サンリン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンリン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のサンリンは、長野県を地盤とする地域密着型の生活関連総合商社です。LPガスや石油製品等のエネルギー関連事業を主力とし、製氷、青果、不動産事業なども展開しています。直近決算では、電力事業の契約形態変更等の影響で減収となったものの、利益面は改善し増益を確保しました。


※本記事は、サンリン株式会社 の有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンリンってどんな会社?


長野県を中心に、エネルギー供給から食・住まで幅広い生活関連サービスを提供する地域密着型の総合商社です。

(1) 会社概要


同社は1934年12月、煉炭の製造販売を目的として信濃燃料(現サンリン)として設立されました。1956年にLPガス販売を開始し、エネルギー事業へ本格参入します。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2013年には東証JASDAQ(スタンダード)へ上場しました。2016年からは電力販売も開始し、総合エネルギー企業としての基盤を強化しています。

現在の従業員数は連結で559名、単体で421名です。筆頭株主はエネルギー事業を展開するミツウロコグループホールディングスで、第2位はガス機器メーカーのリンナイ、第3位は地元の金融機関である八十二銀行となっており、事業上の結びつきが強い企業や地域金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
ミツウロコグループホールディングス 13.67%
リンナイ 5.80%
八十二銀行 4.68%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は百瀬久志氏です。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
塩原 規男 取締役会長(代表取締役) 1982年同社入社。管理本部経理部長、常務取締役エネルギー事業本部長、代表取締役社長等を経て、2025年6月より現職。
百瀬 久志 取締役社長(代表取締役) 1988年同社入社。エネルギー事業本部石油部長、専務取締役営業本部長兼ライフ事業部長等を経て、2025年6月より現職。
小原 正彦 常務取締役管理本部長兼経理部長 1986年八十二銀行入行。2018年同社入社。執行役員管理本部経理部長等を経て、2021年6月より現職。
熊井 一浩 常務取締役営業本部長兼保安部長兼ライフ事業部長 1995年同社入社。エネルギー事業本部保安部長、取締役営業本部副本部長等を経て、2025年6月より現職。
氣賀澤 隆 取締役管理本部総務部長 1994年同社入社。上伊那支店長、執行役員管理本部総務部部長代理等を経て、2021年4月より現職。
山田 高照 取締役営業本部ガス事業部長 1999年同社入社。塩尻支店長、執行役員営業本部ガス事業部長等を経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、田島晃平(ミツウロコグループホールディングス代表取締役社長)、岡村あゆみ(あゆみ法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エネルギー関連事業」「製氷事業」「青果事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) エネルギー関連事業


LPガス、石油類、電力、住宅機器、一般高圧ガス、煉炭・豆炭等の販売を行っています。また、太陽光発電による売電事業やPPA(電力販売契約)事業も手掛けており、地域のライフラインを支える主要事業です。

収益は、主に一般顧客や法人からのガス・石油・電力等の販売代金や機器代金です。運営は同社のほか、関連会社の新潟サンリン、軽井沢ガス、子会社の安曇野RE等が行っています。

(2) 製氷事業


氷の製造および販売を行っています。地域の需要に応じた製氷製品を提供しています。

収益は、顧客への氷製品の販売代金です。運営は子会社のサンリンI&Fが行っています。

(3) 青果事業


青果物の仕入・販売および、えのき茸などの生産・販売を行っています。地元の農産物を活用した事業展開を進めています。

収益は、市場や小売店等への青果物・きのこ類の販売代金です。運営は子会社の一実屋およびえのきボーヤが行っています。

(4) 不動産事業


不動産の仕入・販売および賃貸等を行っています。エネルギー事業との相乗効果を活かしたリフォーム事業などとも連携しています。

収益は、不動産の販売代金や賃貸料収入です。運営は子会社のサンエネックが行っています。

(5) その他


上記セグメントに含まれない事業として、運送事業、建設事業、LPガス関連機器の管理・賃貸等を行っています。

収益は、運送料や工事代金等です。運営は子会社の三鱗運送、ウロコ興業、サンエネックが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円前後で推移しています。2025年3月期は減収となりましたが、利益率は4.1%と改善傾向にあります。経常利益も増加傾向にあり、当期利益も順調に推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 266億円 302億円 328億円 320億円 308億円
経常利益 14億円 9億円 8億円 9億円 13億円
利益率(%) 5.2% 3.0% 2.5% 2.9% 4.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 7億円 5億円 6億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益および営業利益は増加しました。売上総利益率は23.1%と前期から改善しており、営業利益率も2.1%へ上昇しています。コストコントロールや利益率の高い事業の貢献が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 320億円 308億円
売上総利益 69億円 71億円
売上総利益率(%) 21.4% 23.1%
営業利益 6億円 7億円
営業利益率(%) 1.9% 2.1%


販売費及び一般管理費のうち、その他が22億円(構成比33%)、給料及び手当が19億円(同30%)を占めています。売上原価は売上高に対して77%を占めています。

(3) セグメント収益


主力のエネルギー関連事業は、電気事業の契約形態変更等の影響で減収となりましたが、青果事業はきのこ類の好調により増収増益となりました。製氷事業や不動産事業は増益を確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
エネルギー関連事業 281億円 267億円 3億円 3億円 1.1%
製氷事業 3億円 3億円 -1億円 -0億円 -9.2%
青果事業 28億円 32億円 2億円 2億円 7.4%
不動産事業 4億円 2億円 0億円 0億円 16.8%
その他 4億円 4億円 1億円 1億円 13.3%
調整額 -14億円 -15億円 1億円 1億円 -
連結(合計) 320億円 308億円 6億円 7億円 2.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

サンリンの2025年3月期決算におけるキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、不動産事業における大規模産業用地整備計画用地取得費用等の増加に伴う支出があったものの、堅調な利益創出により獲得されました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により使用されました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 20億円 9億円
投資CF -7億円 -10億円
財務CF -4億円 -4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「地域に選択される『地域密着型生活関連総合商社』として人々の暮らしや地域社会の発展に貢献する」ことを経営理念として掲げています。環境変化に対応しながら多様なエネルギーを扱い、顧客のニーズを捉えて「豊かな暮らしのお手伝い」をすることで、持続可能な成長を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「サステナブル経営」を実践し、安心安全なエネルギー供給を通じて快適な生活が持続できる地域社会の形成に貢献することを重視しています。創立90周年を迎え、次の100周年に向けてライフラインを担う企業としての公益的使命を果たしつつ、顧客満足度を向上させ「サンリンファン」を増やす姿勢を大切にしています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2025年度からスタートした中期経営計画(2025-2027)において、2027年度の数値目標を掲げています。

* 連結経常利益:16億円以上
* 連結ROE(自己資本当期純利益率):5%以上
* 連結配当性向:35%以上

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では、「エネルギー関連事業の深化」「食・住を軸とした事業領域の拡大」「従業員のやりがい創出」「収益性や効率性を高めるためのシステム投資」の4つを柱としています。地域密着型営業の強化やリフォーム事業の拡大、DXによる生産性向上に取り組み、持続的な成長と企業価値向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材の多様性確保を重視し、女性管理職の育成や営業参画を推進しています。また、社員一人ひとりが成長を実感できる機会を増やし、組織の成長につなげる方針です。働きやすい職場環境の整備にも注力し、業務改善やチーム活動への支援を通じて、従業員エンゲージメントの向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.8歳 14.3年 5,139,989円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.8%
男性育児休業取得率 37.5%
男女賃金差異(全労働者) 75.0%
男女賃金差異(正規) 78.1%
男女賃金差異(非正規) 76.1%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品輸入価格及び為替変動


LPガスや石油類の供給は海外依存度が高く、価格動向や地政学的要因が経営成績に影響を及ぼす可能性があります。同社は情報収集に努め、仕入価格に応じた販売価格の見直しにより適正利益の確保を図っています。

(2) 自然災害等による供給障害


地震等の災害によりガス・石油等の貯蔵・供給設備が損害を受けた場合、供給中断による売上低下や巨額の修復費用が発生する可能性があります。また、冬季の豪雪等による輸送障害もリスク要因です。同社は定期的な研修やマニュアル整備によりリスク最小化に努めています。

(3) エネルギー事業者間の競合激化


業界再編や異業種参入により価格競争が激化し、省エネ進展による需要減少も続いています。同社は地域密着型のサービス徹底や顧客満足度向上に取り組んでいますが、競争力強化のための資金需要が発生する可能性があります。

(4) 脱炭素社会の進展と法的規制


脱炭素社会の進展によるエネルギー消費量の減少や、環境・保安関連の法的規制の強化が事業に影響を与える可能性があります。同社は中期経営計画においてエネルギー関連事業の深化や新領域の拡大を掲げ、環境変化への対応を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。