栄電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

栄電子 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場のエレクトロニクス商社。産業用電子部品や機器の販売を行う。直近の決算では、主力市場である半導体製造装置業界における在庫調整等の影響を受け、売上高64億円(前期比23.2%減)、経常利益0.8億円(同75.3%減)の減収減益となった。


※本記事は、株式会社栄電子 の有価証券報告書(第58期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 栄電子ってどんな会社?


産業用電子部品や電子機器を取り扱うエレクトロニクス商社です。半導体製造装置関連の顧客基盤に強みを持ちます。

(1) 会社概要


1971年に設立され、1977年に子会社の東栄電子を設立しました。2004年に日本証券業協会(現JASDAQ)に株式を上場し、2010年の市場統合を経て、2022年の東証市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。

連結従業員数は86名(単体83名)です。筆頭株主は染谷英雄氏、第2位は染谷美穂子氏であり、創業家等の個人が上位を占めています。第3位は有限会社酒東商事となっています。

(2) 経営陣


同社の役員は男性5名、女性3名の計8名で構成され、女性役員比率は37.5%です。代表取締役社長は津田百子氏です。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
津田 百子 代表取締役社長 1990年入社。経理課長、取締役経理部長、取締役副社長兼管理本部長等を経て、2020年より現職。
大久保 雅文 取締役 2004年入社。取締役総務部長、執行役員首都圏営業部長、取締役執行役員営業担当等を経て、2023年より現職。


社外取締役は、石川雅也(公認会計士)、田中美登里(弁護士)、石川雅己(元千代田区長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子部品機器販売」事業を展開しています。

(1) 電子部品機器販売事業


産業用一般電子部品、スイッチング電源、電子デバイス(半導体等)、IoT機器、センサー等の販売を行っています。特に半導体製造装置、医療機器、放送・通信機器分野のメーカーを主要な顧客としています。

仕入先メーカーから電子部品や機器を調達し、顧客へ販売することで得られる販売差益が主な収益源です。運営は主に栄電子が行っており、連結子会社の東栄電子も同様に電子部品および電子デバイスの販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2023年3月期をピークに、売上高は減少傾向にあります。利益面でも、売上の減少に伴い利益率が低下しており、直近では減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 56億円 90億円 108億円 84億円 64億円
経常利益 1.4億円 7.0億円 9.0億円 3.4億円 0.8億円
利益率(%) 2.5% 7.8% 8.3% 4.1% 1.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.1億円 5.2億円 6.4億円 2.1億円 0.3億円

(2) 損益計算書


売上高の減少に伴い、売上総利益が減少しました。一方で販売費及び一般管理費は増加傾向にあり、営業利益率は大きく低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 84億円 64億円
売上総利益 12億円 11億円
売上総利益率(%) 14.7% 16.4%
営業利益 3億円 1億円
営業利益率(%) 3.8% 1.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与手当が4.6億円(構成比46.3%)、支払手数料が1.4億円(同13.7%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


* パターン:末期型
* 財務指標:企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.9%で市場平均を上回っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 2億円 -3億円
投資CF -0.3億円 -1億円
財務CF -1億円 -1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「お客の役に立て」を基本理念としています。誠実・真摯・高潔な姿勢で、電子部品を通じて人と技術をつなぎ、安定供給と新たな価値創造によって産業と社会の発展に貢献することを使命として掲げています。

(2) 企業文化


「素直な心」「奉仕の心」「約束を守る」「時間を大切にする」「持続可能な未来への挑戦」を行動指針としています。時代や環境の変化に柔軟に対応し、信頼関係を重視しながら、わくわくする挑戦を重ねる企業風土を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2028年3月期を最終年度とする中期経営計画において、資本コストや株価を意識した経営により企業価値を高める方針のもと、以下の数値目標を掲げています。

* 連結売上高:150億円
* 投下資本利益率(ROIC)・自己資本利益率(ROE):8%以上
* 株価純資産倍率(PBR):1倍以上

(4) 成長戦略と重点施策


収益力の向上に向けて、顧客基盤の多様化や新規市場・販路の開拓、M&Aの活用により安定的な収益源の確保を目指しています。また、国内拠点の選択と集中、東アジア圏を中心とした海外展開の加速、DX推進による生産性向上にも取り組んでいます。あわせて、資本コストを意識した経営と利益還元の強化、IR活動の充実も重点施策としています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営目的に沿った役割認識と実践のためのスキル獲得を目的として、階層別研修制度を導入しています。中核人材の登用にあたっては、性別等を問わず成果や意欲を評価する方針です。また、育児や介護と仕事の両立支援など、社内環境の整備にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.1歳 10.1年 4,764,314円


※平均年間給与は、基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の割合(41.9%)、管理職に占める割合(12.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 半導体業界の需要動向


同社グループは半導体製造装置関連の取引高が多く、半導体業界の需給動向が経営成績変動の主たる要因となります。そのため、半導体電子部品の市況によっては、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 特定の取引先への依存


国内大手半導体製造装置メーカー各社との取引依存度が高くなっています。そのため、半導体市場や関連装置の需要動向によっては、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、新市場・新規顧客の開拓等によりリスク軽減を図る方針です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。