鳥羽洋行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鳥羽洋行 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。制御機器、FA機器、産業機器の販売を行う専門商社。生成AI普及や自動車産業の電動化に伴う設備投資需要を背景に、売上高は316億円(前期比11.0%増)、経常利益は18億円(同12.0%増)と増収増益で着地しています。


※本記事は、株式会社鳥羽洋行 の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鳥羽洋行ってどんな会社?


同社は、生産現場の自動化・省力化を支援する機械工具の専門商社です。「FAプランナー」として提案力を強みとしています。

(1) 会社概要


1949年に設立され、機械工具の販売を開始しました。2004年にジャスダック証券取引所(現・東証スタンダード)に上場。2008年には中国上海に現地法人を設立し、海外展開を加速させました。2024年には株式会社和泉テックおよび株式会社和泉テクニカル・ラボを子会社化し、事業基盤の強化を図っています。

同グループは連結従業員数265名、単体228名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は創業家出身の鳥羽重良氏で、第2位は取引先持株会です。有力メーカーから商品を仕入れ、大手ユーザーを中心に販売する商社機能を担っています。

氏名 持株比率
鳥羽重良 8.21%
鳥羽洋行取引先持株会 6.61%
鳥羽聰子 5.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は遠藤稔氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
遠藤稔 代表取締役社長 1981年同社入社。海外営業担当部長、営業本部長などを歴任。2016年鳥羽(上海)貿易有限公司董事長。2023年4月より現職。
千國哲王 取締役営業本部長兼特機システム部長 1992年同社入社。特機システム部長、関東ブロック長などを経て、2023年4月より現職。和泉テック等の代表取締役も兼任。
島津政則 取締役管理本部長 1988年同社入社。八王子営業所長、静岡営業所長、管理本部管理部長を経て、2020年6月より現職。
池田智則 取締役中部ブロック長兼西日本ブロック長 1995年同社入社。大阪営業所長、西日本ブロック長などを歴任。2022年6月より現職。
村木義和 取締役営業企画室長 1988年同社入社。北関東ブロック長、営業企画室長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、小川隆之(元スター・サークル社長)、成瀬圭珠子(弁護士)、岩田伸(元TDCソフト顧問)です。

2. 事業内容


同社グループは、「機械工具器具等の販売」事業および「その他」事業を展開しています。

(1) 制御機器


空気圧機器、電子センサー、真空機器などを取り扱っています。生産工程の自動化補助に使用される単体機器のほか、半導体・液晶製造装置などに組み込まれる部材を販売しています。

収益は、主に国内有力メーカーから仕入れた商品を大手ユーザー等へ販売することで得ています。運営は主に鳥羽洋行が行っています。

(2) FA機器


産業用ロボット、自動組立機、表面実装システムなどを取り扱っています。生産工程の自動化を直接担う機器を中心に、製造現場のコストダウンや高度化を提案しています。

収益は、顧客への機器販売対価として得ています。運営は主に鳥羽洋行が行い、海外では現地法人が販売を担っています。

(3) 産業機器


電動ドライバー、アルミフレーム、無人搬送車などを取り扱っています。生産現場に必要な工具関係を中心に、自動車関連や半導体製造装置関連の需要に対応しています。

収益は、商品の販売代金です。運営は主に鳥羽洋行が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は300億円前後で推移しており、直近では半導体関連や自動車関連の設備投資回復により増収となりました。利益面でも、経常利益率は5%台後半から6%台を維持しており、安定した収益性を確保しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 250億円 297億円 295億円 284億円 316億円
経常利益 14億円 21億円 18億円 16億円 18億円
利益率 5.5% 6.9% 6.1% 5.7% 5.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 11億円 13億円 10億円 11億円

(2) 損益計算書


直近2期間では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約15%の水準です。営業利益も増益となっており、本業の収益力は堅調です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 284億円 316億円
売上総利益 43億円 47億円
売上総利益率 15.2% 14.9%
営業利益 15億円 17億円
営業利益率 5.3% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び手当が14億円(構成比46%)、賞与引当金繰入額が2.0億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


単一セグメントのためセグメント間の比較はありませんが、製品別に見ると、主力のFA機器が好調に推移し、制御機器や産業機器も売上を伸ばしました。全体として増収基調にあります。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
機械工具器具等の販売 284億円 316億円
連結(合計) 284億円 316億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業CF、投資CF、財務CFがいずれもマイナスとなる「末期型」を示しています。ただし、これは豊富な手元資金を背景に、仕入債務の支払いや定期預金の預入、配当金の支払い、自己株式取得などを進めた結果であり、資金繰りに懸念がある状態ではありません。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 27億円 -8億円
投資CF 7億円 -6億円
財務CF -8億円 -10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は68.2%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「信用第一主義」を基本方針としています。「何事にも無理なく、堅実に、しかも進取、独創、能率的に経営し、信用を第一におく」という社是を掲げ、機械工具を取り扱う専門商社として産業界の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


いかなる経営環境下でも「信用第一主義」を堅持し、経営の軸足は国内に置きつつも、グローバル化や市場ニーズの変化に対応する積極的な経営を進める文化があります。また、環境意識の高まりに応じ、環境マネジメントシステムの認証取得など、時代の変化に対応する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、経営指標として以下の目標を掲げ、いかなる環境下でも達成できる経営体質を目指しています。
* ROE:8.0%以上
* PBR:1倍以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画「Next Stage 2028」に基づき、「FAプランナー」としての提案力を武器に付加価値の高い営業展開を進めます。具体的には、生成AI普及による半導体市場の拡大や、自動車産業の電動化・自動化に伴う設備投資需要を取り込む方針です。また、新規市場の開拓や環境負荷の低い商品の発掘、人的資本への投資、基幹システムの更新などに取り組んでいきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


今後の業績拡大に向け、新卒・中途を問わず幅広い分野から多様な人材を採用する方針です。人材育成では、階層別研修や職能等級制度を整備し、能力を活用できる環境づくりに取り組んでいます。また、健康経営の推進や資格取得支援、従業員インセンティブ・プランの導入により、エンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.9歳 12.2年 5,324,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 11.1%
男性育児休業取得率 16.7%
男女賃金差異(全) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の平均勤続年数(9.7年)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢の変化によるリスク


主な取引先であるデジタル機器、半導体、自動車業界等の設備投資動向が業績に影響します。経済情勢の変化によりこれらの業界の設備投資が激減した場合、同社グループの財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 信用リスク


取引先に対して信用供与を行っているため、不測の事態により取引先の経営状況が悪化した場合、債権が回収不能となり、業績に影響を与える可能性があります。同社は与信管理や債権保全に努めています。

(3) カントリーリスク


海外での事業活動において、現地の政変や社会的混乱、予期せぬ制度変更等が発生した場合、事業活動が困難になる可能性があります。同社は現地法人の分散設立や販売管理体制の強化によりリスク軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。