栄電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

栄電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場する栄電子は、産業用一般電子部品や電子デバイス、IoT機器等の販売を主力事業とする専門商社です。当期の業績は、半導体製造装置関連市場での顧客の在庫調整が進展し期後半にかけて受注が回復した結果、売上高、利益ともに前年を上回り、大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社栄電子 の有価証券報告書(第59期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 栄電子ってどんな会社?


産業用一般電子部品や電子機器の販売を展開する専門商社である同社の概要と経営陣を紹介します。

(1) 会社概要


1971年、電子部品および電子機器の販売を目的として神奈川県に設立されました。1977年には東栄電子を設立し、1997年に株式を店頭登録、2004年にはジャスダック証券取引所への上場を果たしました。その後も国内拠点を拡大し、2026年には台湾を拠点とした現地法人を設立するなど、グローバルな展開を進めています。

現在、同社グループの従業員数は連結で85名、単体で81名体制となっています。大株主の構成を見ると、筆頭株主は個人の染谷英雄氏で、第2位はウルトラテクノロジー、第3位は個人の染谷美穂子氏となっており、個人株主の保有比率が比較的高い構成となっています。

氏名 持株比率
染谷英雄 24.30%
ウルトラテクノロジー 8.71%
染谷美穂子 7.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長は津田百子氏が務めています。取締役5名に対する社外取締役比率は60.0%です。

氏名 役職 主な経歴
津田百子 代表取締役社長 1990年同社入社。経理課長、取締役副社長兼管理本部長兼経理部長などを経て、2019年東栄電子代表取締役社長。2022年より同社代表取締役社長。
大久保雅文 取締役 1994年キャッツ入社。2004年同社入社。取締役総務部長、執行役員購買部長などを経て、2021年取締役執行役員営業担当。2023年より取締役執行役員企画担当。


社外取締役は、石川雅也氏(公認会計士)、田中美登里氏(弁護士)、石川雅己氏(元千代田区長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子部品機器販売」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 電子部品機器販売事業


同社グループは、産業用一般電子部品、電子デバイス、電源、IoT機器、センサーなどの販売を主な事業としています。主な顧客として、半導体製造装置、医療機器、放送機器、通信機器などの分野におけるメーカー企業を多数有しており、特に半導体製造装置関連メーカー向けが大きな割合を占めています。

収益は、これらの電子部品や電子機器を顧客企業に安定的に供給し、販売することによって得ています。事業の運営は、同社および連結子会社である東栄電子、さらに台湾を拠点とする現地法人の台榮電子股份有限公司などが共同で行っており、顧客ニーズに応じた高付加価値商材の提案を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、半導体市場の需給変動の影響を受け、売上高と利益は大きく変動しています。2023年3月期に高い売上水準を記録した後、顧客の在庫調整の影響により一時的に業績が落ち込みました。しかし、直近の2026年3月期には受注が回復傾向となり、再び増収増益に転じています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 90.1億円 108.4億円 83.7億円 64.3億円 73.3億円
経常利益 7.0億円 9.0億円 3.4億円 0.8億円 1.5億円
利益率(%) 7.8% 8.3% 4.1% 1.3% 2.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 5.3億円 6.5億円 2.3億円 0.4億円 1.1億円

(2) 損益計算書


直近2期を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益と営業利益が大きく改善しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移していますが、増収効果によって営業利益率は約2倍に向上しており、収益基盤の回復傾向が明確に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 64.3億円 73.3億円
売上総利益 10.6億円 11.9億円
売上総利益率(%) 16.4% 16.2%
営業利益 0.6億円 1.4億円
営業利益率(%) 1.0% 1.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与手当が4.7億円(構成比44.7%)、支払手数料が1.6億円(同15.3%)を占めています。売上原価の多くは商品の仕入費用によるものです。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金を将来の成長に向けた投資や借入金の返済、株主還元に充てる「健全型」の構造となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -3.3億円 0.3億円
投資CF -0.7億円 -0.3億円
財務CF -0.5億円 -0.5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「お客の役に立て」を経営の基本理念として掲げています。株主、お取引先、従業員およびその家族、地域社会など、同社を取り巻くすべてのステークホルダーを「お客」と捉え、誠実・真摯・高潔な姿勢で電子部品を通じて人と技術をつなぎ、安定供給と新たな価値創造により産業と社会の発展に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「『お客の役に立て』~信頼と挑戦で未来を切り拓く~」を行動指針としています。素直な心、奉仕の心を持ち、約束を守り、時間を大切にするという基本姿勢を重視するとともに、持続可能な未来への挑戦を掲げています。わくわくする挑戦を重ね、感謝と繁栄が循環する未来を創ることを目指す文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


資本効率の向上を重視し、営業利益率、ROIC(投下資本利益率)、ROE(自己資本利益率)の改善に取り組むことで、PBR(株価純資産倍率)1倍以上の達成を目標としています。2028年3月期の数値目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:150億円
* 投下資本利益率(ROIC)・自己資本利益率(ROE):8%以上
* 株価純資産倍率(PBR):1倍以上

(4) 成長戦略と重点施策


半導体関連分野への依存度が高いことによる業績変動リスクに対応するため、顧客および事業領域の拡大による収益基盤の安定化を図ります。社会インフラ・重電分野などへの展開や、東アジアを中心とした海外展開の推進により成長機会を取り込みます。また、DX推進による業務効率化と生産性向上、人的資本への投資強化を進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、顧客ニーズを的確に捉える提案力や新たな商流を創出する構想力を担う人材の育成が競争力の源泉であると位置づけています。求める人材像を「Sakae-Denshi Waaaay!」として定義し、階層別の研修制度を通じて役割認識とスキル獲得を促進するとともに、性別や国籍等を問わず主体的な挑戦姿勢を重視した評価・登用を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.0歳 11.2年 5,066,831円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.5%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※男性育児休業取得率および男女賃金差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 半導体業界の需要動向による影響

同社グループは半導体製造装置関連の取引高が多く、半導体業界の需給動向が業績に影響を与える可能性があります。半導体電子部品の市況変動により、経営成績が直接的な影響を受けるリスクがあります。

(2) 特定のお取引先への依存度が高いこと

国内大手半導体製造装置メーカー各社との取引依存度が高いため、関連装置の需要動向に業績が左右される可能性があります。これに対し、新市場・新規顧客の開拓や新製品の取扱い増加により、リスクの軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。