VTホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

VTホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

VTホールディングスは東証プライム及び名証プレミア市場に上場する企業です。自動車ディーラー事業を中核とし、新車・中古車販売、レンタカー事業に加え、住宅関連事業も展開しています。直近の業績は、自動車販売台数の増加により増収を達成したものの、各種費用の増加により当期利益は減益トレンドとなっています。


※本記事は、VTホールディングスの有価証券報告書(第44期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. VTホールディングスってどんな会社?


自動車ディーラー事業を中核に、レンタカーや住宅関連事業を国内外で展開する持株会社です。

(1) 会社概要


1983年にホンダベルノ東海として設立され、愛知県でディーラー事業を開始しました。1998年に名証二部へ上場し、2003年に持株会社体制へ移行し現社名に変更しました。2015年に東証一部へ市場変更し、その後積極的なM&Aにより日産系ディーラーや輸入車ディーラー、海外の自動車販売会社を多数子会社化しています。

現在、グループ全体で4,527名、単体で32名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の関連会社である有限会社エスアンドアイで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位も同様に信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
有限会社エスアンドアイ 14.50%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.49%
日本カストディ銀行(信託口) 6.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は高橋一穂氏が務めています。社外取締役は6名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
高橋一穂 代表取締役社長 1983年に同社を設立し代表取締役社長に就任。ホンダベルノ東海やエルシーアイなどの代表取締役社長を歴任し、ピーシーアイ等の社長も兼務しています。
伊藤誠英 専務取締役経営戦略本部長 1996年に同社へ入社し、総務部長を経て2008年より現職。トラストやピーシーアイ等の代表取締役社長を歴任し、フジモトーレン社長等を兼務しています。
山内一郎 常務取締役管理本部長 1999年に経理部長として入社。管理部長やJ-netレンタリース代表取締役社長を経て、2022年より常務取締役管理本部長に就任しています。
堀直樹 取締役 1996年入社。住宅事業部長や新規事業部長、ホンダカーズ東海代表取締役社長等を歴任し、2014年より取締役。ワイズホールディングス取締役会長も兼務しています。
中嶋勉 取締役 1989年にホンダベルノ東海へ入社し、日産サティオ奈良代表取締役社長等を経て2021年より取締役。ホンダカーズ東海取締役副社長を兼務しています。
伊藤和繁 取締役 2004年入社。南アフリカやスペインへの赴任を経て、海外事業推進室長や管理部長を歴任。2024年より取締役を務め、トラスト等の役員を兼務しています。
山﨑宅哉 取締役 1991年にトヨタ自動車へ入社し米国赴任等を経験。2021年に同社へ入社し経営企画部長を経て2024年より取締役。モトーレン三河代表取締役社長等を兼務しています。
安藤仁一 取締役(常勤監査等委員) 2006年入社。コンプライアンス推進室長やM&Aグループ長を経て監査役を務め、2024年より取締役(監査等委員)に就任しています。


社外取締役は、山田尚武(弁護士法人しょうぶ法律事務所代表)、藤谷真理(藤谷会計事務所代表)、黒野葉子(愛知学院大学法学部教授)、土田新一郎(元パレモ・ホールディングス常勤監査役)、柴田和範(北辰税理士法人代表)、鹿倉祐一(鹿倉法律事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「自動車販売関連事業」および「住宅関連事業」を展開しています。

自動車販売関連事業


ホンダ系・日産系の新車ディーラーをはじめ、輸入車インポーター、中古車輸出、レンタカー事業など幅広いモビリティ関連サービスを国内外で提供しています。主な顧客は一般消費者や法人です。

収益は、自動車販売代金、点検・車検等の整備代金、レンタカー利用料などから得ています。運営はホンダカーズ東海や静岡日産自動車、J-netレンタリースなど多数のグループ各社が行っています。

住宅関連事業


マンションおよび戸建分譲住宅などの販売、注文住宅や商業施設の建築請負などを提供しています。主な顧客は住宅購入を検討する個人や、設備投資を行う法人です。

収益は、分譲住宅の販売代金や建築請負代金から得ています。運営は主にAMGホールディングスやエムジーホーム、MIRAIZなどのグループ各社が行っています。

その他


グループ全社管理部門等として、子会社の事務代行や不動産賃貸業務などを提供しています。主な顧客はグループ内の各事業会社です。

収益は、事務代行手数料や受取賃貸料などから得ています。運営は主にVTホールディングスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の業績を見ると、M&Aなどの事業拡大により売上収益は継続的に右肩上がりで成長しています。一方で、利益水準は投資や各種費用の増加に伴い減少傾向が続いており、増収減益のトレンドとなっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 2,379億円 2,663億円 3,116億円 3,516億円 3,887億円
税引前利益 180億円 126億円 115億円 97億円 101億円
利益率(%) 7.5% 4.7% 3.7% 2.8% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 117億円 72億円 67億円 53億円 49億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しているものの、売上総利益率および営業利益率は低水準で推移しており、事業規模拡大に伴うコスト負担が利益を圧迫している状況が窺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,516億円 3,887億円
売上総利益 44億円 47億円
売上総利益率(%) 1.3% 1.2%
営業利益 109億円 110億円
営業利益率(%) 3.1% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が270億円(構成比55%)、減価償却費及び償却費が65億円(同13%)を占めています。

(3) セグメント収益


自動車販売関連事業が売上の大半を占めており、全体を牽引しています。住宅関連事業は規模は小さいものの、手堅い利益率を確保してグループの収益に貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
自動車販売関連事業 3,239億円 3,571億円 87億円 80億円 2.2%
住宅関連事業 320億円 327億円 16億円 21億円 6.3%
その他 26億円 25億円 8億円 9億円 34.8%
調整額 -68億円 -36億円 -4億円 0.1億円 -
連結(合計) 3,516億円 3,887億円 109億円 110億円 2.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のパターンを示しています。財務指標については、企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.1%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 280億円 188億円
投資CF -110億円 -108億円
財務CF -158億円 -95億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「我々は、常に若さとアイデアと不断の努力により、顧客に安全・安心なサービスを提供し、地域社会に貢献すると共に社業の発展に努める。」という社是を指針としています。社会の公器として地域社会、株主、従業員などすべてのステークホルダーにとって価値ある企業となることを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、自動車ディーラー経営の新しいビジネスモデルの構築や積極的なM&Aによる事業拡大に挑戦する文化を持っています。グループ各社から様々なメンバーが参加し、共通の意識の下で草の根レベルでアイデアに取り組み、全社横断的な活動を通じてグループとしての結束を持続的で強固なものとしています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、事業成長と高収益を合わせて実現するため、売上収益および利益の安定的な拡大を図ることを経営目標としています。経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、「売上収益営業利益率」および「親会社所有者帰属持分当期利益率」を重視し、事業規模の拡大と投資効率の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、M&Aによる事業規模拡大を主要な経営戦略とし、中核事業である自動車販売関連事業を中心に成長を推進しています。また、基盤収益の強化、自己資本の充実による財務体質の強化、DX推進によるビジネスプロセスの変革、人的資本の強化による提供価値の実現などに取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、自動車業界の変革期に対応するため、営業・整備人材の確保と育成、電動化やDXを見据えた専門人材の育成、そして将来の成長を支える店舗マネジメント人材の計画的育成を重点方針としています。また、柔軟な働き方の推進やキャリア形成支援を通じた定着率の向上、グループ横断での人材活用に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.3歳 6.2年 6,484,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.2%
男性育児休業取得率 28.6%
男女賃金差異(全労働者) 59.6%
男女賃金差異(正規雇用) 60.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 70.3%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車メーカーとの販売店契約に関するリスク


同社グループの中核事業は各自動車メーカーの正規販売店として新車販売を行っています。そのため、何らかの事由によりメーカーとの販売店契約が継続できなくなった場合や、販売店政策に重要な変更があった場合には、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(2) M&Aおよび戦略的提携に伴うリスク


同社グループは事業基盤の拡大や新規事業進出を目的に企業買収や資本提携を行っています。投資に際しては対象案件の事業内容や財務状況等を慎重に検討していますが、買収後の事業展開が計画通りに進捗しない場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定メーカーの販売動向への依存リスク


同社グループの売上収益において、ホンダ系および日産系ディーラーの占める割合が高くなっています。新車の供給やモデルチェンジはメーカーの政策に依存しているため、メーカーの動向や商品の供給状況が同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 減損会計の適用に伴うリスク


積極的な企業買収により取得した事業や会社においてのれんを計上しています。買収後に計画通りの利益を確保できず、のれんの回収が困難と判断された場合には減損処理が必要となり、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。