※本記事は、サンリン株式会社の有価証券報告書(第92期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. サンリンってどんな会社?
長野県を中心にエネルギーや食など生活に密着した幅広い事業を展開する老舗企業です。
■(1) 会社概要
1934年に信濃燃料として設立され、煉炭の製造販売を開始しました。1956年にLPガス販売を始め、1966年にサンリンに商号を変更しています。2004年にジャスダック市場へ上場しました。2010年には製氷会社、2012年には青果会社をM&Aで完全子会社化し、多角的な事業展開を進めています。
現在の従業員数は連結で552名、単体で411名です。筆頭株主は事業会社のミツウロコグループホールディングスで、第2位は業務関連先であるリンナイ、第3位は金融機関の八十二長野銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ミツウロコグループホールディングス | 13.86% |
| リンナイ | 5.88% |
| 八十二長野銀行 | 4.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は百瀬久志氏、代表取締役会長は塩原規男氏が務めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 塩原規男 | 取締役会長(代表取締役) | 1982年4月入社。同社経理部長やエネルギー事業本部長、代表取締役社長などを歴任。2025年6月より現職。 |
| 百瀬久志 | 取締役社長(代表取締役) | 1988年4月入社。エネルギー事業本部石油部長や営業本部長などを経て、2024年6月に代表取締役専務に就任。2025年6月より現職。 |
| 小原正彦 | 常務取締役管理本部長兼経理部長 | 1986年4月八十二銀行入行。同社支店長や営業部長を経て、2018年4月に同社へ入社し経理部長に就任。2021年6月より現職。 |
| 熊井一浩 | 常務取締役営業本部長兼保安統括兼ライフ事業部長 | 1995年4月入社。イナガス支店長やエネルギー事業本部保安部長などを歴任し、2025年6月に常務取締役に就任。2026年4月より現職。 |
| 氣賀澤隆 | 取締役管理本部副本部長兼総務部長 | 1994年4月入社。上伊那支店長や管理本部総務部長などを歴任し、2026年4月より現職。 |
| 山田高照 | 取締役営業本部副本部長兼ガス事業部長 | 1999年4月入社。塩尻支店長や営業本部ガス事業部長などを経て、2026年4月より現職。 |
社外取締役は、田島晃平(ミツウロコグループホールディングス代表取締役社長CEO)、岡村あゆみ(あゆみ法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エネルギー関連事業」「製氷事業」「青果事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。
■エネルギー関連事業
LPガスや石油類、住宅機器類、一般高圧ガス、煉炭・豆炭の仕入・販売および製造・販売、太陽光発電による売電、損害保険代理店業務などを展開し、一般消費者や法人顧客に提供しています。
顧客からのガス・電気料金や機器販売代金などを主な収益源としています。同社が主体となって展開するほか、子会社の安曇野RE、関連会社の新潟サンリンや軽井沢ガスなどが事業を運営しています。
■製氷事業
氷の製造および販売を行っており、食品流通や一般消費者など幅広い顧客を対象としています。
製品の販売による対価を主な収益源としています。運営は子会社のサンリンI&Fが行っています。
■青果事業
生鮮青果物の仕入・販売や、えのき茸などの生産・販売を手がけ、スーパーマーケットや卸売業者などに提供しています。
青果物および生産品の販売代金を主な収益源としています。仕入・販売は子会社の一実屋が、生産・販売は子会社のえのきボーヤがそれぞれ運営しています。
■不動産事業
不動産の仕入および販売を行っており、主に住宅や事業用の用地を求める個人・法人顧客を対象としています。
不動産の販売代金や関連手数料を収益源としています。運営は子会社のサンエネックが行っています。
■その他
運送事業や建設事業、LPガス関連機器の管理・賃貸事業などを展開し、グループ内外の物流・工事需要に対応しています。
運送料や工事請負代金、賃貸料を主な収益源としています。運送事業は三鱗運送、建設事業はウロコ興業、機器管理・賃貸はサンエネックがそれぞれ運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高が300億円台で推移しています。経常利益は8億円から12億円程度の間を推移しており、直近の期では減収減益となりました。利益率は2%から4%台で推移し、安定した収益基盤を維持していますが、直近では親会社株主に帰属する当期純利益が減少しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 302億円 | 328億円 | 320億円 | 308億円 | 305億円 |
| 経常利益 | 9.1億円 | 8.2億円 | 9.4億円 | 12.8億円 | 10.6億円 |
| 利益率(%) | 3.0% | 2.5% | 2.9% | 4.1% | 3.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6.7億円 | 5.3億円 | 5.5億円 | 4.6億円 | 2.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となったものの、売上総利益および営業利益は増加しています。売上総利益率は上昇傾向にあり、営業利益率も改善を示すなど、本業における収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 308億円 | 305億円 |
| 売上総利益 | 71億円 | 73億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.1% | 23.8% |
| 営業利益 | 6.5億円 | 7.2億円 |
| 営業利益率(%) | 2.1% | 2.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が18億円(構成比28%)、消耗品費が6.6億円(同10%)を占めています。売上原価の具体的な内訳については記載がありません。
■(3) セグメント収益
主力であるエネルギー関連事業は減収となりましたが、青果事業や製氷事業、その他事業が増収となりました。不動産事業は売上が減少しており、セグメント間で業績の明暗が分かれる結果となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| エネルギー関連事業 | 267億円 | 260億円 |
| 製氷事業 | 3.1億円 | 3.8億円 |
| 青果事業 | 32億円 | 34億円 |
| 不動産事業 | 2.1億円 | 1.6億円 |
| その他 | 4.1億円 | 5.3億円 |
| 連結(合計) | 308億円 | 305億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出しつつ借入によって積極的な投資を行う「積極型」の状況です。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.3%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.6億円 | 10.1億円 |
| 投資CF | -9.7億円 | -2.3億円 |
| 財務CF | -3.7億円 | 0.1億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「環境の変化に的確に対応しながら顧客満足度向上を目指し、『地域密着型生活関連総合商社』として人々の暮らしや地域社会の発展に貢献する」という経営理念を掲げています。社会のライフラインを担う企業として、お客様の豊かな暮らしと地域社会の発展を支える存在であることを社会的意義としています。
■(2) 企業文化
同社は「サステナブル経営」を実践し、「お客様の豊かな暮らしと従業員の働きがいを創出し幸せな社会を実現」するというスローガンを重視しています。「安心安全なエネルギーの供給を通じて、快適な生活が持続できる地域社会の形成に貢献し、地球環境の保全に努めます」という環境理念のもと、SDGsの達成に向けた取り組みを推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期経営計画(2025-2027)において、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応を重要課題と位置づけ、以下の数値目標を掲げています。
* 連結経常利益:16.0億円以上
* 連結ROE(自己資本当期純利益率):5%以上
* 連結配当性向:35%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は持続可能な成長を実現するため、脱炭素社会への貢献を目指す「エネルギー関連事業の深化」や、「食・住を軸とした事業領域の拡大」を成長戦略に掲げています。また、AIなどのデジタル活用による業務効率化やシステム投資を推進し、サプライチェーンの強靭化やガバナンス強化を図ることで、経営資源の最適な配分と企業価値の向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「企業は人なり」の認識のもと、社員一人ひとりの着実な成長が企業の発展を支えると考えています。女性管理職の育成や女性社員の営業参画を推進し、多様性を確保する方針です。また、資格取得支援だけでなくキャリアパスを描ける環境を整備し、働きがいとワークライフバランスが両立できる職場の実現に向けた業務改善を積極的に推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.3歳 | 14.5年 | 5,261,522円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.9% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 75.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品輸入価格及び為替の変動リスク
同社グループが扱うLPガスおよび石油類は海外への依存度が非常に高いため、原油価格の動向や地政学的要因による仕入価格の急騰が、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。同社では仕入先から必要な情報を的確に収集し、適正利益が確保できるよう販売価格の見直しに努めています。
■(2) 法的規制等の変更による設備投資負担リスク
エネルギー業界は高圧ガス保安法や液化石油ガス法などの諸規則により厳密に規制されています。消費者保護や安全確保の観点から度々法改正が行われており、それに伴う設備の一斉改善や新しい安全システムの導入などに多額の設備投資が必要となる可能性があります。
■(3) エネルギー事業者間の競合激化リスク
エネルギー業界では、事業者間の垣根を越えた新規参入や業界再編により顧客争奪と価格競争が激化しています。また、消費者の省エネ志向によるエネルギー消費量の減少も進んでおり、競争力強化のための資金需要が発生するなど、同社の収益確保に影響を及ぼすリスクが存在します。



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