日新商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日新商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、石油製品の販売やSS運営を行う石油関連事業を主力とする企業です。再生可能エネルギーや不動産賃貸も展開しています。2025年3月期の業績は、売上高が微増、営業利益・経常利益は減益となりましたが、固定資産売却益等の計上で親会社株主に帰属する当期純利益は増益となりました。


※本記事は、日新商事株式会社 の有価証券報告書(第81期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日新商事ってどんな会社?

石油製品販売を主軸に、再生可能エネルギーや不動産事業も展開するエネルギー商社です。

(1) 会社概要

同社は1947年に設立され、1950年に現社名へ変更し石油製品販売を開始しました。1996年には東京証券取引所市場第二部に上場を果たしています。その後、事業多角化を進め、2013年に太陽光発電所の売電を開始しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はスタンダード市場に移行しています。

連結従業員数は379名、単体では344名体制です。筆頭株主は、同社に石油製品を供給するENEOSグループの持株会社であるENEOSホールディングス(持株比率17.10%)です。第2位は主要取引先等の関係にある株式会社日新(同14.80%)、第3位は資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行(同5.20%)となっています。

氏名 持株比率
ENEOSホールディングス 17.10%
日新 14.80%
日本マスタートラスト信託銀行 5.20%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長社長執行役員は筒井博昭氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
筒井 博昭 代表取締役社長社長執行役員 1982年同社入社。取締役販売一部長、常務取締役、代表取締役副社長を経て、2011年4月より現職。
柴崎 正典 取締役常務執行役員 1988年太陽神戸銀行(現三井住友銀行)入行。同行支店長を経て2018年同社入社。総合企画部長などを歴任し、2024年4月より現職。
伊藤 真 取締役執行役員 1994年同社入社。経理部長、総合企画部長などを歴任。2024年4月より取締役執行役員(総務部・人事部・経理部・経営企画部担当)兼経営企画部長として現職。
入 龍弥 取締役執行役員 1990年日本石油(現ENEOS)入社。同社危機管理部長を経て2021年日新商事入社。2024年4月より取締役執行役員(監査部・海外総括部・SSリテール部担当)として現職。
走尾 一隆 取締役常勤監査等委員 1987年同社入社。経営企画室長、総務部長などを歴任。取締役(監査部担当)等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、津國伸郎(元室町殖産代表取締役社長)、山口光(元東京上野税務署長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「石油関連事業」、「再生可能エネルギー関連事業」、「不動産事業」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

(1) 石油関連事業

主にENEOSより石油製品の供給を受け、需要家や系列販売店(小売店)への販売、直営サービスステーション(SS)の運営を行っています。また、石油化学製品の製造・販売や、液化石油ガスの販売も手掛けています。

収益は、需要家や販売店、SS利用者等への製品販売代金等が主な源泉です。運営は、同社および竹鶴石油、海外子会社のNISTRADE(M)SDN.BHD.、NISSIN SHOJI VIETNAM CO.,LTD.等が行っています。

(2) 再生可能エネルギー関連事業

太陽光発電関連商材の販売や売電事業、およびバイオマス発電燃料の販売を行っています。バイオマス燃料については、マレーシア等の海外拠点にて製造・調達・販売を行っています。

収益は、商材の販売代金、電力会社等への売電収入、バイオマス燃料の販売代金からなります。運営は、同社およびNSM諏訪ソーラーエナジー合同会社、NISSIN BIO ENERGY SDN.BHD.等の子会社が行っています。

(3) 不動産事業

オフィスビル、店舗、マンション等の不動産賃貸事業を行っています。社宅やSS跡地などの保有不動産を有効活用し、安定的な収益基盤としています。

収益は、テナントや入居者からの賃貸料収入です。運営は主に同社が行っています。

(4) その他

上記セグメントに含まれない事業として、食料品の販売、損害保険代理業、植物工場の運営などを行っています。

収益は、商品販売代金や保険代理店手数料等です。運営は、関連会社の日新興産やJリーフが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は第78期に減少した後、第79期以降は390億円前後で推移しています。経常利益は変動があり、第81期は5.6億円となりました。一方、当期純利益は第81期に6.2億円となり、前期から増加しています。全体として、売上規模は安定していますが、利益面では変動が見られます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 537億円 365億円 389億円 387億円 390億円
経常利益 9億円 7億円 10億円 8億円 6億円
利益率(%) 1.6% 1.8% 2.4% 1.9% 1.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 14億円 5億円 3億円 4億円 6億円

(2) 損益計算書

直近2期間の傾向を見ると、売上高は微増しました。売上総利益率は約19%で安定していますが、営業利益は減少しました。これは、販売費及び一般管理費の増加などが影響しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 387億円 390億円
売上総利益 73億円 73億円
売上総利益率(%) 18.8% 18.8%
営業利益 5億円 4億円
営業利益率(%) 1.3% 1.0%


販売費及び一般管理費のうち、その他が27億円(構成比38%)、給料及び手当が18億円(同26%)を占めています。売上原価では、商品仕入高が主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益

主力の石油関連事業は売上高が微増しましたが、マージン圧縮等により減益となりました。再生可能エネルギー関連事業は増収となったものの、投資関連費用等により損失を計上しています。不動産事業は一部契約終了等により減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
石油関連事業 352億円 354億円 7億円 6億円 1.8%
再生可能エネルギー関連事業 28億円 30億円 -0.7億円 -1億円 -3.2%
不動産事業 7億円 6億円 4億円 4億円 55.5%
連結(合計) 387億円 390億円 5億円 4億円 1.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動では、石油製品の仕入や販売費及び一般管理費等の営業費用が主な資金需要となります。投資活動では、再生可能エネルギー関連設備やSS機械装置等の設備投資が主な資金需要となります。財務活動では、短期運転資金は自己資金及び短期借入、設備投資や長期運転資金は長期借入を基本としています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2億円 8億円
投資CF -5億円 -4億円
財務CF 5億円 -3億円

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、エネルギーが持つ「ものを動かす力」を信じ、暮らしや社会のつながりを支えることを使命としています。時代の変化に応じて形を変え、新たな価値を創り出す存在となり、関わるすべての人の心に寄り添い、ともに笑顔になる未来を目指すことを企業理念として掲げています。

(2) 企業文化

詳細な明文化されたバリュー等は有価証券報告書に記載がありませんが、企業理念に基づき、時代の変化に柔軟に対応し、新たな価値創造に挑戦する姿勢を重視しています。また、サステナビリティを意識した経営を推進し、脱炭素化や人的資本重視、多様化への取り組みを強化する方針を示しています。

(3) 経営計画・目標

長期ビジョン「nissin Vision 2030」および中期経営計画を策定しています。2025年3月期からの3ヵ年計画(フェーズII)では、企業価値向上経営の進展とサステナビリティ経営の推進を基本戦略としています。

(4) 成長戦略と重点施策

「企業価値向上経営の進展」として、以下の3つの重点目標を設定しています。
1. **再生可能エネルギー関連事業の成長**: バイオマス燃料販売等の新規ビジネスを主要ビジネスへ昇華させ、研究開発に注力します。
2. **コア事業の強化**: 石油関連事業での価値提供継続と、不動産ポートフォリオの見直しによる価値向上を図ります。
3. **モビリティ事業の進化**: SSを拠点としたカーメンテナンス強化やシェアサイクル事業拡大等により、モビリティ事業を確立します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

従業員一人ひとりが能力を最大限発揮し、ビジネスに新たな価値をもたらすことを目指しています。そのために、キャリア希望に合わせた活躍機会の創出(複線型人事制度)、定年後再雇用者の活躍推進、期待役割の理解促進と主体的業務遂行の強化、副業解禁を含む社内外でのスキルアップ促進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.2歳 16.0年 5,884,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -%
男性育児休業取得率 40.0%
男女賃金差異(全労働者) 55.7%
男女賃金差異(正規) 67.1%
男女賃金差異(非正規) 101.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用数(新卒採用3名、中途採用3名)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原油価格の変動リスク

取り扱う石油製品の仕入価格は産油国の動向や国際情勢により変動します。価格転嫁が適切に行えない場合や、在庫評価損が発生した場合、同グループの利益が損なわれる可能性があります。特に急激な市況変動時には、マージンの縮小や採算悪化のリスクがあります。

(2) 特定事業(石油製品の販売)への依存リスク

脱炭素やSDGsへの意識の高まり、電気自動車の普及等により、長期的には石油製品の需要減少が予想されます。再生可能エネルギー事業等の新規ビジネス育成に取り組んでいますが、エネルギー転換が想定以上に加速した場合、対応の遅れにより業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 季節需要の変動リスク

灯油や重油等の需要は気温に大きく影響されます。暖冬や冷夏などの天候不順により暖房需要や電力用需要が減少した場合、販売数量が落ち込み、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 製品の供給不安リスク

石油製品の大半をENEOSより仕入れています。同社の戦略変更や国際情勢の変化等により、製品の安定的供給が受けられなくなった場合、販売機会の損失等により業績に影響が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。