※本記事は、田中商事株式会社の有価証券報告書(第65期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 田中商事ってどんな会社?
電気設備資材の卸売りを中心に、弱電及び防災設備工事を展開する独立系商社です。
■(1) 会社概要
1950年に個人経営として創業し、1962年に田中商事を設立しました。全国に営業網を拡大し、2003年に東京証券取引所市場第二部へ株式を上場、翌2004年には同市場第一部への指定替えを果たしました。近年では2020年にカワツウ、2022年に三永興産を子会社化し、業容の拡大を進めています。
現在の従業員数は連結で455名、単体で437名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は河合宏美氏で16.3%、第2位は河合きよ子氏で12.8%を保有しています。第3位にはトウテックが5.1%を保有して名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 河合宏美 | 16.30% |
| 河合きよ子 | 12.80% |
| トウテック | 5.10% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は安部安生氏が務めています。社外取締役比率は22.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鳥谷部毅 | 代表取締役会長 | 1988年3月同社入社。2008年営業本部長、2011年代表取締役社長兼営業本部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 安部安生 | 代表取締役社長 | 1987年3月同社入社。2008年首都圏第一営業部長、2017年専務取締役などを経て、2024年4月より現職。 |
| 春日国敏 | 常務取締役管理本部長兼総務部長兼経営企画担当 | 1994年4月同社入社。2005年経営企画室長、2009年取締役管理本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 伊藤淳 | 取締役東日本営業本部長 | 1991年4月同社入社。2008年東海営業部長、2019年取締役営業副本部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 玉木修 | 取締役クリエイション営業本部長 | 1995年4月同社入社。2010年東京中央営業部長、2019年取締役クリエイション事業部長などを経て、2024年4月より現職。 |
| 中田周作 | 取締役首都圏営業本部長 | 2006年4月同社入社。2017年神奈川第一営業部長、2022年執行役員などを経て、2024年6月より現職。 |
| 宇津木やす子 | 取締役監査等委員 | 1996年9月同社入社。2001年4月坂戸営業所経理担当、2020年川越営業所経理担当を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、福田大助(山王シティ法律事務所パートナー弁護士)、川本典行(川本会計事務所開設)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電気設備資材の卸売り」および「弱電及び防災設備工事」の事業を展開しています。
■(1) 電気設備資材の卸売り
学校や公園などの公共施設、ビル・工場・一般家庭等の民間設備、リフォーム向けなどあらゆる建設物に対する電気設備資材全般を提供しています。照明器具、電線類、配・分電盤類、家電品類などを幅広く扱っています。
収益は、電気工事店等の顧客に対して販売した商品の対価から得ています。特定のメーカー系列に属さない独立系商社として顧客ニーズに合わせた品揃えを実現しており、運営は主に親会社である同社が行っています。
■(2) 弱電及び防災設備工事
顧客との契約に基づき、弱電設備や防災設備の工事を施工・提供しています。営業ネットワーク網を活用した得意先への提案営業を通じ、電気設備工事に関わる新たな受注を獲得しています。
収益は、顧客との契約に基づく工事の完了や進捗に応じた工事代金として受領しています。電気資材の卸売りとのシナジー効果を生み出す事業であり、運営は主に連結子会社であるカワツウが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は安定して成長を続けており、直近5年間で着実に拡大しています。経常利益も堅調に推移し、直近では14億円の黒字を確保しており、継続的な増収トレンドと安定した収益基盤を示しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 331億円 | 357億円 | 418億円 | 415億円 | 440億円 |
| 経常利益 | 11億円 | 11億円 | 16億円 | 12億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 3.0% | 3.9% | 3.0% | 3.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 10億円 | 12億円 | 9億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前年同期から増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。営業利益率も前年水準を維持しており、着実な成長と利益確保が両立している状況がうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 415億円 | 440億円 |
| 売上総利益 | 62億円 | 66億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.0% | 14.9% |
| 営業利益 | 12億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 2.9% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与が20億円(構成比39%)、法定福利費が4億円(同8%)を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動でキャッシュを創出し、投資活動や借入金の返済などに資金を充てている健全型の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | 5億円 |
| 投資CF | -7億円 | -3億円 |
| 財務CF | -7億円 | -4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「働く社員の人間的価値づくり、総合力を発揮できる組織づくり、株主様が納得できる付加価値づくり、先行投資ができる財政価値づくり、顧客が満足できる経済価値づくり、生活に役立つ価値づくり、社会が認める会社の存在価値づくり」を経営理念として掲げています。この理念を実践し企業価値を向上させることが、ステークホルダーへの経済価値の創造や社会貢献につながると考えています。
■(2) 企業文化
同社は独立系商社としての持ち味を活かし、「当社はこれが特徴(ポリシー)です」という方針を社内外に示しています。具体的には、「配送の革命(原点)を実行しています」「品揃えは抜群です」「全国ネットでご奉仕します」という3つのポリシーを重視し、独自の自社便配送や倉庫併設型の営業所展開、広域ネットワークの拡大を通じて、得意先との連帯を深めています。
■(3) 経営計画・目標
事業環境の変動に対し、得意先や仕入先との信頼関係を強化し、資材価格の変動を早期に販売価格へ反映させる取り組みを進めています。また、今後の商品需要の見極めなどにより利益率の向上を図るとともに、デジタル技術を活用した業務効率化を推進し、経営基盤の強化に努めています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、営業ネットワークの拡充と新規開拓による市場占有率の向上を目指す拡大戦略を推進しています。特に需要が見込める首都圏を中心に、原則毎年1~3カ所の営業所新設を検討しています。また、既存営業所での新規開拓や、子会社であるカワツウと連携した弱電工事などの受注獲得により、グループ全体でのシナジー効果を創出し、業績拡大を目指す方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人こそ最大の財産」という考えのもと、従業員一人ひとりが能力を最大限発揮できる組織づくりを重要課題と位置づけています。採用面では新卒・中途を問わず成長意欲の高い人材を求めており、育成面では階層別研修や専門スキル研修、DXリテラシー研修などを体系的に実施しています。業績連動型評価と行動評価を併用し、男女の別なく公正な処遇を行うことで定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 39.4歳 | 13.4年 | 5,346,684円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 77.0% |
※女性管理職比率および男性育児休業取得率については、現状実績がないなどの理由により記載がありません。また、パート・有期労働者は在籍していないため、該当項目の記載はありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員持株会加入比率(73.0%)、研修参加率(97.3%)、研修実施回数(55回)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設関連業界の動向による影響
同社の販売先が属する建築関連業界は、景気動向や金利、地価、住宅税制等の影響を受けやすい傾向があります。設備投資の抑制やマイホーム購買意欲の減退により新設住宅着工戸数が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、需要低迷による同業者との競合激化や販売価格の下落が利幅の縮小を招くリスクがあります。
■(2) 営業所の自社所有に関するリスク
同社は営業所を自社保有とする基本方針を掲げており、毎年1~3カ所の新設を進めています。自己資金や借入金で所要資金を賄っていますが、新設した営業所が計画通りの収益を上げられなかった場合や、収益計上までに想定以上の期間を要した場合、投下資本の回収が遅れ、有利子負債の負担増加が業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 売掛債権の回収リスク
同社グループでは、取引先の倒産や財政状態の悪化により売掛債権が劣化するリスクがあります。貸倒引当金の計上や債権管理部による与信管理の徹底といった対策を講じていますが、想定外の倒産が頻発した場合には、同社グループの経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。



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