ドウシシャ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ドウシシャ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ドウシシャは東京証券取引所プライム市場に上場する流通サービス企業です。生活関連用品の企画・開発を行う「開発型」と、ブランド品等を扱う「卸売型」の2つのビジネスモデルを展開しています。直近の業績は売上高1139億円、当期純利益64億円で、前期比で増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社ドウシシャ の有価証券報告書(第49期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ドウシシャってどんな会社?


生活関連用品の企画・開発・販売を行う「開発型」と、有名ブランド品等の仕入販売を行う「卸売型」を併せ持つ流通サービス企業です。

(1) 会社概要


1974年に個人営業として「同志社」を創業し、1977年に株式会社同志社を設立しました。1990年に現社名である株式会社ドウシシャへ商号を変更しています。2001年には東京証券取引所および大阪証券取引所の市場第一部へ上場を果たしました。近年では2018年にオリオン株式会社を設立し、プロフェッショナルサービス(PS)事業を開始するなど、事業領域を拡大しています。

現在の従業員数は連結で1,270名、単体で804名です。筆頭株主は役員及びその近親者が議決権の過半数を所有している会社であるエムエス商事株式会社で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
エムエス商事 36.23%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.34%
JP MORGAN CHASE BANK 4.20%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役社長兼CEO兼COOは野村正幸氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
野村正治 取締役会長 1962年大阪扇屋商店入社。1974年同志社創業。1977年同社設立とともに代表取締役社長就任。2014年会長兼CEOを経て、2021年より現職。
野村正幸 代表取締役社長兼CEO兼COO 1998年同社入社。取締役、常務、専務等を経て2014年社長兼最高執行責任者就任。2021年より現職。
金原利根里 代表取締役副社長営業統括 1978年セキチュー入社。1990年同社入社。常務、専務等を経て2004年副社長就任。2018年より現職。
松本崇裕 取締役兼常務執行役員財務経理、貿易業務担当役員 1994年大和銀行入行。2012年同社入社。執行役員等を経て2019年取締役兼常務執行役員就任。2024年より現職。
小栁伸成 取締役兼常務執行役員経営企画、人事企画担当役員、社長室長、IR広報担当 1994年同社入社。執行役員経営企画部ダイレクター等を経て2023年取締役兼常務執行役員就任。2025年より現職。


社外取締役は、後藤長八(元しまむら専務)、熊本倫章(元大阪府警察本部刑事部長)、高舛啓次(元リーガロイヤルホテル副社長)、越知覚子(弁護士・公認不正検査士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「開発型ビジネスモデル」、「卸売型ビジネスモデル」および「その他」事業を展開しています。

(1) 開発型ビジネスモデル


AV関連、家電、家庭用品、収納関連、衣料、食品・酒類、均一商品などの生活関連用品を扱っています。自社で商品企画から開発、販売までを手掛けるメーカー機能を有しており、消費者ニーズに合わせた商品を展開しています。

主な収益は、開発した商品の販売による売上です。運営は主に同社が行っていますが、均一商品の販売に関しては株式会社カリンピアにおいても行っています。

(2) 卸売型ビジネスモデル


時計や鞄関連、およびアソートギフト(詰め合わせギフト)などの商品を扱っています。国内外の有名ブランド品やメーカー品を仕入れて販売する商社機能を有しており、独自の調達ルートを活かした事業です。

主な収益は、仕入れた商品の販売による売上です。運営は同社が行っています。

(3) その他


不動産事業、ライセンス事業、物流事業、介護福祉事業、貿易業、PS事業(製品開発ソリューション等)を展開しています。これらは報告セグメントに含まれない事業群です。

収益源は不動産賃貸料、物流業務受託料、介護サービス料、開発ソリューション対価など多岐にわたります。運営は同社のほか、株式会社ドウシシャロジスティクス、ライフネット株式会社、オリオン株式会社、麗港控股有限公司などが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は堅調に推移しています。売上高は1,000億円台で安定的に推移しており、最新期には1,139億円まで伸長しました。経常利益も増加傾向にあり、利益率は8%前後を維持しています。当期純利益も安定的に確保しており、全体として増収増益基調にあると言えます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,013億円 1,010億円 1,057億円 1,058億円 1,139億円
経常利益 97億円 76億円 83億円 84億円 93億円
利益率(%) 9.6% 7.5% 7.9% 7.9% 8.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 66億円 51億円 56億円 58億円 64億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は約28%で安定しており、営業利益率も前期から改善傾向にあります。コスト管理を行いつつ、売上拡大が利益増に寄与している構造が見て取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,058億円 1,139億円
売上総利益 299億円 320億円
売上総利益率(%) 28.2% 28.1%
営業利益 79億円 90億円
営業利益率(%) 7.5% 7.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が75億円(構成比32%)、荷造運搬費が44億円(同19%)を占めています。物流費や人件費が主なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


開発型ビジネスモデルは、「ゴリラのひとつかみ」などのヒット商品やフライパン等の家庭用品、食品・酒類が好調で増収増益となりました。卸売型ビジネスモデルも、ギフト関連やカジュアルブランド、アウトドアブランド等の販売が伸長し、増収大幅増益を達成しました。全セグメントで好調な推移を示しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
開発型ビジネスモデル 569億円 637億円 51億円 55億円 8.6%
卸売型ビジネスモデル 452億円 470億円 29億円 36億円 7.7%
その他 37億円 32億円 8億円 5億円 14.8%
調整額 - - -8億円 -6億円 -
連結(合計) 1,058億円 1,139億円 79億円 90億円 7.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の確保を基本方針としており、運転資金及び設備資金は自己資金または金融機関からの借入により調達しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動から生み出される資金の流れを示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や有価証券の取得・売却などによる資金の増減を表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済、配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する動きを示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 54億円 75億円
投資CF -13億円 -87億円
財務CF -27億円 -81億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業の精神である「我々は同志的結合をもって、<つぶれないロマンのある会社>をつくり、社会に貢献できる会社作りをしよう」を経営理念として掲げています。これからもさらなる成長の期待できる、ロマンのある会社づくりを目指し、企業価値向上と社会的価値の創出に取り組んでいます。

(2) 企業文化


行動規範である「四方よし」の精神に基づいた行動を実践しています。これは「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」に加え、「働き手よし」を含めた考え方です。この精神を基本方針とし、企業価値の向上と持続可能な社会への貢献を目指す文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2024年5月に中期経営計画の見直しを行い、2026年3月期における連結経常利益100億円を定量目標として掲げています。当該目標の達成に向けて、以下の数値を計画しています。

* 売上高:1,200億円
* 営業利益:98億円
* 経常利益:100億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:67億円

(4) 成長戦略と重点施策


「現場力」と「強み」の強化を掲げ、「開発型ビジネスモデル」のメーカー機能と「卸売型ビジネスモデル」の商社機能を併用することで、変化対応が求められる環境下でも商品をスピーディーかつ安定的に提供できる体制を構築します。また、ESGの側面で持続可能な社会に貢献できる会社づくりを目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「働き手よし」を進化させ、社会的価値創出を強化することを目指しています。人材の開発・育成、ダイバーシティの推進、働き方改革、健康経営の4つを要素とし、従業員の働きがい向上やキャリア形成支援、多様な人材が能力を発揮できる職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 13.3年 6,599,680円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.1%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 59.0%
男女賃金差異(正規雇用) 58.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 77.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、総合職に占める女性比率(15.4%)、年次有給休暇取得率(57.1%)、時間外労働(月平均)(11.1時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気動向や消費動向の変動


小売業を中心とした得意先を持つため、国内外の景気動向や天候不順などによる消費者の消費動向の変化が業績に影響を与える可能性があります。これに対し、開発型と卸売型の両モデルによる多種多様な商品の取り扱いや、生活必需品の提供を通じてリスクの最小化を図っています。

(2) 為替リスク


仕入の多くを中国や欧州からの輸入に頼っており、米ドルなど外貨建ての支払いを行っています。そのため、急激な為替変動が仕入コストに大きな影響を及ぼす可能性があります。同社では、為替予約を利用することで仕入コストの安定化を図り、事前に対処しています。

(3) カントリーリスク


開発型ビジネスモデルにおいては、商品の多くを中国を中心とした海外で生産しています。そのため、現地の治安、政治情勢、自然災害等の発生が生産・仕入に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、中国以外の生産拠点の検討によるリスク分散や、卸売型における国内有名メーカーからの仕入により対策しています。

(4) 物流コストの高騰に対するリスク


国内労働力人口の減少や人件費上昇に伴う物流費の増加が懸念されており、流通サービス業である同社の業績に影響を与える可能性があります。大阪府泉南市と千葉県木更津市に自社物流拠点を設けて東阪2拠点体制とすることで、物流の効率化を図り対策を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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