※本記事は、アルビス株式会社の有価証券報告書(第59期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アルビスってどんな会社?
食品スーパーマーケットを中核に、惣菜や精肉・海産物の自社加工事業も展開しています。
■(1) 会社概要
1968年に富山県で食料品卸売事業本部として設立され、1992年に現在のアルビスに商号変更しました。2015年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、現在はプライム市場に上場しています。近年も海産プロセスセンターの開設や他社スーパーの吸収合併を積極的に行い、事業の拡大と効率化を進めています。
従業員数は連結で1,026名、単体で954名です。筆頭株主は事業会社の三菱商事で、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はアルビス共栄会持株会となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 三菱商事 | 16.62% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 7.71% |
| アルビス共栄会持株会 | 5.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長営業本部長は池田和男氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 池田和男 | 代表取締役社長営業本部長 | 1985年丸伸入社。2003年同社入社後、商品本部長、営業本部長等を歴任し、2018年より代表取締役社長。2026年より現職。 |
| 上野弘樹 | 取締役常務執行役員製造本部長兼品質保証部長 | 1982年丸大食品入社。同社品質保証部長等を経て2019年同社入社。アルデジャパン社長等を歴任し、2026年より現職。 |
| 吉原絹彦 | 取締役 | 1993年三菱商事入社。ローソンアジア・パシフィック事業本部長等を経て2024年同社入社。常務執行役員等を経て2026年より現職。 |
社外取締役は、加世多達也(元北陸銀行取締役専務執行役員)、松村篤樹(元あおぞら経営代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「スーパーマーケット」などの事業を展開しています。
■スーパーマーケット関連事業
北陸地方(富山・石川・福井)および中京圏を中心に、地域密着型の食品スーパーマーケットを展開しています。一般消費者に向けて、生鮮食品(青果、海産、精肉、惣菜)や日配品、グロサリーなどの食料品を中心にお値打ち価格で提供しています。
収益源は、店舗での一般顧客への商品販売による売上が中心です。中核となる店舗運営は同社が行い、惣菜品の製造や精肉・海産物の加工、豆腐商品類の製造はアルデジャパンが担い、リサイクルや各種業務の受託はアルビスクリーンサポートが行うなど、グループ一体で事業を推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、新規出店やM&Aの効果により売上は順調に拡大傾向にあります。一方で、利益面は各種コストの上昇や成長に向けた人的資本・設備への積極的な投資費用が先行しており、緩やかな減少傾向となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高(営業収益) | 921億円 | 946億円 | 978億円 | 982億円 | 1,010億円 |
| 経常利益 | 30億円 | 25億円 | 27億円 | 26億円 | 24億円 |
| 利益率(%) | 3.3% | 2.6% | 2.8% | 2.6% | 2.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 13億円 | 11億円 | 12億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加していますが、高利益商品の販売強化やプロセスセンターの原価改善により、売上総利益率も安定した水準を維持しています。出店や改装、賃金引き上げ等による販売費及び一般管理費の増加を吸収し、営業増益を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 972億円 | 999億円 |
| 売上総利益 | 296億円 | 304億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.5% | 30.4% |
| 営業利益 | 21億円 | 22億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 2.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が102億円(構成比35%)、賃借料が26億円(同9%)、減価償却費が25億円(同9%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は積極型(営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態)のキャッシュ・フローとなっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 31億円 | 49億円 |
| 投資CF | -49億円 | -60億円 |
| 財務CF | 25億円 | 33億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「食を通じて地域の皆様の健康で豊かな生活に貢献します」を企業理念に掲げています。また、「より新鮮でより美味しく安全な商品をお値打ち価格でお届けします」という信念のもと、食の楽しみや喜びを提供し、地域の健康で豊かな社会の実現に寄与することを目指しています。
■(2) 企業文化
従業員が働きがいややりがいを感じられる職場環境の実現を重視しています。心理的安全性の高い組織づくりや長時間労働の是正といった働きやすさの整備を推進しています。また、「つなぐアルビス」をキーワードに、全員参加型で環境保全や地域社会の課題解決に向けたサステナビリティ活動に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
第四次中期経営計画において、「私のお店と言ってもらえるアルビスファンを増やす」という中期経営方針を掲げています。最終年度となる2027年3月期に向け、店舗数の拡大と収益性の向上を目指し、以下の具体的な数値目標を設定しています。
- 店舗数:77店舗
- 営業収益:1,203億円
- 営業利益:35億円
- 経常利益:41億円
- ROE:8.2%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営方針の実現に向けて、「お客さまを笑顔にする商品の提供」「楽しく快適に買い物できる店づくり」「持続的な成長に向けた業務基盤の強化」などの重点施策を進めています。具体的には、プライベートブランド等の高利益商品の販売強化やデジタルマーケティングの推進、海産プロセスセンター稼働による生産性向上に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人的資本」を最大の競争力の源と位置付け、適材適所の人員配置と育成、多様な人材が長く活躍できる環境整備を進めています。店長や部門チーフの早期育成、DX人材の育成を図るとともに、中途採用や女性管理職の計画的な育成・登用を行い、労働時間の適正化などライフステージに応じた就業継続を促進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.9歳 | 10.4年 | 5,194,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.6% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 88.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 84.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 97.5% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(67.0%)、従業員満足度調査(65.8%)、障がい者雇用率(3.96%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 食品の安全性に関するリスク
食中毒や食の安全に対する問題が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は商品調達時の品質確認やHACCP基準に基づいた衛生管理の徹底、製造子会社におけるISO規格に基づいた食品安全管理体制の運用により、安全・衛生管理レベルの向上に取り組んでいます。
■(2) 異業態を含む競争激化リスク
同業他社だけでなく、コンビニエンスストアやドラッグストアなど異業態との競争が激化した場合、店舗売上高の減少や競争に係るコストが発生するリスクがあります。地元の旬の食材を中心に生鮮食品を強化し、顧客ニーズに即した販売促進を実施することで競争力を保持しています。
■(3) 人材育成・確保の遅れリスク
店舗の積極的な出店やM&Aによる事業成長において、人員の確保と人材育成が不十分な場合、事業成長戦略に支障をきたす可能性があります。多様な人材を積極的に確保するとともに、知識・経験・能力に応じた業務配置と教育研修を通じた専門人材や現場管理者の育成に努めています。



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