通じて、必要な人材の育成と確保に努めています。

(4) 原油及び電気料の高騰について


店舗や物流・プロセスセンターでの電力使用、トレー・フィルム等の石油製品の使用により、原油価格の上昇や電気料金の高騰が業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は電力使用量の見える化や適正温度管理、太陽光発電システムやLED照明の導入など、節電対策を進めることでコスト上昇の影響軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。