※本記事は、日新商事株式会社の有価証券報告書(第82期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日新商事ってどんな会社?
石油製品の販売を主力とし、再生可能エネルギー関連事業や不動産事業も展開するエネルギー企業です。
■(1) 会社概要
1947年に横浜起業として設立され、1950年に日新商事へ商号変更し一般石油製品の販売を開始しました。1996年に東京証券取引所市場第二部に上場し、2022年にスタンダード市場へ移行しています。近年は再生可能エネルギー関連事業に注力しており、2013年に日新諏訪太陽光発電所の売電を開始しました。
従業員数は連結で366名、単体で334名です。大株主の筆頭株主は事業会社のENEOSホールディングスで、第2位は事業会社の日新、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ENEOSホールディングス | 17.10% |
| 日新 | 14.80% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 5.20% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表取締役社長社長執行役員の筒井博昭氏がトップを務めています。社外取締役比率は28.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 筒井博昭 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1982年5月同社入社。1998年常務取締役、2000年代表取締役副社長を経て、2011年より代表取締役社長、2023年4月より現職。 |
| 柴崎正典 | 取締役常務執行役員 | 1988年太陽神戸銀行入行。三井住友銀行支店長等を経て2018年同社入社。2021年常務取締役等を経て2026年4月より現職。 |
| 伊藤真 | 取締役常務執行役員 | 1994年同社入社。2015年経理部長、2019年経理部長兼経営企画部長、取締役等を経て2026年6月より現職。 |
| 入龍弥 | 取締役執行役員 | 1990年日本石油入社。ENEOS危機管理部長等を経て2021年同社顧問。2021年取締役等を経て2026年4月より現職。 |
| 走尾一隆 | 取締役常勤監査等委員 | 1987年同社入社。2013年総務部長、2015年取締役、2023年取締役執行役員を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、津國伸郎(元三井住友銀行執行役員)、宮部よしみ(元東京国税局厚木税務署長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「石油関連事業」「再生可能エネルギー関連事業」「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。
■石油関連事業
需要家、系列販売店への販売や直営SSの運営、石油化学製品の製造・販売、液化石油ガスの販売を行っています。顧客は一般消費者や系列販売店、法人顧客など多岐にわたります。
収益は、石油製品や石油化学製品の販売代金から得ています。運営は同社および竹鶴石油、NISTRADE(M)SDN.BHD.などの国内外の子会社が行っています。
■再生可能エネルギー関連事業
太陽光発電関連商材の販売やバイオマス発電燃料の生産・販売、および売電事業を展開しています。顧客は電力会社やバイオマス発電燃料を必要とする企業などです。
収益は、太陽光関連商材やバイオマス燃料の販売代金、および電力供給サービスによる売電収入から得ています。運営は同社やNSM諏訪ソーラーエナジー合同会社、NISSIN BIO ENERGY SDN.BHD.などが行っています。
■不動産事業
オフィスビル、店舗、マンション等賃貸用不動産の運営を行っています。顧客は不動産を賃借する法人や個人です。
収益は、賃貸借契約に基づく賃貸収入から得ています。運営は主に同社が行っています。
■その他
食料品の販売や保険の代理業を行っています。顧客は一般消費者や法人などです。
収益は、食料品の販売代金や損害保険契約の代理業務に伴う手数料から得ています。運営は関連会社の日新興産が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は直近5年間で364.7億円から394.3億円へと増加傾向にあります。経常利益は6.7億円から9.5億円に増加した後、直近では3.2億円へと減少しています。一方で、親会社株主に帰属する当期純利益は投資有価証券売却益等により、直近で36.6億円と大幅な増益を記録しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 364.7億円 | 389.0億円 | 387.3億円 | 390.3億円 | 394.3億円 |
| 経常利益 | 6.7億円 | 9.5億円 | 7.5億円 | 5.6億円 | 3.2億円 |
| 利益率(%) | 1.8% | 2.4% | 1.9% | 1.4% | 0.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.9億円 | 3.4億円 | 4.0億円 | 6.2億円 | 36.6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は390.3億円から394.3億円へと増加したものの、売上総利益は73.3億円から68.6億円へと減少しています。その結果、営業利益は前期の3.8億円から当期は1.9億円の赤字へと転落し、収益性の低下が見られます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 390.3億円 | 394.3億円 |
| 売上総利益 | 73.3億円 | 68.6億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.8% | 17.4% |
| 営業利益 | 3.8億円 | -1.9億円 |
| 営業利益率(%) | 1.0% | -0.5% |
販売費及び一般管理費のうち、その他が28.3億円(構成比40.2%)、給料及び手当が18.0億円(同25.6%)、支払手数料が9.8億円(同13.9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の石油関連事業は直営部門や直需部門が堅調に推移し、増収増益となりました。再生可能エネルギー関連事業はバイオマス発電燃料の販売増により増収となりましたが、収益性の低下や設備の落雷被害等によりセグメント損失が拡大しました。不動産事業は稼働が堅調で安定した収益を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 石油関連事業 | 354.3億円 | 356.2億円 | 6.3億円 | 9.4億円 | 2.6% |
| 再生可能エネルギー関連事業 | 29.7億円 | 31.6億円 | -1.0億円 | -9.2億円 | -29.0% |
| 不動産事業 | 6.4億円 | 6.4億円 | 3.5億円 | 3.3億円 | 51.6% |
| 連結(合計) | 390.3億円 | 394.3億円 | 3.8億円 | -1.9億円 | -0.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFと投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と資産売却等によって得た資金で借入の返済等を進める改善局面であることを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8.1億円 | 0.3億円 |
| 投資CF | -4.3億円 | 50.4億円 |
| 財務CF | -3.5億円 | -17.6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.2%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「関わるすべての人の心に寄り添い、ともに笑顔になる未来を目指す」を企業理念に掲げています。エネルギーが持つ“ものを動かす力”を通じ、人々の暮らしに豊かさを届けることで、よりよい未来を創造し、持続可能な社会の実現へ貢献することを目指して事業に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は、企業が果たすべきESG課題への責任を事業活動と一体化させることで社会課題の解決に取り組む文化を重視しています。従業員一人ひとりがお互いを認め合い、刺激を受け合いながら能力を最大限に発揮し、多様な人材が活躍できる職場環境の形成を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
中短期の目標として、2025年3月期から3カ年の中期経営計画を実施しています。「企業価値向上経営の進展」と「サステナビリティ経営の推進」を基本戦略としています。また、多様性の確保に関する目標として2030年3月時点での数値目標を設定しています。
・女性管理職比率:10%
・男性の育児休業取得率:85%
・労働者1人あたり平均残業時間:23.5時間/月
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の注力領域として、再生可能エネルギー関連事業の成長、コア事業の強化、モビリティ事業の進化を掲げています。バイオマス燃料販売等の新規ビジネスを主要ビジネスへ昇華させるとともに、既存のSSを自動車向けエネルギー供給拠点からモビリティ事業へと進化させることで企業価値の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、従業員一人ひとりが相互に認め合い、ビジネスに新たな価値をもたらすことができるよう、主体的な学びの浸透や多様な人材の活躍推進に取り組んでいます。キャリア座談会やコミュニケーション力向上研修の実施、自身の課題に応じたe-learningの選択受講など、能力開発を支援する環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.9歳 | 16.8年 | 5,908,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 57.1% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 74.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 96.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用における女性採用数(80.0%)、中途採用における女性採用数(12.5%)、労働者1人あたり平均残業時間(24.8時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 原油価格の変動リスク
取扱う石油製品の仕入価格は国際情勢等により変動します。仕入価格の上昇や下落に応じた販売価格を設定できない場合や、石油製品市況が急激に悪化した場合、マージンが縮小し同社の利益率の低下など業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定事業への依存リスク
同社は石油製品の販売に依存していますが、脱炭素化の進展や電気自動車の普及により石油需要が想定以上に減少するリスクがあります。再生可能エネルギー事業等の新規ビジネス構築を進めていますが、対応の遅れによる売上の機会損失が生じる可能性があります。
■(3) 製品の供給不安リスク
同社はENEOSと特約販売契約を結び、石油製品の大半を仕入れています。ENEOSの経営戦略の変更による契約内容の見直しや、国際情勢の変化等によって製品が安定的に供給されなくなった場合、売上の機会損失が発生し業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 大規模な自然災害の発生リスク
想定を大きく上回る規模の自然災害が発生し、ENEOSからのローリー給油が停止することによるSSの営業停止や、太陽光発電所の損壊などの直接的な被害を被った場合、同社グループの財政状態および経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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