※本記事は、株式会社大田花きの有価証券報告書(第38期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大田花きってどんな会社?
花き卸売事業を主軸とし、国内最大規模の取扱量を誇る企業です。
■(1) 会社概要
1989年1月に東京都中央卸売市場大田市場花き部への入場を目的に設立されました。1990年9月に日本初のセリ下げ方式によるセリ機械等を導入し、花きの卸売業務を開始しています。1997年9月には株式を店頭登録し、2008年12月に九州大田花きを設立しました。2026年4月には東日本板橋花きを子会社化し、首都圏需要をよりきめ細かく捉える体制を構築しています。
従業員数は連結で186名、単体で176名です。筆頭株主は創業一族の資産管理会社である大森園芸ホールディングスで、第2位は青果卸売業を手掛ける事業会社の東京青果となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大森園芸ホールディングス | 31.97% |
| 東京青果 | 9.80% |
| 小杉 圭一 | 9.43% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性14名、女性2名の計16名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表執行役社長は萩原正臣氏が務めています。取締役9名のうち、社外取締役は6名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 萩原 正臣 | 取締役 兼 代表執行役社長 | 1996年4月同社入社。九州大田花き代表取締役社長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 磯村 信夫 | 取締役会会長 | 1989年1月同社設立専務取締役。1994年2月同社代表取締役社長等を経て、2005年6月より現職。 |
| 磯村 隆夫 | 取締役 | フィリップモリスジャパン等を経て、2012年3月大森園芸代表取締役社長。2016年6月より現職。 |
社外取締役は、須磨佳津江(フリーキャスター)、大島代次郎(千疋屋総本店代表取締役社長)、菊田一郎(流通研究社代表取締役)、内田善昭(公認会計士・税理士)、小和田有花(アスクルリーガル&リスクマネジメント本部長)、川田光太(東京青果代表取締役社長・報酬委員長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「花き卸売事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
卸売市場法に基づき、東京都中央卸売市場大田市場を中心として花き卸売業を営んでいます。日本最大規模の花き取引所として、国内外の生産者から仕入れた切花や鉢物などの花きを、生花店などの小売業者や卸業者に対して販売しています。さらに、市場関係者向けに花き類を保管する倉庫の賃貸なども手掛けています。
収益源は主に、生産者からの委託商品を購入者へ引き渡し売買仕切書を発行する委託取引や買付取引による花きの販売代金および各種手数料です。運営は同社のほか、九州地方で展開する九州大田花きや、東北地方で展開するとうほくフラワーサポートなどのグループ企業が地域特性に合わせて行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移を見ると、売上高は概ね40億円前後で推移していましたが、直近2期は連続して減少しています。利益面についても、天候不順による需給バランスの乱れや物価高騰による個人消費の落ち込みが影響し、当期は大幅な減益を余儀なくされており、厳しい経営環境が続いています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 39億円 | 43億円 | 41億円 | 39億円 | 37億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 4億円 | 3億円 | 3億円 | 1億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 9.8% | 6.8% | 8.6% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 2億円 | 3億円 | 2億円 | 2億円 | 0.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高と売上総利益はともに減少しており、収益性の低下が見られます。特に営業利益は大幅な減益となり、営業利益率も低下しています。相場の下落や販売数量の減少が直接的に収益を圧迫していることが窺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 39億円 | 37億円 |
| 売上総利益 | 31億円 | 29億円 |
| 売上総利益率(%) | 79.6% | 77.9% |
| 営業利益 | 3億円 | 1億円 |
| 営業利益率(%) | 7.2% | 1.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が13億円(構成比46%)、地代家賃が3億円(同12%)を占めています。また、売上原価の主な内訳は運賃仕入(同89%)となっています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFで生み出した資金を用いて借入金の返済を進めており、堅実な財務運営が行われている健全型と言えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1億円 | 3億円 |
| 投資CF | -3億円 | -2億円 |
| 財務CF | -4億円 | -3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「世界を花で笑顔にする」というパーパス(存在意義)のもと、事業を通して暮らしに潤いを提供し、豊かな社会文化を創造することを経営方針として掲げています。主要な機能である商流、物流、情報流、資金流を有機的に連動させ、生産者や顧客の期待に応えることで事業の持続的な発展と企業価値向上を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「確実なパスワーク」という品質、情報、流通の管理ビジョンを明確にし、経営機能の強化を図っています。国内外の生産者が花きを生産して良かったと実感できるような流通体制を重んじており、業界の先頭に立って効率化や構造改革、再編に進んで取り組む姿勢を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
具体的な数値目標は公表していません。しかしながら、冠婚葬祭やギフト需要、底堅い個人需要など幅広い需要基盤を活かし、選択される流通基盤として取扱高を維持・拡大させていく方針を示しています。また、DX化などによる業務効率の向上を通じてコスト低減を実現することも目標に掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略として、東日本板橋市場との連携強化による日本最大規模の花き取引所ビジネスの確立を進めています。また、コールドチェーンの強化や荷役作業の効率化による合理的物流の実現、関係事業者との情報共有や商品企画を通じた需要創出型ビジネスの展開を目指しています。優先課題として、物流網の構築や付加価値のある商品の提供に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人材は最大の経営資源」であるとの認識のもと、花のソリューションビジネスを担う自律型人材や多様性を活かす人材の育成を推進しています。特定の職務に限定することなく幅広い領域で活躍できる人材を育成し、組織の柔軟性を高めるとともに、従業員のエンゲージメント向上を通じて持続的な企業価値の向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.2歳 | 17.5年 | 6,511,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | - |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | - |
※同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には男女の賃金の差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 気候変動等による天候の影響
花きの商品は供給・需要の双方で天候の影響を強く受けます。温暖化などの異常気象により供給と需要のバランスが崩れ、取引量や価格に変動が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は保冷倉庫棟の設備強化などを通じて品質面での対策を進めています。
■(2) 花きの特性に伴う債権回収
生花店の経営において、花きは鮮度が求められ商品価値期間が短いという特性があります。そのため、在庫が直ちに損失となる可能性が高く、取引先の経営や資金繰りが悪化した場合、貸倒損失が発生し同社グループの財務状況に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 卸売市場法の規制緩和による影響
同社は卸売市場法等の規制対象ですが、2020年の法改正により規制が大きく緩和されました。花き卸売事業を流通の要と位置づける同社にとって、この社会制度の変化は業績に影響を与える可能性があります。同社は花き流通のプラットフォーマーとしての役割強化に努めています。



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