※本記事は、VTホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第43期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. VTホールディングスってどんな会社?
自動車ディーラー経営を中核とし、積極的なM&Aにより国内外へ事業エリアを拡大している持株会社です。
■(1) 会社概要
同社は1983年、愛知県東海市にホンダベルノ東海として設立され、1998年に名古屋証券取引所市場第二部に上場しました。2003年に持株会社体制へ移行し、現商号に変更しました。その後、M&Aにより日産系ディーラーや海外の自動車販売会社を次々とグループ化し、2016年にはスペインのMASTER AUTOMOCION, S.L.等を子会社化するなど、グローバルに事業を拡大しています。
現在の連結従業員数は4,299名、単体では31名の体制です。筆頭株主は有限会社エスアンドアイ、第2位は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)です。上位株主には創業家や資産管理機関、取引のある損害保険会社などが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社エスアンドアイ | 13.93% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.88% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.30% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名(社外取締役を含む)の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は高橋一穂氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高橋一穂 | 代表取締役社長 | 1972年愛知日野自動車入社。中古車販売創業を経て1983年同社設立、社長就任。グループ各社の社長を歴任し、現在はホンダカーズ東海、エルシーアイ、ピーシーアイの社長も兼務。 |
| 伊藤誠英 | 専務取締役経営戦略本部長 | 1996年同社入社。総務部長、J-netレンタリース社長、経営戦略本部長などを経て、2014年より現職。現在はJ-netレンタリース会長、MIRAIZ社長なども兼務。 |
| 山内一郎 | 常務取締役管理本部長 | 1983年富士電機入社。1999年同社入社。経理部長、管理部長、J-netレンタリース社長などを歴任。2008年常務取締役管理本部長に就任し、2022年より現職。 |
| 堀直樹 | 取締役 | 1996年同社入社。住宅事業部長、新規事業部長、ホンダカーズ東海社長などを経て、2007年ワイズホールディングス社長に就任(現任)。2014年より同社取締役。 |
| 中嶋勉 | 取締役 | 1989年ホンダベルノ東海入社。2014年同社入社および日産サティオ奈良社長。2015年ホンダカーズ東海副社長(現任)。2021年より同社取締役。 |
| 伊藤和繁 | 取締役 | 2004年同社入社。トラスト取締役、南アフリカやスペインの海外子会社勤務を経て、2024年より経営戦略本部海外事業推進室長兼管理部長として現職。 |
| 山﨑宅哉 | 取締役 | 1991年トヨタ自動車入社。北米法人幹部などを経て2021年同社入社。経営戦略本部経営企画部長を務め、2024年より現職。モトーレン三河社長も兼務。 |
社外取締役は、山田尚武(弁護士)、藤谷真理(税理士)、黒野葉子(大学教授)、土田新一郎(元パレモHD執行役員)、柴田和範(公認会計士)、鹿倉祐一(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車販売関連事業」および「住宅関連事業」を展開しています。
■(1) 自動車販売関連事業
ホンダ系、日産系などの国内ディーラーに加え、輸入車インポーター、海外自動車ディーラー、レンタカー事業などで構成されています。主に新車・中古車の販売、自動車の修理・点検を行っており、グループの中核事業です。
収益は、顧客からの車両代金、整備・点検料、レンタカー利用料などから得ています。運営は、株式会社ホンダカーズ東海、長野日産自動車株式会社、J-netレンタリース株式会社、CATERHAM CARS GROUP LIMITEDなどの国内外の事業会社が行っています。
■(2) 住宅関連事業
マンションおよび戸建住宅の分譲販売、注文住宅や商業施設の建築請負などを行っています。自動車ディーラーの店舗建設なども手掛けています。
収益は、住宅購入者や施主からの販売代金、請負工事代金などから得ています。運営は、AMGホールディングス株式会社、株式会社エムジーホーム、株式会社アーキッシュギャラリーなどが主に行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は過去5期間で一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では第40期をピークに減少傾向が見られますが、当期も黒字を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,995億円 | 2,379億円 | 2,663億円 | 3,116億円 | 3,516億円 |
| 税引前利益 | 78億円 | 180億円 | 126億円 | 115億円 | 97億円 |
| 利益率(%) | 3.9% | 7.5% | 4.7% | 3.7% | 2.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 47億円 | 117億円 | 72億円 | 67億円 | 53億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上収益が増加する一方で、売上原価や販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益率は低下しています。増収効果をコスト増が上回った形です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 3,116億円 | 3,516億円 |
| 売上総利益 | 496億円 | 534億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.9% | 15.2% |
| 営業利益 | 120億円 | 109億円 |
| 営業利益率(%) | 3.9% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が240億円(構成比57%)、減価償却費及び償却費が57億円(同13%)を占めています。売上原価の約8割は商品(車両等)の仕入高が占めています。
■(3) セグメント収益
自動車販売関連事業は、新車・中古車販売やサービス部門が堅調で増収となりましたが、営業利益は微減となりました。住宅関連事業は、売上収益は微増しましたが、資材価格高騰等の影響により減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車販売関連事業 | 2,845億円 | 3,239億円 | 89億円 | 87億円 | 2.7% |
| 住宅関連事業 | 309億円 | 320億円 | 20億円 | 16億円 | 5.1% |
| その他 | 28億円 | 26億円 | 14億円 | 8億円 | 32.9% |
| 調整額 | -65億円 | -68億円 | -2億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 3,116億円 | 3,516億円 | 120億円 | 109億円 | 3.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動により資金を獲得し、投資活動と財務活動で資金を使用する形で事業を展開しています。
営業活動では、主に棚卸資産の増減や減価償却費の計上により資金が増加しましたが、営業債務の増減や税引前利益が資金の減少要因となりました。
投資活動では、有形固定資産の取得や事業譲受による支出が資金の使用を増加させましたが、有形固定資産の売却収入などが資金の減少に寄与しました。
財務活動では、短期借入金の純増減額やリース負債の返済が資金の使用を増加させた一方、長期借入れや自己株式の取得が資金の減少要因となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 121億円 | 280億円 |
| 投資CF | -103億円 | -110億円 |
| 財務CF | -14億円 | -158億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「我々は、常に若さとアイデアと不断の努力により、顧客に安全・安心なサービスを提供し、地域社会に貢献すると共に社業の発展に努める。」という社是を指針としています。社会の公器として、株主、従業員、地域社会などすべてのステークホルダーにとって価値ある企業となることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、若さとアイデア、不断の努力を重視する文化を持っています。また、自動車ディーラー経営の新しいビジネスモデル構築や積極的なM&Aを通じて事業拡大を図るなど、現状に変革をもたらすチャレンジ精神を尊重する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、事業規模の拡大、収益力の強化、投資効率の向上をテーマとし、事業成長と高収益の実現を目指しています。経営上の目標として、売上収益および利益の安定的な拡大を図るとともに、以下の指標を重視しています。
* 売上収益営業利益率
* 親会社所有者帰属持分当期利益率
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、積極的なM&Aによる事業規模の拡大を主要戦略としています。中核の自動車販売関連事業では、新車販売に依存せず、中古車、サービス、レンタカー部門等のストック型ビジネスを強化し、収益体質の安定化を図ります。また、海外事業の拡大やEV販売比率の向上、DX推進による業務変革にも注力していく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、性別・国籍等にかかわらず優秀な人材を積極的に採用する方針です。多様な価値観を認め合い、変化に対応できる組織を目指しています。また、人材育成方針や社内環境整備方針に基づき、資格取得支援やテレワーク、フレックスタイム制などを導入し、社員が活躍できる環境づくりに努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.0歳 | 5.6年 | 6,441,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 56.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 58.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 118.1% |
※数値は連結子会社の株式会社ホンダカーズ東海の実績です。女性管理職比率は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定による公表をしていないため、記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 当社グループの事業内容について
同社グループは持株会社体制をとっており、同社の単体収益は子会社からの事務代行手数料、配当金、賃貸料等に依存しています。そのため、自動車販売関連事業や住宅関連事業を行う子会社の事業展開や収益動向によって、同社の業績が大きな影響を受ける可能性があります。
■(2) 自動車販売関連事業における販売店契約について
同社グループは自動車メーカー各社の正規販売店として新車販売を行っています。販売店契約が継続できなくなった場合や、メーカーの政策変更があった場合、業績に影響が出る可能性があります。ただし、中古車やサービス部門の強化により、新車販売のみに依存しない体制構築を進めています。
■(3) 特定の取引先への高い依存度
自動車販売関連事業において、ホンダ系および日産系ディーラーの売上収益に占める割合が高くなっています。新車の供給やモデルチェンジ等は自動車メーカーの政策に左右されるため、メーカーの動向や生産状況によっては、同社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(4) 海外展開について
同社グループは海外企業のM&Aを進めていますが、海外での事業展開には、各国の法令・制度、政治・経済情勢、為替変動、商慣習の違いなど特有のリスクが存在します。これらのリスクが顕在化した場合、または適切な対処ができなかった場合、業績に悪影響を与える可能性があります。



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