鳥羽洋行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鳥羽洋行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鳥羽洋行は東京証券取引所スタンダード市場に上場する機械工具の専門商社です。制御機器やFA機器、産業機器の販売を手がけ、製造現場の自動化や省力化を支援しています。直近の業績は、半導体や自動車関連の設備投資低迷などの影響を受け、減収減益となっていますが、成長分野における投資意欲は依然として根強い状況です。


※本記事は、株式会社鳥羽洋行の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 鳥羽洋行ってどんな会社?


同社は製造現場の生産工程を自動化・省力化する機械工具や装置を提供する専門商社です。

(1) 会社概要


同社は1949年に機械工具販売を目的として設立されました。2004年にジャスダック市場に上場し、2022年にスタンダード市場へ移行しています。2008年の上海での子会社設立をはじめ、タイやベトナムにも販売拠点を広げて海外展開を推進してきました。2024年には和泉テックなどを子会社化し、事業基盤の強化を図っています。

同社グループは、連結で261名、単体で224名の従業員を抱えています。筆頭株主は水と柏の会で、第2位は鳥羽洋行取引先持株会、第3位は創業家関係者とみられる個人株主です。

氏名 持株比率
水と柏の会 8.78%
鳥羽洋行取引先持株会 7.03%
鳥羽重良 3.90%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は遠藤稔氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
遠藤稔 代表取締役社長 1981年同社入社。海外営業部長、常務取締役営業本部長、鳥羽(上海)貿易有限公司董事長等を歴任。2022年代表取締役社長兼営業本部長を経て、2023年より現職。
千國哲王 取締役営業本部長 1992年同社入社。特機システム部長、関東ブロック長等を歴任。和泉テクニカル・ラボ代表取締役、和泉テック代表取締役を経て、2026年4月より現職。
島津政則 取締役管理本部長 1988年同社入社。八王子営業所長、静岡営業所長、管理本部管理部長を歴任。2020年6月より現職。
池田智則 取締役中部ブロック長兼関西ブロック長 1995年同社入社。大阪営業所長、滋賀営業所長、西日本ブロック長、中部ブロック長等を歴任。2026年4月より現職。
村木義和 取締役営業企画室長 1988年同社入社。東京第二営業所長、東京南営業所長、宇都宮営業所長、北関東ブロック長等を歴任。2016年営業企画室長に就任し、2023年6月より現職。


社外取締役は、小川隆之(元三菱商事次長)、成瀬圭珠子(拔弁天法律事務所代表弁護士)、岩田伸(元TDCソフト取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「機械工具器具等の販売」事業を展開しています。

(1) 制御機器


空気圧機器や電子センサー、圧力センサー、真空機器などの単体機器のほか、半導体製造装置などに組み込まれる部材を取り扱っています。とくに空気圧機器は誕生初期から代理店権を確保しており、長年培った技術と密接な取引関係を有しています。
有力メーカーなどから商品を仕入れ、顧客の生産現場へ直接販売することで収益を得る卸売モデルです。運営は主に同社が行っています。

(2) FA機器


生産工程の自動化を直接担う産業用ロボットや自動組立機、表面実装システムなどを取り扱い、顧客の生産革新をサポートしています。製造現場のコストダウンや高度化の課題に応える専門的な提案を行っています。
専門知識を有した営業担当者が顧客に最適なシステムや商品を提案・販売することで収益を得ています。運営は同社および連結子会社が行っています。

(3) 産業機器


生産現場に必要な電動ドライバーなどの工具関係を中心に、自動車関連向けの無人搬送車や半導体製造装置関連向けのアルミフレームなど、周辺環境を整備する幅広い商材を取り扱っています。
顧客の多様なニーズに応じた商材を直接販売する形態で代金を受け取っています。運営は同社および連結子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は280億円から310億円のレンジで推移しています。経常利益は安定して16億円から20億円の規模を確保していますが、当期は半導体や自動車関連の設備投資低迷などの影響を受け、前年と比較して減収減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 297億円 295億円 284億円 316億円 291億円
経常利益 21億円 18億円 16億円 18億円 16億円
利益率(%) 6.9% 6.1% 5.7% 5.7% 5.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 13億円 10億円 12億円 11億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い売上総利益や営業利益も減少していますが、売上総利益率はわずかに改善しています。安定した利益率を維持しつつ、コストコントロールによって営業利益を確保している状況が伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 316億円 291億円
売上総利益 47億円 44億円
売上総利益率(%) 14.9% 15.3%
営業利益 17億円 15億円
営業利益率(%) 5.3% 5.1%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が14億円(構成比48%)、賞与引当金繰入額が2億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は機械工具器具等の販売事業の単一セグメントです。当期は高性能半導体向け需要が堅調だったものの、汎用メモリや自動車・車載部品関連企業の設備投資が低迷し、全体として減収となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
機械工具器具等の販売 316億円 291億円
連結(合計) 316億円 291億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で投資を賄い、借入の返済等も進める優良企業である「健全型」のパターンを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -8億円 32億円
投資CF -6億円 -6億円
財務CF -10億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「何事にも無理なく、堅実に、しかも進取、独創、能率的に経営し、信用を第一におく」という社是を掲げています。この「信用第一主義」の理念のもと、機械工具を取り扱う専門商社として日本の産業界の設備投資効率の向上と発展に貢献することを社会的意義としています。

(2) 企業文化


同社の役職員は「企業行動規範」に則り、社会的な良識に従って、健全かつ透明性の高い企業活動を行うことが求められています。社員の自己実現のための環境づくりとして、安全で快適な職場環境の整備を行い、常に自己研鑽に励んで資格取得などにチャレンジし、職場が自己実現の場となるような行動様式を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、いかなる経営環境下でも達成できる経営体質を目指し、企業価値を高めて株式市場から適正な評価を受けるため、以下の数値を目標として掲げています。

・ROE(自己資本利益率):8.0%以上
・PBR(株価純資産倍率):1倍以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画「Next Stage 2029」に基づき、技術革新が進む産業界において同社の業容拡大が見込める新しい販売市場の開拓を進めています。また、同業他社と差別化できる環境負荷の低い高付加価値商品の発掘、人への投資を通じた将来を担う人材の確保、基幹システムの更新による業務効率や顧客満足度の向上を重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材が企業にとって重要な資産であると認識し、中長期的な戦略に基づいた採用を積極的に行っています。女性や外国人、中途採用を問わず、多様な経験やスキルを持つ人材を安定的に確保できる体制を構築しています。また、独自の研修を実施し、職能等級制度を通じて社員の多様な能力を持続的に活用できる環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 36.7歳 12.9年 5,689,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.2%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男女賃金差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 顧客業界の設備投資動向への依存


同社の得意先は、主にデジタル機器、半導体、自動車部品、医療機器などの業界です。将来、経済情勢の変化によってこれらの業界の設備投資が激減する事態が生じた場合、同社グループの業績やキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。同社はコスト削減策を実施し、収益基盤の強化に努めています。

(2) 海外事業展開に伴うカントリーリスク


同社グループは海外でも事業活動を行っています。進出先の相手国や当事国において、政変や社会的混乱、予期しない政治・経済の制度変更などが起きた場合、事業活動が困難になる可能性があります。これに対し、主要な海外拠点に現地法人を分散させて設立し、販売管理体制の強化を行っています。

(3) 気候変動等の環境に関するリスク


同社は環境に適合した企業活動を行うためにISO14001を取得し、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいます。将来、事業活動の過程で環境汚染等が発生した場合や、温室効果ガス排出量削減に関する新たな法規制などが施行された場合には、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。