※本記事は、株式会社アイティフォー の有価証券報告書(第66期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月13日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイティフォーってどんな会社?
金融機関向けシステムや公共向けBPOに強みを持つ独立系システムインテグレーターです。
■(1) 会社概要
1959年5月に大阪市北区にて日本システマティックとして設立され、事務用機器の輸出入販売を開始しました。2000年2月に店頭市場へ登録し、同年8月に現社名へ変更しました。2006年3月には東京証券取引所市場第一部銘柄に指定され、2022年4月の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しています。
2025年3月31日現在の連結従業員数は625名、単体従業員数は510名です。大株主については、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行が名を連ねています。第3位は情報通信サービス事業などを展開する事業会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.50% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.42% |
| 光通信 | 5.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名(女性比率11.1%)の計9名で構成されています。代表取締役社長は佐藤恒徳氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐藤 恒徳 | 代表取締役社長 | 1998年同社入社。ソリューションシステム事業部長、フィナンシャルシステム事業本部長などを経て、2021年4月より現職。 |
| 坂田 幸司 | 代表取締役専務執行役員技術本部長 | 1987年同社入社。技術開発本部長、公共システム事業部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 大枝 博隆 | 取締役常務執行役員事業本部長兼フィナンシャルシステム事業部長 | 1981年同社入社。ソリューションシステム事業部長、通信・エンタープライズシステム事業部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 中山 かつお | 取締役執行役員管理本部長 | 2003年同社非常勤監査役。2010年6月より現職。 |
| 河野 一典 | 取締役執行役員決済ビジネス事業部長 | 1996年同社入社。ネットワークソリューション事業部長、事業本部副本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
| 本山 昌人 | 取締役(常勤監査等委員) | 1981年同社入社。事業本部副本部長、事業開発部長などを経て、2021年6月より現職。 |
社外取締役は、阿部和香(株式会社エスケーエレクトロニクス取締役)、佐藤誠(公認会計士・税理士)、小泉大輔(株式会社オーナーズブレイン代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「システム開発・販売」および「リカーリング」事業を展開しています。
■(1) システム開発・販売
ソフトウェアやシステムインフラ基盤の設計・開発、およびシステム機器の仕入・販売を行っています。特に金融機関向けの個人ローン業務支援システムなどが主力です。また、パッケージソフトのカスタマイズなども手掛けています。
この事業の主な収益は、顧客である金融機関や企業からのシステム開発費用や機器販売代金などです。運営は主にアイティフォーが行い、子会社のイーブがソフトウェア開発を、持分法適用会社のアイセルがカスタマイズの一部を担当しています。
■(2) リカーリング
ソフトウェア保守、ハードウェアの保守・運用、クラウドサービス、および公共分野向けのBPO(業務受託)サービスを提供しています。また、信用調査業務やデジタルサービスの提供、決済代行業務なども含まれます。
収益源は、顧客からの保守サービス料、クラウド利用料、BPOサービスの受託料、決済手数料などです。運営はアイティフォーに加え、BPOサービスをアイティフォー・ベックスおよびアイ・シー・アールが、信用調査をシー・ヴィ・シーが、デジタルサービス・決済代行をシディが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にありましたが、直近では横ばいで推移しています。経常利益も拡大基調でしたが、当期はやや減少しました。利益率は高水準を維持しており、安定した収益性を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 163億円 | 170億円 | 183億円 | 207億円 | 206億円 |
| 経常利益 | 23億円 | 31億円 | 33億円 | 38億円 | 37億円 |
| 利益率(%) | 14.2% | 18.3% | 17.9% | 18.6% | 17.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 17億円 | 21億円 | 23億円 | 28億円 | 29億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となりましたが、売上総利益率は改善傾向にあります。これは外注費のコントロール等による原価率改善が寄与しています。一方、営業利益率は人財投資などの影響で若干低下しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 207億円 | 206億円 |
| 売上総利益 | 78億円 | 79億円 |
| 売上総利益率(%) | 37.5% | 38.3% |
| 営業利益 | 37億円 | 35億円 |
| 営業利益率(%) | 18.1% | 17.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が12億円(構成比29%)、賞与引当金繰入額が2億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
システム開発・販売セグメントは、金融機関向けソフト開発は堅調でしたが、通信システム等の低迷により減収減益となりました。リカーリングセグメントは、保守サービスの安定やBPOの受注残消化により増収増益を達成しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| システム開発・販売 | 121億円 | 115億円 | 20億円 | 17億円 | 14.8% |
| リカーリング | 85億円 | 90億円 | 17億円 | 18億円 | 20.3% |
| 調整額 | -0億円 | - | - | -0億円 | - |
| 連結(合計) | 207億円 | 206億円 | 37億円 | 35億円 | 17.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
アイティフォーのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、主に税金等調整前当期純利益や株式給付引当金の増加があったものの、法人税等の支払いや売上債権の増加により減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券の取得や固定資産の取得などにより大きく使用されました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いなどが主な減少要因となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 26億円 |
| 投資CF | -5億円 | -25億円 |
| 財務CF | -16億円 | -27億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「『寄り添うチカラ』で人々の感動と笑顔を生み出す」という経営理念と、「地方創生による社会貢献を通してすべての人や企業にサプライズを提供し、持続可能な未来の発展に貢献します」というパーパス(存在意義)を掲げています。これまでのシステム(IT)と業務(BPO)のノウハウを通じて、社会に有益な存在であり続けることを目指しています。
■(2) 企業文化
過去の慣習にとらわれず、次の未来に向けてITのチカラでイノベーションを創出し続けることを重視しています。人や社会に新たな変革をもたらし、企業価値の向上を目指す姿勢を持っています。また、多様な人財が多様な働き方をし、互いに刺激を与え合う環境や、主体的な自己研鑽をベースとした成長を推奨する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
10年後のビジョン「HIGH FIVE 2033」の実現に向け、2024年度から2026年度までの第4次中期経営計画「FLY ON 2026」を推進しています。「既存事業を力強く発展させ、新規事業で飛躍的に成長する」ことをテーマとしています。
* 2026年度 売上高:280億円
* 2026年度 営業利益:48億円
* 2026年度 新規事業売上高:28億円
* ROE・ROIC:15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「事業戦略」「人財戦略」「企業価値向上戦略」の3つを推進しています。事業戦略では、「深く」「大きく」「新しく」をテーマに事業ポートフォリオの拡大を図り、地域還流型ビジネスの創出を目指します。また、キャピタルアロケーションとして、成長投資や株主還元を積極的に行う方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人財の深化」を掲げ、多様な価値観やバックグラウンドを尊重し、一人ひとりが能力を最大限発揮できる環境づくりを進めています。採用においては新卒に加え経験者採用を積極化し、育成では階層別研修やキャリア研修を実施しています。また、従業員の成長と満足度を高めるため、働きがいのある職場環境の創造や健康経営の推進にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.2歳 | 11.8年 | 7,492,031円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 36.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 63.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 57.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(82.4%)、離職率(3.4%)、ストレステスト受検率(96.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業環境の変化について
少子高齢化による労働人口減少や物価上昇、クラウド化の進展など、事業環境は変化しています。金融機関の低金利長期化や地方経済の低迷等の影響を受け、取引先のIT投資計画が変動する可能性があります。また、キャッシュレス事業やM&A、新技術開発が想定通り進まない場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 競合の激化について
大手コンピューター・メーカーや専業システムインテグレーターとの競合が厳しくなっています。また、情報通信機器類の価格低下に伴う単価引き下げ圧力も強まっています。企業間競争のさらなる激化や販売価格の下落傾向が続いた場合、同社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
■(3) 為替相場の変動について
商品仕入の5割弱が輸入であり、主に米ドル建て取引です。先物為替予約取引によりリスク軽減を図っていますが、すべてのリスクを排除することは不可能です。大幅な円安が続くとコストアップ要因となり、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) システム開発・品質管理について
技術進歩への後れや商品戦略の誤り、在庫の陳腐化などがリスク要因となります。また、独自開発システムの類似品出現や、提供サービスにおける品質トラブルが発生した場合、追加コストや損害賠償により業績に影響を与える可能性があります。ISO認証取得等により品質管理を徹底していますが、リスクは残ります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。