高千穂交易 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

高千穂交易 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するエレクトロニクス技術商社です。セキュリティシステムや半導体、機構部品などの輸入販売および関連サービスを提供しています。2025年3月期の連結売上高は前期比11.4%増、経常利益は同9.2%増となり、増収増益で上場来最高益を更新しました。


※本記事は、高千穂交易株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 高千穂交易ってどんな会社?


エレクトロニクスを核に、セキュリティ機器や半導体等の先端技術商品を輸入販売する独立系技術商社です。

(1) 会社概要


1952年に設立され、米国製会計機や商品監視システムの輸入販売を開始しました。2000年に店頭市場へ登録し、2005年には東京証券取引所市場第一部へ指定されました。その後、タイやシンガポール等の現地法人を子会社化し、グローバル展開を加速させています。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

連結従業員数は459名、単体従業員数は250名です。筆頭株主はアミューズメント関連機器大手のマースグループホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
マースグループホールディングス 8.59%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.82%
セコム 4.80%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は井出尊信氏が務めています。社外取締役比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
井出 尊信 代表取締役社長(社長執行役員) 1994年同社入社。ビジネスソリューション事業部長、常務執行役員営業統括などを経て、2018年6月より現職。
植松 昌澄 取締役(常務執行役員) みずほ銀行出身。みずほ信託銀行主計部長などを経て2012年同社入社。経営システム本部長、管理本部長などを歴任し現職。
辰己 一道 取締役(常勤監査等委員) 1991年同社入社。マイティキューブ代表取締役社長、同社執行役員システム事業本部長などを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、串間和彦(元NTTテクノクロス社長)、絹川幸恵(元みずほ証券執行役員)、千葉彰(千葉公認会計士事務所代表)、木﨑孝(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「クラウドサービス&サポート」「システム」「デバイス」の3つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) クラウドサービス&サポート


クラウドサービス(MSPサービス含む)やクラウド型無線LANシステム等の販売、およびシステムセグメントで扱う商品の保守・運用監視サービスを提供しています。小売・流通業やオフィス向けに、24時間365日対応のサポート体制を構築しています。
収益は、顧客からのクラウドサービス利用料や保守契約に基づく対価から得ています。運営は主に同社が行っています。

(2) システム


商品監視システムや監視カメラなどのリテールソリューション、入退室管理システムやRFIDタグなどのビジネスソリューション、および高度防火システムの設計・構築を行っています。商業施設やオフィスビル、プラントなどが主な顧客です。
収益は、機器の販売代金やシステム設計・設置工事の対価から得ています。運営は同社、マイティキューブ、およびタイやシンガポール等の海外子会社が行っています。

(3) デバイス


アナログICやセンサーなどのエレクトロニクス商品、およびスライドレールや昇降システムなどのメカトロニクス商品(機構部品)を取り扱っています。産業機器や住設機器、ATMなどのメーカーが主な顧客です。
収益は、半導体・電子部品や機構部品の販売代金から得ています。運営は同社、および香港、上海、米国の子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高、経常利益ともに右肩上がりの傾向にあります。特に2024年3月期以降は売上高が250億円を超え、利益率も7%台で安定的に推移しています。当期は売上高281億円、経常利益20億円に達し、順調な成長を続けています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 206億円 208億円 234億円 252億円 281億円
経常利益 9億円 12億円 16億円 18億円 20億円
利益率(%) 4.5% 6.0% 6.8% 7.3% 7.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 9億円 10億円 15億円 13億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しています。営業利益は約21億円となり、営業利益率は5.8%から7.4%へと改善しました。増収効果に加え、利益率の向上が見られます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 252億円 281億円
売上総利益 61億円 69億円
売上総利益率(%) 24.0% 24.6%
営業利益 15億円 21億円
営業利益率(%) 5.8% 7.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が16億円(構成比34%)、その他費用が16億円(同33%)を占めています。売上原価は売上高の約75%を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。クラウドサービス&サポートは契約数増加により大幅な増益を達成しました。システムは増収増益、デバイスは売上増の一方で円安等によるコスト増があり減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
クラウドサービス&サポート 25億円 36億円 5億円 8億円 21.8%
システム 99億円 101億円 -0億円 4億円 3.7%
デバイス 128億円 144億円 10億円 9億円 6.4%
連結(合計) 252億円 281億円 15億円 21億円 7.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 16億円 30億円
投資CF 0億円 -5億円
財務CF -15億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


技術商社として「創造」を原点に据え、テクノロジーを通じて顧客満足を高めること、技能と人間性を磨き信用を築くこと、そして力を合わせて豊かな未来を拓き社会に貢献することを企業理念として掲げています。

(2) 企業文化


「安全・安心・快適」をソリューションの核とし、技術商社としての実績と経験を活かした専門性の高い提案を行う文化があります。また、CSR(企業の社会的責任)を強く認識し、誠実で透明な経営活動を通じてステークホルダーからの信頼獲得を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2027年度を最終年度とする中期経営計画を策定しています。2030年のありたい姿として「1st choice されるソリューションプロバイダー」を掲げ、以下の数値目標を設定しています。

* 連結売上目標:350億円
* 連結営業利益目標:30億円
* 連結当期純利益:20億円
* ROE:10%超

(4) 成長戦略と重点施策


新中期経営計画では、「ビジネスセキュリティ」と「エレクトロメカニクス」を注力事業領域とし、60億円規模の成長投資を行う計画です。顧客伴走型で新たなソリューションを創造し、従来のモノ売りから事業をデザインする思考への進化を目指しています。

* ビジネスセキュリティ分野、エレクトロメカニクス分野、人材・DX等への投資強化
* 東南アジア・インドへの販路拡大
* 保守・マネージドサービス・クラウドサービスの伸長による収益性向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長のためには社員が活き活きと働く環境が重要と考え、人的資本経営を推進しています。個人のスキルアップを事業成長の鍵と位置づけ、教育費への投資や、目的に共感する人材の獲得、社員のモチベーション向上につながる施策を実施する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.8歳 17.1年 7,102,272円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.0%
男性育児休業取得率 100.0%


※男女賃金差異については、同社は常時雇用する労働者が300人以下であり公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替変動の影響


同社(提出会社)の仕入額のうち約54%が外貨建取引であり、円安などの為替変動が業績に影響を与える可能性があります。売上の約30%が外貨建であるため一部リスクは相殺されますが、為替予約等によるヘッジを行っても営業外損益への影響が生じる可能性があります。

(2) 投資有価証券等の減損による影響


同社グループが保有する投資有価証券等について、発行体の収益性悪化等により価値が毀損した場合、減損処理が必要となり、業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) サイバーセキュリティに関するリスク


サイバー攻撃の手法が高度化・巧妙化する中、同社はこれを最重要リスクの一つと認識し対策を講じています。しかし、万が一サイバー攻撃やシステム障害によりビジネスの中断や重要データの流出が発生した場合、経営成績や社会的信用に大きな影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。