日本ライフライン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本ライフライン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する日本ライフラインは、心臓血管領域を中心とする高度管理医療機器の製造・販売を主力事業としています。直近の業績では、主力のEP/アブレーション領域や新領域である脳血管関連の好調により、増収増益を達成しました。継続的な成長投資により事業基盤の拡大を進めています。


※本記事は、日本ライフライン株式会社の有価証券報告書(第46期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本ライフラインってどんな会社?


心臓血管領域を中心に医療機器の製造および販売を展開するハイブリッド型の医療機器メーカーです。

(1) 会社概要


1981年に心臓心拍補助器の販売および輸入販売を目的として設立されました。1997年に株式を店頭登録し、2001年には初の自社製品となるPTCAガイドワイヤーを発売してメーカー機能を強化しました。2017年にはマレーシアに子会社を設立し、近年は消化器や脳血管領域への展開も進めています。

同社グループは、連結従業員数1,304名、単体従業員数1,085名の体制で事業を運営しています。筆頭株主はKS商事で、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
KS商事 15.76%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.68%
日本カストディ銀行(信託口) 10.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は鈴木啓介氏が務めており、社外取締役の比率は約38%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木啓介 代表取締役社長社長執行役員 メディカル八千代田東京販売、カーディオ・センター代表取締役を経て同社取締役。副社長等を経て、2005年より現職。
村瀬達也 代表取締役副社長執行役員 フィッシャーアンドパイケルヘルスケアを経て同社入社。EG事業推進部長やCVG事業本部長等を歴任し、2025年より現職。
髙宮徹 取締役専務執行役員開発生産本部長 スミスアンドネフューオーソペディックスを経て同社入社。EST事業部長やCV事業本部長等を歴任し、2026年より現職。
江川毅芳 取締役常務執行役員経営管理本部長 EY新日本有限責任監査法人やFrancfrancを経て同社入社。財務経理部長等を歴任し、2025年より現職。
山田健二 取締役常務執行役員管理本部長 エービーシー・マートを経て同社入社。経営管理部長や管理本部長、開発生産本部長等を歴任し、2025年より現職。
伊藤孝志 取締役常務執行役員不整脈事業本部長 1993年同社入社。CRM事業推進部長やデバイス事業部長、不整脈事業本部長等を歴任し、2026年より現職。
干場由美子 取締役上席執行役員業務オペレーション統括部長 アーチを経て同社入社。総務部長や人事総務統括部長等を歴任し、2025年より現職。
髙橋省悟 取締役(常勤監査等委員) ユニバーサル証券を経て同社入社。法務室長や開発生産本部長等を歴任し、2022年より現職。


社外取締役は、池井良彰(MAパートナーズ代表取締役)、川原奈緒子(東京グリーン法律事務所弁護士)、中川理惠(ダスキン社外取締役)、苅米裕(苅米裕税理士事務所所長)、太田知成(TMI総合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、医療機器事業の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) リズムディバイスおよびEP/アブレーション


不整脈の治療に用いる心臓ペースメーカなどの心臓植込み型電気デバイスや、検査・診断用のEPカテーテルなどを取り扱っています。全国の医療機関向けに販売を行っており、自社製品の開発や一部製品の製造も手掛けています。

収益は主に製品の販売代金として医療機関や代理店から得ています。製品の販売は同社が行うほか、EPカテーテル等の一部製品の製造については連結子会社のJLL Malaysia Sdn. Bhd.が担っています。

(2) 心血管関連および脳血管関連


大動脈疾患の治療に用いる人工血管やステントグラフト、脳血管内治療に用いる塞栓用コイルや血栓吸引カテーテルなどの医療機器を提供しています。高度な専門性を要する外科治療や低侵襲治療を支援しています。

製品の販売代金から収益を獲得しており、海外の優れたテクノロジーを輸入して販売する商社機能と、自社で開発・製造するメーカー機能のハイブリッド型モデルで展開しています。事業の運営は同社が行っています。

(3) 消化器関連


消化器疾患の治療に用いる大腸用ステント、胃・十二指腸用ステント、胆管チューブステントなどの医療機器を提供しています。心臓血管領域で培ったカテーテル等の独自技術を応用して製品を展開しています。

製品の販売によって収益を得ており、自社開発製品を主力としてシェア拡大を図っています。製品の製造および販売は同社が行うほか、一部製品の製造についてはJLL Malaysia Sdn. Bhd.も行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、売上高が概ね500億円台後半で堅調に推移し、当期は過去最高の売上高を記録しました。利益面においても、経常利益率が継続して約20%前後の水準を維持しており、安定した高収益体質を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 515億円 518億円 514億円 566億円 592億円
経常利益 100億円 109億円 106億円 123億円 126億円
利益率(%) 19.4% 21.1% 20.6% 21.8% 21.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 77億円 65億円 73億円 93億円 94億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績は、売上高と売上総利益がともに増加傾向にあります。売上総利益率は約60%と非常に高い水準をキープしており、高付加価値な自社製品の販売や新領域の好調が全体の収益性を強力に支えています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 566億円 592億円
売上総利益 342億円 352億円
売上総利益率(%) 60.4% 59.4%
営業利益 123億円 126億円
営業利益率(%) 21.8% 21.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が64億円(構成比28.6%)、研究開発費が31億円(同13.7%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は医療機器事業の単一セグメントですが、品目ごとの販売状況を開示しています。当期は主力のEP/アブレーションおよび成長ドライバーと位置付ける脳血管関連が大きく伸長し、全体の売上成長を牽引しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
リズムディバイス 133億円 131億円
EP/アブレーション 278億円 291億円
心血管関連 122億円 127億円
脳血管関連 18億円 27億円
消化器 14億円 17億円
連結(合計) 566億円 592億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 91億円 82億円
投資CF -18億円 -20億円
財務CF -90億円 -46億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.1%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「最新最適な医療機器を通じて健康社会の実現に貢献する」ことをミッションとして掲げています。医療機器を取り扱う企業として、患者や医療従事者に優れた医療機器を提供し、社会的価値と経済的価値の両方を同時に追求することで、健康社会の実現を目指しています。

(2) 企業文化


メーカー機能と商社機能の両方を持つハイブリッド型のビジネスモデルを特長とし、独自技術による製品開発と、海外の最先端テクノロジーの迅速な導入を両立する事業展開を重視しています。自社製品と仕入商品を戦略的かつ選択的に組み合わせ、柔軟で強靭なプロダクトポートフォリオを構築する価値観を持っています。

(3) 経営計画・目標


現行の中期経営計画(2028年3月期まで)において、以下の具体的な数値目標を掲げています。

* 売上高:700億円
* 新領域売上高:110億円
* 営業利益率:20%水準
* EPS(1株当たり利益):145円
* ROIC(投下資本利益率):13%

(4) 成長戦略と重点施策


心臓領域で培った知見や技術を応用し、「脳血管」「消化器」「構造的心疾患」の3領域を戦略的柱として事業領域の拡大を加速させます。また、国内市場に依存しない収益基盤の構築に向けたグローバル売上の拡大や、自社リソースを多角的に活用するOEM製造の推進を通じて、持続的な成長と収益性の向上を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業ポートフォリオの変革を牽引・推進できる人材の確保と育成に注力しています。特に、グローバル展開を推進する人材の確保・育成、自社製品の競争力を維持するための技術者の採用、そしてハイブリッド型ビジネスモデルを牽引するマネージャー層の育成を重要課題と位置付け、多様な従業員が活躍できる社内環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.1歳 10.2年 9,558,154円


※平均年間給与は時間外勤務手当等の諸手当および賞与の額を含んでいます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.8%
男性育休取得率 79.4%
男女賃金差異(全労働者) 43.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 54.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 66.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合製品の参入による市場競争激化


同社製品と競合する医療機器の市場導入や、PFA(パルス・フィールド・アブレーション)等の新技術の普及により、同社製品の市場シェアが低下するリスクがあります。これに対し、製品ラインナップの強化や新規性の高い製品の迅速な導入によりリスクの低減に努めています。

(2) 製品の不具合による販売停止や訴訟


取扱う医療機器に不具合が生じ、健康被害やその懸念が発生した場合、製品の販売停止や回収措置、損害賠償請求の訴訟が提起されるリスクがあります。関連する規制や品質管理に関する規格に準拠し、厳格な品質管理体制を構築して対応しています。

(3) 特定の仕入先に対する依存


一部の商品や自社製品の原材料供給を特定の仕入先に依存しており、災害や競合による仕入先の買収等で供給が滞った場合、販売継続が困難になる可能性があります。仕入先との契約期間の長期化や代替仕入先の確保等を通じてリスク分散を図っています。

(4) 投融資および債権の回収遅延・不能


海外スタートアップ等の取引先への投融資を行っていますが、取引先の経営悪化や事業計画の遅れに伴い、投資有価証券評価損や貸倒引当金の計上が必要となるリスクがあります。投融資委員会の設置や定期的なモニタリングにより厳格な審査を行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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