※本記事は、株式会社アスモ の有価証券報告書(第50期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アスモってどんな会社?
食肉輸入販売を祖業とし、給食受託、介護サービス、香港での外食事業など、「食」と「介護」を軸に多角的な事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1975年に食肉販売を行う信和商事として設立され、2000年に大阪証券取引所市場第二部に上場しました。2008年にPersons Bridgeより給食事業を承継し、2012年に現社名へ変更するとともに介護事業へ参入しました。2022年にベストライフおよびベストライフホールディングスが親会社となりました。
連結従業員数は1,492名、単体では16名です。筆頭株主は親会社のPersons Bridgeで、第2位は創業家出身の長井カズヱ氏、第3位は個人株主の内藤征吾氏です。親会社は有料老人ホームの運営などを手掛けるベストライフグループに属しており、グループ間での連携も行われています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Persons Bridge | 60.90% |
| 長井 カズヱ | 8.06% |
| 内藤 征吾 | 2.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は長井 尊氏です。社外取締役比率は11.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長井 尊 | 代表取締役社長 | 2003年Persons Bridge代表取締役。2008年同社給食事業の承継に伴いアスモ入社。2012年10月より現職。ベストライフ取締役等を兼任。 |
| 赤澤 優 | 取締役 | 2010年ベストライフ取締役。2019年ギフト代表取締役、ベストライフ東京代表取締役。2022年アスモ介護サービス代表取締役。2024年6月より現職。 |
| 上 伸之 | 取締役 | 2010年アスモ入社。アスモフードサービス岡山営業所所長等を経て、2023年アスモトレーディング取締役。2024年6月より現職。 |
| 阪口 詠自 | 取締役 | 2010年アスモ入社。アスモフードサービス大阪営業所所長等を経て、2018年アスモトレーディング監査役。2024年6月より現職。 |
| 長井 力 | 取締役 | 2001年ベストライフ取締役。2006年同社代表取締役。2007年ベストライフホールディングス代表取締役社長。2015年2月より現職。 |
社外取締役は、北嶋 准(元東急リビングサービス営業管理部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アスモ事業」、「アスモトレーディング事業」、「アスモフードサービス事業」、「アスモ介護サービス事業」、「ASMO CATERING (HK) 事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) アスモ事業
グループ各社の統制・管理業務および不動産賃貸事業を行っています。グループ全体の経営効率化とガバナンス強化を担うセグメントです。
収益は、グループ会社からの経営指導料や、保有または賃借する不動産の転貸による賃貸料収入から得ています。運営は主に親会社であるアスモが行っています。
■(2) アスモトレーディング事業
牛肉、牛内臓肉、豚肉などの食肉輸入および、食肉・食肉加工品の販売を行っています。米国やメキシコなどからの輸入商材を扱っています。
収益は、国内の食肉卸売業者や加工メーカー、外食産業等の顧客に対する商品販売代金から得ています。運営は主に株式会社アスモトレーディングが行っています。
■(3) アスモフードサービス事業
高齢者介護施設や福祉施設等において、給食の提供サービスを行っています。利用者の健康状態や嗜好に合わせた食事サービスを展開しています。
収益は、給食業務を受託した介護施設等の運営事業者から受け取る委託料や食事提供代金から得ています。運営は株式会社アスモフードサービスおよび株式会社アスモフードサービス東日本が行っています。
■(4) アスモ介護サービス事業
訪問介護事業所、居宅介護支援事業所の運営に加え、有料老人ホームの運営を行っています。在宅から施設介護まで幅広いサービスを提供しています。
収益は、介護保険法に基づく介護報酬(国民健康保険団体連合会および利用者負担分)や、有料老人ホーム入居者からの家賃・管理費・食費等から得ています。運営は株式会社アスモ介護サービスおよび株式会社アスモライフサービスが行っています。
■(5) ASMO CATERING (HK) 事業
香港において、日本料理を中心とした外食店舗の運営および食品加工販売を行っています。日系スーパーや百貨店、商業モール内に出店しています。
収益は、来店客からの飲食代金および食品加工品の販売代金から得ています。運営は現地法人のASMO CATERING (HK) CO., LIMITEDが行っています。
■(6) その他
報告セグメントに含まれない事業として、台湾における外食店舗運営事業がありますが、現在は事業を休止しています。
収益は発生していません。運営主体はASMO CATERING(TAIWAN)COMPANY LIMITEDです。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は188億円から205億円へと緩やかに拡大していますが、利益面では変動が見られます。特に当期は、経常利益が前期比で半減し、当期純利益も大きく減少しました。利益率は1%台から4%台の間で推移しており、安定的な収益性の確保が課題となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 188億円 | 188億円 | 197億円 | 205億円 | 205億円 |
| 経常利益 | 8億円 | 6億円 | 4億円 | 7億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | 4.0% | 3.2% | 2.0% | 3.2% | 1.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3億円 | 4億円 | 1億円 | 5億円 | 1億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は横ばいですが、売上原価の増加により売上総利益が減少し、利益率が低下しています。営業利益は前期の約6億円から3億円へと半減しており、コスト増加の影響が利益を圧迫している状況が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 205億円 | 205億円 |
| 売上総利益 | 40億円 | 37億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.5% | 18.2% |
| 営業利益 | 6億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 3.0% | 1.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が11億円(構成比32%)、水道光熱費が5億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の給食事業(フードサービス)は増収を確保しましたが、物価高騰などの影響で減益となりました。食肉卸(トレーディング)は円安や価格高騰の影響で減収減益、介護サービスも減収減益となっています。香港事業は増収したものの、依然として赤字が続いています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アスモ事業 | 1.5億円 | 1.4億円 | -0.6億円 | -1.0億円 | -68.4% |
| アスモトレーディング事業 | 45億円 | 40億円 | 0.8億円 | 0.4億円 | 0.9% |
| アスモフードサービス事業 | 82億円 | 88億円 | 3億円 | 2億円 | 2.7% |
| アスモ介護サービス事業 | 57億円 | 55億円 | 5億円 | 3億円 | 5.8% |
| ASMO CATERING (HK) 事業 | 25億円 | 27億円 | -0.7億円 | -0.5億円 | -1.8% |
| その他 | - | - | -0.0億円 | -0.0億円 | - |
| 調整額 | -5億円 | -5億円 | -1.5億円 | -1.4億円 | - |
| 連結(合計) | 205億円 | 205億円 | 6億円 | 3億円 | 1.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的な**末期型**です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 7億円 | -0.2億円 |
| 投資CF | -0.4億円 | -0.5億円 |
| 財務CF | -1.4億円 | -1.9億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「食文化への貢献」「お客様第一主義の徹底」「積極経営」「活力のある企業風土の育成」を経営理念として掲げています。優れた商品とサービスを通じて豊かな食文化・生活文化の向上に貢献するとともに、常にお客様第一主義に徹し、積極的かつ挑戦的な経営を行うことを目指しています。
■(2) 企業文化
超高齢化社会を迎える日本において多方面から必要とされる企業となるべく、各事業の強みを活かしシナジーを発揮することを重視しています。また、国内にとどまらず積極的に海外に進出し、多角的な収益構造を構築することで、社員が誇りと喜びを共有できる活力ある企業集団の創造を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
継続的な成長を実現するため、主な経営指標として「売上高」「営業利益」「経常利益」「当期純利益」「キャッシュフロー」を掲げています。また、これらの財務指標に加え、フードサービス事業や介護サービス事業における「事業所数」や「利用者様の純増数」も重視しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
介護事業では、新規有料老人ホームの開発を見据えつつ、人材教育と勤務環境改善による離職防止に取り組み、サービス提供力の向上を図ります。フードサービス事業では、適時・適正価格での食材調達とコスト管理の徹底により収益モデルの改善を目指します。トレーディング事業では、新規顧客へのアプローチやWEB販売等のチャネル拡大を進めます。香港事業では、セットメニューの強化や中食市場向けの「delicatessen彩」業態の検討など、収益モデルの再構築に取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
あらゆる事業運営の基盤は人材であると考え、次代を担う経営者や管理者の育成を急務としています。社内外を問わない効率的な人材配置を行い、多様な人材が能力を最大限発揮できる環境づくりを推進しています。また、業務の標準化による組織の柔軟性向上や、有給休暇・育児休業の取得推奨を通じた働きやすい環境整備にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.1歳 | 3.8年 | 4,812,823円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
※提出会社の従業員は、すべてアスモ事業に属しております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 51.9% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 92.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 97.7% |
※数値は連結子会社の株式会社アスモ介護サービスの実績です。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(グループ全体)(48.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定商品への依存と仕入価格変動
アスモトレーディング事業の売上は牛肉・豚肉等の原料に大きく依存しており、競合との差別化が困難なため価格競争の影響を受けやすい特性があります。また、食材の仕入価格は天候、輸入制限、為替、獣疫等の要因で急激に変動する可能性があり、これらの価格高騰はグループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制と介護報酬改定
アスモ介護サービス事業は介護保険法の適用を受けるサービスを提供しており、収入の大部分が公的機関からの支払いです。そのため、安定した収入が見込める一方で、介護保険法の改正や介護報酬のマイナス改定が行われた場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 食の安全性と風評リスク
アスモフードサービス事業では給食提供や飲食店経営を行っており、食品衛生法の遵守や衛生管理に注力しています。しかし、万が一食中毒等の事故が発生した場合、営業停止処分や社会的信用の失墜により、同社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 海外事業のカントリーリスクと競争
香港等で展開するASMO CATERING(HK)事業は、現地の政治・経済情勢の変化や、激化する出店競争の影響を受けます。競合店の出店や、自然災害、疫病等の外的要因により店舗運営が困難になった場合、売上の低下や減損損失の計上などにより、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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