※本記事は、株式会社尾家産業の有価証券報告書(第65期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 尾家産業ってどんな会社?
業務用食品卸売業を全国展開し、外食・ヘルスケア・中食産業へ食材を供給する企業です。PB商品開発も強みです。
■(1) 会社概要
1947年に大阪で尾家商店として創業し、1961年に株式会社尾家商店を設立しました。1966年にPB商品「サンホーム」を開発し、1968年に現社名へ変更。1995年に大阪証券取引所第二部へ上場し、2004年に東証一部・大証一部へ指定されました。2022年の市場区分見直しにより、スタンダード市場へ移行しています。
連結従業員数は838名、単体では799名です。筆頭株主はサンホーム共栄会、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は創業家の尾家美津子氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| サンホーム共栄会 | 11.85% |
| 三井住友信託銀行株式会社(MSM3信託口) | 9.64% |
| 尾家 美津子 | 5.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は尾家健太郎氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 尾家 健太郎 | 代表取締役社長執行役員管理本部長兼マーケティング本部長 | 2008年同社入社。滋賀営業所長、経理部長、経営企画室長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 尾家 啓二 | 代表取締役会長 | 1978年同社入社。管理本部長、営業本部長などを歴任し、2004年に代表取締役社長に就任。2023年6月より現職。 |
| 坂口 泰也 | 取締役専務執行役員営業本部長 | 2012年同社入社。大阪広域営業部長、サンプラザ営業部長、マーケティング部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 野々村 透 | 取締役上席執行役員マーケティング本部副本部長 | 1981年同社入社。大阪支店長、西日本統括などを歴任し、2024年4月より現職。 |
社外取締役は、田辺彰子(公認会計士)、岩辺裕昭(元ダイハツ工業取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食品卸売事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 食品卸売事業
ホテル、レストラン、居酒屋などの外食産業や、病院・高齢者施設等のヘルスケアフード業態、中食業態向けに業務用食品の卸売を行っています。また、PB商品「サンホーム」等の開発・販売も手掛けています。
収益は、飲食店や施設等の顧客に対する商品販売代金として受け取ります。運営は主に同社が行い、連結子会社の壽屋商事株式会社も関与しています。
■(2) その他
物流およびシステム支援、会員制現金問屋であるC&C(キャッシュアンドキャリー)店舗「サンプラザ」の運営を行っています。
収益は、店舗利用者からの商品代金や物流支援サービスの対価として受け取ります。運営は同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
第64期から第65期にかけて、売上高、経常利益ともに増加しており、増収増益の傾向にあります。特に売上高は1,100億円台から約1,200億円へと成長し、利益率も3%前後で安定的に推移しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,114億円 | 1,193億円 |
| 経常利益 | 33億円 | 36億円 |
| 利益率(%) | 2.9% | 3.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 31億円 | 28億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高が増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。営業利益も増加しており、本業の収益性が向上していることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,114億円 | 1,193億円 |
| 売上総利益 | 210億円 | 225億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.8% | 18.9% |
| 営業利益 | 32億円 | 36億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 3.0% |
販売費及び一般管理費のうち、運賃が64億円(構成比34%)、給料が44億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループの報告セグメントは「食品卸売事業」のみであり、単一セグメントとして開示されています。そのため、セグメント別の増減分析はありませんが、全体の売上高は増加しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 食品卸売事業 | 1,112億円 | 1,191億円 |
| その他 | 2億円 | 2億円 |
| 調整額 | - | - |
| 連結(合計) | 1,114億円 | 1,193億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
**健全型**:営業活動で得たキャッシュで借入金の返済を行い、投資も自己資金の範囲内で実施している健全な状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 37億円 |
| 投資CF | -0.9億円 | -5億円 |
| 財務CF | -28億円 | -11億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「私達は、自己の能力を啓発し、奉仕と感謝の心をもって取引先にとってなくてはならない存在となり、社員の幸福と企業の安定成長をはかり、社会と食文化の発展に貢献する」という経営理念を掲げています。顧客第一主義を基軸とし、顧客の発展とともに成長し続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
「Change! Challenge! Create!」をスローガンとして掲げ、現状に満足することなく積極的に挑戦する姿勢を重視しています。また、SDGsの考え方に賛同し、「SMILE PROJECT」を通じて環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点から持続可能な社会の実現に貢献する活動を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
長期ビジョン「OIE vision 2035」において、「食を通じて関わる全ての人に「おいしさ」「やさしさ」「笑顔」を届ける「いい会社」の実現」を目指しています。第6次中期経営計画では、事業基盤強化に向けた社内構造改革と業容の拡大に邁進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
「収益力の強化」「事業領域の拡大」「経営基盤の整備・強化」を主要施策としています。特に「ヘルスケアフード」と「PB商品」を重点施策とし、営業リソースを集中投下して収益の拡大と安定化を図ります。また、C&C店舗の拡大、ECビジネス、海外市場への商品供給、M&Aによる経営基盤の拡大にも取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「Grow & Challenge」を人事制度のテーマとし、等級ごとの期待値明確化、納得感の高い考課、等級に応じた賃金水準の実現を目指しています。また、独自の「OIEオリジナル教育体系プログラム」を通じて、ヒューマンスキル、テクニカルスキル、コンセプチュアルスキルの習得を支援し、人材育成に重きを置く風土を醸成しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.6歳 | 15.0年 | 7,450,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.8% |
| 男性育児休業取得率 | 8.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 75.8% |
| 男女賃金差異(非正規) | 67.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(46.7%)、女性管理職(15名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気動向の影響
同社グループは外食産業等を主要顧客としています。そのため、景気動向や個人消費の冷え込みにより外食産業界の業況が悪化した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替変動と調達コスト
主要取扱品目である飲食材料の一部は国際価格や為替変動の影響を受けます。仕入価格が大きく上昇し、そのコスト増を販売価格に十分に転嫁できない場合、利益率が低下し、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 感染症等の影響
感染症等が拡大・長期化した場合、飲食店の休業や訪日外国人客の減少による需要減退、海外工場の操業停止による商品調達の遅れ、物流の停滞などが生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 食品衛生管理
「食」を扱う企業として、細心の品質管理が求められます。万が一、同社グループが管理・取扱う食品において食中毒や異物混入などの重大な問題が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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