大田花き 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大田花き 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

大田花きは、スタンダード市場に上場する日本最大規模の花き卸売会社です。東京都中央卸売市場大田市場を拠点に、切花や鉢物などの卸売事業を展開しています。第37期の連結業績は、売上高が39億円で前期比6.9%の減収となりましたが、経常利益は3.3億円で同16.5%の増益を達成しました。


※本記事は、株式会社大田花き の有価証券報告書(第37期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 大田花きってどんな会社?


東京都中央卸売市場大田市場において、日本最大規模の取扱高を誇る花き卸売事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1989年に設立され、1990年に大田市場花き部が開場すると同時に卸売業務を開始しました。1996年に旧社を合併して現在の体制となり、2004年にJASDAQ(現スタンダード)へ上場しました。その後、2010年代には九州大田花きや大田ウィングスなどの子会社を設立し、グループ体制を強化しています。

連結従業員数は186名、単体では176名です。大株主の筆頭は資産管理会社の大森園芸ホールディングスで、第2位は青果卸売を行う東京青果、第3位は同社執行役副社長の小杉圭一氏です。

氏名 持株比率
大森園芸ホールディングス 31.97%
東京青果 9.82%
小杉圭一 9.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名(監査役含む)の計14名で構成され、女性役員比率は14.0%です。代表執行役社長は萩原正臣氏です。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
萩原 正臣 取締役 代表執行役社長 1996年入社。営業本部や九州大田花き社長を経て、情報システム本部長などを歴任。2025年6月より現職。
磯村 信夫 取締役 1973年大森園芸市場入社。同社設立時に専務、後に社長を経て、2005年より取締役会会長。
磯村 隆夫 取締役 2007年フィリップモリスジャパン入社。2016年同社取締役就任。現在はフィリップモリスジャパンのマネージャーも務める。


社外取締役は、須磨佳津江(フリーキャスター)、大島代次郎(千疋屋総本店社長)、菊田一郎(L-Tech Lab代表)、内田善昭(公認会計士)、小和田有花(アスクルコーポレートコミュニケーション統括部長)、川田光太(東京青果社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「花き卸売事業」を展開しています。

花き卸売事業


卸売市場法に基づき、東京都中央卸売市場大田市場において、切花や鉢物などの花き卸売業を営んでいます。全国の生産者から出荷される花きを、生花店や仲卸業者などの買参人に対して販売する役割を担っており、日本最大級の取扱規模を有しています。また、子会社の九州大田花きにおいても九州地方で同様の卸売・問屋業を行っています。

収益は主に、生産者から販売を受託した花きを卸売した際に受け取る「受託手数料」や、自ら商品を買い付けて販売する際の売買差益などから得ています。運営は主に大田花きが行っており、九州地方では九州大田花きが事業を展開しています。その他、関連会社を通じて種苗販売や倉庫賃貸、研究・情報提供サービスなども行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2022年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は40億円前後で推移しています。2025年3月期は減収となりましたが、経常利益などの各利益項目は増益となり、利益率は改善傾向にあります。当期純利益も安定して確保しており、黒字経営を継続しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 39億円 43億円 41億円 39億円
経常利益 2.5億円 4.2億円 2.8億円 3.3億円
利益率(%) 6.3% 9.8% 6.8% 8.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.7億円 3.1億円 1.8億円 2.2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高は減少したものの、売上総利益は増加しており、収益性が向上しています。売上総利益率は70%台後半で推移しており、高い水準を維持しています。営業利益および営業利益率も前期と比較して改善が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 41億円 39億円
売上総利益 30億円 31億円
売上総利益率(%) 71.9% 79.6%
営業利益 2.2億円 2.8億円
営業利益率(%) 5.3% 7.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比47%)、減価償却費が3億円(同9%)を占めています。売上原価は売上高に対して約20%を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは花き卸売事業の単一セグメントです。当期は子会社において取引形態の一部変更があった影響で売上高は減少しましたが、基幹市場としての集荷力・販売力の強化により利益面では増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
花き卸売事業(連結) 41億円 39億円 2.2億円 2.8億円 7.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

大田花きは、営業活動で得た資金を投資や財務活動に充当しています。営業活動では、税金等調整前当期純利益の計上や売上債権の減少が資金獲得に寄与しましたが、仕入債務の減少や法人税等の支払いが資金流出の主な要因となりました。投資活動では、有形固定資産の取得や貸付けによる支出が資金使用の主な要因となりました。財務活動では、長期借入金の返済や配当金の支払いが資金使用の主な要因となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 10億円 0.7億円
投資CF -1.2億円 -2.5億円
財務CF -3.7億円 -3.8億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「世界を花で笑顔にする」というパーパスを掲げています。花き流通を担う企業集団として、商流、物流、情報流、資金流の各機能を有機的に連動させ、生産者や顧客の期待に応えることを目指しています。事業を通じて暮らしに潤いを提供し、豊かな社会文化の創造に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


効率的な流通を実現しつつ、花き文化の発展に貢献する姿勢を重視しています。また、コーポレート・ガバナンスを徹底し、品質、情報、流通の管理ビジョンとして「確実なパスワーク」を掲げ、経営機能の強化を図っています。DX化による業務効率向上や、やりがいのある職場環境の整備にも積極的に取り組む文化があります。

(3) 経営計画・目標


「企業理念」「将来ビジョン」「経営目標」に基づき、事業年度ごとに中期経営計画を策定しています。また、SDGs重点目標項目も掲げ、社会・環境問題に対する方針や戦略的目標を推進しています。経営目標の具体的な数値としては、サステナビリティ関連の指標などを設定しています。

* 女性管理職比率:2030年3月までに15%
* 女性従業員比率:2030年3月までに35%

(4) 成長戦略と重点施策


日本最大の花き卸売会社としての強みを活かし、効率的な流通と花き文化の発展を目指しています。「物流の2024年問題」への対応や、生産コストの価格転嫁を図りつつ付加価値のある商品を提供すること、情報システムの強化などを優先課題としています。また、新たな需要掘り起こしのため、消費活動を牽引する取り組みも行っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


ダイバーシティ推進を重要な経営戦略の一つと位置づけ、多様な人材が活躍できる環境整備に取り組んでいます。特に女性のリーダーシップ機会の創出や、育児・介護と仕事の両立支援に注力しています。また、ソーシャルインクルージョンとして高齢者や障害者の雇用維持・促進も行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 17.1年 6,312,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.3%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規) -
男女賃金差異(非正規) -


※「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、一部項目の記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(10%)、女性従業員比率(28%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 天候不順による需給への影響


花きは商品価値が天候に大きく左右される特性があります。日照不足や気温変動などの天候要因は、生産物の品質や入荷量だけでなく、消費者の購買意欲にも影響を与えます。需給バランスの崩れにより取引量や価格が変動した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 自然災害や疾病等の有事発生


地震や台風などの自然災害、あるいは感染症の流行といった有事が発生した場合、人的・物的被害が生じるリスクがあります。また、社会情勢の急激な変化により市場機能や物流網が寸断された場合、事業の継続が困難となり、経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 花き需要の変動と消費動向


花きは嗜好性が高い商品であり、少子高齢化や生活様式の変化に伴い、消費動向の予測が困難です。主要な購買層である中高年層の消費意欲減退や、物価高騰による買い控えなどが進んだ場合、取扱高の減少につながり、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。