※本記事は、株式会社アスモの有価証券報告書(第51期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アスモってどんな会社?
食肉の輸入・販売や介護施設向けの給食提供、介護事業などを幅広く展開する企業です。
■(1) 会社概要
1975年に信和商事として設立され、1983年に本格的に卸売業を開始しました。2000年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、同年にセントラルキッチンを導入しています。2008年に給食事業を吸収分割で承継し、2012年にアスモに商号変更するとともに介護サービス子会社を設立しました。
従業員数は連結で1,436名、単体で18名です。筆頭株主は親会社のPersons Bridgeで、第2位は創業家等の長井カズヱ氏、第3位は内藤征吾氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Persons Bridge | 60.90% |
| 長井カズヱ | 8.06% |
| 内藤征吾 | 2.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。
代表取締役社長は長井尊氏です。
社外取締役比率は16.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 長井尊 | 代表取締役社長 | 2003年Persons Bridge代表取締役就任。2008年同社にて給食事業承継に伴い取締役副社長就任。2012年より現職。 |
| 赤澤優 | 取締役 | 2010年ベストライフ取締役就任。2011年同社取締役就任。ベストライフ東京代表取締役等を経て、2024年より現職。 |
| 上伸之 | 取締役 | 2010年シンワオックス(現アスモ)入社。アスモフードサービス岡山・名古屋営業所長等を経て、2024年より現職。 |
| 阪口詠自 | 取締役 | 2010年シンワオックス(現アスモ)入社。アスモフードサービス大阪営業所長、アスモトレーディング取締役等を経て2024年より現職。 |
| 長井力 | 取締役 | 2001年ベストライフ取締役就任。2006年ベストライフ代表取締役就任。ベストライフホールディングス代表取締役社長を経て、2015年より現職。 |
社外取締役は、北嶋准(元東急バス企画開発部課長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アスモ事業」「アスモトレーディング事業」「アスモフードサービス事業」「アスモ介護サービス事業」「ASMO CATERING (HK) 事業」および「その他」事業を展開しています。
■アスモ事業
グループ会社の統制・管理、不動産賃貸を行っています。主な顧客はグループ各社であり、同社グループの基盤を支える役割を担っています。
グループ各社から経営指導料や賃借料等の名目で対価を受け取ります。運営は主にアスモが行っています。
■アスモトレーディング事業
食肉の輸入、食肉及び食肉加工品の販売を行っています。顧客は主に食肉卸売業者や一般消費者です。
商品の出荷時に収益を認識し、販売代金として対価を受け取ります。運営はアスモトレーディングが行っています。
■アスモフードサービス事業
高齢者介護施設等における給食の提供を行っています。顧客は高齢者介護施設等です。
施設との役務提供契約に基づきサービスを提供し、給食の提供対価を受け取ります。運営はアスモフードサービスおよびアスモフードサービス東日本が行っています。
■アスモ介護サービス事業
訪問・居宅介護事業所の運営、有料老人ホームの運営を行っています。顧客は介護施設の入居者等です。
介護サービスの提供や家賃、入居一時金等として対価を受け取ります。運営はアスモ介護サービスおよびアスモライフサービスが行っています。
■ASMO CATERING (HK) 事業
香港における外食店舗の運営、食品加工販売を行っています。顧客は飲食店利用者や日系飲食企業です。
店舗でのサービス提供や加工食品の引渡時に飲食代や販売代金を受け取ります。運営はASMO CATERING (HK) CO., LIMITEDが行っています。
■その他事業
台湾における外食店舗の運営を行っていましたが、現在は事業から撤退しています。
運営はASMO CATERING(TAIWAN)COMPANY LIMITEDが行っていましたが、解散し清算結了しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は右肩上がりで推移しており、着実な事業成長が見られます。経常利益は一時的な減少があったものの、直近では大きく回復し、収益性の改善が伺えます。当期利益についても黒字転換を果たしており、安定的な利益創出に向けた基盤が整いつつあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 188.4億円 | 197.2億円 | 205.3億円 | 205.3億円 | 212.4億円 |
| 経常利益 | 6.0億円 | 3.9億円 | 6.7億円 | 3.1億円 | 6.9億円 |
| 利益率(%) | 3.2% | 2.0% | 3.2% | 1.5% | 3.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.0億円 | 1.5億円 | 0.1億円 | -0.2億円 | 0.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率の向上に加え、徹底したコスト管理の効果が現れ、営業利益は大幅に増加しており、本業の稼ぐ力が強化されていることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 205.3億円 | 212.4億円 |
| 売上総利益 | 37.4億円 | 40.8億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.2% | 19.2% |
| 営業利益 | 3.0億円 | 6.5億円 |
| 営業利益率(%) | 1.5% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が11億円(構成比32%)、水道光熱費が5.4億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のアスモフードサービス事業は、新規受託施設の増加やイベント企画の推進により売上が順調に拡大しています。また、アスモトレーディング事業も提案営業の強化により増収を達成しています。一方、アスモ介護サービス事業やASMO CATERING (HK) 事業はわずかに減収となりましたが、全体としては増収を確保しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| アスモ事業 | - | - |
| アスモトレーディング事業 | 39.2億円 | 41.0億円 |
| アスモフードサービス事業 | 84.7億円 | 91.8億円 |
| アスモ介護サービス事業 | 54.6億円 | 53.4億円 |
| ASMO CATERING (HK) 事業 | 26.7億円 | 26.1億円 |
| 連結(合計) | 205.3億円 | 212.4億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業であるといえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.2億円 | 4.7億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | -6.0億円 |
| 財務CF | -1.9億円 | -1.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「食文化への貢献」「お客様第一主義の徹底」「積極経営」「活力のある企業風土の育成」を経営理念に掲げています。優れた品質の商品とサービスを提供して豊かな食文化に貢献し、常にお客様第一主義に徹してニーズに応えることを目指しています。また、積極的な経営と挑戦を基本とし、活力ある企業集団の創造を追求しています。
■(2) 企業文化
同社は、全ての社員が力を合わせ、創意工夫と挑戦の精神をもって働くことを重視する文化を持っています。社員が会社で働く誇りと喜びを共有し、笑いと活力のある企業風土を育成することを基本姿勢としています。また、取り巻く人々との誠心誠意の協調を重んじ、各事業のシナジーを最大限に発揮できる組織体制を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、安定した成長を実現するため、多角的な収益構造の構築を目標に掲げています。超高齢化社会を迎える日本において多方面から必要とされる企業となるべく、継続的な成長の指標として売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、キャッシュフローを重視しています。また、事業所数や利用者様の純増数も客観的な指標として追及しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、既存事業の差別化と収益力の強化を成長戦略の柱としています。アスモトレーディング事業では通信販売等のBtoCルートの多様化、アスモフードサービス事業では徹底したコスト管理による収益モデルの改善を進めます。さらに、介護サービスにおける付加価値の創出や、海外不採算店舗の撤退等による運営の効率化を図り、安定的な収益確保に努めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材をあらゆる事業運営のベースと考え、次代を担う経営者や専門人材の確保・育成を急務としています。社員が多様な業務で能力を発揮できるよう業務の標準化やフラットな組織づくりを進めています。また、有給休暇や育児休業の取得を推奨し、女性管理職の登用やシニア層の再雇用など、多様な人材が活躍できる環境整備に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.4歳 | 4.3年 | 5,252,310円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 52.9% |
| 男性育児休業取得率 | 78.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 90.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 102.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定商品への依存リスク
同社のアスモトレーディング事業において、売上高の主要部分を原料(牛肉・豚肉等)が占めています。これらの原料は競合他社との差別化が困難であり、厳しい価格競争に巻き込まれた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、競合の少ないメキシコ牛の取扱いや通信販売を通じた販売ルートの多様化に注力しています。
■(2) 食材仕入価格の変動リスク
同社が取り扱う食材の仕入価格は、国内外の天候要因、輸入制限、為替レートの動向等により大きく変動します。獣疫の発生や物流の混乱等により仕入価格が急騰した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は国内加工の増加や仕入ルートの開拓など、価格変動による利益圧迫を緩和するための対策を講じています。
■(3) 飲食・給食事業の食の安全性リスク
同社のアスモフードサービス事業等では、食品衛生法に基づき給食の提供等を行っています。日常的な品質・衛生管理の徹底により食中毒の防止に努めていますが、万一、関連業種を含めて食中毒が発生した場合、保健所による業務停止命令等を受け、業績や社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 介護人材の確保リスク
同社の事業運営のベースは人材であり、次代を担う経営層や専門有資格者、現場従事者の確保・育成が不可欠です。人材確保が十分にできない場合、サービスの低下を招き業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は人材教育や離職防止策に注力し、待遇や職場環境の向上を通じて人材の定着化を図っています。



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