アイティフォー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイティフォー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイティフォーは東京証券取引所プライム市場に上場し、システム開発・販売や公共分野等のリカーリング事業を展開しています。当期は金融機関向けシステム開発や自治体向け情報システムの標準化対応案件が牽引し、売上高231億円、経常利益41億円といずれも前期を上回り、力強い増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社アイティフォーの有価証券報告書(第67期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月12日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイティフォーってどんな会社?


金融機関や地方自治体向けシステム開発およびBPOサービスを提供するITソリューション企業です。

(1) 会社概要


1959年に事務用機器の輸出入・販売を目的とする日本システマティックとして設立され、1972年に千代田情報機器、2000年に現在のアイティフォーへ商号変更しました。2004年にジャスダックに上場し、2006年には東証第一部銘柄に指定されています。近年では地方拠点網を拡大させています。

同社の従業員数は連結892名、単体513名です。筆頭株主ならびに第3位の株主は、資産管理業務等を行う信託銀行となっています。また第2位は、事業持株会社として投資事業を行う投資事業有限責任組合です。過去からの安定した株主構成を維持しつつ、持続的な成長に向けた事業基盤を確保しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.77%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.46%
日本カストディ銀行(信託口) 5.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は坂田幸司氏が務めており、社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤恒徳 代表取締役会長 1998年入社。執行役員ソリューションシステム事業部長などを経て、2017年代表取締役常務執行役員。その後社長を務め、2025年6月より現職。
坂田幸司 代表取締役社長 1987年入社。執行役員ソフトウェア開発本部長、取締役専務執行役員技術開発本部長などを歴任し、2025年6月より現職。
大枝博隆 取締役常務執行役員事業本部長兼フィナンシャルシステム事業部長 1981年入社。執行役員西日本事業所長、取締役執行役員各事業部長などを歴任し、2025年4月より現職。
中山かつお 取締役執行役員管理本部長 2003年に同社非常勤監査役に就任。日本コンピュータ・ダイナミクスでの社外監査役などを経て、2010年より現職。
河野一典 取締役執行役員決済ビジネス事業部長 1996年入社。ネットワークソリューション事業部長、決済ビジネス部部長などを経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、阿部和香(元エスケーエレクトロニクス取締役)、福田伊津子(元東芝エレクトロニックシステムズ社長)、金澤浩志(弁護士法人中央総合法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システム開発・販売」および「リカーリング」事業を展開しています。

システム開発・販売


金融機関や地方自治体向けに、ソフトウェアやシステムインフラ基盤の設計・開発から機器の販売までを一貫して提供しています。個人ローン業務支援システムなどの自社開発パッケージソフトや、公共分野における自治体情報システムの標準化対応案件を主力としています。

収益源はシステム開発の請負代金やシステム機器の販売代金です。同社が主体となってソフトウェアや基盤の設計・開発を行い、子会社のイーブやアイセルが開発やカスタマイズの一部を担っています。また、ファーストステップやブレーン・アシストがネットワーク等のインフラ構築業務を担当しています。

リカーリング


継続的な収益基盤として、ソフトウェアやハードウェアの保守・運用サービス、クラウドサービス、および地方自治体向けのBPO(業務受託)サービスを提供しています。キャッシュレス決済システムや債権管理システムの運用など、顧客の業務効率化に直結するサポートを展開しています。

収益源は定額の保守・運用サービス料やクラウド利用料、BPOの委託手数料です。同社がシステム保守やクラウド全般を提供し、アイティフォー・ベックスが地方自治体の徴収業務などのBPOサービスを担当します。また、シー・ヴィ・シーが信用調査、シディが決済代行業務をそれぞれ運営しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、金融機関向けや公共分野向けのシステム需要を背景に、安定した拡大傾向を示しています。売上高は着実に増加し、経常利益率も17〜18%台という高水準を維持しています。当期はシステム開発とBPO等のリカーリング事業が共に好調で、過去最高の売上高および経常利益を達成しました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 170億円 183億円 207億円 206億円 231億円
経常利益 31億円 33億円 38億円 37億円 41億円
利益率(%) 18.3% 17.9% 18.6% 17.8% 17.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 22億円 26億円 26億円 24億円

(2) 損益計算書


直近2期の損益は、増収効果により売上総利益および営業利益ともに増加しています。価格高騰による仕入コストの上昇があったものの、為替ヘッジ等で原価増を抑制し、売上総利益率の低下を小幅にとどめています。研究開発や人材育成への先行投資を進めつつも、高い収益性を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 206億円 231億円
売上総利益 79億円 88億円
売上総利益率(%) 38.3% 38.1%
営業利益 35億円 39億円
営業利益率(%) 17.2% 16.7%


販売費及び一般管理費(当期49億円)のうち、従業員給料手当が13億円(構成比26%)を占め、次いで賞与引当金繰入額が2億円(同5%)となっています。人件費などの投資を中心としながらも、適切なコストコントロールが図られています。

(3) セグメント収益


主力である「システム開発・販売」は、金融機関向けのソフト開発やインフラ更改、自治体情報システムの標準化対応案件が牽引し、大幅な増収増益となりました。「リカーリング」は、安定収益源である保守サービスの伸長により、着実な増収増益と高い利益率を確保しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
システム開発・販売 115億円 137億円 17億円 20億円 14.3%
リカーリング 90億円 94億円 18億円 19億円 20.2%
連結(合計) 206億円 231億円 35億円 39億円 16.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 26億円 31億円
投資CF -25億円 -16億円
財務CF -27億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も73.6%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念は「『寄り添うチカラ』で人々の感動と笑顔を生み出す」、パーパス(存在意義)は「地方創生による社会貢献を通してすべての人や企業にサプライズを提供し、持続可能な未来の発展に貢献します」と掲げています。システムと業務(BPO)のノウハウを通じて社会に有益な存在であり続けることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、過去の慣習にとらわれず、次の未来に向けてITの力でイノベーションを創出し続ける文化を重視しています。また、従業員に対しては「一人ひとりの主体的な自己研鑽の取り組みをベースに会社は個人の意欲・能力に応じて能力を発揮する場や成長のための機会を提供する」という方針の下、自ら学び続ける文化を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


FY2033構想「HIGH FIVE 2033」の実現に向け、2024〜2026年度を対象とした第4次中期経営計画「FLY ON 2026」を推進しています。最終年度となる2026年度には、以下の目標達成を目指しています。

* 売上高 280億円
* 営業利益 48億円

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業を力強く発展させ、新規事業で飛躍的に成長することをテーマに、「深く」「大きく」「新しく」の観点で事業ポートフォリオを拡大します。既存顧客のシステム更新需要の捕捉や金融グループへの横展開による顧客基盤の裾野拡大を図りつつ、督促自動化サービス等の次世代プロダクトによる成長を加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は人材への投資を中長期的な企業価値向上の最優先事項とし、「人財へのエンパワーメント」を基本方針に掲げています。既存事業の深化を担うオペレーティブ人財の高度化と、新たな価値創出を牽引するイノベーティブ人財の確保・育成を戦略的優先課題と定義しています。そのため、キャリア採用の強化で多様な知見を取り入れるとともに、全従業員を対象としたリスキリングによる役割転換の支援や、タレントマネジメントに基づく最適配置を通じて、個人の市場価値向上と組織力の強化を両立させる方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.2歳 11.6年 7,322,414円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 10.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.8%
男女賃金差異(正規雇用) 65.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 59.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、PMP取得者比率(23.1%)、自発的な離職率(5.5%)、有給休暇取得率(81.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) システム環境・市場の変化リスク

クラウド活用の進展やハードウェアからソフトウェアへのシフトなど、IT業界のビジネスモデルは変革を迫られています。また、少子高齢化による人手不足や金融政策・物価上昇の影響により、顧客企業のIT投資意欲が低下した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 企業間競争の激化によるリスク

同社は金融や流通・小売業界向けに独自のシステムノウハウを提供していますが、既存の大手コンピューター・メーカーや専業システムインテグレーターとの競合が激化しています。情報通信機器類の価格低下に伴う単価引き下げ圧力が強まり、価格下落傾向が続いた場合、収益性が低下するリスクがあります。

(3) システム開発・品質管理に関するリスク

取り扱う情報通信技術の進歩に後れを取った場合や、独自開発システムに関する特許が成立せず競合品が出現した場合、業績に影響する可能性があります。また、顧客ニーズに合ったパッケージシステムの開発や保守において品質上のトラブルが発生し、損害賠償や追加コストが生じるリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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