田中商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

田中商事 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

田中商事は、東京証券取引所スタンダード市場に上場する電気設備資材の総合商社です。照明器具や電線、配電盤などの卸売りを主力事業とし、首都圏を中心に広域ネットワークを展開しています。直近の業績は、売上高が415億円で前期比微減、経常利益は12億円で減益となりました。


※本記事は、株式会社田中商事の有価証券報告書(第64期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 田中商事ってどんな会社?


電気設備資材の卸売りを行う独立系商社です。自社保有の営業所網と配送システムを強みとしています。

(1) 会社概要


1950年に静岡市で創業し、1962年に法人化されました。1999年に店頭登録、2003年に東証二部上場を経て、2004年に東証一部へ指定替えとなりました。2022年の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しています。近年では、株式会社カワツウや株式会社三永興産を子会社化し、事業領域の拡大を進めています。

連結従業員数は441名、単体では422名体制です。筆頭株主は創業家関連の河合宏美氏(16.40%)で、第2位も同じく河合きよ子氏(12.90%)となっており、安定的な株主構成です。従業員持株会も主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
河合宏美 16.40%
河合きよ子 12.90%
田中商事従業員持株会 3.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は安部安生氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
鳥谷部毅 代表取締役会長 1988年入社。営業本部長を経て、2011年より代表取締役社長。2024年4月より現職。
安部安生 代表取締役社長 1987年入社。首都圏第一営業部長、専務取締役営業本部長などを歴任し、2024年4月より現職。
山口智 常務取締役管理本部長兼仕入部長 1985年入社。営業管理室長、取締役仕入部長兼情報管理部長などを経て、2022年7月より現職。
春日国敏 取締役総務部長兼経理部長兼経営企画担当 1994年入社。経営企画室長、常務取締役管理本部長などを経て、2023年3月より現職。
伊藤淳 取締役東日本営業本部長 1991年入社。東海営業部長、取締役営業副本部長兼西部エリア事業部長などを経て、2024年4月より現職。
玉木修 取締役クリエイション営業本部長 1995年入社。東京中央営業部長、取締役東海営業部長などを経て、2024年4月より現職。
中田周作 取締役首都圏営業本部長 2006年入社。神奈川営業部長、執行役員東部エリア事業部長などを経て、2024年6月より現職。
宇津木やす子 取締役監査等委員 1996年入社。坂戸営業所経理担当、川越営業所経理担当を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、福田大助(弁護士)、川本典行(税理士・公認会計士事務所出身)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電気設備資材卸売」および「弱電及び防災設備工事」事業を展開しています。

(1) 電気設備資材卸売事業


照明器具、電線、配・分電盤、エアコンなどの家電品、その他工具類など、電気設備に関するあらゆる資材を扱っています。主な顧客は電気工事店や設備業者であり、公共施設から民間ビル、住宅まで幅広い建設現場に商品を供給しています。

仕入先である専業メーカー等から商品を調達し、顧客へ販売することで収益を得ています。運営は主に田中商事が行っており、特定のメーカー系列に属さない独立系商社として、顧客ニーズに合わせた幅広い商品提案を行っています。

(2) 弱電及び防災設備工事事業


弱電設備や防災設備の施工・工事を行っています。電気設備資材の販売だけでなく、関連する工事需要を取り込むことで事業の幅を広げています。

顧客からの工事請負契約に基づき、施工を行うことで収益を得ています。運営は、同社の子会社である株式会社カワツウなどが担っており、グループの営業ネットワークを活用した受注活動を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの推移を見ると、売上高は300億円台から400億円台へと拡大傾向にあります。利益面では、2024年3月期に大きく伸長しましたが、直近の2025年3月期は減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 307億円 331億円 357億円 418億円 415億円
経常利益 10億円 11億円 11億円 16億円 12億円
利益率(%) 3.4% 3.2% 3.0% 3.9% 3.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 7億円 7億円 10億円 12億円 9億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を比較すると、売上高はほぼ横ばいながら微減となりました。一方、売上原価率は一定水準を維持していますが、販売費及び一般管理費が増加したことで、営業利益率は低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 418億円 415億円
売上総利益 62億円 62億円
売上総利益率(%) 15.0% 15.0%
営業利益 16億円 12億円
営業利益率(%) 3.8% 2.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与が19億円(構成比39%)、法定福利費が4億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは、「電設資材卸売業」の単一セグメントのため、事業ごとの利益は開示していません。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**パターン:健全型**
本業の営業活動でキャッシュを獲得しつつ、投資活動による設備投資等を行い、同時に有利子負債の返済や配当支払い等の財務活動も進めています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 25億円 3億円
投資CF -7億円 -7億円
財務CF -4億円 -7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「働く社員の人間的価値づくり」「総合力を発揮できる組織づくり」「顧客が満足できる経済価値づくり」「社会が認める会社の存在価値づくり」などを経営理念として掲げています。これらの理念の実践により企業価値を向上させ、ステークホルダーへの貢献を目指しています。

(2) 企業文化


独立系商社としての強みを活かし、「配送の革命(原点)」「品揃えは抜群」「全国ネットでご奉仕」というポリシーを掲げています。特定のメーカー系列に属さない自主独立の経営姿勢を貫き、自社便による迅速な配送や、倉庫併設型営業所による豊富な在庫保有など、顧客サービスを重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


数値目標としての具体的な計画値は記載されていませんが、中長期的に業容を拡大していく方針を掲げています。原則として毎年1~3カ所の営業所新設を検討し、市場占有率の向上を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


営業ネットワーク網の拡充と新規開拓による市場占有率の向上を拡大戦略として掲げています。具体的には、需要が見込める首都圏を中心としたネットワークの強化に加え、西日本エリアへの進出も推進しています。また、子会社カワツウとの連携により、弱電工事を含めた新たな受注獲得に取り組み、シナジー効果による業績拡大を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


経営理念である「働く社員の人間的価値づくり」を実現するため、人材の採用と育成を重要視しています。新卒・中途を問わず積極的な採用を行い、個々の水準や目的に配慮した研修を実施しています。また、営業所を自社保有することで、倉庫や駐車場等の設備を自由に企画・設置し、従業員が働きやすい職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.9歳 13.6年 5,869,016円


※平均年間給与には、基準外賃金及び賞与が含まれております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -%
男性育児休業取得率 -%
男女賃金差異(全労働者) 79.6%
男女賃金差異(正規雇用) 79.6%
男女賃金差異(非正規雇用) -%


※女性管理職比率、男性育児休業取得率については、現状実績がないため記載されていません。
※男女賃金差異(非正規雇用)については、パート・有期労働者がいないため記載されていません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設関連業界の事業環境


販売先が属する建築関連業界は、景気、金利、地価動向等の影響を受けやすい傾向にあります。景気低迷や市場金利の上昇等により設備投資や住宅着工が減少した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、同業者との競合激化による販売価格の下落リスクもあります。

(2) 営業所の自社所有に伴うリスク


営業所を自社保有することを基本方針としており、原則毎期新設を進めています。しかし、新設営業所が計画通りの収益を上げられない場合、投下資本の回収遅延や有利子負債の負担増により、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 業績の季節的変動


各種建造物の電気工事に使用される資材を主力としているため、工事の竣工が集中する年末や年度末(3月)に売上が増加する傾向があります。このため、同社の業績は下半期に偏重する特徴があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。