※本記事は、株式会社オーハシテクニカの有価証券報告書(第74期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. オーハシテクニカってどんな会社?
自動車関連部品の製造・販売を手掛け、国内外でファクトリーとファブレス機能を併せ持つ部品サプライヤーです。
■(1) 会社概要
1953年に大橋商事として設立され、1987年に米国へ進出するとともにオーハシテクニカに商号変更しました。2004年に東証一部(現プライム)へ上場。2007年にオーハシ技研工業を子会社化し製造機能を強化。その後も中国やメキシコ、アセアンなどに拠点を拡大し、グローバルな供給体制を構築しています。
従業員数は連結で721名、単体で232名です。筆頭株主はオーハシテクニカ取引先持株会で、第2位および第3位は信託業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行(それぞれ信託口および日本生命保険相互会社の常任代理人)となっています。取引先との連携や機関投資家による保有が特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| オーハシテクニカ取引先持株会 | 9.04% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 8.48% |
| 日本生命保険相互会社 (常任代理人 日本マスタートラスト信託銀行) | 5.15% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は廣瀬正也氏が務めており、社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 廣瀬 正也 | 代表取締役社長 | 1986年同社入社。米国子会社社長、営業本部長、海外事業部長などを経て、2024年より現職。 |
| 中村 佳二 | 常務取締役 | 1982年第一勧業銀行入行。2009年同社出向、2010年入社。管理本部長や経営企画部長を歴任し、2024年より現職。 |
| 堀 正人 | 取締役経営企画部長 | 1984年第一勧業銀行入行。2012年同社出向、2013年入社。管理部長などを経て、2024年より現職。 |
| 立岩 光 | 取締役海外事業部長 兼第二海外統括部長 | 1988年同社入社。英国や米国の子会社社長などを歴任し、2025年より現職。 |
| 伊田 和浩 | 取締役(監査等委員・常勤) | 1983年第一勧業銀行入行。2011年同社出向、2012年入社し内部統制統括部長に就任。2019年より現職。 |
社外取締役は、沖山奉子(元東亜建設工業執行役員)、山田仁美(山田仁美公認会計士事務所開設)、三好慶(三好総合法律事務所副所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、日本、米州、中国、アセアン、欧州、台湾の各地域ごとに事業セグメントを展開しています。
■日本
自動車関連部品(エンジン、車体組立用、ブレーキ関連、EV関連等)およびその他関連部品の販売、加工技術開発、製造を行っています。国内の自動車メーカーを中心に製品を供給しています。
収益源は自動車メーカーなどからの製品販売代金です。運営は親会社である同社が販売および技術開発を担い、子会社のオーハシ技研工業、関連会社のテーケーなどが製造・販売を行っています。
■米州
米国やメキシコなど米州地域の顧客向けに自動車関連部品の製造および販売を行っています。現地の自動車メーカーや日系メーカーの海外拠点を主な顧客としています。
収益源は顧客に対する部品の販売代金です。運営は子会社のOHASHI TECHNICA U.S.A., INC.が販売を、OHASHI TECHNICA U.S.A. MANUFACTURING, INC.が製造を担っています。
■中国
中国市場における日系自動車メーカーや現地メーカー向けに、自動車関連部品およびその他関連部品の製造・販売を展開しています。
収益源は部品の販売代金です。運営は販売子会社の大橋汽車配件(広州)や大橋精密件(上海)、製造子会社の大橋精密件制造(広州)や広州大中精密件、大橋精密電子(上海)などが担っています。
■アセアン
タイを中心としたアセアン地域において、自動車関連部品およびその他関連部品の製造と販売を行っています。現地の自動車生産拠点が主要な供給先です。
収益源は部品の製造および販売による代金です。運営は主に子会社のOHASHI TECHNICA (THAILAND) CO.,LTD.およびOHASHI SATO (THAILAND) CO.,LTD.が行っています。
■欧州
英国などの欧州市場において、自動車関連部品およびその他関連部品の販売を行っています。欧州に進出する自動車メーカーなどが主要顧客です。
収益源は同社から仕入れた部品の販売代金です。運営は英国に拠点を置く子会社のOHASHI TECHNICA UK, LTD.が中心となって事業を展開しています。
■台湾
台湾国内における自動車関連部品の調達拠点としての役割を担い、部品を仕入れてグループ内の各拠点へ供給しています。
収益源はグループ各連結子会社に対する部品の販売代金です。運営は台湾に拠点を置く子会社の台灣大橋精密が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、外部環境の変化を受けつつも着実な成長傾向を示しています。売上高は安定的に拡大を続けており、利益面でも一時的な落ち込みは見られたものの、直近ではコスト改善や生産性向上などの取り組みが奏功し、大幅な増益を達成しました。堅調な収益基盤を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 325億円 | 350億円 | 392億円 | 400億円 | 409億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 24億円 | 20億円 | 24億円 | 30億円 |
| 利益率(%) | 7.8% | 6.9% | 5.1% | 5.9% | 7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 18億円 | 13億円 | 10億円 | 15億円 | 21億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、増収となっています。利益面では、販売価格の改定や製造部門での生産性向上による原価改善が進んだことに加え、海外部門を中心とした経費削減効果もあり、売上総利益および営業利益ともに大きく改善しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 400億円 | 409億円 |
| 売上総利益 | 84億円 | 89億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.0% | 21.6% |
| 営業利益 | 18億円 | 24億円 |
| 営業利益率(%) | 4.5% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が25億円(構成比38%)、荷造運賃が8億円(同12%)を占めています。また、売上原価は321億円で、売上高に対する構成比は78%となっています。
■(3) セグメント収益
日本や米州、アセアンなどの主力地域では新規受注品の寄与により売上が増加し、生産性向上等の効果もあって増益を牽引しました。一方、中国市場では現地メーカー間の販売競争激化や主要顧客の減産により減収が続いているものの、構造改革による経費削減で赤字幅は縮小傾向にあります。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 193億円 | 199億円 | 10億円 | 10億円 | 4.9% |
| 米州 | 136億円 | 141億円 | 5億円 | 9億円 | 6.3% |
| 中国 | 27億円 | 23億円 | -2億円 | -1億円 | -4.1% |
| アセアン | 29億円 | 31億円 | 4億円 | 5億円 | 14.6% |
| 欧州 | 14億円 | 15億円 | 1億円 | 2億円 | 11.2% |
| 台湾 | - | - | 0.4億円 | 0.3億円 | - |
| 連結(合計) | 400億円 | 409億円 | 18億円 | 24億円 | 5.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 25億円 |
| 投資CF | -14億円 | -9億円 |
| 財務CF | -16億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.2%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は経営理念として「新たな価値を創造し、世界のお客様に信頼される会社を実現する」ことを掲げています。真に市場から必要とされ、顧客にとって無くてはならないサプライヤーになることを目指し、「もっといい車を作ろうとしている人に もっといい部品をお届けします」というミッション・ステートメントを推進しています。
■(2) 企業文化
同社は、経営の基本方針として「グローバル企業としての発展」「ファクトリー&ファブレス機能の強化による卓越した強みの創造」「社員の幸福と社会貢献の実現」を重視しています。また、多様な価値観や才能を持つ人材が安心して能力を発揮できる「ダイバーシティ&インクルージョン」を推進し、イノベーション創出を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2027年度を最終年度とする「中期経営計画~Mission2025+2~」を展開しており、「経済的価値の追求」と「社会的価値の創造」の両立を目指しています。目標とする主な経営指標は以下の通りです。
* 売上高:450億円
* 営業利益:41.5億円
* ROE(自己資本当期純利益率):8%以上
* ROA(総資産経常利益率):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、同社は「開発・製造・調達・グローバル」の4つの基本機能の強化を重点施策に据えています。具体的には、独自の「圧入プロジェクション接合技術」を用いた電動車搭載部品の開発や、製造拠点の生産能力拡大を推進し、売上高に占めるグループ製造部門の比率を40%に引き上げることを目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「多様な人材が能力を発揮できる働きがいのある職場の実現」を重要課題として掲げています。性別や国籍、社歴にかかわらない人材登用を行う方針を明確にし、成果が公正に評価される仕組みづくりや、中途採用社員・シニア人材の活躍推進、ITを活用した業務効率化などの働き方改革に積極的に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.0歳 | 15.0年 | 6,466,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.8% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全従業員) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社および連結子会社は男女賃金差異等の公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(68.9%)、採用者に占める女性労働者の割合(32.1%)、管理職に占める中途社員の割合(59.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の産業(自動車業界)への依存リスク
同社の事業は自動車関連部品事業の比重が圧倒的に高いため、自動車産業の生産動向が同社グループの業績および財政状態に直接的な影響を及ぼすリスクがあります。自動車メーカーの生産縮小や需要減退が起きた場合、経営成績に影響を与える可能性があります。
■(2) 価格競争の激化による収益低下リスク
得意先からの値下げ要請や海外市場における現地競合先の価格・品質面での競争力向上により、価格競争が激化するリスクがあります。その結果として、販売単価の値下げによる収益率の低下や失注などをもたらす可能性があります。
■(3) 原材料価格や為替等の変動リスク
原材料価格やエネルギー価格、労務費等の上昇、あるいは輸入品における為替・海上物流費用・関税等の変動によるコスト増が発生するリスクがあります。これらの調達に係るコスト上昇分を販売価格に転嫁できない場合、収益率の低下をもたらす可能性があります。



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